大統領のクリスマス・ツリー (講談社文庫 さ 62-1)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (145ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062634137

作品紹介・あらすじ

これがね、大統領のクリスマス・ツリー。治貴の言葉は香子の耳の奥に今でも残っている。ワシントンで出会い、そこで一緒に暮らし始めた二人。アメリカ人でも難関の司法試験にパスし弁護士事務所でホープとなった治貴。二人の夢は次々と現実となっていく。だが、そんな幸福も束の間…。感涙のラストシーン。

感想・レビュー・書評

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  • 裏表紙の作品紹介文に「感涙のラストシーン!」とあるのだが、どこに感動して涙を流す要素があるのかよく分からない。主人公がちょっと自分に酔っているところがある苦手なタイプの作品。

    30年近く前の小説を読んでおいてなんだが、価値観が古いと言わざるを得ない。
    成長の結果としての心の強さ(こわさ)と強さ(強さ)の違いが語られるが、この小説で言う強さとは、現在の価値観から観ると弱さかも知れないなと感じた。強かさが育ってないのである。

    ただし、解説で俵万智さんが指摘するように、この作品が「『あなたはあたしのクリスマス・ツリーだったのよ』という台詞をいかに切なく成立させるか」を目的として書かれたものだと仮定すると、見事につきる。

    そもそもが男とドライブしている女の回想録なのであるから、自分に酔って当然なのだ。
    このドライブする男女をアヌク・エーメとトランティニャンだったりカトリーヌ・ドヌーヴとジャック・デュトロンが演じていると名作となるのでしょう。
    ちなみに、羽田美智子さんと別所哲也さんで映画化されているらしいです。

  • 二人が、二人で、ずっと幸せなまま話が終わると信じたかった、、
    これ読んでる時ずっとaikoの「えりあし」が頭の中で流れてた

    強(つよ)い心と強(こわ)い心は違うんだよ、
    傷を受けてこわばった心も丁寧に丁寧に手当てをして強い心に変えられるような人間になりたい

  • タイトルにもなっている「大統領のクリスマス・ツリー」そのセリフが出てくるシーンがたまらなく好きだ。どんな思いで香子を誘い、そこまで連れいていき、そのセリフを口にしたのか。それを思うだけで、胸がキュッとなる。10代で出会い、20代で結婚し、子供がうまれ、30を迎え、出会った頃のようながむしゃらさや、同棲していた時の必死さも、思い出に変わりつつある。香子は折にふれその変化を「布を織り上げてきた」と例える。人との関係は確かにつむぎ、おりあげるものなのかもしれない。つよい心とこわい心。何度読んでもその言葉が沁みる。

  • ワシントンで学生の時に会った治貴とあった香子。香子の目線から、過去の想い出を振り返る。語る現代は、何か落ち着かない雰囲気を感じさせる。
    ホワイトハウスの前にある、大統領のクリスマスツリー、から始まる2人の物語。どの登場人物の心情もよい、人を大事に思う。

  • 1時間ドラマをそのまま見ているような構成。「完璧に幸せ」と思うのは それを失いつつある時。時は一刻も止まらず過ぎていき、どんな幸せも永遠には続かない。

  • とても前向きな悲しい話です。
    今後、自分の人生にこんな悲しいシーンがあるのかと、ちょっと寂しい気持ちになります。
    そんな、話なのに前向きな気持ちになれるのが不思議です。

  • 「あなたはあたしのクリスマス・ツリーだったのよ」

    多分、今この本のページを少しもめくっていない人にとってさえ、香子のこの一言はうならずにはいられない名文句だと思う。
    ロマンチックにも見えるたとえだけど、彼女がこの一言を声にするまでに経験したこと、嵐のような日々、幸福にすぎる生活、その中で胸を満たした感情、香子の強さ、そして、気付いてしまったこと。
    そういうものを全て知った後のこの一言は、あまりに苦しくて、あまりに切なくて、あまりに強くて、たまらなくなる。
    そう長くはないし、小難しい話でもない。
    この一言に少しでもうなったなら、ぜひ本作を読んでほしい。

  • 解説で俵万智さんが「あなたはあたしのクリスマスツリーだったのよ」を中心とする、ラストのほんの一言ふた言の会話を、いかにせつなく成立させるかということに、ひたすら向かっているようにも思われたと言ってるけど、まさにその通りだなーと思いました。

  • あらすじ見て、どんな感涙必至の物語なんだろう!?と思いきや…

    ‥なんじゃこりゃー!!
    (と言って作品全体をけなすわけじゃないけど、)こんなのアリ~?

    治貴という人間には、もォ心底がっかりさせられたよっ!ヽ(`д´#)ノ
    若いとき香子にあれだけ苦労かけといて、ヒドイ裏切りだよ!!

    結局、最後まで香子が治貴を一度も責めなかった気持が、わかるような、わかんないような…。
    香子的には、これからも変わらない日常を過ごしていきたい気持ちの方が大きかったろうし、自分一人が何も聞かなかったことにすれば‥ってことかもしれないけど(´_`;)
    一番は、これまで過ごした時間の長さを考えるのが普通かなーと思うんだけど、香子の気持ちとして、そこはあまり強調されてなかったように感じた。
    でもいざ気持ちを決めたなら、治貴のこと責めたっても良かったのになァ~とか思ってしまう。それは当事者や関係者じゃないから言えるのかもしれないけど┐(´Д`)┌

    良くも悪くも、治貴のように前しか見ないで生きてる人間ってのはいると思うけど‥
    でも、時々は横見て隣に立ってる人間のことを考えたり、その人と歩いた後ろも振り返ってほしいのよ~ぅ(>_<)!…と思った。

  • 何度も繰り返し読み、その度に抱く感想が違う本。もう10回以上は読んでるな。時間にしてみたら数十分の最後のドライブの間に、初々しい始まりから、確固たる信頼関係を築き上げ、徐々にすれ違って行く様を回想的に差し込んで、着々と別れへと向かっていく。結末はわかってるから、その全てが切ない。昔読んでた時はあんなに好きなのになんで別れるのか分からなかった。でも今は分かるな。同じ方向を向いていない人とは一緒にいるのは苦しい。あんな別れ方ができる香子の性格がハルによって築かれたっていうのも切ないけど…かけがえのないものを得たと思えるのだろう。そして俵万智さんの解説が秀逸でこれもセットでこの本が好き。

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著者プロフィール

鷺沢萠(1968.6.20-2004.4.11)
作家。上智大学外国語学部ロシア語科中退。1987年、「川べりの道」で文學界新人賞を当時最年少で受賞。92年「駆ける少年」で泉鏡花賞を受賞。他の著書に『少年たちの終わらない夜』『葉桜の日』『大統領のクリスマス・ツリー』『君はこの国を好きか』『過ぐる川、烟る橋』『さいはての二人』『ウェルカム・ホーム!』など。

「2018年 『帰れぬ人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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