お面屋たまよし 七重ノ祭 (YA! ENTERTAINMENT)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062694988

作品紹介・あらすじ

妖面、なりたいすがたになれるというそのお面は、面作師の中でも、腕のいい者だけが、作れるのだという。妖面は、諸刃の剣。面をはずせなくなれば荒魂化し、人として生きていくことができなくなる。それでもなお、人々は、今日もお面屋を訪れる――。

『他人のふり』……唯一の血縁である父とそりが合わず、十年前に家を出た六助は、久しぶりに会った幼なじみに、父がそう長くはないと告げられ……。

『小天狗たちの争いごと』……太良と甘楽の偵察係を外されそうになった小天狗の迅雷は、ほかの候補者と競い合い、勝ち抜かなければならなくなって……。

『七人の従者たち』……同盟相手に裏切られ、領主である父と母、そしてこれまでの生活の全てを失った藍姫は、たった七人残った従者とともに、庇護を願って百蜂ヶ岳を目指す。

自分以外の誰かになれる特別な面、妖面がつむぎだす奇妙な縁を描いた、時代ファンタジー第4弾!

感想・レビュー・書評

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  • 妖面をかぶる代償として、荒魂化していく人たち。「こんなはずでは」と思う人もいれば、むしろ望んでその姿を手に入れようとする人も。荒魂化のカギは、面の力で得る姿に自分の人生を委ねようとするかどうか、かな。

  • 救われないエンドだからこそ、いっそ清々しいものがあるなと思った。

    それにしても時代や文明を遡るほど子供の精神年齢って高まるのかな。そうでないと生きていけないからか。13、4歳で職能持ってちゃんと生きてる。

  • あっという間に読了。
    荒魂化しないで終わるとほっとする。

    自分なら面を使いたいかな、どんなことに使うのかなと思うけど、思いつかず。それはしあわせなことなのかもしれない。

  • ・父親の愛情を受けられずさみしい思いをしてきた男が妖面で別人になりすまし会いにいくと。
    ・迅雷は小天狗たちによる第一回太良・甘楽監視者オーディションに臨まなければならなくなった。
    ・国が滅び逃亡の身の藍姫(お藍)と彼女を守る七人の従者たちは正体を隠すことのできる妖面を求め、たまよしの二人もともに旅をすることとなる。お藍さんのその後を知りたくはある。

    ▼たまよしに関する簡単なメモ(一巻目からの累積)

