フフフの歩 (講談社文庫 せ 10-2)

著者 :
  • 講談社
3.60
  • (7)
  • (17)
  • (21)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 123
感想 : 19
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062731225

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • これが二十歳そこそこのセーネンの頃書かれたものとは驚きだ。飲んだくれてバクチばっかりしている、無頼な日々が綴られている。著者「先ちゃん」はともかく、今やすっかり将棋界の重鎮である方々も、そのお仲間であったとは。郷田真隆九段、深浦康市九段、木村一基九段などなど、対局中の真面目な顔しか知らない棋士の面々が出てくる出てくる、佐藤康光会長に至っては「モテ光君」なんて呼ばれてしばしばおちょくられている。みんな若い日があったのよねえ。当たり前だけど。

    今の若手棋士の方たちには、こういうアウトロー的雰囲気は希薄だ。実際の姿は知らないわけだが、印象としては実にスマートで清潔。考えてみれば、これは棋士に限らず、若者一般について言えることかもしれない。かつては、青年の社会的な常識や規範からの逸脱に対して、ゆるやかになんとなく許容する空気があったように思う。本書には、バブルの狂騒まっただ中に書かれた文章が多く収められているが、やはりバブル崩壊後に一つの大きな転換点があるのだろうか。

    大酒飲んでひっくり返ったり、チンチロリンで有り金をすったり、といった日々は、同時に、どこまでも続く真剣勝負に神経をすり減らす日々でもある。ふざけたことばかり書いているようだが、その向こう側に、そうした勝負の世界に身を置いた人だけが持つ苦悩が見える。そこが著者の持ち味で、読んでいてひきつけられるところだと思った。

    将棋界に興味がある読み手にとっては、へぇ~というエピソードも満載だ。神吉宏充七段の愛すべき言動や、今よりずっと親しみやすい感じで描かれる羽生善治竜王の姿にほっこりする。在りし日の村山聖九段が登場したのにはぐっときた。それに林葉直子さん。なんと著者と林葉さんは小学生の頃、米長九段のところに一緒に内弟子として住み込んでいたんだそうな。将棋の天才少女にしてアイドルも顔負けの美貌だったが…。人生とはわからないものだなあ。

  • 村山聖が進行性膀胱癌の手術をしたのは1997年6月のこと。脳に悪影響が出ることを避けるために抗癌剤や放射線治療を拒否した。壮絶な痛みに耐えて、翌年8月に逝去した。
    https://sessendo.blogspot.com/2022/01/blog-post_34.html

  • 読了 20200912

  • 最近は 将棋の棋士の本が マイブームである。
    羽生善治が なぜ強いか ということが
    実に気になっているので、その周辺の人たちが
    なにを考ているのかを 知りたくなっている。
    大崎善生の『聖の青春』をよみ 村山の友好関係の中に
    先崎学がいた。題名が『フフフの歩』というから、
    おもしろそうなので 読んでみた。
    確かに、笑いこげる文体で、20歳前後でこの文章を
    紡いでいるとは 青春とは恐るべきことだ
    とおもう。

    将棋のことよりも 棋士の人間模様、師弟の関係をあからさまにし、
    佐藤康光のモテ光ぶりを うらやましがっている。
    競馬、麻雀、ちんちろりん、スロットという
    さまざまな賭け事好きな側面も活き活きしていて
    おもしろい。
    将棋の勝負がなければ ずいぶん気楽な生活をしている
    ということが、よくわかる。
    それを実に おおらかに 綴っていることに、
    あきれたり、驚いたりしている。
    普通の生き方ではないことがよくわかる。
    21歳で 猛烈な肩こりとなり、按摩からは
    40歳の身体と言われるほどのプレッシャーがある。
    とにかく、気楽なようで 気楽ではないのだね。

    村山が ほんのわずかしかでてこなかったのが残念。
    羽生に 将棋盤の星を聞くことがおもしろい。

  • なんだか、飲んで遊んで旅行行って麻雀やって賭け事やって、その合間に将棋、といった感じ。

    結構前の本なので、時代もあるのかなと思ったが、20代前半にしてこんな感じで大丈夫なんかいなと思ったが、
    今や八段とご立派なので、人って分らないと思った。

    とはいえ、とにかく遊び過ぎ

  • 文章と実物の差に愕然とした

  • 将棋棋士先崎八段(数年後には九段)の青年時代のお話
    その後A級(将棋会のベスト11)を2年務めるのですが、
    そのちょっと手前の時代のお話。
    現在は大卒の棋士も多いのですが、
    当時は中学出てそのまま将棋一筋と言う時代で、
    彼もそんな中学校中退(自称)の棋士でした。
    将棋が好きな人は面白いかと思います。

  • 面白かった。書いてある内容は90年代の風景ですが、棋士の魅力が沢山散りばめられていますね。おススメの文庫本。

  • 棋士なのにエッセイが面白い.

  • -

全19件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

先崎 学(せんざき まなぶ)
1970年、青森県生まれの将棋棋士。九段。
エッセイストの側面もあり、多くの雑誌でエッセイ・コラムを持つ。羽海野チカの将棋マンガ『3月のライオン』の監修を務め、単行本にコラムを寄せている。
著書多数。代表作に『フフフの歩』、『先崎学の浮いたり沈んだり』、『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』など。

先崎学の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂 幸太郎
ヘミングウェイ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×