介子推 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (484ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062637961

作品紹介・あらすじ

山霊がつかわした青年、長身清眉の介推は、棒術の名手となって人喰い虎を倒した。やがて、晋の公子重耳に仕え、人知れず、恐るべき暗殺者から守り抜くが、重耳の覇業が完成したとき、忽然と姿を消した。名君の心の悪虎を倒すために……。後に、中国全土の人々から敬愛され神となった介子推を描く、傑作長編。(講談社文庫)


名君「重耳」に仕えた奇蹟の剣士を描く長編。晋の文公(重耳)は、如何にして春秋の覇者となり得たか? 貧窮放浪の公子重耳を、一身を捧げて守り通した介推の、主君を思うが故の見事な進退を語る感動の長編。

感想・レビュー・書評

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  • 山霊がつかわした青年、長身清眉の介推は、棒術の名手となって人喰い虎を倒した。
    やがて、晋の公子重耳に仕え、人知れず、恐るべき暗殺者から守り抜くが、重耳の覇業が完成したとき、忽然と姿を消した。名君の心の悪虎を倒すために・・・・・。
    後に、中国全土の人々から敬愛され神となった介子推を描く、傑作長編


    重耳の19年間にわたる放浪生活をともにした人物です。
    「重耳」を読んでからこちらを読むのがお勧めです。これは俄然、2作セットですね。
    故郷の緜上から、重耳に仕えるために狐氏の邑を訪れた介子推。
    重耳の長い放浪生活を裏から支え続け、重耳が晴れて晋の君主となった後に、自分の思いとは違うものがそこにあるという理由で、誰にも告げずにこっそりと身を隠してしまいました。
    介子推を一番理解していたのは、天敵であり続けた閹楚です。
    閹楚なら、身を隠したまま再び世に出てくることのなかった介子推の気持ちが十分に分かると思います。

    「龍欲上天 五蛇為輔 龍已升雲 四蛇各入其宇 一蛇獨怨 終不見處所」
    (龍は天を望み5匹の蛇がそれを助けた。今龍は天に上ることができ、4匹の蛇もそれぞれいるべき所にいる。だが、1匹の蛇だけひとり恨みいるべき所もない)

    介子推の従者が上記の書面を宮門に掲げました。
    この書面によって介子推の働きの全貌を始めて知って後悔した重耳(文公)が、緜上に柵をめぐらして介子推の封邑とし「介山」と呼ぶとともに「我が過ちを銘記し、善人を表彰する」こととした・・・・・と言われています。

    自らの姿を消すことによって君子に訓戒を与えた介子推の行動は美談として受け継がれています。

    物語としては、状況把握や感情移入しやすい類であり素直に面白いのですが、『だからといって、一生隠れ続けなくても・・・・・』というのが素直な気持ちです。

  • 『重耳』を読んで興味を持った介子推。
    中国・春秋時代、賤臣として、重耳が晋の王位(文公)につくまで19年に及ぶ苦難の亡命生活に従い重耳を陰から助けた介子推。
    人知れず尽力した介子推の功績は重耳に届くことはなく、論功行賞の対象にはならず、功臣の要求に応じて論功行賞を行ったりそれどころかそれまで命を狙っていた者も受け入れるという重耳に失望したということです。
    認められなかったことではなく、敬愛する主君への失望から、故郷の山へ去ってしまう介子推。
    生きのびるのが精一杯の想像を超える苦難を乗り越えたのに、19年も、それはもうやってられないですよね。
    なんだか哀しい。

  • 全1巻

  • 重耳から続けて読了。
    重耳だけで良かったかな。

  • 何の話を読まされてるんだろうと思うくらい、時代性土地勘が想像できない書き出しで、この話は面白くなるんだろうか、と不安視しながら読むが、最後まで雰囲気が変わることはない。つまり、急に盛り上がったりしないので、何の話だかワカランまま読み進めるのに、いつの間にか、すっかり虜になってる不思議。ものすごく面白い。本当によい時代小説は、時代性土地勘が全く解らなくていいんだな。

  • 介子推。

    宮城谷さんの小説『重耳』を読まなければ、その名前すら知らず、興味を持たなかった。

    権力欲とは別の場所にいて、そして、賢母の助力もありながら、神になった人物。

    「人から何かを得ようとするのであれば、その人にまず与えなければなりません。救ってもらいたいなら、まず救ってあげることです。」

    「竜は天にのぼらんと欲し、五蛇は輔をなす。竜はすでに雲にのぼり、四蛇はおのおの宇にはいるも、一蛇は独り怨み、ついに処るところをみず」

    幾多の困難とその功績は史書の中には詳しく記載されてないという。
    しかし、晋の文公が介子推に対する、行動が民の心を打ち続けたのだろうと感じた。

  • 面白くて一気に読む。
    積読にしなければ2度買いしなくて済んだのに…。

  • 重耳も読んでみたい。

  • 介子推は清廉・無私・誠実の人として中国では有名だそうだが、その割りにその功績は知られていない。著者は介子推に山霊に授けられた棒術の名手とし、通常の無私の働きに加え、暗殺者・閹礎との暗闘を通してその功績を語る。
    前回読んだ「花の歳月」に対し、主人公が棒術の名手であり、かつ重耳の覇道を助けた人物という事で活力を感じる話に仕立てられている。
    特に前半は不死の泉・それを守る虎・山霊の化身である老人などが現れ伝奇的要素を持っており、面白い。しかし、重耳に対する無私の奉公についてはもう少し(オーバーにでも)書き込んでも良かったのではないか。特に暗殺者・閹礎は魅力的なのでもっと登場回数を増やしてほしかったように思う。
    とはいえ、一気に読み終えてしまえるくらい面白かった。

  • 縁の下の力持ち、介推。いつ報われるのかと思っていたが、最後に山に隠れてしまうとは…。それでいいんでしょうか。普通に賞を求める、つまり、黙ってないでコミュニケーションをとることが大事なんじゃないかと思うけどなあ。
    話自体は、とても面白かった。

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著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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