新装版 風雪の檻 獄医立花登手控え(二) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062735872

作品紹介・あらすじ

登の柔術仲間、新谷弥助が姿を消した。道場に行くと言って家を出たまま、その後、深川の遊所でよからぬ男たちと歩いているところを目撃されたという。行方を追う登の前に立ちはだかる悪の背後に、意外や弥助の影があった。何が彼を変えたのか-。熱血青年獄医が難事件の数々に挑む。大好評シリーズ第二弾。

感想・レビュー・書評

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  • (1)で止めようと思ったのだけど、ブリが付いてやめれなくなった。若いイケメン獄医と不良娘あがりの美人の従姉妹との進展も気になり、本巻はまるまる五つの短編を通して獄医の柔術仲間・新谷弥助の転落を後一歩で止めるという顛末も描かれていた。次第とシリーズモノらしき仕掛けも増えてくる。

    文庫うしろにある年譜を見ると、1978年「小説現代」に連載を始めた頃、藤沢周平は月に2つも3つも短編を書いていて「隠し剣」や「用心棒日月抄」シリーズを次々と産み出していた。80年6月に(1)を刊行、81年3月にこの(2)を刊行している。脂の乗り切った頃の作品である。

    それぞれに哀しい女が出てくる。
    悪人を避けて何度も転居を繰り返す女。
    ホントは隣の牢にいるのに、男の中では清いままの女。
    (1)で入牢していたおしんが、少し元気になっていた。
    登もいったんは騙される「化粧する女」。
    夫を冤罪で嵌められているのに、色男に騙される妻。

    藤沢周平の筆は凡ゆるタイプの女を描くが、その「真相」を突き止めるのは、「コイツホントに女の心のヒダはわかっているのか」と疑問を抱くような若い獄医である。
    主人公だし、イケメンだし、基本は正義感溢れる人情篤いいい男なので、こういう評価はほとんどないとは思うのだが、立花登は基本「むっつりスケベ」である。それはラストのページに現れている。立花登の行為は、むかしは許されていただろう。現代果たして許されるのだろうか?少し気になる。

  • 「獄医立花登手控えシリーズ」全四巻の第二巻です。
    何度目かの再読です。新装版では無く、昭和58年の講談社文庫の第一刷。本は崩壊寸前です。
    主人公の登は牢医という仕事にもすっかり慣れ、時には与力にも強く抗議するまでになっています。また、蓮っ葉だった従姉妹のおちえは事件に巻き込まれた(前巻)事に反省したのか、次第に落ち着いてきます。なんと、これまで呼び捨てにしてたのが「登兄さん」と呼ぶようになり、登もまんざらでは無いようです。
    登と共に鴨居柔術道場の三羽烏の一人である新谷弥助の行状不良を背景にして、牢内の罪人たちの話を聞き、例によっておせっかいにも首を突っ込み、事件を解決して行く連作短編です。
    丁度、2016年にリメイクされたNHKドラマが再放送されていて、家内と話になっりました。知りませんでしたが、家内もこの小説が好きで何度も再読したとの事。珍しい事も有るものです。

  • 叔父のやんちゃ娘おちえを賊から救いだしたことで登とおちえは急接近。獄医の胸きゅん青春物語としてもすがすがしく読めます。周りが罪人だらけなのに殺伐とした雰囲気はそれほど感じさせず、軽い連作ものになっているところが職人芸か。

  • 4部作の2巻目。
    他の巻は、10年以上前に読んでいたが、この巻だけ、何故か未読であった。
    時代小説を読むというのは、タイムマシンに乗るようなものかも。主人公と一緒に江戸の街を徘徊し、その当時の人々の、営みに触れ、人情に心を洗われ、時には、サスペンスにワクワクする。
    藤沢周平の世界に浸るため、既読の巻を、これを機会に読み返そうか。

  • 獄医シリーズ2巻。
    叔父宅に居候してる主人公。同居の従姉妹が美人なんだけど性格や行動に難があるふうに描かれているのね。将来的には結婚をと考える叔父叔母に、とんでもないと思っていた主人公が、だんだん気持ちが通い合ってくる感じの描き方がうまいなあと思う。従姉妹がだんだん可愛く思えてくるんだよね、読んでるこっちも(笑)。

  • 獄医立花登手控えシリーズ第2巻。シリーズの副タイトルが各「~檻」と重苦しいイメージが有りますが、柔術を得意とする熱血青年の成長を、豊かな人情味溢れる情景で描く作品。登の柔術道場仲間新谷弥助が姿を消した。その後、深川の遊所でよからぬ男たちと歩いているところを目撃されたという。行方を追う登の前に立ちはだかる悪の背後に、意外や弥助の影があった。彼に何が有ったのか?。今回は道場仲間弥助の行方捜索、叔父の代わりに勤める獄医に持ち込まれた事件・登と従姉妹のちえの恋模様をうまく絡めた物語。時代物を意識せず読める。

  • 前作の最後で登(獄医師 立花登)によって、悪漢どもから救いだされた、従姉妹にして放蕩娘であった”おちえ”が すっかり しおらしくなって登場するのが笑える。事件が起こる度に、岡っ引きの藤吉親分と下っぴきの直蔵コンビから無償で助力を得たり、匕首を懐に飲んだヤクザ者を相手に、起倒流柔術の技だけを頼りに素手で戦ったりという、些かご都合主義的展開が続く。一応、捕り物帳の形式を踏んではいるが、事件の解決には重きを置いていない。藤沢文学は文体であり筋はワンパターンでも構わない。類似展開の繰り返しが麻薬的効果をもたらす。

  • 久々に藤沢さんを堪能させて貰いました。
    兎に角文章に無駄が無く、昨今の作家には無い爽快感に浸れました。藤沢様、ありがとうございます♪

  • 06年10/2読了。

  • 2002年発行、講談社の講談社文庫。5編。藤沢周平の牢獄の医者のシリーズ。この巻では友人があくどい金貸しの手先になっているのをいかに救うのか、という話が各話を貫いている。それにしても今回の各話は女性がからむ話が多い。藤沢周平らしくてよいのではないだろうか。

    収録作:『老賊』、『幻の女』、『押し込み』、『化粧する女』、『処刑の日』、解説:「庄内の人・藤沢周平」宇江佐真理、他:「藤沢周平 年譜」、備考:1981年3月講談社より刊行、

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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