天空の蜂 (講談社文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (634ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062639149

感想・レビュー・書評

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  • 原発の存在。
    新たな社会派ミステリー!
    長編やったけど、あっという間に読めた!
    面白かったー。

    難しい機械類の名前がたくさん出てきたり、物理学的な内容もあったので、映像化も是非見たいところ!

  • 読み応えガッツリのクライム・サスペンスです。

    超大型ヘリコプターが何者かに遠隔操作で奪われて、原子力発電所の真上にホバリングさせられます。
    犯人の要求は、日本中の原発の稼働停止。要求をのめない場合はヘリを墜落させるというもの。
    しかも、そのヘリには9歳の男児が閉じ込められていて・・・。

    いや、もう絶対ドキドキハラハラするヤツ!
    ということで、終始手に汗握って読ませていただきました。
    複数の場面が並行して展開し、それに比例して登場人物も多いのと、ヘリコプターや原発の構造についての説明部分が難解なので、その辺は自分の中で適当に整理&話に支障がない程度に流して読みました。
    救援隊による子供の救出劇や、ヒタヒタと犯人に迫っていく警察の動きなど、見どころは満載ですが、何といっても核になるのは、原発の是非についての問題定義です。
    特にラストの犯人からのメッセージは、“目をそらさずに向き合え!”とばかりに突き付けられたような気がして、心に刺さるものがありました。
    それにしても、この話は福島第一原発事故が起こる以前に書かれたものなのですよね・・。東野さんの目の付け所に感心した次第です。
    勿論エンタメとして楽しめましたが、それ以上に考えさせられる一冊でした。

  • 東野圭吾は幅が広くてミステリーからギャグ。人情ものから犯罪小説。そしてこういうパニックサスペンスまで書いてしまうんですね。
    3.11よりも前に書かれていたという事で話題になっていましたが、専門的な内容が山盛りで小説としては冗長という気がしてしまいますが、社会的意義と合致した時に価値が爆上りするというのはあり得る話だと思います。
    相当な勉強をして描かれた本なので、物語の強度としては相当高く、いつの時代に読んでも意味を持つと思います。
    固くなりがちで平板になる可能性がある所へ、子供がテロに使われるヘリに乗り込むというハラハラポイントを作る辺りやはり上手い。エンタメポイントを押さえる能力は日本随一。

  • 原子力発電所の上空が飛行禁止になっている事を初めて知った。

    考えてみると、当然の事か。

    『墜落』という事故を想定すると、取り返しのつかない大惨事に繋がる。

    私達はすでに2年前の大地震によって引き起こされた津波による福島原発の事故を目の当たりにし、
    その恐ろしさを充分に知ってしまった。
    (この小説自体は、地震の前に書かれているが。)

    だからこそ、
    稼働中の原子力発電所の真上に飛んできた巨大ヘリコプターが、
    そこで、
    ホバリングしたまま動かない状況が
    恐ろしくてたまらなかったのだ。

    コントローラーで無人のヘリを動かし、
    「日本にある原発をすべて使用不可能にする事。
    さもなくば、ヘリをこのまま落とすことになる。」

    と、いわば、日本の全国民を人質にとり、政府を脅迫し始めた犯人の意図は大変わかりやすい。

    出来る事なら、俺もそうしたい…と、心に思う人だって現にいるのではないだろうか?
    犯人は、その人達の代表として、政府に
    切羽詰った『挑戦状』を叩きつけている様に思われて仕方がなかった。

    全ての原燃を本当に停止させるか?

    それとも

    (いくばくかの)犠牲を払って、使用し続けるつもりか?

    無論、著者の手の中で行われている攻防ではあるが、
    その展開は大変興味深いものだった。

    多くの人が危険を承知で、電気を作り続けている事を黙認したまま
    快適な生活に甘んじている。

    …くせに口から発せられる言葉は
    「原燃は廃止するべきだ」だ。 (私を含む。)

    そういう人間達の頭上に巨大なヘリの影は近づく。

    落とされるのをただ待つか。

    原燃を本気で停止させるか。

    ヘリの燃料が切れるまでに、
    今一度、本音でこの胸にその疑問を叩き付け、答えを出したい焦りを感じた。

  •  あまりサスペンスは読んでこなかったが、これを機に、新たなジャンル開拓をしてもいいかも知れない。
     細部まで描かれた理系知識と、組織というもの(特に国や公の機関)がどういった考え方をし、手段を選択するのかといった現実が、問題を普段意識していないどころか、それ自体を知らない人と対照的に読者に迫ってくる。
     しかも、果たして、人々は知らないまま終わる。

     リスクマネジメントや対策、実際の応対について、想定外を想定する努力を止めた瞬間、ビッグBが落ちてくるような気がしている。

  • やっぱりちょっと難しかったなー。かなり読み飛ばしてしまった。
    古さを全然感じさせない小説。携帯電話が出てこないから、少し前の小説だなということは感じるけど、今すぐにでも起こりそうな事件。

  • 本作の発行が東日本大震災よりもずっと前であることに驚いた。まさしく小説での災害予知。ネット環境など科学面の描写には古さがうかがえるものの、物事に対する無関心な態度を取り上げている点は、現代に対する警鐘とも受け取れる。

    試験飛行を控えた大型ヘリが盗難される。自動運転のヘリには誤って入り込んだ子供が…。前半はその救出劇に、後半は犯人たちがどのように追い詰められるのか、という展開に目が離せない。難しい専門用語を一生懸命(笑)追いながらラストに向けて胸が高まる。

    しかし…。犯人たちの動機にはどうしても必然性が感じられない。また、犯人Aに協力する形となった恋人の行動も解せないところがある。さらに犯人Bは最終的にどうなったのか。大きな問題定義をしておきながら、物語が中途半端に終わったのは、原発という巨大な怪物を扱ったせいかもしれない。

  • 原発を舞台にした小説。こんなに詳しく原発について描かれているものが、震災前に既にあったとは知らなかった。普段はまったく気にしていなかったものが、一旦メディアなどで事件として取り上げられると、蜂の巣をつついたような騒ぎになることも予見されていた。内容もリアリティがあって重厚だった。作者本人の思い入れがもっとも強い作品というのも頷ける。

  • 1995年に書かれた、原子力発電所を舞台とするサスペンスです。
    やっぱり、さすが東野さん。スピード感や緊張感がすごいです。

    原発周辺の利益と、それに携わる人たちの放射能問題。電力を大きく原子力に依存しながら、その実態をほとんど知らず、関係ないと思いたい「沈黙する群集」
    17年前に書かれたものが、現在の時勢にこれほどピッタリ合うとは。

    そうか!東野さんは電気工学化の大学を卒業し、技術エンジニアだった経歴がある。
    この小説は、その分野の知識が大きく活躍してますね。

  • 錦重工業は、防衛庁のために超大型特殊ヘリコプター「ビッグB」を完成させた。「ビッグB」開発チームの一員である湯原一彰は、納入式に妻・篤子と息子・高彦を連れて来ていた。しかし、納入式の朝、「天空の蜂」を名乗る人物に「ビッグB」が奪取された。「ビッグB」は、原子力発電所の真上でホバリングをしている。犯人「天空の蜂」の要求は、ヘリの燃料がなくなるまでに全国の原子力発電所を停止すること。この要求を政府が承諾しなければ、大量の爆薬が搭載された「ビッグB」を墜落させるという。政府が出した結論とは。そして、全国民の運命は・・・。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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