李歐 (講談社文庫)

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著者 : 高村薫
  • 講談社 (1999年2月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062630115

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李歐 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 半世紀も前の時代という名の過去の空間が大陸の土の匂いと桜の妖艶さに混ざりながら、一気に紙の世界に蘇る。
    一つの時代に翻弄され、いくつもの命が失われる。暗澹たる状況のなかで、二人の青年を暴力的とも言える押されきれないほどの衝動と未開拓の土地への憧憬が支える。

    色んなことを学ばせてくれる。例えば、歌というものは、未知なる土地の匂いを伝えることのできるものだとか。
    色んなことを気づかせてくれる。例えば、私の中にも実ははるか前から大陸への憧憬があったとか。

    主人公と李欧の二人の心理描写はひたすら悲しく、美しいものだった。
    そして、二人の関係はまるで満開の夜桜のように色っぽいものだった。

  • 『李歐』は、'92に発刊された『わが手に拳銃を』を下敷きにあらたに書き下ろされたもので、'99年2月に発刊されている。
     主人公の吉田一彰は阪大工学部の四年生。大学の授業には興味なく、彼を熱中させているのは、駆け落ちした母を捜すこと。そして、中国語の授業の講師であった敦子との性愛。昼間は運送会社のアルバイトをし、夜は会員制のナイトクラブのアルバイトをしている。
     母と少年は、東京から夜逃げのようにして大阪にたどり着き、姫里の木造モルタル二階建ての粗末な木賃アパートに住み着いた。十三の商店街を歩くと道行く人がみな振り返るほど小粋であか抜けしていた彼女は、十三病院の賄い婦として働いていた。友達も身よりもいない6歳の少年の遊び場は、アポートの隣の小さな機械工場だった。工場には数人の外国人労働者たちが働いていて、彼らから「ぼん」と呼ばれて可愛がられていた。少年にとって、工場から聞こえてくる、中国語や朝鮮語の話し声の賑やかな音調が、少年の心に沁み込んでいった。そうした幸福が1年ほど続いたある日、母は6歳の一彰を置いて中国人の工員と駆け落ちしたのだった。母が消えた日、その工場に警察の捜査が入った。
    東京の祖父母に育てられた少年は、母を探り当てる目的で大阪の大学に進む。幼い記憶を頼りにその工場で働いていた外国人労働者を訪ね歩き、3年かけて昔工場で働いていた工員の一人を見つけやっと駆け落ち相手の男がそのナイトクラブに来ているという情報を得たのだった。見つけた相手は、台湾シンジケートの幹部となっていて、一彰は彼の情報を得た工員、今では金融ブローカーとなっていた中国人から、殺しの片棒を引き受けさせられていた。 その実行の日の夕方、一彰は敦子と十三で会った。さすがに女を抱く気は失せ川河川敷に出た。真っ黒な草原と川面を渡る風に包まれながら、敦子を抱いた。『目と鼻にかかる鉄橋を、阪急電車が光の帯になって通っていった。その電車が吸い込まれていく対岸には漆黒の町並みが横たわり、その向こうには梅田ターミナルの明かりがぼんやりと後光のようにかかっていた。その後光の辺りに「ナイトゲート」があり、今夜そこで人が死ぬ』
    突然22歳の一彰は35歳の敦子に恋しているのだと感じた。しかし、所詮はこれから人殺しに加担するというときにやってきた気分だった。
     計画は漏れていたが、殺し屋の機転で殺しは実行された。一彰が、事情聴取のため警察から解放された後で訪ねた時、その殺し屋は「惚れたって言えよ」と流暢な北京語で一彰にいってからかった。「ああ、惚れた、惚れたから、名前ぐらい教えろ」と一彰は答えた。その美貌の殺し屋は、食卓に口紅で『李歐』と書いた。平凡なアルバイト学生だった一彰は、その一言で殺し屋李歐と友達になった。共に22歳。二人が夢みたのは大陸。夢を叶えるために密輸の拳銃を盗みだした李歐と一彰は、そのために、米国、中国の諜報関係、日本の公安警察、国際シンジケート、広域暴力団から狙われるようになるのだった……。
     高村薫の作品には男の友情がよく描かれている。それも、どう考えてもべたべたした関係で描かれている。二人が夢みた大陸で二人は出会うのだが、どちらも独身。互いに妻を殺さた結果だが。男の友情の間に女は不要という感じに受け取れてしかたない。

  • 「わが手に拳銃を」を全面改稿改題

  • う〜〜ん、面白かったぁ!!ある意味、究極の同性愛。
    李歐の出番がもうちょっと欲しいです。

  • 李歐が出てないところは少し退屈で、読みづらさも倍増でした。でも、内容や台詞は良かったと思います。

  • この本を一概に「男たちの友情を描いた小説」や「同性愛を描いた小説」とは言えないと思う。
    一彰と李歐が互いに抱くものは友情を超越した、愛までをも超えたなにかのように思えた。
    数ある女性を抱き、妻子も持った一彰だが、その一彰が本当に、魂がふるえる程愛したのは李歐ただ一人だけだった。
    友人であり、恋人であり、家族であり、魂の仲間である、それが李歐なのだ。


    読後は幸福に満たされて、涙が止まらなかった。
    本当に良い作品。

  • 再読。
    何度読んでも重厚な深さを持っている。
    李歐と一彰の運命を何と呼べばいいのだろう。

  • スケールが壮大。

  • 家にあったのであらすじも読まず勝手に現実的で固いお話かと思っていたが、割とファンタジーだった。個人的に文体が苦手だったが、クライマックス直前までドキドキさせてくれる面白さはあると思う。女性の登場人物の扱い方が男性的だと思った。

  • 一気読み。
    何なのか全くわからないまま怒涛のように読み終わった。
    暴風雨に巻き込まれたかのような感覚。
    衝撃的だったなと今でも思う。

  • 中学生の頃,初めて読んで以来ずっと李歐に心を奪われている.

