破線のマリス (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062649070

感想・レビュー・書評

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  • マリスとは、悪意という意味。
    この中では、テレビなんで、報道側の意図的な作為または、悪意を指してる。
    今でも、インタビューとかのある部分だけを切り取って、悪もん扱いするとか良くあるもんな。
    主人公は、一流の映像編集者。毎日のように編集室にこもって、報道番組で流す映像を編集してる。インパクトのあるように…
    結局、それがあかんかったやな。ちゃんと自分の目で見ることを忘れて…
    部分部分だけ見ずに、俯瞰的に見ないとダメって事やな。
    小説が少し古いので、テレビ機器とかも古いし、郵政省とか無くなった組織も出てくるけど、マリスなんて、今の方が、SNSとか色々あって、もっとヤバい!
    色々な情報に惑わされず、自分自身の目で、キッチリ見ないとダメやな。
    すぐ、テレビ騙される私が言うか^^;
    なかなかでした!

  • テンポの良さ、話の面白さが相まってささっと読めました。
    最初はなんの話だろうかと思いましたが、結構引き込まれてしまいました。

  • 脚本の野沢尚が自殺したんもあって「坂の上の雲」は大河になれなかったんやった

  • 2度目の読了。10代の初読時にはきっと理解出来て無かったと思う箇所が多々あり、そういった観点からも楽しめた。ストーリーはスリリングな展開の連続で一気読み。子どもの頃、小説は基本ノンフィクションでたまにフィクションがある。テレビはノンフィクションの注意書きがない場合はフィクションと信じていた事を思い出しました。

  • テレビ業界に身を置いていた野沢氏なればこそという多分(私は専門的なことを知らないけれど読んでいると感じる)専門的な内部告発小説。
    タイトルの「破線」はテレビ画面を構成する525本の走査線、「マリス」は報道する側の意図的な作為、悪意」

    報道側、特に映像を伴う報道がその気になれば無実の人物を殺人事件の犯人にしてしまう事も不可能ではないかもしれない恐ろしさが迫る。

    作品の主人公瑤子は番組内で任された事件報道コーナーで過去に自らの映像編集で殺人事件解決の糸口をつかんだ功績もあり、コーナー高視聴率の立役者であるので、ややもすれば独断専行とも言える編集の仕方に上司となる者も口を出せない。
    彼女は集めたデータを自分の頭の中で整理した推察こそが事実であると確信し、その「事実」にそう映像を捏造さえしてしまうのだ。
    勿論彼女の驕りであるけれど。

    私も日常的にテレビから溢れる情報の中に身を置いて、世間の事件の何が真実なのか自分で考えるよりも送り手の考察を正しいものとしてしまいがちな事に改めて反省心と脅威を感じる。

    本書の中扉に「華氏四五一」の一節が引用されています。
    「テレビジョンは現実そのもので、直接的で、大きさを持っている。 こう考えろと命令してくる。正しいことであるはずだ。そう思うと、正しいように思われてくる。あまりにもすばやく、あまりに強引に結論を押しつけてくるので、誰もがそれに抗議している余裕はない。 ばかばかしい、と言うのがせいぜいで。」

    うーーーーーん、怖い!

    郷原 宏氏の巻末の解説に
    「活字でなければ得られない小説的な感動」という言葉があった。
    ああ〜、そういう感覚ってあるなぁ。
    同じ作品でもTVドラマで観る面白さと原作小説を読んだ時の面白さに何か差を感じるのはこの言葉で集約された感じだった。

  • 冒頭から中盤まではわくわくするような展開で期待が高まったが、
    主人公が暴走を始めた辺りからどんどん冷めてしまった。

    ミステリーよりもメッセージを優先した結果かと。
    面白かったけどちょっと残念。

  • 野沢尚のデビュー作でもあり、のちに映画化されたときには脚本も担当している。
    タイトルにある「マリス」とは英語の法律用語で<悪意>という意味である。

    メディア関連の仕事をしていただけあって、主人公を取り巻く環境や状況、描写にはリアリティがあった。
    中盤までは一気に読ませる展開で、どんな結末が待っているのだろうと思っていたら、後半はつじつま合せのような展開で残念な思いをした。
    前半部分が面白かっただけに余計にそう感じたのかもしれないが。
    主人公が怯えていた存在が明らかになったときには「えっ?」となる結末で驚かされた。
    映像は果たしていつも真実を伝えているのだろうか?
    制作側に明確な意図があれば簡単に真実は作られてしまうものだ。
    ドキュメンタリー番組などにも同じことが言える。
    映像が自ら持つインパクトや影響力の大きさを考えると、どう伝えるかも大切だが何を伝えたいか・・・がより大切なのではないだろうか。

    冒頭部分はかなり強いインパクトがあった。
    後半になって失速してしまったかのような展開が残念でならない。
    物語の中の描写が、まるでシナリオのように映像が浮かんでくるものであったことが印象に残った。

  • これは是非と言うことでお勧めされての一読。昭和の時代のビデオテープを使った映像編集が鍵となるミステリー。時代が変わり、機器も最新となっていっても、同じようなことは起きているのかなと。現代のフェイク動画などにも通ずる闇と狂気を感じる。

  • 以前途中まで読んだ時は、私立大学と郵政省の癒着問題が発覚したあたりで終わっていたので、お堅い社会派ミステリーなんだと思っていたらちょっと違った!驚いた。

    メディアの偏った報道の怖さもさることながら
    主人公や麻生がどんどん変わっていく様を見て、どんな人でも簡単に狂ってしまうのかなと思うと怖かった。(ジョーカーみたいだな)
    人間が結局1番怖い。

    そして日常を盗撮していたのがまさかあの人だったなんて…。なんて皮肉なんだろう。

    個人がネットで発信できる今と比べると、どうしても時代背景は古く感じてしまいますが、これからも普遍的なテーマだと思います。

    野沢さんって元々脚本家なのか。
    「眠れる森」「その男、凶暴につき」あたりは元々見たいと思ってたし、今度見てみよう。

  • 少し時代背景が古いが、ミステリーのドキドキはあり。結局のところ事件が解決していないので、弁護士殺人はいわゆるマッチポンプ、殺人そのものよりも、殺人事件疑惑をメディアでスキャンダル化し案件を頓挫させる目的で内部告発風のビデオが作られたのだと思う。
     そこに踊らされる人々は文字通り、全員人生が狂うが、そんなことは真の権力者にはゴミくらいのもので、踊らされてる方も自業自得、皆どこかそれを解って生きている。
     利用して利用される。マリスを持ったメディアとタダ見てる視聴者。報道と視聴率。自分達の正義や真実とは何か、を撮る側と撮られる側(見せられる側)の構図で問いている。
     が、正直、終盤は前半にあったリアリティがなく「皆必死なメディアは、だけどインチキ」という印象しか残らない。それが作者の狙いなのかな?個人的には素晴らしいドキュメンタリー映像や映画もあると思うので、「目に映るものを疑って」というメッセージに少し冷めてしまった。

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