ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 384
感想 : 99
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062705837

感想・レビュー・書評

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  • もう、「ちゃちゃちゃ探偵団」予備軍(?!)の子どもたちが、可愛くて可愛くて♪

    「ちゃちゃちゃちゃうるさいんだよ、おまえらはー。」だの
    「けぇけぇけぇけぇ、おまえらニワトリかーっ。」だの言いながら
    引っ越してきた北九州の社宅の子どもたちと一丸となって
    姑息な大人にひと泡ふかせ、パックの秘密を死守する一本気な少年、森。

    モデル並みの美少女なのに、宇宙一訛っている強気な少女、あや。

    幼少時のトラウマから、大人の男性の前ではフリーズしてしまうけれど
    人の気持ちを繊細に察し、出来る協力は惜しまない柔和な少年、ココちゃん。

    この3人をはじめ、一致団結して、「犬や猫よりひどい扱いを受けてきた」パックを
    子どもらしい知恵とバイタリティーで守り続けようとする社宅の子どもたちが素晴らしい!

    工場→独身寮→平社員の社宅→役付社員の社宅、と広がる工業団地の独特の雰囲気や
    そういう環境だからこそ生じる大人同士のやっかみや足の引っ張り合い、
    大人の事情に理不尽に振り回される子どもの切なさも丁寧に描かれ

    それでも、大人になったらできることはきっともっとあると信じながら
    今できる反抗や冒険をあきらめず
    「バカっちゃねぇ」「ほーんと、バカなんやけぇ」と元気よく叫びながら
    自転車で坂を全速力で駆け下りていく子どもたちに
    心の中にまで爽やかな風が吹き抜けるような、素敵な1冊です!

    • すずめさん
      まろんさん、こんにちは!
      ごあいさつが遅くなって申し訳ありません(;_;)

      実は以前からまろんさんの本棚をこっそり覗いておりました。
      まろ...
      まろんさん、こんにちは!
      ごあいさつが遅くなって申し訳ありません(;_;)

      実は以前からまろんさんの本棚をこっそり覗いておりました。
      まろんさんのレビューは、感じたことがそのまま言葉になっているような、とても素直なレビューだと思いました。
      わたし、毎回レビューを書くのにうんうん頭をひねっているのですが、なかなかまろんさんみたいなレビューが書けなくて・・・(´・ω・`)
      まろんさんのレビューを読んで、わたしももっと上手に文章にできるようがんばります!

      本書はノベルス版を書店で見かけ、気になっていたのです。
      まろんさんのレビューを読んで、ますます読んでみたくなりました☆
      2012/10/16
    • まろんさん
      すずめさん、コメントありがとうございます♪

      私のミーハーな本棚をこっそり覗いてくださっていたなんて、
      うれしいような、恥ずかしいような。。...
      すずめさん、コメントありがとうございます♪

      私のミーハーな本棚をこっそり覗いてくださっていたなんて、
      うれしいような、恥ずかしいような。。。
      その上、感じたことを書き連ねてついダラダラと長くなってしまう
      私なんかのレビューをそんなふうに言ってくださって、ありがとうございます。
      私こそ、すずめさんの本棚とレビューを見せていただいて
      知らない作家さん、読んでみたい本にたくさん巡り会えて、うれしい限りです♪

      この本、「ちゃ」とか「けぇ」連発の九州弁がとても小気味よく響いて
      それを喋る子どもたちも本当に可愛らしいので、お時間があったらぜひぜひ!
      それにしても、この講談社のミステリーランドシリーズの装幀って
      全部揃えて本棚に並べておきたい美しさです(*'-')フフ♪
      2012/10/17
  • 面白かった!
    入り込めない本は全然読み進めない私ですが、この本は最初から最後まで一気読みでした。
    どの章も、どの瞬間も面白かった!

