物語論 基礎と応用 (講談社選書メチエ)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062586504

感想・レビュー・書評

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  • 「第一部 理論編」では平易な言葉を用いて、物語論が生まれた経緯とその理論についての概説がされている。
    「第二部 分析編」では外国文学やアニメ、映画といった多様な作品に対して、物語論の理論を用いた分析をしている。

    前半の理論編は物語論の全体像を概観するのとができ、専門書へ踏み込む前の導入として優れていると思う。
    後半の分析編では、文学作品に限らず人間が生みだしたものは基本的に物語として分析できることを示している。

    本文引用
    p258「物語論では、作者の意図が無視されているとよく言われる。しかしこれは誤解である。構造主義時代の物語論でも、無視されたのは『完全に作品を決定できる存在』としての作者である。作者の意図なるものを解読し、作り出すのは読者の側だと考えたのであって、まったく無視したのではない。」

    p268「思うに物語というのは、人間の観念による構築物である。現実は物語的に把握され、物語は把握され、物語は把握された現実のように表象される。換言すれば、それは現実認識を抽象化し、普遍化したものである。現実は私たちの感情に作用するが、物語よ読み手の感情に作用する。それも、抽象化され、普遍化されている分、時には現実以上の作用をおよぼすのである。」

  • 本書は物語論(ナラトロジー)を紹介する本である。物語論とは、小説や映画などの文芸作品を読解する手法の一つで、内容よりも形式を重視し、物語の設計図を解き明かそうとすることに特徴がある。大学入試現代文の小説の読解方法に似ている、いや、私自身が習った方法が物語論に依拠している部分があるのかもしれないと感じた。テキストの文法や叙述の仕方に忠実に読解を進める点で、汎用性が高く機械的に適用するのにも向いている。だから、受験勉強にも有用だろう。高校時代に読みたかった・・・。

  • 物語論の基礎をていねいに解説している本です。

    前半は、プロップ、バルト、ジュネットらの仕事が紹介されています。伝統的な文学理論や物語論の背景にある哲学的な議論に踏み込むことは差し控え、物語を分析するための基本的な装置としての物語論を明快に解説しています。

    後半は、じっさいに物語論の考えかたを用いて、さまざまな作品が解釈されています。とはいえ、こちらもあまりに難解な議論に流れることはなく、カフカ『田舎医者』、太宰治『ヴィヨンの妻』、ガルシア=マルケス『百年の孤独』といったよく知られている名作のほか、映画『シン・ゴジラ』やアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』、『魔法少女まどか☆マギカ』なども題材にとりあげられており、親しみやすい内容になっています。

    物語論の入門書もいくつか刊行されていますが、本書はその基礎を明快に説明しており、読者に親切な入門書という意味ではとくにすぐれているのではないかと思います。

  • 視点の意識
    誰がどのように語っているのか

  • テクストによる語りの時間、速度、濃淡、視点等々、とっかかりよし。物語的現在について図示による整理要。後半の作品分析はやや蛇足。別の本にとっておいて本書ではもう少し広げたり(演劇・オペラ方向)、深めたり(信頼できない話者等)してもよかったと思うが。

  • 物語構造を考えることは、世界に対する自分の立ち位置を考えること。…かも?

    目から鱗だったのが物語の視点の問題について。
    物語を作るときは視点の置き方を決めないといけないのだ。誰の視点で語るか。どの時点を起点にした視点で語るか。それと同時に物語に対してどんな距離感で語るか(ディエゲーシスとミメーシス)。
    これを定めずに物語を作ろうとすると行き詰まる。というか困ってしまって語れないのだ(過去に小説書こうとして行き詰まった原因をようやく思い知る)。

    普段の会話も同じだ。自分が話そうとする内容に対しどの立ち位置から語るか(客観的に語るのか、主観的に語るのか、両方を合わせながら語るのか)を決めないと話せないもんね。

    というのが第一部の感想。

    第二部は実際の作品分析。印象に残ったのは「この世界の片隅に」の距離をとることでエモーショナルな余韻を残す構造の分析。
    あと文学史で出てくるような作品は、物語構造が発表当時センセーショナルだったのだなあということ。
    物語に対して「構造」という分析視点を持たないで話の内容で捉えることになっちゃうのってないもったいない!魅力や面白さを理解しきれない。
    本著を読んでそう感じた。

著者プロフィール

1982年、埼玉県生まれ。慶應義塾志木高等学校卒、慶應義塾大学大学院文学研究科中国文学専攻博士課程修了。博士(文学)。慶應義塾志木高等学校講師(国語科)等を経て、現在、お茶の水女子大学基幹研究院助教。専門は中国語を中心とした文体論、比較詩学。著書に『7力国語をモノにした人の勉強法』(祥伝社文庫)『物語における時間と話法の比較詩学』(水声社)『物語論 基礎と応用』(講談社選書メチエ)『日本語の謎を解く』(新潮選書)『ノーベル文学賞を読む』(角川選書)などがある。

「2019年 『使える!「国語」の考え方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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