    【亥緒利/いおり】「お面処やましろ」の内弟子。丸刈りでいかつく強い。佐和のあんじゃ。新居浜村の祭でたまよしの二人組と出会う。
    【一太郎】新太の村で年貢に関する一切をを取り仕切っている人物の息子。理路整然としていて口も立つ。子どもたちのリーダー役だが末蔵はちょっとやっかみ。
    【イヌビエ】隠さまの側近。小天狗たちの教育係でもあり、彼を苦手にしている天狗は多い。ある意味怒るのが仕事とか。元は他の山の主だったというウワサもある。いつもユリの花の匂いがする。アニメ化するなら声優は津田健次郎さんあたりがよさそう。
    【伊部のじいさま/いんべのじいさま】渦黒村の全てを取り仕切っているまとめ役。
    【渦黒村】万吉の生まれ故郷。鬱々とした死後の世界のような村と万吉は思った。
    【うとうと病】うとうとしている間に年月だけ経ってしまいその間の記憶がほとんどないまま老いて死んでしまう。琵琶法師が吉蔵たちに語った話。
    【お糸】荒魂化したいがゆえに妖面を買おうとしている女。
    【お勝】回船問屋の娘。器量がよくなくまわりは案じているが当人はさほど気にしていない。好奇心が強く異国の本を読んだりするのが好き。妖面に興味を示したのも美人になりたいというよりは美人は世界をどう見ているのか知りたかったから。けっこう大物やなあと思う。《自分はきっと、知らないことを知ることに惚れっぽいのだ》第一巻p.103
    【お菊】勘助の許嫁。領主の菅原のところに手伝いに行ったところを次男の半次郎に見初められた。実は今の生活がイヤで抜け出したいと思っていた。ぼんやりした底なし井戸のような女だと迅雷は思った。
    【お七】万吉の妹。身体が弱く七歳まで生きられないだろうとついた名前がお七。生まれ故郷の渦黒村(うずくろむら)に(生きていれば)残っている。
    【お鶴】三郎の妻。最近あまり愛されてないような気がして気分が上がらない。
    【お初】吉蔵と仲良くなりたがっている少女。
    【お巻】沼入村の房之助の娘。十三、四歳くらい。危ないところを仁王次に助けてもらって惚れたのでずっと求婚している。物怖じしないタイプ。迅雷のことを「らいぼん」と呼ぶ。
    【お葉】吉蔵の妹。
    【お藍/おらん】藍姫。国が滅び両親兄弟皆死に旅に出た指名手配中の姫。十五歳。逃亡者一行のリーダー役が十七歳の虎久。十六歳の三津親(みつちか)。十四歳の二郎丸、五郎丸、雪重(ゆきしげ)、三郎左衛門は武士ではなく隠密の子。十二歳の志乃久(しのひさ)は虎久の弟。隠密の四人はたまよしの二人と意気投合する。雪重は隠密にしては陽気で愛嬌のあるタイプ。目的地は協力者瀧川勝政の使いが待つ百峰ヶ岳。同盟を一方的に破り国を滅ぼした男の息子は元婚約者の長谷敦規(はせあつのり)。
    【御招山/おまねきやま】天狗がいる。
    【お面処やましろ】裏の屋号は「奇楽苑」。亥緒利、佐和が修行中。師匠は八五郎(やごろう)。
    【お面屋】表の屋号のときは祭が書き入れ時でほぼ香具師の感じ。
    【お面屋たまよし】裏の屋号は「魔縁堂」。太良、甘楽が修行中。師匠は仁王次。
    【面作師/おもてつくりし】《人間の世界と山の世界の境界をいく者たち》第一巻p.15
    【隠さま/おんさま】御招山の天狗のリーダー。天狗を人間の姿に変える神通力を持つ。アニメにするなら声優は森川智之さんで決まりって感じ。
    【勘助】途方に暮れていた迅雷の面倒を見てくれたお人好しの男。お菊の婚約者。
    【甘楽/かんら】「お面屋たまよし」の一人。幼い頃御招山に捨てられていたところを隠さまに育てられた。年齢的にはもうじき14歳で「若衆のなりかけ」くらい。長くない髪を無理やりひとつにくくっていて、顔のパーツが大作りで派手な印象。ちょっと短期なタイプ。ときどき太良に逆らいたい。
    【吉蔵】大名の家臣の息子だったが父が戦で大きなしくじりをしたとかで打ち首になり没落。人々のほどこしにすがって生きている。
    【呉葉】吉蔵の母。
    【佐吉】吉蔵の弟。
    【三郎】お鶴の夫。瞳の色が薄いのが綺麗でお鶴は気に入った。声もやわらかくささやくようで心地よい。鋳かけ職人。
    【佐和】「お面処やましろ」の内弟子。髪が長く幼い感じ。ふだんは気だるくだらだらしている。新居浜村の祭でたまよしの二人組と出会う。
