地名に隠された「東京津波」 (講談社+α新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062727457

作品紹介・あらすじ

◇東日本大震災により、東京湾でも船橋に2.4mの津波が襲い、浦安は大規模に液状化した。東京にもっと大規模な地震や津波がおそったらという想定は、ありえないものではない。この機に地名研究家である著者は、東京の高低を記した古地図を入手。そこで改めて、東京が起伏の多い地形であり、いまそれが高層ビルの乱立や地下鉄による移動などで見えづらくなっていること、また、山の手と下町で「山」「丘」「台」、「川」「橋」「江」など地形や水に関する地名が多いことなどを確認した。
◇そこで本書では、東京の古地図をじっくり見て、著者の地名についての蘊蓄も傾け、各地域の高低差や土地利用などから、もし地震や津波がおそったときに危険な場所、安全な場所を指摘しようとする。
◇たとえば「水に関わる地名の場所は、危険度が高い」。渋谷、千駄ケ谷や日比谷は谷、深川も品川も小石川も川。浅草は浅い草が生えた湿地で、早稲田は田んぼ。飯田橋、水道橋みな低地。池袋はいま高地にあるが、もとは低地の地名。代官山や戸山は高地で、より安全。また古地図からみると、もともと海、砂地、河川敷、新田だったところで液状化が起こっている。
◇さらに、本書は、江戸・東京の立地や過去の震災の歴史から、東京が震災に耐えてきたものの、「砂上の楼閣」であることも改めて指摘する。
◇東京の高低図に照らして地名を探りながら、東京の地形と地名の安全度、危険度、震災への心構えを、読者に「立体的に」また「蘊蓄をもとに」気づかせようというのが、本書のねらいである。

感想・レビュー・書評

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  • 東京は高層ビルが立ち並んでて土地の高低感がなくなってしまってるんだけど、実際歩いてみたりしたところを振り返ると結構坂とか多いんだよね。そういった東京の地形を振り返りつつ地名を考えてみるとなるほどと思うところが多い。
    東京だけでなく全国にも通じるところがあって、例えば亀という地名は水の中に浮かぶ亀の甲羅のような、すなわち島のことだとか、築地は埋立地だとか。
    地名は面白い。この地名から歴史や地形的な特性を探究する本が出てるけど、今まで住んできた土地土地の本があればいいなぁ。

  • 100年前の東京市高低図をヒントに洪水の多いところ、そうでないところを解説していく。想像の通りだが、それなりに勉強にはなる。

    冒頭に東京湾津波10mで妙に煽っているが、地名と由来を解説する3章以下が参考になる。

  • 書名から期待した満足感は得られなかった。それは津波にまつわる地名が都内に存在するというものではなかったからだ。東京の水にまつわる地名は、区画整理や住居表示の合理化で失われているものが多そうだが、そのあたりの言及も少ない。本書で紹介された深川の波除碑も、津波ではなく高潮の痕跡を示すもの。東日本大震災直後に執筆されたため、東京都の津波対策はおそらく端緒についたばかりだったろう。波高10mの津波想定は有りだ。埋立地、海抜0m地帯、そして地下鉄の津波への備えと、その限界を知ることは無駄ではない。

  • 東京に10mの津波がやってきたらどうなるのかを、関東大震災後の大正時代に刊行された「東京市高低図」を使ってシミュレーション。その危険性を地名から読み解けるかという話を分かりやすく解説している。

     都内に暮らし、山手線界隈を普段チャリで移動している身としては、日頃体感している感覚を文章で補ってくれる一冊であった。が、それ以上でも以下でもなく、比較的知っている、というか分かっている話も多い。

     東京の東のほうは「砂」だ「浜」だと地名に付いてて、海抜0で浸水するとか、あるいは地震で液状化という話も知ってる人は多いのでは? 「谷」、「池」、「津」の付く地名も低地で湿地で地盤が盤石ではないのは東京に限ったことじゃないしね。

     地域ごとに具に見ていくけど、主だった検証以外は、「柴又」はかつては「嶋叉」(水が島を避けるように流れていた地形)であったとか、「日暮里」は「新堀」だった、「三田」は「御田」(何らかの意味で「尊敬を受ける田んぼ」)といった地名の薀蓄が並び、それなりに面白いけど、さほど新しい発見は少なかったかな。

     ただ、こうして地名が変わっていく、あるいは表記が別の字に置き換えられていくことで、本来の意味が失われていくことには注意が必要だ。本書でも引用されている柳田國男の言葉、

