- Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062645812
感想・レビュー・書評
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町の外れに聳える塔で雪の密室殺人。
犯行は8年前に起きた事件の再現かのよう。
高校生 烏兎は友人が巻き込まれた事件を捜査するうちに自分の平和な世界が危ういバランスで成り立っていたことを知る。
せめて真っ白な雪が積もってくれればいいのに、
あいにくの雨で。 -
傑作にして問題作『夏と冬の奏鳴曲』に出てきた烏有さんの弟、烏兎が主人公の物語。
前作や、その他の作品との繋がりは全くなく独立したものとして読むことができます。
それまでの作風とは一味違い、学園ミステリの様な展開ではあるものの、軽くならずに暗澹とした雰囲気が包んでいるのが麻耶雄嵩らしい。
そして何より特筆すべきは本書の構成だろう。
冒頭にいきなり13章を持ってきてメインである密室トリックを解明してしまうのだ。
しかし、これが果たす役割は大きい。
これにより読者は否応なしに真相とはずれた位置に視点を置かざるを得なくなるのだ。
ここら辺の技の妙は流石といったところ。
そしてこれは初期の麻耶作品に共通することだが、単純に読み物として面白いのだ。
本作で言えば、生徒会での主人公たちの暗躍。これが非常に面白い。
しかし、麻耶作品の中ではインパクトに欠けてしまうのは事実。
やっぱり『夏と冬の奏鳴曲』の印象が強すぎて… -
あぁ、この感じ…
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ミステリ長編でじっくり再読したのは初めてかもしれない。
トリックはあってないようなものだが、二度めでもドキドキワクワク感のようなものが楽しめた。青春小説として流行らないだろうか。 -
痛くて苦い青春ミステリ
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高校生が探偵して〜って話しで、小難しい話もなくて、読みやすいあっさり系かなと思いきや、やっぱり最後はすんなり終わらない。ドロドロだし絶望的だし悲しい。でもそんなのが好きー!
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廃墟の塔で密室殺人が起きるというと、ミステリ的な異空間を想像してしまうが、本作の舞台は地方の田舎町。主人公の鳥兎たちは高校生で、事件の起きたその塔も町境にある廃墟のひとつ。
異色なのが特徴の麻耶作品のなかでも普通であり、そういう意味でならこれも「異色作」か。
物語は、塔の事件の調査とともに、生徒会の調査室として、学校で暗躍する存在や裏切り者を探すという筋がある。この学校、やけに政治的で、調査室の仕事はちょっとしたスパイ活動か何かのよう。読みながら、いったいどうやってこれを事件に絡ませるのかな?という興味を覚えていた。
本作は、ミステリ的には印象が薄い。しかし、夏冬で感じた青春小説としての面が最も現れている。三人称なのだけど、妙に陳腐で、でも感傷的な文体は、視点人物である鳥兎の気持ちを表現するためなのかと疑うくらい。
千街さんの解説が良かった。
ミステリの<謎の解決=作中人物の救済=読者の癒し>という意図的に繰り返される微温的な構図をとらない麻耶作品。
謎の解明によって、アイデンティティの崩壊、世界の崩壊が起きても、日常である本作だと、どこかに行くことも出来ずに続いてしまう。