    【時代背景】小さな戦があちこちで起きているらしい。全体に人々は貧しいが切羽詰まったひどい暮らしをしているというほどではない。雰囲気的には戦国時代初期か室町時代末期の感じか。
    【新太】農民の子ども。もうじき十三歳。みばえがいいようでちょっとモテモテ。望洋とした性格でその気になればけっこう大人物になれるんじゃないかと思う。《面が好きなんじゃなくて、目にしっかり入ってくるものが好きなだけ》第二巻p.24。
    【迅雷】小天狗。太良、甘楽を見張るよう隠さまに命じられているが二人が赤ん坊だった頃から知っているとはいうもののコミュニケーションはなかった。天狗は寿命が長いので二人より年上だが人に変化したときの見た目は十歳くらいの少年。人の姿をしたときは人と同じ能力しか持てずとても不便。好物は金平糖や南蛮菓子のボーロ。イメージ的には「うる星やつら」のテンちゃん。いまアニメにするなら声優は釘宮理恵さんかな?
    【末蔵】新太に兄貴分風を吹かせているわりと身勝手なヤツ。自分の境遇に不満がある。孤立しやすいタイプ。もうすぐ十五歳。
    【染助/そめすけ】万吉の幼馴染み。成長するにしたがって陰気になっていった。
    【太良/たいら】「お面屋たまよし」の一人。幼い頃御招山に捨てられていたところを隠さまに育てられた。年齢的にはもうじき14歳で「若衆のなりかけ」くらい。洗いざらしの髪を耳が隠れるか隠れないかくらいの長さにしている。飄々として落ち着いているタイプでどちらかといえば兄の役割。眠りが深い。
    【富田屋】古手屋。お鶴が修繕の仕事をもらっている。
    【虎久/とらひさ】藍姫のお付きの武士。藍姫のふたつ上の十七歳。勇猛でかつ藍姫の扱い方に長けている。
    【仁王次/におうじ】面作師(おもてつくりし)。隠さまの昔馴染み。太良、甘楽を育てた。表の名前が「たまよし」。今年三十九歳だが年齢不詳の存在になりつつある。アニメ化するなら声優は・・・軽いところも重いところもある大塚明夫さんあたりかな?
    【呑/のん】神域にしか生息していない飛べない鳥。とても素早い。
    【白眉山】頂上付近に仁王次の工房がある。
    【馬借/ばしゃく】馬で荷物を運搬する者たち。商売柄体力も腕力も強く腕が立つ。
    【ひめさま】町民の老女。名前がわからないので「たまよし」の二人はそう呼んでいる。ひめさまかどうかもわからないがそうとしか言いようのない人物。
    【古手屋】古いものを引き取り修繕したりして再度売る店。まあ、リサイクルショップってとこか。
    【兵太郎】お勝の父親と同じ通りに店を構えている反物屋の息子。その取り巻き連中がお勝のことを「ごつごつさん」とか呼んでからかうがお勝が相手にしないのを見て面白がっている。お勝の一歳年上。
    【ほどほどにな】太良と甘楽があんまりお人好しなのでとある足軽から言われたセリフ。迅雷もお天狗よしの椋呂にそう言った。
    【魔縁堂】「たまよし」の裏の屋号。妖面を売り買いするときに名乗る。
    【魔縁丸】妖面を作るのと同じ鉄を使って作られた小刀。妖面をつけた人間が荒魂化したら鳴く。
    【万吉】盗みをしようとしたところを太良に止められた。二十歳。
    【椋呂/むくろ】小天狗。迅雷の幼なじみ。おっとりした感じ。
    【八五郎/やごろう】「お面処やましろ」の師匠。弟子に暴力をふるう。寝ているときと面を作っているとき以外はだいたい酔っていてまともな人間と呼べる代物ではなくなっている。
    【夜之吉/やのきち】たぶん能役者。自分が使っている仁王次の面を少し手直ししてもらえるよう頼みに来ていた。
    【妖面】お面屋が裏の屋号で売っている、なりたい姿に変化できる面。特定の誰かになることはできない。荒魂化して人外になってしまうリスクもつきまとう。その場合、売った者が鎮めこの世から消滅させる。そういう大層な代物でありながら入手にはほとんど制限がない。
    【竜胆】迅雷の兄。大天狗の若頭。
    【六助】海岸でカニやワカメを集めて売っている。商売の相棒だった兄やんは風邪であっさり死んでしまった。父親の助蔵は岩熊村で煮売りをしているが折り合いが悪くもう長いこと会っていない。幼なじみのお葉によると病に倒れもう長くないらしい。父に会うために妖面に興味を抱く。

