翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)

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著者 : 麻耶雄嵩
  • 講談社 (1996年7月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062632973

翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 2018年一冊目はこの本から。

    実はかなり昔に読んだんですけどその時ただただ漫然と読んでしまってほとんど記憶にない。改めて読み直しました。
    京都郊外に建つ、まるでヨーロッパの古城のような洋館「蒼鴉城」。
    その主である今鏡伊都から名探偵の木更津裕也に依頼が届き、木更津は相方の香月実朝を伴って訪れる。
    しかし彼らが到着した時には既に依頼主が殺されていた。
    依頼主の寝室には首なし遺体。首が館内から見つかるものの、何と別人の首だった。
    ほどなくして別棟から別人の胴体と依頼主の首が見つかる。
    謎が解けないでいるうちに、館の住民たちが次々と奇妙な殺され方をしていく…。

    クイーンの国名シリーズは一通り読んでたんだけど、あまりにも怒涛のように人が死ぬんで、見立てになっていることを見逃してしまいましたわ。
    タイトルにもいる「メルカトル鮎」が後半になってから登場してあっさり死ぬのには驚いた。
    ファンサイトでは「この時死んだメルは、この後に刊行されたメルと同じ人物なのか」的な論争があるらしいですが、確かに銘探偵ぶりをほとんど発揮しないまま死んでいくという……。私も香月さんがメルのあとを引き継ぐのかと思ってました。

    密室で首無し遺体の胴体と首が入れ替わっていた件で、途中に木更津が披露した「首をはねた瞬間別の胴体にくっついて蘇生した」という推理は泡吹くかと思いました。あとでしっかり本当の推理がされていましたが…。でもこのとんでもない推理が無いと面白くないかも。
    文庫版で結城信孝さんが書いてる「新本格の歴史」や「新本格に求められる要素」の解説もとても面白かったです。やっぱ洋館とか奇妙な館かぁ…。

  • 半分以上読んでもメルが登場しないって、どういうことなの?
    生首が登場するし、ダークな雰囲気です。
    ジェットコースターのような展開とオチでした。

    はじめの方はカタカナが多くて、ポカーンとしていました。
    ヨーロッパ史は苦手なので。
    ハナから伏線はあったのね。

    双子のキャラクターが好きだったので、殺されて残念でした。
    それにしても、90歳の婆さんが一人であんなことが出来るのかしら。

    サブタイトルが「メルカトル鮎最後の事件」とはいえ、メル呆気ないです。
    正しく疾風のように現れて、疾風のように去っていったわ。

    ドンデン返しにはビックリですよ。
    道理でエピローグが長い訳だわ。

    香月は狡賢いというか、頭が良かったのね。
    木更津が哀れだわ。
    山にこもって苦心しながら考えた推理が間違っていたとは。
    木更津には、当初引きましたが、ラストがあれではあんまりです。

    香月にオイシイところを全部持っていかれた感があります。
    いつ、そこまで気付いたのかしら。
    だから香月は「ワトソン」ではないのね。
    意外な犯人よりも意外な探偵の方がインパクト大でした。

    木更津が考えた「首を切断しても少しの間は生きていた」という推理は実際に可能なのかね。
    首が切れているならば、走れば取れそうじゃない?
    首を押さえながら走ったとか?
    それではコメディだよ。

  • 麻耶雄嵩作品を読めるかどうかのリトマス紙みたいな作品。これを読んだ後他のメルシリーズを読んでから再読すると、なんともいえない気持ちになる。
    にしてもデビュー作がこれって本当に麻耶は何考えてるんだか分からない。好き。

  • 〇 概要
     京都近郊に建つ,ヨーロッパ中世の古城と見紛うばかりの館,「蒼鴉城」。その主である今鏡伊都から名探偵「木更津裕也」が招待を受けたことから物語が始まる。木更津裕也とワトソン役の香月実朝が蒼鴉城に着いたとき,惨劇は既に始まっていた。
     木更津裕也だけでなく,銘探偵「メルカトル鮎」まで登場し,推理を拾う。数々の「本格ミステリ」のコードを装飾として使われる。いくつも披露される推理。そしてそれらの推理を覆す衝撃の真相
     全ての本格ミステリマニアに捧げたい,ミステリのそしてアンチミステリの傑作(バカミス?)

