アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか? 大人の発達障害を考える (こころライブラリー)
- 講談社 (2011年12月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062597067
作品紹介・あらすじ
「指示を理解できない」「不器用で仕事をうまくこなせない」「他人を怒らせてしまう」「まわりの空気が読めない」…大学で職場で-不適応が起こるのはなぜか?「アスペルガー症候群」の本質と支援策を徹底解説。
感想・レビュー・書評
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著者がネット上で公開している『高機能広汎性発達障害者への就労前支援に向けて』が大変に興味深かったので、その方の近著ということで手にしました。
「はじめに」に書かれているとおり、第1〜5章が「不適応の要因となっている障害の本質や、不適応のパターンの解説」、第6章で「アスペルガー者への支援における具体的な注意点、環境調整の仕方」、第7章で「アスペルガー者の主観的世界とはどのような世界なのか、そこから見えてく新たな価値観の提示」となっています。
アスペルガー者ではない人にとって、アスペルガー者がどのように周囲を捉え、どのように考えるのかは、想像するのが非常に難しいようです。しかし、少しでも多くの人にアスペルガーについて理解してもらうことは、当事者のみならず社会全体にとって大事なことです。理解が得られなくては、当事者だけでなく、当事者以外の人にとっても「理由の分からない」摩擦や軋轢や衝突が起こるばかりで、双方にとって不幸なことです。
アスペルガーの人が何を考えているのかさっぱり分からない、どう対応すればよいのか分からない、でも「それを知りたい」ーーーと思ってくれる人が一人でも増えてくれたらと願っています。そういう人にとって、この本は非常に役に立つと思います。著者はアスペルガー者ではありません。「多数派」の視点からアスペルガーを解説し、どう対応していけばいいのかを考えています。当事者でない人にとって、当事者の言葉よりずっと分かりやすいのではないかと思います。
当事者以外の人が読み手として想定されていますが、当事者が読んでも示唆に富み、大変に参考になると思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ていねい、まごのて。
大人フォーカスだから、あるあるーわかるーあちゃぁー(>_<)ってところがたくさんあった。
対処方法も考え方も、すとんと入ってきた。
他のアスペルガー類書は、コピペしたんか!っていうぐらい、同じこと説明はれる。 -
当事者に寄り添ったよい本だと思う。視点が優しい。不適応の対策についても詳しく丁寧な記述で参考になった。
当事者にとって、建前、本音、本当の心を同時に考えるのは本来無理なことだが、繰り返し練習して「今は建前」「.今は本音」「今はどちらでもない」など現在の自分の気持ちを区別すると、ある程度はできるようになる。
苦手な刺激にあえてさらす(暴露する)のは逆効果になることが多いので、無理しない。少しずつ、安心できる範囲で慣らしていく。
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発達障害の本は幾つかある。
しかし、どうも似たようなものばかり。
二三冊読めば、飽きてしまうだろう。
しかし、そんな中で、本書は別格である。
するどい分析と観察で、
よく書いてくれたと思う。
当事者としても、救われること、多いと思う。
アドバイスは適切で、応用ができる。
症例も参考になり、
何も言う事がない。
発達障害について、具体的な一般職で、
本書は他の追随を許さないだろう。 -
ASの人たちの現実を、ありがちな通り一遍な表現ではなく、非常にわかりやすく具体的に書いていて好感が持てる。
当事者が読んでも「そうそう、そうなんだよ」とよく共感できるのではないだろうか。
自分自身のASに悩んでいる人、その周囲の人々、また単に興味をもっているだけという人でも是非読んで欲しい。
ASを理解してくれる人が増えてくれたら、と切に思う。
当事者たちは、本当に苦労しています。 -
図書館で丸一日かけて読んだ。作業記憶や動作などは努力してもカバーできない部分は認めてできる事に集中していきたいと感じた。
日常生活はなんとか送れるとしても就業となると配慮や理解が必要であると強く感じた。
価値観や認知も定型発達と比べると乖離があり社会生活の困難さを痛感した。 -
なぜアスペルガーは生きづらいのか、定型発達との違いなど詳しく解説してあってとても勉強になった。
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自分が世の中の大多数とは異なる変わり者だという認識はあったが、その理由を説明できるモデルに出会うことが出来ずにいた。
この本には、その理由を説明できるモデルが載っていて非常に参考になった。
セルフモニタリングが出来ておらず、過集中のはてに疲れ果ててしまうのをなんとかしたい。 -
アスペルガーの人は何故日々の生活に困難を感じるのか、いわゆる定型発達の人とどのように世界の見え方が異なるのか、などを深く掘り下げた本。看板に偽りなし。
近年、大人の発達障害が注目されるようになり、解説書の類も色々と出版されるようになったが、上記のような視点で障害の本質を深く掘り下げた本は珍しい。健常者にとってもアスペルガー症候群の当事者にとっても、相互理解を深めるのに役立つだろう。
ただ、説明が抽象的だったり、ある意味哲学的とさえいえる問題提起をしていたりする部分はよく理解できなかった。内容は正確なのだが、問題が起こる可能性を指摘するにとどまり結局解決策を示していないことも多い。(これは仕方がないとは思うが……。)
本書では「アスペルガー症候群」の代わりに「アスペルガー障害」という語を用い、当事者のことを「アスペルガー者」と呼んでいる。他ではあまり聞いたことのない表現なので最初は違和感を覚えた。言葉から受ける印象とは主観的なものなので断じることはできないが、個人的には「発達障害を障害と受け取られるのは心外」、「障害より症候群のほうが軽症な感じがする」という思いがあるので、「アスペルガー症候群」の語を使ってほしかった。 -
アカデミックな記載、ではなく、より臨床の立場からの解釈や対応について、筆者の見解も入れながら書かれています。筆者の向き合い方に対する信念も伝わってきます。
私はPFやアジャイルが、この分野と折り合いをつける時期が近いうちに必ずやってくると考えているので、本書のような実践を背景とした洞察は参考になりました。
「異なった世界の見え方に対する敬意と尊重が求められてしかるべきである」との言にはハッとさせられたよ。