ロシアは今日も荒れ模様 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062730808

作品紹介・あらすじ

「ロシアとロシア人は退屈しない」ーーそう断言する著者は、同時通訳という仕事柄、彼の地を数限りなく訪れている。そして、知れば知るほど謎が深まるこの国は、書かずにはいられないほどの魅力に満ちあふれている。激動に揺れながら、過激さとズボラさ、天使と悪魔が、ともに棲む国を、鋭い筆致で暴き出す。ロシアの魅力と落とし穴がわかる。愛と笑いで本質を抉った、爆笑痛快エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 主に'90年前後のロシアを描いたもの。最高権力者の周りはイエスマンばかりとか、ゴルバチョフからエリツィンへと旧ソ連体制が崩れたことによる既得権益の私物化・社会の劣悪化など、現在に繋がる問題多い。インタビューや小咄は小気味良い。

  • 米原万里(1950~2006年)氏は、日本共産党幹部だった父親の仕事の関係で幼少期をプラハで過ごし、東京外語大ロシア語学科卒、東大大学院露語露文学修士課程修了、日ソ学院(現・東京ロシア語学院)や文化学院大学部でロシア語を教える傍ら、1978年頃より通訳・翻訳を手がけ、1983年頃からは第一級の通訳としてロシア語圏の要人の同時通訳などで活躍した。日本女性放送者懇談会賞受賞。ロシア語通訳協会会長。また、エッセイスト、ノンフィクション作家としても活躍し、『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』で読売文学賞(1994年)、『魔女の1ダース』で講談社エッセイ賞(1996年)、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』で大宅壮一ノンフィクション賞(2001年)、『オリガ・モリソヴナの反語法』でBunkamuraドゥマゴ文学賞(2002年)を受賞。
    本書は、ソ連時代に100回以上、崩壊後に30回近くソ連/ロシアを訪問し、また、日本にやって来るソ連人/ロシア人に接する機会はその数十倍という著者が、ソ連(人)とロシア(人)について、様々な雑誌・新聞等に寄稿したエッセイを加筆訂正の上まとめ、1998年に出版、2001年に文庫化されたもの。
    主なテーマは、ロシア人と酒(≒ウォトカ)の関係、ソ連崩壊(1991年12月)前のソ連の様子、ソ連崩壊後の旧ソ連の様子、ゴルバチョフやエリツィンらソ連の要人の素顔、ロシア人との付き合い方等であるが、その内容は、著者だからこそ書き得た奥深さと、爆笑せずにはいられないユーモアに満ちたものである。(但し、これでも、要人の通訳という立場上、書けなかったことが沢山あるに違いないのだ。。。)
    私は数年前に仕事でロシアを訪れる機会が何度もあり、欧米人とは異なる民族性を持つと言われるロシア人について、事前に知っておきたいと思って本を探し、そのときは、本書にも登場するロシア研究者・木村汎氏が書いた『プーチンとロシア人』を読んだのだが、本書についても、読んでおけばかなり役に立ったし、何より、「ロシア人なら大人のたしなみとして一人平均500話ぐらい」は持っているという小咄の一つ二つを披露して、相手の心を鷲掴みにできたと思うほどである。
    プーチンが始めたウクライナ侵攻により、ロシアを取り巻く国際情勢は激変し、ロシア(人)を相手にビジネスをすることや、いかなる目的にせよロシアを訪問することは、当面なくなってしまったのは残念な限りだが、見方を変えれば、直に接する機会やバイアスのかかっていない情報を得る機会が減った今だからこそ、本書を読む価値は大きくなっていると言えるのかも知れない。
    「ロシアとロシア人は退屈しない。おしなべて人懐っこい上に、人種的偏見が少ない。生のままの自分をさらけ出したまま、直接相手の魂に語りかけてくるような気取らないタイプが多い。」というロシア(人)を知るために、格好の一冊である。
    (2023年3月了)

  • ロシアの現状やロシア人の気質などについて様々なエピソードを交えながら紹介されている。
    傑作エッセイ。

  • ロシアについての色々。

    小話のように書かれているので面白かったですが
    酔っ払いの話がすごい、としか言いようがw
    こんな小話になるほどなのか、というのもありますが
    これでいいのか!? と聞きたい小話も。
    どこだろうと、酔っ払いは酔っ払いのようです。