    〇 総合評価 ★★★★★
     本格ミステリのコードをてんこ盛りに詰め込んだ作品。こういう作品が好きな人にはたまらない。怪しげな洋館が舞台。首なし死体,密室殺人事件から始まって,連続殺人事件に発展。館には警察がいるのに,連続殺人は続き,4人目の死体が出たところで最初の推理。死んだと思っている人が生きていて犯人だと推理したら,その人間も首を切られていることが分かって探偵は山籠もりへ。
     そこから「メルカトル鮎」というう探偵が登場し,こちらが真打ちかと思いきや更に連続殺人が続き,7人目の死体が出たところでメルカトル鮎の推理。最初の探偵役が犯人という推理がされるというトンデモ展開
     さすがにその推理は間違いで…更に死体が続出。メルカトル鮎まで死んでしまう。
     名探偵木更津裕也の2つめの推理は山籠もりの効果もあって,更にトンデモ推理。見立てがエラリィ・クイーンの国名シリーズの見立てで,密室殺人のトリックは他人の首がくっついて再生した死体が部屋に鍵を掛けてから死んでしまったというトンデモ推理。「僕は信じます。その何十億分の1の奇蹟が起こったのだと」とかめちゃくちゃ。
     しかし,真相は別。ワトソン役だったはずの香月実朝が明かす真相は,真犯人がアナスタシア皇女で,家政婦のひさとして物語に登場し,娘の椎月を自分の身代わりとして殺していたというぶっとんだオチ
     まともに推理してこの結論に至ることはできないわけで,そういった意味では本格ミステリのコードを多用した変格ミステリ…といかアンチミステリというか。バカミスといってもいいかもしれない。
     で,面白くないのかというと,これが抜群に面白い。雰囲気も文体も好みというか…楽しんで読めた作品。★5を付けたい。
     
    〇 サプライズ ★★★★★
     木更津裕也が2つの推理を披露し,メルカトル鮎も推理を披露する。しかし,真相はそのどれでもなく,ワトソン役だと思われた香月実朝が衝撃の事実を明かす。
     木更津の最初の推理=「実は多侍摩が生きていて犯人」
    こそサプライズはそれほどでもない。しかし,メルカトル鮎の推理「犯人は木更津裕也」はサプライズが十分。木更津の2番目の推理=「見立てはエラリィ・クイーンの国名シリーズ」といった部分も驚ける。何より,エピローグで明かされる衝撃の事実,真犯人は絹江で実はアナスタシア皇女というのは…。サプライズは十分だろう。

    〇 熱中度 ★★★★☆
     作中で殺人がバンバン起こるし,中だるみはない。デビュー作ということもあって,そのとき持ってたアイデアを惜しみなく注いだという印象。これをいったいどうやって終わらせるつもりだ?と思ってどんどん読み進めることができた。小説としての面白さというより,ミステリのアイデア,プロットの面白さというイメージ

    〇 インパクト ★★★★★
     インパクトは十分。4つもの推理・真相があるだけでもインパクト抜群だが,見立て=エラリィ・クイーンの国名シリーズとか,2つ目の木更津裕也の推理による密室トリック=切断された他人の首がくっつき,死者が再生して密室を作ったというところがすごすぎる。最後に名探偵の推理をワトソン役が否定し,真相に至るという構成もインパクトがある。推理を外した名探偵が山籠もりしたり,インパクト抜群の探偵役「メルカトル鮎」が登場して,すぐ殺害されたり…総じて,インパクトは抜群

