あいにくの雨で (講談社文庫 ま 32-4)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062645812

感想・レビュー・書評

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  • 久々の麻耶雄嵩!
    後書きに千街さんが書いてたように、麻耶雄嵩は、最後に作り上げた世界を壊す。普通、ミステリは事件の解決とともに、救済がもたらされるのだが、麻耶雄嵩は強烈な真相を突きつけることで、登場人物および読者の世界を破壊してしまうのだそうだ。(翼ある闇、夏と冬の奏鳴曲など)

    そう考えると、この作品はそこまで世界が覆るような衝撃はない。青春ミステリという【枠】にもちゃんと収まるように感じる。
    だけど、最後、犯行を暴かれた獅子丸が烏兎に襲いかかったり、自殺したり、そんなことはなく、2人は受験勉強の日々へ戻っていくのが印象的だ。これも、ある意味静かなる崩壊だ。これまで描かれてきた彼らの少し閉塞的な、だが確かに存在した3人の青春は、目に見える終わりを迎えることなく、雪が降り積もっていくように静かに埋もれていくのだ。

  • 町の外れに聳える塔で雪の密室殺人。
    犯行は8年前に起きた事件の再現かのよう。
    高校生 烏兎は友人が巻き込まれた事件を捜査するうちに自分の平和な世界が危ういバランスで成り立っていたことを知る。
    せめて真っ白な雪が積もってくれればいいのに、
    あいにくの雨で。

  • 傑作にして問題作『夏と冬の奏鳴曲』に出てきた烏有さんの弟、烏兎が主人公の物語。
    前作や、その他の作品との繋がりは全くなく独立したものとして読むことができます。

    それまでの作風とは一味違い、学園ミステリの様な展開ではあるものの、軽くならずに暗澹とした雰囲気が包んでいるのが麻耶雄嵩らしい。

    そして何より特筆すべきは本書の構成だろう。
    冒頭にいきなり13章を持ってきてメインである密室トリックを解明してしまうのだ。
    しかし、これが果たす役割は大きい。
    これにより読者は否応なしに真相とはずれた位置に視点を置かざるを得なくなるのだ。
    ここら辺の技の妙は流石といったところ。

    そしてこれは初期の麻耶作品に共通することだが、単純に読み物として面白いのだ。
    本作で言えば、生徒会での主人公たちの暗躍。これが非常に面白い。

    しかし、麻耶作品の中ではインパクトに欠けてしまうのは事実。
    やっぱり『夏と冬の奏鳴曲』の印象が強すぎて…

  • 兄より探偵向いてるんじゃないか烏兎。
    スパイ活動みたいなのがちょっとキツかった。
    獅子丸父の密室トリックが気になる。

  • あぁ、この感じ…

  • ミステリ長編でじっくり再読したのは初めてかもしれない。

    トリックはあってないようなものだが、二度めでもドキドキワクワク感のようなものが楽しめた。青春小説として流行らないだろうか。

  • 痛くて苦い青春ミステリ

  • 雪に囲まれた廃墟の塔で繰り返される密室殺人。烏有が友人の獅子丸と謎を解く。
    いきなり密室トリックの解説から始まるのには驚かされるが麻耶さんの作品にしては普通の環境。ただありえない生徒会の活動やラストの烏有に対する残酷さはやっぱりひねくれているなと思う。

  • 高校生が探偵して〜って話しで、小難しい話もなくて、読みやすいあっさり系かなと思いきや、やっぱり最後はすんなり終わらない。ドロドロだし絶望的だし悲しい。でもそんなのが好きー!

  • 廃墟の塔で密室殺人が起きるというと、ミステリ的な異空間を想像してしまうが、本作の舞台は地方の田舎町。主人公の鳥兎たちは高校生で、事件の起きたその塔も町境にある廃墟のひとつ。
    異色なのが特徴の麻耶作品のなかでも普通であり、そういう意味でならこれも「異色作」か。

    物語は、塔の事件の調査とともに、生徒会の調査室として、学校で暗躍する存在や裏切り者を探すという筋がある。この学校、やけに政治的で、調査室の仕事はちょっとしたスパイ活動か何かのよう。読みながら、いったいどうやってこれを事件に絡ませるのかな?という興味を覚えていた。

    本作は、ミステリ的には印象が薄い。しかし、夏冬で感じた青春小説としての面が最も現れている。三人称なのだけど、妙に陳腐で、でも感傷的な文体は、視点人物である鳥兎の気持ちを表現するためなのかと疑うくらい。

    千街さんの解説が良かった。
    ミステリの<謎の解決=作中人物の救済=読者の癒し>という意図的に繰り返される微温的な構図をとらない麻耶作品。
    謎の解明によって、アイデンティティの崩壊、世界の崩壊が起きても、日常である本作だと、どこかに行くことも出来ずに続いてしまう。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。京都大学工学部卒業。大学では推理小説研究会に所属。在学中の91年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューを果たす。2011年『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。15年『さよなら神様』で第15回本格ミステリ大賞を受賞。

「2023年 『化石少女と七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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