英国庭園の謎 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062648912

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらずの安定感。
    お馴染みの登場人物に大分親近感も出てきたので、火村シリーズは読み進めるごとに自分の中の評価が上がっていってる感じ。
    今回の短編集は、パターンから外れたストーリーが多く、それも楽しめた要因かな。
    火村はクールでカッコイイ。

    ・「雨天決行」…専門用語は知らなかったけど、ウテンの謎解きは面白かった。でも一番ツボったのは、被害者がエッセイで中学時代からの友人のことを「本当に信頼できる友」と書いていて嬉しかった、とその友人が証言した時のアリスの反応。
    「心暖まるいい話ではないか。私と火村の間にはないことだ。」
    いやいや、そういう言葉で確かめる必要のない信頼感があなたたちの関係性の良さであってだね…と諭したくなった。

    ・「竜胆紅一の疑惑」…警察沙汰じゃない珍しいパターン。ファンって過激にもなるよね…。完成した長編を出版社に預けておいて出版するなと命じる気持ちが全く理解できなかった(笑)。

    ・「三つの日付」…アリスが重要参考人(容疑者のアリバイ証人)になるっていう、なかなか無い趣向。ちょっと都合良すぎるかなぁ、とは思ったけど、楽しめた。ていうか手帳の「カナリアを返す」ってメモが妙にリアルで笑った。有栖川さん実際に手帳を日記代わりにしてるのかしら。

    ・「完璧な遺書」…倒叙ミステリ形式は火村シリーズを読んできた中で初めてで新鮮だった。偽装するほどにボロも出やすくなるからやめなよ…と思っちゃいました。

    ・「ジャバウォッキー」…事件を未然に防ぐ、っていうこれもなかなか見られないパターン。犯人との間の妙な信頼感が良かった。火村優しい。教育者でもあるからね彼は。
    なんかよく分からないけど火村に言われるままに無茶するアリス、なんなの?(褒めてる)

    ・「英国庭園の謎」…暗号モノ。本書の中ではオーソドックスなストーリー展開。暗号解く気は更々なかったけど、火村シリーズでは珍しく真っ当な暗号だった。よく作ったなぁ…と思ったけど、別に各文字の使用回数は一度きりってルールじゃなかった。なんだ。
    被害者がクソだった。


    それにしても本当にアリスの推理は毎度毎度かすりもしない。

  • 火村英生×有栖川有栖シリーズ7作目で国名シリーズ4作目です。全6編の短編集です。背表紙に全部アタリと書いてあるとおり、短編とは思えない構成で楽しめます。ただ、5話目の「ジャバウォッキー」面白いなぁ、と思って読んでたら突然終わり。え、ここで終わりなのかぁという感じでした。個人的には4話目の「完璧な遺書」が、殺人犯の目線から描かれる、有栖川シリーズには珍しい書き方が新鮮で良かったです。

  • 6編の短編集。
    「雨天決行」
    ある雨の夜、瀕死の女性が公園で発見される。彼女は間もなく息を引き取るが…。彼女が前日に発した言葉、「ウテンケッコウ」の意味とは…?
    「竜胆紅一の疑惑」
    誰かに命を狙われているという作家からの依頼で、火村助教授と一緒に竜胆紅一の家に向かった有栖…。情景が流れるように浮かび、面白く読めたが、自分ではサッパリ推理できなかった。火村助教授の推理はいつも論理的でなるほど…とうなづいてしまう。
    「三つの日付」
    殺しの容疑者の男のアリバイを崩せるか?相変わらず火村助教授の洞察力が光る。
    「完璧な遺書」
    犯人目線の一人称で殺人後の偽装工作の様子が語られる。真実を知る者は犯人のみ。そして犯人は完璧な遺書を偽装して自殺に見せかけるが…。火村助教授の推理には隙がなく、まるで偽装の様子を見ていたかのように犯行の一部始終を暴き出す。
    「ジャバウォッキー」
    精神を患った犯罪者。彼は世の中をあっと言わせる大事件を起こしてやる、と有栖と火村助教授に電話をかけてくる。彼が語るのは、まるで詩の世界の言葉で、常人にはとても理解できない。彼を理解して、彼の犯罪を止めることができるのか。
    「英国庭園の謎」
    暗号もの。広大な英国庭園を所有する主人の家に招待客が集められ、庭園に隠された宝物を探し出すというゲームに興じている間に主人が殺される。全員にアリバイはない。火村助教授とアリスは、警察の捜査に加わったが、宝物と犯人を見つけることはできるのか…?この暗号は、作るのはそうでもないかもしれないが、解くのはかなり難しい。物語のなかで、色々な暗号についての説明があり、勉強になる。また、英国庭園とは何か、その定義についても勉強になった。

