忍法忠臣蔵 山田風太郎忍法帖(2) (講談社文庫)

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著者 : 山田風太郎
  • 講談社 (1998年12月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062645034

忍法忠臣蔵 山田風太郎忍法帖(2) (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 相変わらずの面白さ、解説の馳星周氏の言葉の通り「読み出すと止まらなくなる」

    元禄赤穂事件を題材にし、赤穂四十七士の討ち入りに至るまでの裏模様を描いている。発端と結末の史実を変えることはない、忍法帖の特色としてその紆余曲折を、虚実合わせて描き、歴史の裏に埋もれたであろう(全くの創作かもしれぬが?)人々(忍者等々)を、誰に偏るでもなく冷徹な視線で描く。その視線からこそが物語中において、強烈な叙情を持って読者に語りかけてくるに容易いのだ。

    今作において赤穂四十七士の有名人物も多数登場するが、メインとなるのは「主君の仇をなす血の盟約」から脱盟した者達であった。松の廊下にての刃傷沙汰により浅名家は断絶、赤穂浪士は仇討ちの機を窺う…一方、吉良家が頼る上杉家では、赤穂浪士討つべし!なる勢力と、討たずに仇討ちを阻止すべし!という勢力の内紛が起こる。それぞれに能登忍者、能登くのいちがつき、当の赤穂四十七士のあずかり知らぬところでの忍法合戦が繰り広げられるのだ。くのいち側に主人公無明綱太郎がつき、決して討ち果たすことなく、くのいち忍法にて浪士を骨抜きにし、さらに命を狙う能登忍者から、浪士を影ながら守らねばならない!というハンディキャップマッチとなる。

    登場する忍法がぶっ飛んでいるのは毎度ながらも楽しい、中途で脱盟した実在の浪士達がくのいち忍法に篭絡され打ち果てていく姿はまた哀しい。無明綱太郎はオブザーバー的役割でくのいちの補佐もするが、裏切った時の制裁役も兼ねており、「忠」を忌み嫌う虚無の忍者である。その虚無が「討ち入り、仇討ち」の虚無と重なる時、凄惨極まりなくも胸を打つシーンが登場する。

    最後の脱盟者となった毛利小平太の章である。くのいちの手引きで、浪士達の妻、妹、娘、女達の悲惨な状況を知らしめられる。いずれも悲惨極まりない最下層の売春婦と墜ちており、性病に侵され、精神すらも病んだ女達を目の当たりにした小平太は心を変える。首魁大石内蔵助を自ら討ち取り、仇討ちを終わらせようとするのだ。しかしながらそれを阻んだのは墜ちた女達であった。彼女達が大石にかけた言葉は今作の中でも特に、さらに言うなら忍法帖の全てにおいても心に残った。「…首尾よう御本懐を……かげながらお祈り申し上げるまする。……」


    小平太をして、仇討ちの虚しさを説いておきながら、手のひらを返したように仇討ち為すための犠牲となった女たちによって、それを正当化して見せた。この場面において風太郎氏の歴史観を垣間見た気がした。解説にもあった通り、善も悪もない、ただ人の心のままに歴史は動くのだと。

    史実は変わらないのでその通りの結末なのだが、ラストにおいては無明綱太郎の心はさらなる虚無に晒されることとなり憐であった。にしても無明綱太郎強し!忍法帖シリーズにおいてもトップレベル、ライバルはおげ丸か?いや最強の術は甲賀弦之介の瞳術か?こういう楽しみもまた忍法帖なるかな。

  • 相変わらずの面白さ。
    ぶっ飛んだ忍者が出てくるという
    風太郎パターンは同じなんだけど
    ついつい読んでしまう中毒的小説。

    堅い小説読んだ後にはこういうのお勧め。

  • 忠臣蔵の裏で行われる忍術争い。オチは好きではないが、中々に面白い。

  • 忍法の発想がぶっとんでいる。特に歓喜天はすさまじい。私は忠臣蔵をよく知らないが、面白くよめた。

    千坂兵部が女忍者をもって仇討ち防止と能登忍者が赤穂浪士を殺害するのを食い止めるのは、はじめから成功を信じていなかったのではないかと思われる。この役割だと女忍者が相手の忍者より相当強くないとできない。それなのに人数も少ない。結局綱太郎が一人で相手の忍者を倒している。
    死んでいった大勢の忍者はひとえに綱憲の復讐心の元に死んでいった。これは忠義の元に死んでいったわけである。綱太郎が忠義も女も嫌いと語って終わる。虚しい終わり方だった。

