朝の歓び(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062634786

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  • 内容(「BOOK」データベースより)
    地球に朝と夜があるように、私たち人間にも朝と夜がある―。ローマで婚約者に置き去りにされたさつきは言った。ゴルフを愛する大垣老人、愛人が妊娠した内海、亡き妻に似てきた娘と登校拒否の息子、そして良介と日出子…。すべての人が生きている。人間にとって何が幸福かを問う、宮本輝の傑作ロマン。

  • 登場人物の重苦しい苦悩。苦悩のタイプは違っても大なり小なりの自分にも苦悩はあります。この物語を通して,どうすることもできないことに対して,自分なりに整理がつけられたような気がします。

  • 2007

  • 上巻のまどろっこしい関係性や思考が徐々に抜け、サラサラと流れていくように感じました。
    短い旅路の中で見出だされたモノ、赤裸々に紡がれる過去の物語、そして一種の終わりとともにもたらされる新しい始まり…変わらぬ日常の輝きが一層眩しく映し出されます。
    リョウと日出子の掛け合いで軽快に締め括られるのも、また楽し。

  • 名作

  • 上巻の最後でいったん別れた主人公とその彼女。
    そのままで終わると思いきや彼女が砂時計を送ってきたことから関係が再開する。
    そして主人公は妻の意思を継いだ仕事をする決心をする。

    下巻の途中で主人公は友人を介して知り合った80代の男性から過去の手紙を託されます。
    その手紙の内容が衝撃的で、面白いと言ったら不謹慎な内容だけど面白く、引き込まれました。
    それを読んで、その80代の男性のことを何て心の冷たい人だろう!と思いました。
    それに比べてその人の息子さんは何て人間の出来た人だろうとも。

    主人公は「生きているってことは、朝。死んでいるってことは、夜」だと思います。
    だとすると「朝の歓び」というタイトルは「生きている歓び」という事なんだと思いました。
    変な意味でなく、その歓びは奥さんが亡くなった事がきっかけとなって主人公にもたらされた。
    元彼女とのつきあい、兄との再会、そしてやりがいのある仕事・・・。
    それらは奥さんから主人公へのプレゼントだったような気がして、本当に素晴らしい奥さんだったんだと思いました。
    人生の再生、希望を感じるお話です。

  • 日出子は、イタリア・ポジターノの旅行が終わって、良介と別れることを決めた。良介の妻が死んだことで良介はフリーになったが、恋人にするにも、結婚するにも、何かが足らないと両者とも思っていた。良介自身もそこまで踏み込もうとしない。つまり、熱気がない。
     また、良介の息子の亮一は、高校を辞めようとする。また、トイレでタバコを吸っていたことが見つかり停学処分を受ける。能登で父親が言ったことは変わりがない。亮一は、高校の友人のいる能登に一人で会いに行くという。そこで、亮一はやっと学校を続けることになる。
     良介の友人の内海は、愛人の千恵子が妊娠したことで悩んでいたが、千恵子は全く内海にめんどうをかけない、そして今後、一才会うことはないということで、子供産むことを告げる。内海は、そのことから「チクショウ」と言い続ける。それは、自分の不甲斐なさに向けた言葉だ。
    そして、日出子は良介に、とても大きな1時間の砂時計を贈る。時は落ちていくのか?貯まるのか?
     いい言葉があった。春風和煦,夏雨滋润。「あなたが春の風に微笑むならば、私は夏の雨になっておとづれましょう。慈愛の風と慈愛の雨」
     内海のゴルフ友達、82歳の大垣は、良介のレッスンにつきあい、最初のプレーを内海、良介、大垣でする。そのプレーで、大垣はエイジシュートになりそうだった。
    大垣はいう「ゴルフは、マナーではじまり、マナーで終わる」ところが。
     それにしても、大垣さんは、波瀾万丈ですね。Kさんを息子と奪い合う。宮本輝の手紙の書き方は、実にうまい。生きるとは、このような業(ごう)の中で生きるのか?
     朝は、生きている。夜は、死んでいる。それを毎日繰り返して、生きていることと死んでいることはおなじなのだ。やっぱり、おはようという言葉はいいなぁ。

  • 笑いや喜び、辛いこと悲しいこと、そしてどうしようもないこと。

    色んな人に色んな人生があって、
    みんなせいいっぱい幸せのために生きていて、
    それが交差して。

    スッキリしないことだらけだけど、
    苦しいことも多いけれど、

    その中に生きている歓びがある。

    そんなことをじわーっと感じました。

  • 45歳の主人公を軸に展開するお話だけど、そこには色々な年代の色々な背景を持った人物が登場してくる。高校生、もしくは大学生の時にこの本に出会ってたら、その時になかった考え方の一端を与えてくれたんじゃないかと思った。一気に読めてしまう。だけど、所々、かっこつけなセリフや90年代のトレンディドラマを彷彿とさせる場面にちょっと赤面。けっこう、昔のドラマっぽい展開の作品が多いような気がする。

  • 「生きているときは朝、死んでいるときは夜」という作中の言葉が、テーマになっていると感じた。両方あるから地球は回っている。そう思うと嬉しくなる、背筋の伸びる小説。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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