  • 「雨天決行」
    公園で殺されていたエッセイストの女性。訃報を聞きつけてやってきた担当編集者、前日会っていた友人、懇意にしていたレストランのオーナーの中で犯人は誰だ、という話。エッセイストの女性が"ヴ"と”ブ”の使い分けにこだわりのある人で、途中で挟まれているエッセイの違和感がすごいw それが鍵になってのダジャレ落ちっていうのがまたなんかちょっとふふふとなる話でした。

    「竜胆紅一の疑惑」
    大御所小説家が誰かに殺されそうだと疑心暗鬼になっているといわれ、駆り出される火村とアリス。当初は家族が疑われていたんだけれども、直近の放火について、隣に住んでいるおばあさんに話を聞きに行くと…。
    これはねー、じわりと怖い。妄執がベースになってるのかな。。

    「三つの日付」
    この話しってる!ってなったのは麻々原さんで読んだのかなあ。
    ラブホテルで見つかった絞殺死体の犯人を逮捕したところ、俺にはアリバイがあると言い張る犯人。そのアリバイに実はアリスが絡んでいて…という話。
    写真が出てくるんですけど、ここに赤星楽が登場するんですねえ。なんだかちょっと切なくなる。

    「完璧な遺書」
    犯人視点の話で、勢いで殺してしまった恋する相手の死を自殺に偽装するために、完璧な遺書を作って、その恋の相手が恋していた別の人に送りつけて、自分はアリバイ工作までしたのに、家に火村が刑事とやってきて、一騎打ちになる話。
    いつもと視点が違うだけで、火村の印象が結構違って見えましたねえ。まあそれぞれの視点の中には、それぞれの思いが混じってるからなんでしょうけど。

    「ジャバウォッキー」
    過去に火村が捕まえた犯人からなぞかけのような電話がかかってきて、その犯人がまた何かを仕掛けたというのを知り、火村とアリスで追いかける話。珍しくタイムリミットが明確にあって、アクションっぽいと言いますか、ただの謎解きじゃない感じがまた面白かったなあ。

    「英国庭園の謎」
    これこそ麻々原さんの漫画で読んでますね。
    宝探しを仕掛けた英国庭園のある屋敷に住む隠居したおじさんが殺されて、犯人は宝探しに呼ばれていた人の中にいる、という話。
    英国庭園の定義の話が途中で出てくるんですけど、それが面白くて。かなり行き過ぎてる人たちは、庵を庭に立てて、わざわざどこからか人を連れてきて、ハーミットのように暮らさせたりしてる人とかもいたとか。人を飼うみたいな発想がもうさすが大英帝国…とつい思ってしまったりしたのでした。

    あとがきがねー、毎回面白いんですけど。今回は「雨天決行」で出てきた相合傘ネタで、アリスが遠い昔に、私にも記憶がある、みたいな一文があるんですけど、それに対して、どうせ火村でしょなどという噂を耳にしましたが、というようなことが書いてあって、ファッ?!ってなったのでした笑
    深い意味はないのかもしれないですけど、やっぱり腐の女子たちのファンがいっぱいいることを分かった上てあえてそういうことをしているのだろうか…どうなんだろうか…とすごい気になったのでした。

  • 国名・火村助教授シリーズ。
    かなりライトな感覚でした。
    表題作は、集中力が切れかかったところに、ガツンと結末が。もっと考えれば解けたのにぃー(いやそれでも解けなかった筈)と、逃した魚の何とやら、地団駄踏みました。

  • なかなか面白かった。完璧な遺書には有栖が出てこなくて火村先生も全然出てこないから趣向が違うのかと思いました。個人的には雨天決行が「へぇ~」という感じで編集作業に「ウテン」なんてあるんですね。

  • 公園の四阿でエッセイストが殺されたー雨天決行
    スランプ中の作家が抱いた疑念ー竜胆紅一の疑惑
    容疑者のアリバイを証明するのはアリスのサインー三つの日付
    殺人者が遺書を偽造するー完璧な遺書
    かつて捕まえた男が電話をかけてきたージャバウォッキー
    英国庭園での宝探し中に主催者が殺されたー英国庭園の謎
    以上6本を収録

