現代思想の冒険者たち 15

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 69
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062659154

作品紹介・あらすじ

なぜ人類は真に人間的な状態に歩みゆく代わりに一種の新しい野蛮状態に落ちこんでゆくのか-付・主要著作ダイジェスト キーワード解説 略年譜 読書案内。

感想・レビュー・書評

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  • 【由来】
    ・2015/10/27北大の図書館で

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 中央図書館で読む。やはり、この図書館はいいです。興味深い本でした。哲学関係の本は苦手です。単純に、そんなものを読む知性がないのです。例外は存在します。この本は、そんな例外に属します。もちろん、理解しているかどうかは疑わしいです。非常に丁寧な本です。大抵の哲学者は、親切ではありません。しかし、この人は親切です。多くの人が分かる言葉で書いています。ただし、一つ間違いがあります。フランクフルト大学です。別に、市民が立てた大学ではありません。もちろん、ブルジョアも、市民に含まれます。その意味で間違いではありません。ただし、不正確だと思います。また、音楽への関心は、本格的なものなんですね。これには、納得です。さて、このシリーズも、どうにか読破できそうです。これから、どうしましょう。ここで紹介された人物の関連本を読むことにしましょう。理解しようと思う必要はありません。哲学関連の本を読むなんて、余程暇なんですね。

  • アドルノという素晴らしき思想家の思索を、半可通が醤油をぶっかけまくって独自調理してしまっている
    一般向けの入門書だからしょうがないが、一般が何も知らないと思って曲解偏見を織り交ぜるのはよくない

  • アドルノといえば、戦争とアウシュヴィッツに傷つけられ、古きよき文化の廃墟に立ちつくす「憂鬱な知識人」のイメージが思い浮かぶ。だが著者は、こうしたイメージに尽きないアドルノの姿を描こうと試みている。絶望に埋没してしまうというある意味で安易な道を退けるアドルノの強靭さが印象的だ。

    第3章と第4章では、アドルノとベンヤミンとの関係が論じられる。アドルノはベンヤミンの『ドイツ悲劇の根源』から「自然史」の概念を借りている。ベンヤミンの秘教的思想の中の「自然史」は、あらゆる被造物の「受難史」として理解されている。アドルノはそれを、あらゆるものが「変移」(Vergängnis)してゆく「自然-歴史」として捉えなおす。

    こうした発想は、ホルクハイマーとの共著『啓蒙の弁証法』、アドルノの主著『否定弁証法』、さらに遺稿となった『美の理論』にも受け継がれてゆくことになる。ホルクハイマーとアドルノは、ホメロスの『オデュッセウス』を手がかりに、啓蒙的理性の内にひそむ野蛮を読み取るとともに、希望への道筋を示そうと試みる。彼らが注目するのは、「昔々のことでした……」という「メルヒェン」の常套句である。どんなに悲惨な出来事も絶望的な事態も「物語る」という振舞いの中で「変移」を被ることになる。ただしそれは、忘却することではない。この現在の悲惨が移ろいゆく彼方を遠い追憶のように喚起する振舞いである。

    さらにアドルノは、自然史のうちに希望を聞き取るのと同じような仕方で、移ろいゆき死滅する〈ヒュレー〉の歴史のうちに〈解放〉を読み取ろうとしている。アドルノはそこで、同一性と非同一性を対置している。ただし非同一性は単一の概念ではなく、むしろさまざまな「同一性」をもつ概念の「布置連関」(Konstellation)として開示されるものとして理解されなければならない。アドルノは非同一的なものを、同一性の彼方に求めるのではなく、同一性の覆いのもとでいわば隠されつつ生きているものとして理解しようとしている。そうした非同一的なものに出会おうとする試みが、『否定弁証法』にほかならない。

  • なぜか大学の教授からやけにアドルノを推されているので手始めに…。問題意識もわかるし、やりたいこともわかるんだけれど、なんでそれをこういうふうに小難しく表現したがるのかがよくわからない…。全体から個に向かう思考はわかりやすい。否定弁証法とはよくいったものだけれど、何も否定されてなんていないのだ(現代音楽以外)。

  • 現代思想の冒険者たちに収められたアドルノの概説書だが、よく出来ていると思う。もともとこのシリーズはバフチンだとかクーンだとかホワイトヘッドだとか、マイナーといえばマイナーな人たちまで掬いだす上に、相当量の内容も確保されているので非常にすばらしい企画だった。少なからず名著と呼ばれる評価をされた本もあるが、この本もそのひとつに数え上げられる。惜しいことには、人気の哲学者は新装版や学芸文庫化がなされているのにたいして、アドルノのこれは未だに廃刊状態が続いていることか。しかしこの記事を書いてる2007年4月では、アマゾンでは定価より安価に古本が入手可能なのでそちらを参照されたい。

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著者プロフィール

1962年、兵庫県丹波篠山市生まれ。2014年10月から大阪文学学校校長。2016年4月から京都大学教員。
詩集:『沈むプール』、『バイエルの博物誌』、『言葉の岸』(神戸名ビール文学賞)、『ホッチキス』、『家族の午後』(三好達治賞)、『闇風呂』、『ほとぼりが冷めるまで』(藤村記念歴程賞)
主な詩評論集:『アイデンティティ/他者性』、『言葉と記憶』、『ディアスポラを生きる詩人 金時鐘』、『石原吉郎』、『「投壜通信」の詩人たち』(日本詩人クラブ詩界賞)

「2023年 『京大からタテ看が消える日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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