  • ネタバレ 「週刊漫画サンデー」連載。忠臣蔵が物語の基軸になるエロティック伝奇時代小説。作品の構図は、エロティック忍術を使うくの一軍団が、赤穂浪人を狙う上杉綱憲配下の忍者軍団と戦う一方、浪士らをその忍術で性的に籠絡するというもの。高田軍兵衛ら脱盟者を物語の核とする点は、面白い目の付け所。が、物語の対立構図が米沢藩の内部抗争劇で、忠臣蔵としては判りにくい。ただ、忠臣蔵でありながら、忠義と女が嫌いという主人公(理由も納得できるもの)を配し、浪士への冷ややかな目線と忠義への皮肉を伏流させたのは戦中派の著者らしい。
    上野介は登場せず、松の廊下刃傷事件も情報伝達されるだけ。という意味で忠臣蔵を斜めから見た作品であり、普通の忠臣蔵では飽き足らない人向けかも知れない。1998年刊行(初出1961年)。

  • 前作(甲賀忍法帖)に比べると、スピード感が若干弱いか?
    忠臣蔵をベースに、能登忍者と能登くのいちの対決を描くが、主人公の無明綱太郎が別格過ぎて、なんというかもったいない。
    そして、切ない。

  • 亡き主君の無念を晴らす仇討物で日本人が大好きな忠臣蔵。その忠臣蔵に材をとり、大石内蔵助率いる赤穂浪士、彼らの命を狙う吉良の刺客、そして色仕掛けで仇討を放棄させようとする女忍者たちの三つ巴の闘いを描きます。忠臣蔵というタイトルですが、見どころは討ち入りではなく、浪士をめぐって争われる忍者同士の奇怪な忍法合戦です。

    女忍者の罠にかかり仇討の盟約から一人また一人と離脱していきますが、"忠"にも”義”にも無縁の僕からすると、脱落した者たちのほうに同情してしまいました。忠臣蔵というと赤穂浪士たちがやたらと称揚されますが、家族までを巻き込み不幸にしてしまう武士の道徳に、著者は疑義を呈しているよう。

    史実についてはよく知りませんが、仇討を期待する世間が公儀を動かし、浪士たちの不穏な動きを見て見ぬふりした、ということもあったのでしょうか。そこまで読んでいたとすると、やはり大石内蔵助はただものではないですね。

  • これは面白い。仇討ちから脱盟した赤穂浪人達の物語と捉えれば、井上ひさしの「不忠臣蔵」に匹敵する程の面白さ。快男児然として登場した綱太郎の、終盤に向かうにつれてのあまりの変容ぶりに驚く。

  • 再読。

  • 2012/2/19読了。正月に放映された忠臣蔵のドラマがあまりにつまらなかったので、面白い忠臣蔵に触れたいと思い読んでみた。虚と実を巧みに組み合わせた風太郎忍法帖の傑作、期待に違わぬ面白さだった。
    赤穂浪士を暗殺するべく吉良上野介の実子上杉綱憲が放った忍者たちと、それを阻止すると同時に赤穂浪士を色仕掛けで骨抜きするべく上杉の家老千坂兵部が放ったくノ一たちの忍法合戦がストーリーの中心。
    赤穂浪士ではなく上杉家内部の忍者同士の戦いとしたところが面白い。それでいて大石はじめ赤穂浪士たちもキャラが立つよう描かれているのが凄い。風太郎忍法帖らしく奇想天外でエロチックな忍法が次々に繰り出されるのも楽しい。
    しかし本書で最も印象に残るのは、くノ一たちを陰から監督する伊賀忍者無明綱太郎の視点である。忠臣蔵のテーマである「忠」に根本的な疑問を投げかけるこの男、大佛次郎の『赤穂浪士』における堀田隼人と同じく、物語をただの義挙美談ものに終わらせない重要なキャラクターである。

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