- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062734929
感想・レビュー・書評
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なるほど直木賞だなという感想。合田シリーズは他も読みたくなる。
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南アルプスの山奥で起きた殺人事件から物語が始まるが、早々に舞台は約10年後の東京に移る。そこで連続殺人事件が起き、主人公はそれを追う刑事課の刑事。ただ読者には早くから、その犯人が、精神的に病んだ人物なのだろうということはわかっている。それをどのように追い詰めて行くか、刑事の様子の描写が細かい、警察小説のような雰囲気。
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ミステリーを書く作家は、「真相」から遡っていって謎に巻き込まれる登場人物たちを描かなければならないのだが、その登場人物たちが、いつどうやって「真相」に気が付いていくのかをご都合主義にならずに書くことは難しい。それが「都合よく」にならないようにじっくりと、というよりも作者の相当な執着心によって書かれている。実際に「真相を知らない人」たちが真相に少しずつ近づいていく、その「少しずつ」感が半端ない。
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不気味さと狂気を感じさせる殺人犯・マークスがたどり着いたのは「彼」を生んだ山だった。
この最後に「山」にたどり着いたところがなんとも切ないのである。
ずっと作品全体に暗い影を落とし続けた「山 」の頂上が開けるラスト。
これ「山」に捕らわれた人達の物語なのだ。「マークス」の5人にあった「山」は「絆」であり「過去の呪い」でありそして「郷愁」だった。そういった意味では「青春」の匂いさえ感じさせるところもあった。
''十三年経って過去を振り返る浅野の言葉のすみずみに、おぞましい郷愁はなかったと言えるか。
山とは何だろう―――。''
続きか気になって一気に読んでしまった。警察や検察や権力の攻防も描かれたけど一連の事件を通して「山」の影が背後に見え隠れして、人間の持つ闇に留まらない「暗さ」、緊張感や不気味さが作品に漂ってそれが魔力みたいにページをめくらせる。
面白かった。
あと某作家さんが著作で言及されていたように合田刑事と加納検事の何とも形容しがたい関係もとても気になるところ。笑
(2016.2.7) -
2020/12/2読了。最終章の『収穫』でやや拍子抜けの感はあるが、やはり読み応えがあった。事件に関与した人間一人一人の独白には説得力が感じられた。警察組織の描写力はリアリティ満載。この作家が手がける小説の作り込みにはいつも脱帽。
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すべての者が保身を図り出世のための隠蔽を図る.事件が偶然にも助けられて隠されてしまう.一つの嘘が,あるいはちょっとした職務怠慢が歯車を狂わしていく様子が無惨だ.検察庁,警察,こんな風に描かれるとやってられないという気分になるのも良くわかる.元に戻ってちゃんと犯人をあげていたら,その後の事件は起きなかったのかとも思うとやはりやりきれない気分だ.事件はともかく合田雄一郎の葛藤独白が興味深かった.