    〇 読後感 ★★☆☆☆
     それまで単なるワトソン役だったと思っていた香月実朝が黒幕的立ち位置だったことが分かるエピローグはややビター。こいつが夕顔と結ばれ今鏡の遺産まで相続するという終わり方はやや感じが悪い。ちょっと読後感がよくないという感じか。

    〇 キャラクター ★★★☆☆
     木更津裕也,メルカトル鮎という名探偵はキャラクターとしては個性的。しかし,そのほかの登場人物の描写はうすっぺらい。これだけ作り物めいた話で,血の通った登場人物を描くのは困難だろう。

    〇 希少価値 ★★★★☆
     文庫版は絶版の様子だが,電子書籍があるので読めることは読める。持っているのは文庫版の1999年の第5刷版。大切に保管しときたい。

    〇 メモ
    〇 被害者
    今鏡伊都
     首なしで,甲冑を着ており,足が切断されている。
    今鏡有馬
     地獄の門という部屋(密室)で体が発見。首は伊都のもの。死体の上にはオレンジの種がばらまかれる。
    今鏡畝傍
     首を切断される。顔に白粉を塗られた姿で発見される。
    今鏡静馬
     浴室で襲われ死体で発見される(全裸)。
    今鏡万里絵,今鏡加奈絵
     二人ともボートの上で首を切られた死体で発見
    家政婦の死体→今鏡椎月
     首を切断される。アメリカ/死と乙女のレコードとともに発見
    メルカトル鮎→龍樹頼家(椎月の息子)
     首を切断される(トレードマークのシルクハットをかぶった状態
    今鏡菅彦
     首を切られ,体は十字架に張り付けられた状態
    〇 推理
    〇 木更津裕也の最初の推理 
     今鏡伊都~今鏡静馬までの4人の殺害の段階で推理
     犯人→今鏡多侍摩
     今鏡有馬殺人の際の密室
     →多侍摩が隠し持っていた合鍵で密室を作ったと推理
     今鏡多侍摩が,首を切られた状態の死体で発見され,推理が誤っていたことが分かる。この後,木更津裕也は一度山に籠る。
    〇 メルカトル鮎の推理
     今鏡伊都~今鏡椎月までの7人の殺害の段階で推理
     犯人→木更津裕也,今鏡菅彦
     なぜ密室を作ったか(首切りなどほかの特殊な事情も同じ)
     →木更津裕也が捜査に加わるため(犯人のための環境設定)
     どうやって密室を作ったか
     →木更津裕也の共犯者が外から鍵を掛け,木更津裕也が死体発見の際に部屋の中で鍵を発見する。
     今鏡畝傍の顔に白粉が塗られていた理由
     →畝傍の首を一階から二階に投げたため(その跡を隠すため)
     木更津裕也がメドヴェージェフの末裔だと推理している。
    〇 木更津裕也の2つめの推理
     見立て
      伊都→鉄靴をはいていた→靴
      有馬→オレンジの種→オレンジ
      静馬→浴室で殺害→全裸
      畝傍→白粉
      多侍摩→棺の中で発見→棺
      加奈絵,万里絵→双児
      椎月→レコード→アメリカ
      頼家(メルカトル)→シルクハット→帽子
     オランダ靴,チャイナ橙,フランス白粉,スペイン岬,ギリシャ棺,シャム双児,アメリカ銃,ローマ帽子
     エラリィ・クイーンの国名シリーズの見立て
     犯人は,今鏡霧江。霧江は,自殺(日本樫鳥の見立て)
     なお,霧江は日本語を読めないと推理。密室のトリックは,切断された有馬の首と伊都の体がくっつき,生き返って,密室を作り,その後死に至ったというトンデモ推理
    〇 香月実朝の推理
     犯人→今鏡絹代
     霧江が日本語を読めないのであれば,日本樫鳥を国名シリーズにできない(日本以外では,国名シリーズではない。)。
     絹代はひさのふりをしていた。また,椎月を閉じ込めていた。密室トリックは,合鍵を使った(合鍵は使われていなかったという嘘をついた。)。畝傍殺しのときは,多侍摩の首を畝傍に見せかけた。閉じ込めていた椎月をひさだと思わせて死体として発見させた。絹代はアナスタシア皇女だった。絹代は,ロシア皇女である自分が,日本人に助けられていることを知られたくなかった。
     ペレストロイカとグラスノスチなどにより,メドヴェージェフなどが再評価されそうだと思ったことなどにより,自分の出生がばれないように,子孫を根絶やしにしようとした。
     香月実朝は,ラストで自分が椎月の孫であることを明かす。絹代は自らの使命(=血統を根絶やしにすること)がかなわなかったことを知り,自害
      