    父親の転勤で、北九州の工場地帯の団地に引っ越してきた5年生の高見森(シン)。
    向こう見ずの無鉄砲、とにかく思ったらすぐに手と足が出る性格の彼は乱暴者のイジメっ子というレッテルを貼られ、転校前の学校では友達もおらず嫌われていました。
    けれど、森には森の考えがあって行動している。
    このお話は森の語りで進んでいくので、世間にはただの乱暴者のイジメっ子に見られてしまう森の心の内が分かり、なんだか切なくなりました。
    いるいるいる!こういう子!と思いながら読み進んだけれど、やや暴れ馬みたいな児童でも、ここまでこんなふうにみんなから突き放されるのは珍しいような?
    昨今の小学校では、いろんな個性がもっと受け入れられているような気がするけど…?そういう意味では、転校前の森は色々と運が悪かったのかも。
    それでも、そんな現実にめげずに、自分を貫いている森は偉いと思う。
    そう、森は自分を貫いている子で、そこがとても清々しいと思いました。

    転校した先の北九州の社宅の面々も、皆個性があっていい子ばかり。森がみんなに受け入れられていくのをほっこりしながら見守ったり…。

    そして、全然知らずに読んだのですが、このお話ミステリー仕立てになっているんですね。
    一番初めに、森の幼少の頃の事件が出て来る。
    それから、屋根の上のぐるぐる猿の謎、猿の正体、パックのこと、最後にあやのこと!
    最後まで、飽きさせずにあっと驚くミステリーでした。

    ミステリーを追っていくに従って、変わったタイトルの謎も解け、森が抱える胸の内のこんがらがった糸も解れ、パックという衝撃的な人物のこともわかり…。
    パックの存在はもちろんのこと、佐藤くんとのこと、そして何より、あやの正体が気になって仕方なかったので、最終的にすべてが詳らかにされてすっきりして読了できました。
    どれもが、えっ?え!あっ!というような展開でした。
    あやの正体には、最高にときめきました(笑)。
    パックに対して生じた疑問も、猿からの手紙がなんとなく腑に落ちさせてくれました。世の中、こういうこともあるのかもしれん。

    最後に、森には佐藤くんから返事が来るといいなぁ…。

  • タイトルなんのこっちゃと思ってたけど、読み終わってみたら小洒落たタイトルやなーってなるからすごい。

    パックの正体、子供だけに見えてる集団幻覚とか小動物をヒトだと思ってる系だったらどうしようと不安だったんだけどよっぽどそのほうがマシだったってオチ…
    最後の勝からの手紙重いな〜、とか思ってるうちにあやの正体が明らかになってそっちかい!!!

    ココちゃんって呼んでる母親なんやねんてめえでつけた名前きちんと呼べやとか思ってたのにきちんとした理由があったのでお母さんごめん…
    しかし十時あやをあやちゃんだと思って恩返ししようとしてた森とそんな森の手助けをするココちゃん、まんま人魚姫の構図だなあ…とか考えていたので「こっちはとっくにそのつもりでいたよ……五歳の頃からずっと」は胸が熱くなった。

  • 非常に面白かった。
    タイトルでは想像がつかない内容というのも私好み。

    自分の個性を持て余し、それゆえ周囲に持て余され荒みきった主人公が、新しい友人との交流を通して成長していく様が描かれている。
    人には色々な事情と面がある。自分にだって。見る角度を変えれば見えるものが変わるよね、成程。
    みんな平気な顔して暮らしながら、その反面色々な思いと悩みを抱えている…のかも?

