テロリストのパラソル (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062638173

作品紹介・あらすじ

アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し二十年以上もひっそり暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た真実とは…。史上初の第41回江戸川乱歩賞・第114回直木賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • H31.1.23 読了。

    ・江戸川乱歩賞と直木賞のW受賞作ということもあって、いやあ、面白かった。時代背景が昭和ってだけで、心トキメクのはなぜだろう。

  • 今読んでも十分面白い。
    主人公の島村さんのキャラも他の登場人物も違和感なく、ただ自分の信念に従って。
    思った事を通す力と行動力がテンポ良く描かれている。
    それぞれ筋が通っているのは、読んでいて気持ち良い。

    色々な雑学が学べる。引き出しの多さに感服。よく調べてあるなぁと思った。
    あらゆる可能性を考えて行動する、登場人物の頭の回転の速さに、さすがだなぁと感心。
    ただ、揃いも揃ってここまで皆頭良くないよ…?
    でも、自分の事と恋心は、さすがに察しがわるいのが、また魅力的なアル中バーテンダー島村さん。

    途中で、犯人?大体気づくのだが、最後の対峙、対決の持っていき方も良いなと思う。

  • タイトルからそのように思ってましたが、ハードボイルドでした。
    以外な犯人にしろ、辿り着くまで全くわかりませんでした。
    主人公に惹かれる女性が無事で良かったです。


    ある土曜の朝、アル中のバーテン・島村は、新宿の公園で一日の最初のウイスキーを口にしていた。その時、公園に爆音が響き渡り、爆弾テロ事件が発生。死傷者五十人以上。島村は現場から逃げ出すが、指紋の付いたウイスキー瓶を残してしまう。テロの犠牲者の中には、二十二年も音信不通の大学時代の友人が含まれていた。島村は容疑者として追われながらも、事件の真相に迫ろうとする――。小説史上に燦然と輝く、唯一の乱歩賞&直木賞ダブル受賞作!

  • アル中バーテンダーの島村が、新宿中央公園の爆弾テロの真相を追う物語。
    事件現場にいただけ、いわば傍観者の立場から事件を追う者に変わっていく……。
    作中の何気ない会話や描写が、伏線になっており徐々に真相が明らかになるミステリー要素とハードボイルドな描写が上手い具合にハマっていく一作。

  • 文章がしっかりしていて読みやすかったし、面白かった。登場人物も、ものすごく現実っぽい。

  • 面白きパラソル。

  • ひっそりと暮らすアル中のバーテンダーがウイスキーを嘗める穏やかな昼下がりの爆弾テロ。
    徐々に浮かび上がる因果の壮絶さにガツンと殴られたような衝撃。
    ある時代を生きていた人達のシリアスな精神は今の自分には馴染みがなさすぎて、触れるたび指が強張るような。

    人生の真ん中にはっきりとあの出来事がある人達。
    どんな時間を生きていたのだろう。想像もできん。
    主人公の語り口がひたすら魅力的で、関係者たちが軒並み目を惹いて、ドラマの中に飛び込んでいるようなワクワク感。素敵だ。
    ツマミは(一切手抜きのない)ホットドッグ一種類のみというBAR、めっちゃ行ってみたい。

  • 今度も昔々に読んだ本をまた読んでみる。
    2006年に読んでいると思うのだけど、「シリウスの道」の感想にこの本のことを『まあまあ面白かった』と書いてあり、私にとってここから藤原伊織が始まった割に『まあまあ』だとは、我ながらどんな評価だと突っ込みたくなった。

    再読してみれば、話の筋がちょっと複雑で最後の最後になるまで話の糸口が見つけられないところに、悪い頭が『まあまあ』と評した訳もなんとなく分からなくもないが、この本では謎解きよりも文章文体や物語全体の雰囲気に浸れることが大事だな。
    昭和の残像が色濃く残り今では時代遅れとも見える生き方だが腕っぷしも強く記憶力も知性も備えて世の中をタフに生き抜く主人公、それに絡む外道になりきれない元警官のやくざ、昔の彼女のはねっ返りの娘、といった登場人物の造形がいい。
    ちょっとしか出ないが幼いバイオリニストさんや捜査一課長も存在感があり、ホームレスの描き方も巧み。
    《世界の悪意》に対し自分たちの力でも何かが出来ると思っていた時代が背景にあるのが、世の中に対しツイートすること以外は何もやらない出来ない今の時代にあって、物語が書かれた頃以上に登場人物を際立たせたように思える。
    亡くなった昔の彼女が遺した短歌『殺むるときもかくなすらむかテロリスト蒼きパラソルくるくる回すよ』には、買ったばかりの日傘をクルクル回しながら五番街を歩く姿が鮮やかに目に浮かび、そこにいなかった主人公も含めた3人のそれぞれの人生に思いを馳せさせられる余情あり。

  • この作品も大好き

  • テロリストのパラソル/藤原伊織:第41回大賞受賞。1995年。
    てか直木賞も受賞。

    再読です。記録ないけど、学園紛争時代の中年オヤジの話。あの頃指名手配された。それ以来ひっそりアル中になりつつバーのマスターとして生きている。新宿中央公園の爆破事件。あの頃の元カノが死んだ。元カノの娘が現れた。ヤクザも現れた。主人公は筋は通っている。ボクシングしてたからケンカもできる(ココ重要)。
    元カノは、主人公のもとを去った後、見合い結婚(良い家柄の娘なの)。娘を授かり物質的には何不自由ない幸せな生活。ニューヨークで夫が急死している。
    どちらも犯人は、資産家となったあの頃逃げた親友。闘争に行き、拷問され、娘と恋し、資産家となり、名前も国籍も変えた。
    文章がね、しっかりしてる。ここが受賞ポイント?
    元カノ娘に好かれる、中年の妄想満載な中年オトコもそれで許せる。
    二人とも、あの頃の彼女が好きだった。青春。
    このあと作者は中年の妄想満載な小説を書いていたと記憶している。

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著者プロフィール

1948年大阪府生まれ。東京大学仏文科卒。85年「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞を受賞。95年「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞、同作品で翌年直木賞を受賞。洗練されたハードボイルドの書き手として多くの読者を惹きつけた。2007年5月17日逝去。

「2023年 『ダナエ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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