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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062632003

感想・レビュー・書評

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  • #3254ー3ー77

  • 「松本清張他」となっているが、1992年に「現代」誌上で行われた7件の鼎談のうちの1件の鼎談者の1人が清張というだけ。テーマごとに違う人たちで鼎談している。殆ど、研究者2人に作家という組み合わせで、概ね作家(当該テーマに関した著作がある)が取り回し役になってうまくまわっている。「短詩形文学はなぜ日本文学の中心なのか」だけは、作家3人の鼎談で、一番焦点がぼやけて、てきとーなことばっかいってる感じ。「大化の改新は本当にあったのか」では、清張が張り合って、素人だから自分の説を学者が相手にしないのではないか、とか言っている。
    「武家政権はなぜ天皇を立て続けたのか」は、今に続く権力の2重構造(というか、権力と権威の分離)についての話で興味深い。永井路子が、平安初期にすでにそれは始まっていたという“平安朝天皇機関説”を唱えて、藤原氏との関係を考えるとそれはとっても納得できる。首相になるよりもソーリ・メーカのほうが権力がありそう、みたいな現代の政党のあり方にも通じるのではないかと思わせる。ただ、権力の2重化は日本固有ではなく、現代の普通の(独裁とかじゃない)国家ではむしろ一般的なので、日本史の謎としては、その一方の極としてなぜ天皇家を一貫して保存し続けたのか、ということにあるのだろう。なんか気分としてはわかるが。新たに極を立てるには名目が必要だが、前からずっと、だと、考えなくていいもんね。
    「薩長はなぜ徳川幕府を倒せたか」では、家茂に対しては幕臣・市民の敬愛が強かったのに対し、慶喜は一橋家から来たため一体感が薄かったのでは、という話が出てきて、へーそーなのかと思ったが、家茂だって紀州家から来てるわけだし、慶喜には敬愛の念を起こさせない何かがあった(あるいは、敬愛の念を起こさせるものがなかった)ってことで、「慶喜にとって不幸だった」というより本人の所為じゃないのかね。何しろ自兵捨てて大阪城から逃げた人ですから(そのことに全然触れていないのは不審)。
    「太平洋戦争はなぜ始まったか」では、必要ではなく、バランスというかメンツのために、陸海両軍に同額の予算を配分していたという話が出てきて、今の省庁縦割りでメリハリを利かせられない予算編成と同じ問題を感じた。
    「高度成長はなぜ可能だったか」は、まだバブルがはじけたばかりで、その後の20年に及ぶ低迷を知らないからだと思うが、なんかとっても楽観的なのが物悲しい。実際はそんなに遅れてるわけではないのに後進国意識をもって勉強し続けたことが高度成長に寄与した、という話が出てきて、「レベルは低いのに高いつもりでいる国も多いなかで、後進国意識を持ち続けている。」ことを評価しているが、なんか今はもう「レベルは低いのに高いつもりでいる国」になってしまったような・・・。ジャパン・アズ・ナンバーワンとか言われているうちに、後進国意識が薄れてしまって、実は遅れてきてるのに、それに気づかずいい気になってるうちにこんなになっちゃっていう気が。やっぱ、ほめ殺しってあるんですね、ってか。

  • 私は年齢的に、中学校程度の知識しかないのですが、鼎談形式なので分かりやすい。6つの鼎談には小説家が必ず入っています。それに惹かれて読み始め、すっかりハマってしまいました。私にとっては、特に丸谷才一さん・大岡信さん・遠藤周作さん・井上ひさしさん、この方々が学者先生と存分に議論を戦わせていたのが面白かった。話をまとめるのが巧い人っていうのもいますね。鼎談中の雰囲気を想像しながら読むのも、また楽しみの一つでした。「織田、豊臣、徳川がなぜ天下をとれたのか」とか、テーマ的にも気になる謎ばかりです。

      以上は読書メーターさんに投稿した感想ですが、本当に分かり易く、面白い。是非手元に置いておきたい本ですね。
    年齢的に中学程度の知識……と申しましたが、現在(10年度)中3なのです。ごく普通の、学習指導要領で定められている程度の授業しか受けていないと思います。
    そんな子供でも分かり易い、というのをしつこく宣伝しておきたいと思います。

    ……宣伝ばかりになるのですが、関係者ではないので、飽くまでも自分で面白いと思って、それを多くの方に知ってもらいたいという純粋な欲求であるということを明記しておきます。
     それでは、目次から。なお、著者については巻末に詳細があります。

    一、大化の改新は本当にあったのか
     松本清張(作家)
     門脇禎二(京都橘女子大学学長)
     佐原真(国立歴史民俗博物館副館長)
    ニ、短詩形文学はなぜ日本文学の中心なのか
     丸谷才一(作家)
     大岡信(詩人)
     山崎正和(劇作家)
    三、武家政権はなぜ天皇を立て続けたのか
     永井路子(作家)
     今谷明(横浜市立大学教授)
     五味文彦(東京大学教授)
    四、織田、豊臣、徳川がなぜ天下をとれたのか
     遠藤周作(作家)
     朝尾直弘(京都大学名誉教授)
     山室恭子(東京工業大学助教授)
    五、薩長はなぜ徳川幕府を倒せたか
     中村真一郎(作家)
     石井寛治(東京大学教授)
     井上勲(学習院大学教授)
    六、太平洋戦争はなぜ始まったか
     井上ひさし(作家)
     森本忠夫(評論家)
     大江志乃夫(茨城大学名誉教授)
    七、高度成長はなぜ可能だったか
     伊東光晴(京都大学名誉教授)
     香西泰(日本経済研究センター理事長)
     森谷正規(技術評論家)

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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