    『地名とはそもそも何であるかというと、要するに二人以上の人の間で共同に使用せらるる符号である。』

     を再認識し、地名に込められた記憶が失われていく危険性は知っておくべき。本書で、もっとそこを強調してもよかったと思う。「なんとか丘」とか「なんとか学園」とかの地名の、なんと意味ないことかってのがよく分かる。
     
     サクっと読めて、知識欲をそこそこ刺激してくれる面白い一冊でした。東京都に暮らす・働く人なら体感しながら本書を読んでおくといいと思った。

  • 東京への興味をかきたてられます。谷、洲、橋などが含まれる地名の由来・歴史等を知りつつ防災意識に目覚めます。簡潔で過不足ない解説が、スラスラ頭に入ってきます。類似の東京・江戸探検モノとは一線を画す東京への愛を感じました。それは、東京人だけへのものではない人々への愛に通じているようです。感服。同時に見事な実用書。

  • 東京の高低図に照らして地名を探りながら、東京の地形と地名の安全度、危険度、震災への心構えを、読者に「立体的に」また「蘊蓄をもとに」気づかせようというのが、本書のねらいである。

  • 今、住んでいるところは大丈夫そう・・・。

  • さまざまな自然災害のなかでも主に津波に的を絞り、”もし東京に一〇メートルの津波が押し寄せたら東京はどこまで沈むか?" をシミュレートしつつ、地名から読み解けるかつての地勢を解説していくので大変分かりやすい。
    近年では地名変更も多く「さくら」や「みどり」など当たりはやわらかいけれどありきたりで無味乾燥な地名ばかりが増えていく。そしてかつての地名とともにその土地の記憶がどんどん失われていっているのは、残念なだけでなく、危険なことだと改めて感じずにいられない。

    ちなみに、西欧ではむやみに地名を新しくすることはあまりないようだ。名前が消えると歴史がわからなくなるというのがその理由で、町が合併するときは"="などでつなぎ、もとの名をとどめておく。その方が合理的で良いと思う。

  •  「隠された」と書名に入れているんだから、有史以前でも以来でもいいから、かつて東京に津波が押し寄せ、その痕跡が大地やら、碑文やらに残されていることを明かしていかなくてはいけないんじゃないでしょうか? どうです? 違います? そうでなければ「隠された」という表現は不適切ではありませんか? と、著者と編集者に詰め寄りたい気分でいっぱいだ。
     津波の痕跡を訪ねた記録もなければ、だいたい津波が襲ってきたのかどうかもわからない。例えば河川の浸食によってできた台地の記述では、この台地の下は、津波がきたら浸水するかもしれない、程度の説明でしかない。そんなことくらいは小学生でも言えそうだ。


     あとは高層建築が多い都心では、土地の高低差が判別しにくいから地名から判断しましょう、といった記述が続く。
     渋谷は「谷」だから土地が低い。地下鉄の銀座線が地上3階を走っているのがその証拠、とか、「砂」とか「浜」の付く地名は地震時に液状化が起こりやすい、とか、「窪」や「沼」は水はけが悪い、とか、別に教えていただかなくても知ってます、という記述ばかりだ。


     もし津波がきたら、それらの地域にいたら危険なので、高いビルに逃げなさい、とのこと。


     著者は都市防災に関しては何も知らない素人なので、万が一のときには一切役に立たない本。




     地名の由来を知りたいだけなら読んでもいいと思うが、もっと詳しくて良い本はたくさんあるから、この本を選ぶ必要はない。

  • 確かに東京はアップダウンが激しいね。渋谷とか確かに三方高台だし、後楽園とか丸ノ内線はいきなり地上出るしね。
    安全なのは甲州街道、青山通り、春日通、中山道。
    地名でやばい場所わかるとの事で、うちの谷河内なんか、ホント最悪だわ。谷で川で内だもんね。ホント引っ越そうかなと思う。
    神田川の支流で飯田橋付近に江戸川というのがあり、それが江戸川橋とは知らなかった。

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著者プロフィール

1945年、長野県松本市生まれ。地名作家。筑波大学名誉教授(元副学長)。千葉大学助教授を経て筑波大学教授。柳田国男研究で博士(教育学)の学位を取得。筑波大学退職後は自由な地名作家として全国各地を歩き、多数の地名本を出版。主な著書に『京都 地名の由来を歩く』(ベスト新書、2002年)に始まる「地名の由来を歩く」シリーズ全7冊などがある。NHKの「日本人のおなまえ」をはじめ、各種テレビ番組にも出演していたが、2018年2月に体調を崩し、翌19年5月に難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された。しかしそれに負けじと執筆を継続。苦境の中で書き上げた『日本列島 地名の謎を解く』(東京書籍、2021年)は「奇跡の一冊」ともいわれた。

「2023年 『重ね地図でたどる京都1000年の歴史散歩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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