  • 1991年ソ連崩壊前後のお話。ロシア語通訳の米原さんだからこそ書ける裏話や秘話がテンコ盛り。
    教科書でしか見たことのない、ゴルバチョフやエリツィンが、強面の指導者ではなく一人の人間として描かれていて、面白い。
    また、ずーーーーーっとウォトカ(時々他のお酒)が付いて回っていて、いかにロシア人とウォトカの関係が深いものなのかが察せられて、ニヤニヤしたり、ヒヤヒヤしたり。
    個人的に一番面白かったのは、酔っ払ったエリツィンが、酒をかっ食らいながら、管を巻く話。米原さんの冷静な筆致との対比が可笑しさを一層掻き立てる。
    ロシアに興味がある方もない方も、面白おかしく読めて、ちょっと隣人への理解が深まる(かもしれない)一冊。

  • 米原本、ふたたび返り咲き。

    今回は序盤の酒ネタに始まり通訳時代の秘話に触れてくれる。これだけでもうウォトカを注文…だけには止まらずついおかわりまでしたくなる。これまでの数作の中でとりわけ読書の友として凍らない酒をちびりちびり(やはりそこは日本人なので)やりながら読みたくなる、そんな仕組みになっている。

    いつの日かこのネタをアメリカに住む旧ソビエトの想い出をもつ方と分かち合いたい。そんな気にさせられる程彼女の存在は偉大。

    そのためにもこれからも肝臓の健康にはそれなりに気を使おう。

  • 米原万里さんの本としては少々異色の本である。1990年代のロシア社会を鋭く分析している。何よりも著者の強みは、この時代のロシア最高権力者、ゴルバチョフとエリツインの通訳を何度も勤め、間近で二人の発言と人間性を観察していたことである。ソ連からロシアへの大混乱移行期を理解するのに有益な本である。

  • 2001年発行の本なのでたいぶ昔の話ではあるが、面白おかしくロシアのことを知れる本は今ではレアだと思って楽しく読ませてもらった。

  • 「「ロシアとロシア人は退屈しない」――そう断言する著者は、同時通訳という仕事柄、彼の地を数限りなく訪れている。そして、知れば知るほど謎が深まるこの国は、書かずにはいられないほどの魅力に満ちあふれている。激動に揺れながら、過激さとズボラさ、天使と悪魔が、ともに棲む国を、鋭い筆致で暴き出す。ロシアの魅力と落とし穴がわかる。愛と笑いで本質を抉った、爆笑痛快エッセイ。」

  • 主にゴルバチョフ・エリツィン時代のソビエト・ロシアについて書いた文章を集めたもの。
    前半はウォトカとロシア人についての文章を集めた、米原さんらしい仕上がり。
    後半はペレストロイカが国民に及ぼした影響とか、少し固めな題材。

    通訳として接したゴルバチョフ・エリツィンのキャラクターとロシア国民との関係性を描くことで、ゴルバチョフが国民の支持を失った理由の一端を説明している。
    エリツィンの泥酔キャラは、あれはあれで国民受けはよいのだという話は腑に落ちる部分はある。

    本筋とは全然関係ないが、米原姉妹は映画や活字で目にしたら同じ食べ物に反応して食べたくなり、『哀愁の町に霧が降るのだ』(椎名誠)のカツ丼の一節を読んで(別々のタイミングなのに)2人とも食べたのだという。
    「椎名誠氏とご一緒したときに、このカツドンのくだりをめぐる姉妹類似反応について申し上げたら
    『イヤーッ、オレもあのカツドンのところは、力入れて書いたから』
    と照れくさそうにおっしゃった。そのときだった。
    『もしかしたら、わたしと妹だけでなく、少なくとも10人に1人の読者は同じような反応をしたのかもしれない』
    と思い至ったのである。」
    この、10人に1人には私も含まれる。あの椎名誠が書いたカツ丼は本当に食欲をそそるのだよね。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。作家。在プラハ・ソビエト学校で学ぶ。東京外国語大学卒、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。ロシア語会議通訳、ロシア語通訳協会会長として活躍。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)ほか著書多数。2006年5月、逝去。

「2016年 『米原万里ベストエッセイII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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