  • 面白い&凄くハマった小説に対して、自分の反応が大体いつも2パターンに分けられる。
    この作品面白い!やばい!ととにかく熱量と勢いがあり、中毒性を存分に感じる場合。
    もう1パターンは、熱量や勢いは控えめなものの、気付けばグイグイ読んでしまい続きが気になっていて気になって仕方がない場合。
    熱量が外に出るか内に向かうかの違いなんですが。
    反応が静と動に分かれるといった方がいいのか…?笑

    この作品は静の方です。
    気付けば世界観にどっぷり浸かってしまっています。
    気になって一気に読んでしまいます。

    今回は中編が1本入っていて、それがなんとも悲しく、切ない作品だった。
    虎久には荒魂化してほしくなかった…。
    いや、荒魂化してはいけなかったように思う。
    藍姫はこれから一人で生きていかなきゃならない。
    でも、果たしてそれが可能なのかと考えずにいられない。
    今回の様にどれだけ隠れようと見つかってしまうし、裏切りにも遭う。
    そして、藍姫の顔が割れてるのが何よりまずい。
    従者が誰もいない藍姫が生きていける未来が思い浮かべることが出来ない。
    もって数週間なのではないかなぁ。
    そうならないために、虎久は荒魂化せず留まるべきだったと思ってしまう……。
    二人ならまだ僅かばかり可能性があったかもしれないのにな。
    みんなが次々死んでしまって相当堪えたのはよく分かってる。(自分もだいぶキタから…苦笑)
    荒魂化してしまったのも分かるのと同時に何故!とどうしても、ね。

    最初の話は涙腺に来たわ〜!
    六助のお父さん不器用過ぎるよ…!
    構いすぎて女房と長男を亡くしてしまったと思いこんで、六助には長生きしてほしくてわざと可愛がらず育てたとか……。
    男って何でこう不器用なんだ!笑
    今回は妖面大活躍したな。

    迅雷の話はほっこりした。
    二人の偵察を譲りたくない迅雷可愛すぎた。
    竜胆は最初からあの結果を予想してたんじゃないかなー。
    竜胆って何だかんだ甘いし(笑)

  • 久しぶりに読んだ~。

    最後の生き延びた藍姫は、この先どうなるのかと想像する。

  • シリーズ4作目。久しぶりにシリーズ読んだけれど、少し物足りない、かな・・・。もっと太良と甘楽を楽しみたいんだけど、人が顔を変えたいと思うシチュエーションを考えるとどのみち話が暗いというか・・・。

  • シリーズ4作目。
    不思議な力を持つ妖面を商う2人の少年たちの物語です。
    妖面を買った者は自分のなりたい姿になれるかわりに、人ではないモノになってしまうかもしれないリスクも背負います。
    少年たちは妖面を買った者たちが迎える結末を見届けながら旅を続けます。
    その結末が良いものであろうと、悪いものであろうと…。

    長いあいだ父親に反発して顔を合わせていなかった男が、妖面のおかげで不器用な父親の愛情に気付く「他人のふり」にじんわりと心があたたまりました。
    その一方で、戦乱の世に生きる少年たちの生き様を描いた「七人の従者たち」では行き場のないやるせなさを噛みしめました。
    笑い合い、ふざけあった友人たちと一緒に大人になることのできる時代の尊さを思い出させてくれました。

  • 待ちに待ったお面屋たまよしの続編!
    今回も目が離せなくて一気に読みました。最後の話では珍しく同じ年頃の人と楽しくすごす太良と甘楽が微笑ましかっただけに切なかったな…

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著者プロフィール

『ユリエルとグレン』で第48回講談社児童文学新人賞佳作、日本児童文学者協会新人賞受賞。おもな作品に「お面屋たまよし」シリーズ、「死神うどんカフェ1号店」シリーズ、『メイド イン 十四歳』(以上、講談社)『墓守りのレオ』(小学館)など。「少年Nの長い長い旅」(YA! ENTERTAINMENT)と「少年Nのいない世界」(講談社タイガ)両シリーズを同時刊行して話題となった。『拝啓 パンクスノットデッドさま』(くもん出版)で日本児童文学者協会賞を受賞。

「2023年 『化け之島初恋さがし三つ巴 2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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