李歐 (講談社文庫)

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著者 : 高村薫
  • 講談社 (1999年2月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062630115

李歐 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • あぁ、もう胸がいっぱい。

    長い年月、小さな約束を胸に激動の時代を生きた2人の男。
    一彰と李歐、どちらも深く心情を掘り下げている訳ではないのに、
    一彰の歩む人生からはまだ見ぬ大陸への渇望が透けて見えてくるし、
    李歐が残した足跡からは、どこまでも広がる壮大な夢が広がります。

    お互いが磁石のように引き寄せあうような、
    それでいて常に大きな壁が立ちはだかっているような何とも言えぬもどかしさ。

    広大な土地を桜吹雪と共に爽やかな風が吹き抜けていくような、
    清々しい余韻を残してくれました。

    大好きな作品になりました!

  • 本作の主人公は、大阪の大学に籍を置きながら、幼少時に彼が過ごした町の工場で働いていた外国人を訪ねている吉田一彰という青年です。そんなある日、彼が働いている「ナイトゲート」というクラブで殺人事件がおこなわれるという計画があることを聞かされ、しかも一彰がターゲットとなっている陳功という男に電話を取り次ぐ役を引き受けることになります。この事件がきっかけとなって、彼が幼少時に過ごした西淀川の姫里にある旋盤工場の人脈が、東アジアにまたがる闇の世界の一端につながっていたことが少しずつ明らかになっていきます。

    一彰は、陳功を殺した李歐という若者に出会います。意気投合した2人は、住之江区平林の倉庫から、笹倉という男の隠し持っていた拳銃を盗み出すという計画を立てます。見事計画を成功させた彼らは再会を約束して別れ、李歐はシンガポールへと旅立っていきます。他方一彰は、盗み出した拳銃を交渉の材料として姫里の工場の再建資金を手にして、工場の再建に努めます。工場長の娘の咲子と結婚して世帯を持つ一方で、彼は李歐との約束をけっして忘れることなく、もう一度彼と会うことを願います。しかし、ひとたび一彰が片脚を突っ込むことになった闇の世界は、簡単に彼がそこから抜け出すことを許してくれません。

    月日は流れ、何の因縁か、笹倉と再会することになった一彰は、李歐の現在について教えられた彼は、李歐のもとへ行きたいと願いますが、妻の咲子と息子の耕太を置いて日本を去ることは難しく、2人が約束を実現するにはさらなる年月が必要でした。

    大阪の下町とはまた違う湾岸地域独特の雰囲気と、在日コリアンや中国系マフィアの複雑な人脈関係を背景に、主人公の30年に渡る半生を描いたアンチ・ビルドゥングスロマン小説です。読んでいる間、機械の錆びたような空気が胸に這い上がってくるように感じられ、そのハードボイルドな魅力に一気に引き込まれました。

  • 『李歐に会いたくて読み進めていた』

    この本を貸した友人が言っていた通り、一彰の目を借りて李歐に魅了されてゆく
    (しかも、その目を貸してくれる一彰自体が魅了的な男なのだ)

    読後の爽快感、多幸感!満開の桜が目に浮かぶ
    一彰たちに幸あらんことを

  • 高村薫の小説は描写が細かくて読むのにエネルギーを使うため
    敬遠していたところがあるのだけど、
    この本は比較的読みやすくて入りやすかった。

    中国大陸と日本を股にかけるスケールの大きさと
    ある種の妖艶さや耽美感の雰囲気、
    機械加工や拳銃描写の細かさ、
    登場人物の魅力といろんな要素がからみ合った物語。

    物語に入り込んでいるうちはそれほど気にならないが
    冷静に振り返ると、物語の根幹をなす
    一彰と李歐の関係性について、読者を納得させるだけの
    材料が提示されていないのは致命的な難点だと思う。

  • もう、何度読み返してもおもしろい。『わが手に拳銃を』の全面改稿ですが、どちらも読み応えがありました。さすが高村先生です!