    李歐は大陸の風

    当時紛うことなき大人だと思っていた一彰が,実はたかだか大学四年生だったことに驚いた.読む度に新しい発見があって,読む度に李歐に心を奪われる.またあと何度でも読み返すんだろうという確信があって,こういう幸福を与えてくれる一冊に出会えたことに感謝するほど.

    一体,生身の人間からどうしてこんなに完璧なキャラクターが生まれたのか,作家さん自身も驚いているんじゃないかと思ってしまう.
    高村薫さんの文体も大好き.堅いのに繊細,簡素なのに,叙情的.理想の文章です.
    舞台である戦後日本とアジア圏の関わりも奥深い.

    感想を書くことも憚られる.
    我が心の一冊です.

  • 高村さんの作品の中でだんとつに好き。友情とも、恋愛ともちがう主人公二人の人生の重なり方がべたべたしているんでもなく、しかしクールすぎずに描かれていて最後までそれで引っ張られた。最後のシーンは涙しながら読んだ。よかったね、と。

  • 「惚れたって言えよ」

    ──そして、美貌の殺し屋の名前を知った。
    李歐。
    豪放磊落、大胆不敵、冷酷無比、しかし春の太陽のようにおおらかな李歐。
    大陸の匂いのする男。

    平凡な学生だった一彰はその日、歓喜の入り口に立った。
    李歐という歓喜、暴力や欲望の歓喜、友達という歓喜、常軌を逸していく歓喜。
    つかの間の出会いと長い別れ。
    互いの生死も知らぬまま過ぎる歳月は李歐を大陸への夢の化身と変え、一彰の魂を激しく揺さぶり導いて行く──。

    『わが手に拳銃を』を下敷きに、新たに書き下ろされた文庫本。

  • 著者旧作「わが手に拳銃を(1992 年)」を下敷きに、
    1999 年にあらたに書き下ろされた作品。
    前作より幅が拡がり、
    深みを増した良い作品に仕上がっている。
    高村薫女史の筆力には、ただただ圧倒される。
    末永く、良作品を提供し続けて頂きたい。

  • 極上の男に魅せられた一人の男の半生です。
    (ボーイズラブではないと思う。トーマの心臓みたいな感じ。あ、それがボーイズラブなのかな?)

    実は高村薫の著作は初めて。圧倒的な筆力と構成力にただただ唖然とするのみです…。ラストシーンの美しいこと美しいこと。電車の中で鳥肌が立ちました。未だにありありと情景が浮かびます。 中国の広大な土地と、その中で際立つ男の姿。

    李歐が今の上海に代表される中国の発展ぶりを見たらどう思うだろう?

    満開の桜が見たくなる小説。

  • 勢い良く桜の花びらの香りのする風が吹き荒れて

    そして香りだけ残して

    通りさったような清々しい本でした♪

  •  男同士のピカレスクロマン。
     さすが高村薫!と叫びたくなるくらい、実に面白い。

     けれど読み終えてみると「主人公」があまりにも変わらないことに、違和感が残る。
     しかしながら面白いので、それ故に変わらなさが目立つのかもしれない。

  • 李歐との結び付きがよりドラマティックに。これはこれで

  • 初めて読んだ高村先生の作品。
    この作品と出会わせてくれた学校の図書館、司書様。
    ありがとうございました。

  • これは…いいのか?と思うくらい、濃い感じ。
    同性だけど、ここまで思い切れば、
    それもいいのかも?

  • 美しい男を書かせたら、高村薫は素晴らしい。

  • この本がきっかけで中国語に興味をもったといっても過言ではない。李歐の美しい北京語が理解したかったというミーハーさ。
    ラストシーンが好きです。

  • タイトルにわけもなく惹かれて、
    ふっと手に取った一冊。

    少し前の中国の政治がらみのこととか、
    拳銃とか、漢詩とか、
    詳しくないことがたくさん出てくるのだけど、
    ぐんぐん引き込まれて、一気に読んでしまった。

    よく知った大阪のローカルな地名がたくさん出てきて、
    妙に嬉しくなったりもして。

    無気力感、焦燥感、泥濘感、悲哀、
    負の感情が渦巻いてるのに、
    なんだかものすごく美しさを感じた。

    絶妙な桜の演出効果のせいか、
    根底に横たわる純愛っぷりのせいか。

    李歐。

    人の名前なのに、
    なんだか不思議な呪文みたい。

    ☆☆☆☆ ホシ4つ

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