    不思議な少年パックが、聞き上手で相手の悩みを解決してしまう様はエンデの「モモ」を思わせる。

    正直、続きが読みたい。
    そして、彼らがどんな大人になるのかを見てみたい。

  • 題名だけでは全く内容の想像がつかない。
    ぐるぐる猿?ちょっとして、あっナスカの地上絵じゃんっと思い当たる。
    けれど読み始めると全く関係のない話で…。
    ところが主人公の男の子が転校した先でそれを目にすることになる。
    それは大事な秘密を抱える最初の一歩だった。
    なにからもだれからも自由ということ。
    なんにも縛られない。でもひとはなにかに所属することで守られたりする面もあるわけで、
    パックの自由は不安や孤独と表裏一体。
    パックというのは夏の夜の夢の妖精から来てるのかなあ?
    なにかをしてもらったらちょっとしたことでもお返しをしなくちゃ。まさに人間の心理ついてますわーー。
    してくれることに甘えすぎると、いつか不満がうまれる。
    なにごとにもバランスとゆーものが必要なのよね。
    そしてパックの賢さは必要とされる存在であるために身についた、とかんがえることもできる。
    ココちゃんいこーるあやたん、は全く思わんかったわー。
    相変わらずにぶい。
    十時のあやちゃんの話のとこにあやちゃんの一人称の語りをいれてくるところ、うまいわー、さすがだわー。
    久々加納さん読んだけど、やっぱこの人も外れない作家さんです。

  • 少年少女向けのミステリーシリーズ。
    これは、高校生や大学生向けの子供時代を振り返らせる、ノスタルジックな作品、ではなかろうか。

    小5の俺は、新学期に合わせて東京から北九州の町へと引越しした。
    気になる奴、気の合う奴、もちろん、気に入らない奴もいて。
    俺には忘れられない記憶もあって。
    初めての土地での学校生活が始まる。

    大人になる前の、でももう子供ではない読者にこそ読んで欲しい。

  • 予想外にハマってしまった。
    最初、主人公がとっつきにくい乱暴な男の子、だと思っていたのだが
    九州の社宅に引っ越して、新しいクラスメイト、友人、そして。。 彼の存在で過去さえも変わっていく。

    考えてみたら、小学生の頃は人格形成中で、未熟で、それでよく集団生活をし、友達がいたものだ。。。
    その分誰かが我慢したり、優しかったり、賢かったりしたのだろうな。。

    作者後書きの
    “大人が常に正しいとは限らない。先生が高潔な人間とは限らない”
    …分かる。
    でも、自分もいい年して、好き嫌いをしてしまう事があるし
    教師なんてとても出来ない。。。

    そういえば、作中に登場する担任の真意はどちらなのだろう。
    それを踏まえても、続きを読みたい。

    加納氏は北村薫氏にあこがれているそうだ。
    『ななつのこ』読んでみようか。。

    そして、次のミステリーランドはその北村氏。
    楽しみである。

  • 登場人物まさかの北九州訛り!
    主人公くんには悪いけど、意味全部わかる笑

    「言葉も通じないくらい遠い土地に来た」っていう背景に入り込みにくかったところはありますけど、逆に自分が地元民側でクラスメイトか何かの視点で見ていたような不思議な感覚。
    北九州弁わかったからこその読書体験でした。

  • 最初、不器用な主人公がチクチク痛い。
    周りに誤解されて、それでもいいやって思っている。
    そんなに真っすぐ進むんじゃなくて、ちょっと待ってって思うのは、私が大人の目線で見ているからかも。
    だんだん読んでいくうちに、子供だったころの不器用な自分がよみがえってきた。

    考えてみたら、主人公が一番普通で、大変を抱えていた子だらけだよ。
    パックはとっても賢いけど、自由と危険は隣り合わせだもんね。彼なら大丈夫だと思うけど、大人になったみんながパックの将来の問題も解決してほしい。そんな気持ちのいい子たちだった。

    「猿」と「ハチドリ」、私も見てみたい。

  • 児童文学。腕白っ子の森は、父親の仕事の関係で東京から九州へと引っ越して転校することになった。そこで出会う新たな人間関係と不思議な存在。子どもには子どもの社会があるのだということを思い出させてくれるお話でした。
     大人としては、今後のバックの生き方が心配になってしまうのですが、それは無用ですね^^;

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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