  • すべてが美しいです
    李歐の「櫻花(インファ)」という言葉にゾクリとする
    「わが手に拳銃を」を下敷きにして登場人物まったく同じにあらたに書き下ろされているが、「わが手に…」がゴツゴツした金属の塊で「李歐」はその塊を丁寧に加工して美しく磨きあげられたようなもの。
    壮大で美しい、桜の描写はなんと言えばいいのか、読んでいて目の前に息をのむほど美しい桜があるかのよう、李歐の強さと聡明さと美しさそのもの。
    読後の余韻がたまりません。
    できれば「わが手に拳銃を」を読んでから読んでほしい。

  • 壮大な物語。
    読んですぐには言葉には表せないほど、読後の余韻がすさまじい。人一人分の人生を生き抜いたみたいだ笑。

  • 鮮やかな残忍さと透徹を備えた聡明で美しい殺し屋と、幼い頃から虚無感を抱き続けたクールな男の、長く壮大な物語でした。

    あまりにも濃い物語と美しい情景に余韻がしばらく消えそうにありません。特に本書の桜の描写は見ものです。なんといって言葉にすればいいのか。

    1960年以降の日本が舞台ながら、中国の広大な大地、マニラの山林、シカゴの証券取引所など殺し屋が駆け巡った土地は世界中におよび、スケールの大きさが伺えます。
    そして、本書はなんといっても裏社会に魅入られた男が主人公なだけあって、普段私の知る世界とは全くの別物で、夢中で読んでふと現実に戻るとそのギャップに背筋がぞくっとするほどでした。
    こんな世界、私は知らない。

    随分とハードボイルドな作品で色気もあり、男性二人のやり取りには本当にぞくぞくさせられました。
    「運命」と言うと陳腐な感じがしてしまうし、彼ら二人の繋がりは「愛」とも「友情」とも単純に呼べるものではないと思うのだけど、一生に一度の鮮烈な出会いだったんですよね。
    生きるか死ぬかの世界を生き抜いた殺し屋にしても、母に捨てられ醒め切ったような男にしても、確かに残っていた純な部分が互いに呼応したんでしょうか。うまく言えませんが、言葉で説明しようとすること自体が、無粋なのかもしれませんね。

    冷徹なこの世界ではたくさんの人が殺されますが、田丸刑事にせよ、ギャングたちにせよ、一定の矜持を持っていると感じられる人も数多くいて、そこが格好いい。
    私には想像もつかないような、政治的な駆け引きなんていうものが存在する世界なんですよね。思想の違いで人が死ぬ、なんて平和な世界に生きているとピンときませんが、この時代の日本、それも中国との距離が近い彼らにとっては肌に感じる程身近なものだったんでしょうね。

    機械工場や拳銃、薬物と、広大な土地に咲く何千本もの桜、耕された農作物との対比がまた印象的で、なんとも美しい余韻を心に残す1冊でした。
    しばらくは思い返して余韻に浸ること必須です。

  • MBA取得を優先させる為に読書を完全自粛していた20か月。やっと本がまた読める!この日をどんなに待ちわびた事か。

    というわけで、読書復帰記念はやはりこの作家から。

    はー良い作品だった。相変わらず小説の世界にどっぷり浸からせてくれる。重苦しい雰囲気をとことん味わわせてくれる。

    機械や拳銃の説明が細か過ぎるとか執拗過ぎるとか、そういうのは高村薫の小説では許せる。なぜ一彰がそんなに中国に憧れを抱いていたのか。一彰はともかく、なぜ李謳も一彰に唯一無二の特別な感情を抱いたのかその辺が分からなかった。でもそんな事はこの小説では気にならなくなる。人物の心理描写、大阪の街の空気が伝わる風景描写のお陰で、「そもそも」の所が曖昧であっても充分にリアリティに溢れる小説になっているから。

    にしても、最後は高村作品にしては異様に爽快なハッピーエンドでびっくりした。いえ、そうじゃないのを期待していたわけではないんですが笑。たまにはこういうのもいいよね。

    個人的に最近ちょっと特別な思い入れがある十三・北新地・福島・・そんな地名が出てきて、それも良かったな。

    良い小説の読後の「はー、読み終わっちゃった・・」という感覚を味わえました。この読み応え、まさに求めていたもの。ベースになった「我が手に拳銃を」もいつか読んでみたい。

  •  無気力な日々を過ごす大学生の吉田一彰はマフィアの犯罪計画に荷担する事に。そして当日、事件現場に現れた李歐と名のる殺し屋との出会いが一彰の運命を変えていく。

     この二人の関係性って何なんだろう? 友情でもない気がするし、いろんな方が言っているように男同士の愛の話という気もしますが、それも微妙に違う気もするし。でも確かに言えることは、この二人の関係性がとにかく美しいということでしょう!