  • 人里離れた古い洋館(蒼鴉城)に住む今鏡家で発生する連続殺人事件に名探偵の登場と、これでもかというくらい探偵小説のガジェットが満載のストーリー。
    木更津探偵の人物造形のためだろうか、作者の知識をひけらかすかのような難しい会話の連続は退屈な上に嫌悪感さえ感じる。名探偵役は、途中解決に失敗して山篭りするわ、代わりに登場する別の探偵は現実味のないキャラクターだわ、途中明かされる驚愕の密室トリックは非常識と、つっこみどころ満載です。そして木更津が解決したかに見せかけて衝撃の結末へ!まさに奇想天外なエピローグは驚愕の一言!賛否あると思うが、よくもこんなストーリーを考えたなと感心する。これが麻耶ワールドということか。

  • これが麻耶雄嵩のデビュー作か・・・。読んでなかった。
    (地勢的に)隔離された洋館での連続殺人事件に挑む探偵、と本格モノのセオリーを見事に踏襲している。
    しかし、物語の展開は間違いなく麻耶ワールド。
    探偵が途中で退出(山籠もり!?)し、次の探偵が現れ、元の探偵が戻って来たと思えば片方が殺された後にようやく解決編。しかし実は助手が全ての真相を解明していた・・・。
    こんなアクロバティックな展開は初めて。話は無理があるというより論理の展開だけで説得力はないが物語としては意外性の連続で本当に面白い。
    ただし、やたらと難しい言葉をちりばめた観念的な会話は却って消化不足で退屈なうえ、全く意味が無い。
    今の滑らかな作者の語り口からは想像がつかない。
    しかしこのレベルの作品を20代前半で書き上げていたのは驚異の一言に尽きる。

  • ワトソンくん大勝利。
    読みながら『黒死館殺人事件』が頭を過ぎって仕方なかったんだけど、後書きで影響を受けたって書いてあってナルホドって思った。
    探偵って事件が解決できるかどうかより探偵と名乗れる人間が探偵足り得るのかもしれないと最近思う。

  • 麻耶雄嵩のデビュー作。後のシリーズである、木更津シリーズとメルカトルシリーズ、烏有シリーズの原点となる一冊。二人の探偵、西洋風の古城、黒死館殺人事件をオマージュしたミステリ。伏流として存在する「誰が主導権を勝ち取るか」というテーマも面白い。麻耶雄嵩の作風を凝縮した一冊。 http://x0raki.hatenablog.com/entry/tsubasaaruyami_mayayutaka

  • 元々かなり苦手に感じていた作家。
    だがミステリを読み進める内に、
    変化球にも耐性が出来たと思い
    改めてデビュー作品にチャレンジ。
    終盤まではいかにもオーソドックスな
    館ものといった雰囲気で、
    そこからどんな変化球が飛んでくるのか
    楽しみにしながら読めた。
    そして、後半は噂通りのトンデモ展開。
    そこから驚愕の真相。
    思わず何度も吹き出しながら、
    最後まで楽しむ事が出来た。
    最終的にはオールタイムベストに
    数えたくなる満足度だった。

  • 装飾品めいた諸々の要素に全く乗れないんだけど、どんな顔して読めばいいんだ。

    推理が二転三転するプロット自体、構造自体で勝負するのはデビューの時からなんだね。

    ここをスタートにシリーズを始めるってのが凄い。

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