- Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062735346
感想・レビュー・書評
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最悪です。
人生の坂道を下っていく人たちの最悪の生活を見せられて、中盤くらいまで、読んでいてあんまり気持ちがいい本では無いと感じながら読むことになるナリ。
しかし終盤、登場人物たちが下っていく道が一つに繋がって、ジェットコースターのように怒涛の展開に!!!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最悪という言葉では表せないほど最悪な展開が待っていた(´Д` )
新次郎•和也•みどりの3人の物語が後半に行くにつれ交差して行くのがすごい。
人間の心理が良く描かれていて、追い込まれていく人間の心情には恐いものがあつた。
とにかく一言すごい作品だと思った。 -
つまらない現状を打破するにはなんでもいいから行動をする必要があるんだな・・・と。けっしてハッピーエンドではないけどなんか救われた、そんな話だった。3人の主人公の人生転落劇、その先にあるのは・・・。感情移入して読むことはおすすめできない。どうしたって最悪だから。
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読み終えた。この本は凄いの一言に尽きる。奥田さんの旅に関するエッセイ集である「港町食堂」で「僕も『最悪』とか『邪魔』とかの長編の本格的な小説を書いている作家なんだけどな」と旅先で出会った人に語りかけるような記述があり、奥田さん自身もこの両作品には相当な自信があるなと感じたものだが、まさしく「さもありなん」という感じ。「オリンピック」もよかったが自分的には「甲乙つけ難し」という感じ。奥田さんの、たとえば伊良部先生シリーズを読んでこの作品がまだの人には是非ともと薦めたい。
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不況と近隣住民とのトラブルに悩まされる小さな鉄工所の社長。
家庭に問題を抱える女性銀行員。
パチンコと恐喝でその日暮らしをするチンピラ。
それぞれの抱える問題は最初は些細なことだったはずなのに、どんどん追い詰められて取り返しのつかないことになっていく。その窮地に追い込まれていく登場人物の葛藤がリアルに描かれていて気の毒になるほど面白い。
3人の物語が交ざり合って事態がまさに最悪な展開へと転がっていく後半はページをめくる手が止まらなかった。 -
ミステリーと言えるのかな言われれば・・ふと疑問を感じてしまうが・・・間違いなく面白い作品ではある。
女子行員、自営業、チンピラ崩れの3人による、それぞれの物語がそれぞれに進み、最後には同じ所にそろって繋がれる・・・
何とも不思議な感じの作品であった。とても満足した。 -
600ページオーバーの分厚い長編に要した時間二日間。
暗く落ち込みそうな内容とは裏腹に、読み進めるスピードは上がる上がる。
人の不幸は蜜の味?
とことん落ちていく三人のストーリーが、最後は程よく落ち着き、読み手のブルーな気分を中和してくれ、読了後は 良い気分。
長編好きにはオススメかも。 -
面白かったです。
奥田氏独特の、テンポの良い文章はもうここから片鱗が見えていて、そしてこの作品に関しては、話の流れが素晴らしい。
急な坂を駆け下りるようなストーリーです。最初はゆっくりと確実に、けれど進むごとに増していく加速度を止めようがなくて、今立ち止まればかえって大けがをするんじゃないかと思われて、こうなったらバランスを崩さずに最後まで走りきったほうがいいのか、かといってそれじゃあ坂を終えた時にはどうやって立ち止まるんだ、みたいな。そんな気分にさせられる作品です。
文庫の帯や解説には「犯罪小説」と書いてありますが、犯罪小説だと思って読むと意外性があるかも。ただこれは、個々人が持っている犯罪小説へのイメージの問題もあるので、言及はしないでおきましょう。
それにしても、これがデビューした後の2作目かと思うと、ちょっとどきどきします。
ネタバレしない程度に書いてみると。
地味で堅実に、ほそぼそと町工場の経営をしている中年男性と、妹の素行不良に悩まされながら銀行勤めをしている生真面目な若い女性、家庭に恵まれず、中途半端な生き方を続けている若い男性の3人の、それぞれの思いが細部まで描かれます。
各人の生活の中での、些細なトラブル。それらへの対応は、突飛なものではなく、自分が彼(彼女)の立場ならそう対応せざるを得ないかもしれないなと思わせるような、ありふれた、でもちょっとばかり運の悪いトラブル。けれど、指先に出来たささくれが、小さな傷なのに存外に痛いような、それをどうにかしようとすると、予想外に大きな傷になったり、その傷が化膿したりするような。出来るだけ分相応に処しようとしていたはずなのに、ちょっとした冒険心で踏み出した一歩が、急な下り坂へ続いているような。そんなお話。 -
実にリアルな人物描写に脱帽しました。
3人の人生が交錯してからのスピード感。
ぐいぐいと物語の中に引き込まれ、まるで映像で観ているような感じでした。
さすが奥田英郎。
巧いです! -
なんか、凄かった。
とにかく、これ以上ないってくらい「最悪」な状況なのに、さらに悪い方へ悪い方へと、3人の主人公たちの話は転がっていく。
3人の話がどこで交わるのかと期待しながら読み進めるんだけど、なかなか繋がってこない。
それでも、だんだんと繋がりが出てきて、一気に話は交錯し、一つの「最悪」を作り上げる。
面白いのは、多少の不幸はあるものの、あくまで「普通」の範囲にあった主人公たちの日常が、いつのまにか「最悪」の状況に陥ってしまっているところだと思う。
どこで間違えたのか、その決定的なポイントがわからないまま、状況は変わっていく。
例えば、町工場の社長、川谷氏は、設備投資をしようとしていただけだったと思う。
そこに、騒音問題やら内気な従業員といった、ことが加わって、最終的には、銀行強盗の一味になってしまう。
なんか、これだけでみると、全然訳が分からない。
どうってことない一つ一つの「不幸」が大きな「最悪」を招いている様子が、ほんまに面白い。
途中で、工場社長の川谷とちょっとしたチンピラ野村が、不幸比べをするような場面があるけど、一番最悪なのは誰だろう。
川谷や野村の状況は確かに最悪だけど、じゃあ3人目の語り手である、銀行員藤崎みどりは?
確かに彼女は不幸ではあるけど、他の二人に比べると最悪ではないようにも思える。
でも、全てが終わって、心に一番大きなダメージを受けたのも彼女じゃないのかな?
そう考えたら、藤崎みどりと、妹のめぐみの姉妹がこの話に登場して、「最悪」な状況を共有する人物の一人になっていることは、なんだか奥が深い気がしてくる。