    どれも趣向の違う贅沢な編集で、飽きません。
    作家さんだからこそ思いつく内容と言えましょう。
    博識でないと挑戦できませんね。(あたりまえ)

    後書きで喜国さんも書いてらっしゃいますが、本格ミステリで短編というのは難しいものなのだと思います。
    スパっと短く刈り込んであるし、火村センセイとアリス先生が魅力的なのでー特にアリスせんせの語り口がコミカルでするする入ってきちゃうのでーつい先を読んでしまいますが、
    もう少し詳しい内容がほしかったなぁなんて思うところもあり。(このままだとアレコレ疑問を挟む余地があるんだもの)

  • 優雅な英国庭園に隠れた秘密と悪意ほか
    『文字』、『文章』そして『稚気』を扱った6つの謎解き。
    トリックのアイデアが日常的に使うものから得られたものも多く、日常の謎っぽい読み味でサクサクつまめる。

    火村英生と作家アリスの国名シリーズ四作目。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    資産家の人知れぬ楽しみが、取り返しのつかない悲劇を招く表題作。日本中に大パニックを起こそうとする“怪物”「ジャバウォッキー」。巧妙に偽造された遺書の、アッと驚く唯一の瑕疵を描いた「完璧な遺書」―おなじみ有栖川・火村の絶妙コンビが活躍する傑作ミステリ全六篇。待望の国名シリーズ第4弾。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    さあさあ。
    満を持しての登場ですよ!

    え?何で?と思った人、正解です!
    何でかって個人的に「英国」と名のつくものが好きなだけだからです(*´∀`*)

    英国庭園。
    ジャバウォッキー。

    この言葉から連想されるもの...
    そう、「鏡の国の有栖」違った「鏡の国のアリス」ですよ。

    わざと間違ったけど当然作者は意図してるよね(*´∀`*)

    このほかにも、

    「雨天決行」
    「竜胆紅一の疑惑」
    「三つの日付」
    「完璧な遺書」

    と、盛りだくさんの短編です。

    特に「三つの日付」では、「海のある奈良に死す」で亡くなった
    アリス(有栖川の方ね)の作家友達、赤星氏がアリバイ工作に一役買います。

    ちょっとね、こじつけと言うか無理矢理感はあるけどね、
    この赤星氏が生きた証みたいな、ちょっとぐっとくるものがありました。

    「ジャバウォッキー」もなかなかスリリングな作品でした。
    アリス(有栖川以下略)が点と線を繋ぐために車を飛ばして大活躍です。
    ただ復讐劇としてはちょっとあっさりしすぎかなぁ...
    いやいや事件を未然に防ぐことが大事だよね、と思いつつ、
    多少の地味感は拭えずほんとにごめんなさい(土下座)

    で、表題にもなっている「英国庭園の謎」。

    これは発想がすごいなと思う!
    なるほど英国庭園が登場する意味もちゃんとあり。

    これは007的に暗号解読するミッションが課されるのですが、
    まぁ、暗号って答えありきなんだとは思うんだけど、
    でも、私にはちょっと分からなかったな~。

    謎解きされても検証しようとは思えないめんどくささでした(´Д`。)


    どれもよかったんだけど、これはやっぱりアリスと火村先生の勝利かな。
    この二人が出ていなかったら、ちょっと食指動かないかも知れない。

    なんかどれも出来レースな感じがしちゃって...
    ほんと作り手の努力を無視したことを言うよね...
    こんな読者にはなりたくないわぁ←お前だ

    アリスと火村先生はやっぱり大好きだ~。

    と言うわけで次の作品は「朱色の研究」!
    これもまだ、ホームズリスペクトの英国風作品なのかな?

    楽しみでーす!


    (あ、でも、ユニオンジャックがシンメトリーじゃないってことは知らなかった(´Д`。))

  • 資産家の人知れぬ楽しみが、取り返しのつかない悲劇を招く表題作。日本中に大パニックを起こそうとする“怪物”「ジャバウォッキー」。巧妙に偽造された遺書の、アッと驚く唯一の瑕疵を描いた「完璧な遺書」―おなじみ有栖川・火村の絶妙コンビが活躍する傑作ミステリ全六篇。待望の国名シリーズ第4弾。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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