     李歐の存在感がとにかく大きい。読んでみると、彼の登場場面はさほど多くないのですが、それでも李歐と一彰が初めて言葉を交わす場面の扇情的な雰囲気は忘れがたいです。その瞬間、読者である男の自分も李歐の魅力からめ捕られたそんな気がしました。

     一彰の人生はかなり波乱万丈。小さい頃の母の蒸発、そしてその後も裏組織が絡む事件になぜか巻き込まれ、平凡な幸せがとにかく遠く感じるような、そんな彼の人生が作中では語られます。

     彼の濃密な人生、裏に控える強大な組織の闇、そして無気力ながらも、どこかで破壊願望や破滅願望を持っているように見える一彰の心理、そうしたものが高村さんの重厚な文体で語られながらも、最後に待ち受けるのは圧倒的なまでに美しい桜景色と大陸です。今までの様々な闇をすべて切り裂くような、その描写はこの世の桃源郷が目の前に立ち現れたかのようです。

     BLっぽい、という話を聞いていて、また背表紙の内容紹介も若干それを匂わせているものだったので、すこし読むのをためらっていた作品だったのですが、読んで良かった、と読み終えて心から思いました。

  • 惚れたって言えよ

  • 李歐が素敵すぎて、お気に入りの一冊です。
    でも分厚くてなかなか友達に勧められない。

    いつ出るのかハラハラしながら読んでたら、工場のところで号泣してしまい、電車の中だったので困りました。桜が切ない。
    実は主人公は幼少期から巻き込まれていたことに驚きながら、ドンドン進んでく感じが好きです。
    ところどころでてくる、銃の構造には精密すぎて真面目すぎて何のウィキペディアを読んでるんだと思って飛ばしたこともあったのが申し訳ないけど…。
    あの時あぁだったら、こうだったらが複雑に噛み違いながら歯車みたいになっていて読み応えありすぎます。

  • 久しぶりのザ・エンターテイメント小説にすっかりハマりました。
    高村薫さんの作品は『リヴィエラを撃て』以来。10年前くらいに読んだのか。覚えてないくらいだけど、面白かったのは覚えていて、だけど最初の取っつきにくさが邪魔をして選ばずにいました。ネットで『李歐』の評判を見て買っておいたのを、風邪で寝ているのがもったいなくて朦朧としながら読んでいた。

    主人公は吉田一彰という母親が中国マフィアと駆け落ちしてしまったという大学生。その生い立ちのため、すべてにおいて冷めています。ところが、アルバイト先のクラブで李歐という美貌の殺し屋と出会い、生に執着し始めるという。陳腐な言葉でいうと、互いの孤独を嗅ぎ取った出会いというのでしょうか。友情とも愛情とも意識させない絶妙な描写で、ぐんぐん読ませてしまいます。
    そこに、中国マフィアの陰謀や日本のマル暴さんの企み、最後にはアメリカ世界経済が絡み、そりゃあもう残酷かつハラハラの世界。
    冷徹で華麗な李歐はもちろんかっこいいのですが、一彰が幸せになってほしくて、幼いときにかわいがってくれたおじさんの鉄工場を継いで立て直してくれるところや所帯を持つところは、李歐と結ばれない哀しさを感じつつも嬉しかった。ラストの桜のシーンは圧巻で、ロマンに溢れています。
    ちょくちょくレビューで書かれていますが、一彰と李歐の関係が『BANANA FISH』のアッシュと英二の関係みたいなので、『BANANA FISH』も読み直したくなりました。(どちらも映画化しないでほしいような、してほしいような作品ですね。)
    あと、李歐が舞踏するシーンは『さらば我が愛、覇王別姫』のイメージもあるかな。李歐は背の高い綾野剛のイメージです。一彰はとりあえず松ケンで。

