夏と冬の奏鳴曲 (講談社文庫 ま 32-2)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (717ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062638913

作品紹介・あらすじ

首なし死体が発見されたのは、雪が降り積もった夏の朝だった!20年前に死んだはずの美少女、和音の影がすべてを支配する不思議な和音島。なにもかもがミステリアスな孤島で起きた惨劇の真相とは?メルカトル鮎の一言がすべてを解決する。

感想・レビュー・書評

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  • 平成の奇書とも言えるほどの問題作。麻耶雄嵩最大の問題作と考えて良いかもしれない。衝撃の展開と前代未聞の構造、そして未だに続く考察と議論、何をとってもこれは名作であり迷作、麻耶雄嵩の最高傑作に挙げる人も多い。烏有シリーズの一冊目でもあるがメルカトルシリーズの2冊目でもある。キュビズムの薀蓄が楽しい。入手困難だが麻耶ファンなら必携必読。

  • かなり、問題でしょ。こんな、解決してるけど、結末、未帰結ミステリー。
    思わず考察サイトを覗いてしまったけど、議論白熱で結局正解はそれぞれの解釈にあり?!
    でも、間違いなく面白い。途中までは間延びして長いと感じていたが、半分過ぎる辺りでジェットコースターバリに止まらない。
    神に関する考察、観念、奇跡…色々諸々。で、後に本当に神様誕生させてるこの作者、本格推理なのに俯瞰して、ちょっとずらした視点が面白い。

  • この作品は、というか、この作品も評価が難しい。
    本格モノという切り口で見ると、絶海の孤島の孤立した洋館での連続殺人、というまさに定番中の定番。
    しかし、前作に続いてひたすら本格を無視するような要素が点在する。神と信仰、キュービズム、二重人格についての延々と続く会話、ありえない天変地異(まるで有栖川の噴火)が混ぜ込まれカオス状態。
    それでいながら、最終章では錯綜した謎が、論理的に解明され事件の真相が解明される。
    そのうえで、さらに一捻りが加わり読者は置いてきぼりをくらう。
    あのラストでメルカトルが出てきて示唆する、編集長の存在は何?わからないし、二人?二重人格?ここらもこちらの読み込みが甘いのかスッキリしない。
    といって、このダラ長い小説を読み返す気にもならない。今の麻耶雄嵩の見事なほどのロジックとキャラ、物語運びにたどり着くにはもう少し新しい作品に移っていくしかないのだろうけど、疲れるなぁ。

  • 読む速度にレビューを書く速度が追い付いていませんね。
    おもしろい本が次々に手に入るので、さくさく読んでしまいます。

    20年前、和音島と名付けられた無人島で、真宮和音というひとりの女性を中心として、彼女のカリスマともいうべき魅力にひかれた6人の若者が共同生活を送っていた。
    そして今、一時は何らかの理由で散らばった関係者が、長い年月を経て和音島に集まろうとしていた。
    その取材のために島へとやってきた如月烏有は、無理やりついてきた不登校の高校生 舞奈桐璃とともに奇妙な邂逅を部外者なりに観察していた。
    しかし、明くる朝、真夏に降った雪の中で首なし死体が発見される。
    島からの脱出手段は絶たれ、烏有は桐璃を守るために自ら事件の解決に乗り出すことを決意する。
    何もかもが普通でない島で起こった惨劇の真相とは。
    「メルカトル鮎の一言がすべてを解決する」

    久々に「うぉっ」と声の出る長編ミステリーでした。
    難解な哲学寄りの思想が随所に顔を出し、正直共同生活をしていた男女の思考方法は未だに理解できていません(説明が足りていないわけではなく、単純に難しいのです)。
    事件発生からクライマックスまでは単調かつ長く感じ、多少じれったくなりますが、最後の100頁が怒涛の展開過ぎて逆に置いてけぼりに。
    メルカトル鮎さんの一言は確かに事件の核心を明らかにはしてくれますが、明確な答えは読者に提示されません。
    そのもやもや感込みで非常におもしろい小説でした。


    以下、ネタバレを含みます。




    映画のタイトルが『春と秋の奏鳴曲』であると聞いたときから、この小説(つまり烏有と桐璃が主役の物語)が映画の続き若しくは前段になっているんだろうなとは思っていました。
    が、想像をはるかに上回るぶっ飛んだつなげ方に脱帽。
    桐璃が中盤しきりに「自分だけど自分じゃない自分」の話を烏有にしていたので、これは桐璃が二重人格とかそんなんだろ、と思っていました。
    が、矮小な想像力では及びもつかないような展開に平伏。
    もう、これまで読んできた小説の経験則がまったく通じなくて、謎が解けなくて悔しいなんて感想は持てませんでしたよ。
    この凄まじい「読者置き去り感」は一読の価値ありです。
    めちゃめちゃおもしろかったです。

  • 麻耶作品で1番好き
    いろんな人に読んでもらって感想聞きたいけど、これを気軽に勧めていいのか?というジレンマ……

  • これが奇書かはわからないが、真っ当なミステリーではない。伏線と呼べるものは其処彼処に落ちているものの、皆あまりにも歪であったり偏っていたり。しかしそれらは確かにピースとして嵌るべき場所に嵌っていく。荒唐無稽や不条理へと転落する薄皮一枚ギリギリの線を進む物語。そのスリルに身悶えながら複雑怪奇なパズルが完成していく様を眺めるような、やっぱり奇書。

  • これは…確かにかなり人を選ぶ内容かと…。
    最後のほうが衝撃の連続で『は???!』ってなるのが楽しかったので私は好きです。意外すぎる真相というか…。
    ただ、すべての謎にはっきりとした答えがつくわけではなくモヤモヤとしたままな部分も多いのでそういうのが苦手な人は辛いかもしれません。

    最初の方はだらだらとしててつまらなく感じる方もいるようですが、細かいとこを気にしてると結構伏線がはってあったりするのでそういうのを見つけるつもりで読んでみたら面白いんじゃないかなと。
    「うゆーさん」と「うゆうさん」。呼び方が変わることは気づいてはいたんだけどそんな深い意味があるとは思わず気にしてなかった…。
    キュビスムの説明のところはもうなにがなんだかよくわからないままで押し通しちゃったので動機の部分がちゃんと理解できてない気がします。

    あとちょっと気になったのは文章自体が読みづらいところがあったことかな。初期の頃の作品だからなのか…?

    メルの出番がまさかのラスト3ページだけだったのも個人的には残念というか寂しい。
    けどあれくらいの情報だけで真相に辿り着くような人がいると長編にならないからしょうがないか…

  • 賛否両論というのもうなずける内容。宗教をミステリーに落としこんで、青春の喪失で煮こんだというか。唯一なるもの、美しいもの、そしてそれを守るヒーローとしての自分自身という、居心地のいい物語を生きていた主人公が、その物語を自ら壊す話だ。犯人とか、トリックとか、そういうものもすべて信仰と悲劇的な結末につながってしまうので、本格ミステリーと呼べるかどうかわからない。難解で意味不明に思えた解説が、読了後はよく理解できた。

  • 孤島を舞台に起きた密室殺人の謎を追って主人公が、、、。
    的な話ですが、終盤までだらだら物語が続きます。

    しかし!終盤から衝撃の連発‼最後の最後まで衝撃でした。メルカトルめ‼

    途中からもうわけわからんと思いながらも興奮して読みました。久々にこんな読後感を味わいました。軽い痺れです。

    問題作と言われるだけあり、とにかくすごい作品です。

  • 6/7まで読んであまりの難解さ読みづらさに「駄作なんじゃ。。。」と思ったわたしが馬鹿でした。

    ラスト100ページで物語は基盤を失う…どころじゃない。
    前提の前提の前提くらいまで覆され、「もう何も出てこないよね?」と思ったラスト3ページでのメルカトルの一言。

    もう、雪の密室トリックの無理やり感なんて全く問題にならない。
    麻耶さんじゃなきゃこんな話書けないし書かないだろう。

    読後、ひたすら頭を悩まされる。
    後味とか余韻とか言う言葉が生易しく感じられるくらいに、読者泣かせの大傑作です。
    解説サイトかなり読んだけど色々意見わかれてるし。。。
    これを課題図書にして皆で読書会したら最高に楽しそうです。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。京都大学工学部卒業。大学では推理小説研究会に所属。在学中の91年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューを果たす。2011年『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。15年『さよなら神様』で第15回本格ミステリ大賞を受賞。

「2023年 『化石少女と七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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