    『我が手に拳銃を』という作品を改訂したそうで、拳銃の描写がめちゃくちゃ克明です。申し訳ないが苦手分野のため、そのへんはまったく想像せずに読み飛ばしてしまいました。
    いずれ『我が手に〜』も読もうと思いましたが、いつになるやら。。

  • あっと言う間に読める。いい。

  • 『わが手に拳銃を』の文庫版といっても、全く別物。
    大きい設定と登場人物をそのままにまったく違う話を書いてしまうので、本屋にしてみれば救世主、読者にしてみればお財布の敵。
    肉体関係を伴わない同性愛関係のような高村薫ワールドのなかでも、かなり濃厚な方。
    今から考えればブロマンスの走りだよなぁ。
    李歐とわが手はおおまかにいうと、二人いい男がいて、なんだか強烈に惹かれあって、でもすれ違ってなかなか一緒になれなくて、最後は二人にとってはハッピーエンドというところが共通しています。
    二人の仲を裂く(本人たちはそんな気はないと思う)女や男(…)が出てきたりして、それも二人の魂の結びつきを強調する道具的な感じのうえ、ふたりのうちひとりは流されっぱなしでもう一人は俺たちの間は何人たりとも邪魔させないとばかりに片づけにかかるメンタルの持ち主なので、世界平和のためにこの二人はさっさとどっかへ駆け落ちするべきとわが手より強く思ったような。

    そういう意味でも面白い小説ですが、かなりスピード感にあふれており、ピカレスクとしても楽しめます。
    他の作品はそうでもないけれど、これは結構何回も読み直してしまうくらい単純に面白い。

  • 李歐も一彰も暗い裏の社会を生きていて、びっくりするほど冷徹で大胆不敵な部分があったりするが、二人ともなんて爽やかで情熱的なんだろう。怖い世界を描いているのに、どんどん引き込まれていき、読んだ後はなんだか心温まるのはなぜだろう。

  • 最高。李歐と一彰のやり取りが醸し出す色気や絶妙な距離感にグッときた。特に、李歐が口紅を点すシーンが扇情的でなんとも言えない気持ちにさせられたし、日本からの脱出のシーンは思わず震えた。一彰のニヒルな性格には最初抵抗を覚えたけど、それもまたいい味を出していた。若いに越したことはないと思っていたけれど、年月を重ねて磨かれていく李歐が本当に素敵だったので、価値観が覆された一冊だった。是非近いうち、わが手に拳銃を、も読みたい。

  • 文庫版しか存在しない、高村さんにしては珍しい小説(『我が手に拳銃を』を別作品とすればですが)。

    真っ暗な主人公の世界の中に一筋の光、その先に李欧が。
    本当に魅力的な作品ですが、残念なことが1つ。
    作者が「関西淡路大地震以降、考えや書くものが変わった」としていること。地震以前に執筆された『李欧』が否定されているようで。

  • ハードでロマンティック

  • 人の一生がこんなにも面白いと感じたのはいつぶりか。

  • 華やかな香りがむせ返るような、主人公が際立つ作品。美しいです。

  • 壮大な恋の物語。
    これ、ラブストーリーですよね??
    殺し屋に一目惚れした主人公が万難を排して恋を成就する話し。
    晴子の後に読んだので、ピカレスクな内容にも関わらず、表紙の桜色のように「キラキラ」かつ「フワフワ」した印象を受けた。

    広大な大陸の情景と、大阪の繁華街&裏通りの饐えた臭いがリアルに思い出される、著者の描写は秀逸だと思います。
    拳銃の構造に魅かれる主人公の心理も、ものすごく理解できたり。殺傷する道具としてではなく、拳銃の造形と構造に魅かれる。

    原口組長がお気に入りかな。

  • なんというか平凡な主人公にずば抜けて魅力的な相棒?がいる感じ。それぞれに違う社会生活を営んでいるのにその世界は時折交差する。不思議な感覚で読み進むのが楽しかった。
    エキセントリックかつ、地味~な生活臭さと常に相反するものなのに魂が寄り添っている。
    二人のキャラクターがそれぞれに素敵。
    退屈しない一冊。たまに妙にドキドキさせられて『まったくもお』とひとりごとが出てしまう本だった。

  • 久々に面白かった
    高村薫

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