道祖土家の猿嫁 (講談社文庫 は 48-1)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (599ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062736442

感想・レビュー・書評

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  • 明治から昭和まで、高知県の山間部の集落から贄殿川流域農村へ嫁いだ蕗の100年の物語。
    蕗は猿みたいな見た目の嫁だというだけで、特別な人ではない。脈々と現代にまでつながる人々の生活と家族の中で働く嫁の姿を映し出す。

    道祖土家は地主で、嫁いだ家には義父母と義祖父母がいて、さらに出戻りの義姉が誰の子かわからない子を身籠る。
    時代は自由民権運動が激しくなっていて、夫も義姉も政治活動に忙しい。
    運動家と権力側との火振り合戦が起き、蕗は牛や馬を放ち、騒動をおさめる。

    特別な事件はなくても、子どもの成長、夫の浮気、子どもの家出、義父母のこと、などなど、
    戦争に孫が取られ、終戦後には孫が結婚して終盤には曽孫まで出てくる。

    決して派手な性格ではない蕗にもふつふつと湧き上がる不満があって、そのストレスを溜めないための秘密のお酒の習慣があったりして、親近感がわく可愛い主人公なのだ。


    私自身、今家族の結婚の話があって、家族の行く末とか自分たちの老後とか想像しながら読んでました。

  • 【あらすじ】
    土佐の山村で、ワールドワイドな百年物語の幕が開く。
    祭りの唄は海を渡り、男と女は血を超えていだきあう。日本人はどこから来て、どこへ行くのか──。濃密な筆致でこの国の根源に迫る大河歴史ロマン!

    明治中期、土佐・火振(ひぶり)村の名家、道祖土家(さいどけ)に18で嫁いできた蕗(ふき)。その容貌のため“猿嫁”と陰口をたたかれるが、不思議な存在感で少しずつ道祖土家に根を下ろしていく。近代化への胎動の中、時代は大正、昭和と移ろい、多くの戦の火の粉が火振村にも容赦なく襲いかかって人々の運命を弄ぶ──すべての日本人が得たもの、失ったものを見据え、百年のタイムスパンで壮大に描きあげた、著者の新境地を拓く前人未到の野心作!

    (講談社books 商品ページより)

    _______________________

    戦前、戦時、戦後を通して生きた女性の一生を追う中で、生きることのひたむきさや血・家族の絆、命の力強さについて描いた壮大な物語でした。力強い筆致も良かったし、民族文学的な面白さもあり、一気読み出来た。「火振合戦」「七夕女房」「玄道踊り」あたりが好きかな。
    蕗という女性の視点で追った話の中で、不思議な(妖的な、神様的な)ものが見えるんだけど、最後の最後、終章でそれがないのが私は残念だった。そりゃ蕗視点じゃないし時代が変わってるから感じ入る感性はここにはもうないのかもしれないけど、啓助の話を好み、蕗に懐いていた十緒子だからこそ最後になにか見たっていいじゃん!?という気持ちになってしまう。我慢の多い人生だったから、その後の蕗が好き放題してるって思いたかった、読者としてはさ…。
    面白かったです。

  • 自由民権運動が盛んだった明治時代、火振村の地主の道祖土家に嫁いだ蕗(ふき)の一代記。終章は、彼女の33回忌に曾孫の十緒子が道祖土家を再訪するところまでを描いています。

    道祖土清重のもとに猿そっくりの顔をした蕗が嫁いでまもなく、義姉の蔦が私生児を産むという事件が起こります。家長の治之進は、秋英と名づけられたその子を、清重と蕗の子として育てることに決めます。若い頃は民権運動にかぶれていた清重も村長となり、秋英の下に春乃、俊介、保夫という子を授かります。しかし、秋英は家を飛び出し、俊介は若くして死に、三男の保夫が家を継ぐことになります。

    終戦の日まで小国民だった保夫の子の篤は、洋子という妻を得て十緒子を授かりますが、やがて洋子の浮気によって離婚し、十緒子はこの家を離れることになります。蕗は、そんな彼らの姿を見守り続け、波乱に満ちた人生に幕を下ろします。

    明治以降の100年に日本が歩んだ激動の歴史を、田舎の名家に嫁いだ蕗という女性の視点から見ていくことで、土着的な変わらないものが浮き彫りにされているように思えました。

  • 高知の一村に漂う伝奇的な空気と近代日本史が融合した一冊。
    だけど、蕗と蔦くらいしか印象に残らなかった。
    百年の物語は軽くも重々しくもない文章で書かれ、テンポよく読めた。

  •  最初、道祖だの猿嫁だのという単語があったので、民俗学を取り入れたホラーなのかと思いましたが、全然違って、蕗という一女性の一代記でした。
     蕗は猿みたいない顔なので、嫁入りしたときに「猿嫁」と軽蔑されます。しかし懸命に、地道に日々励むなかで、次第に閉鎖的な村社会にも受け入れられていき、かけがいのない存在へと変わっていきます。
     もちろん架空の人物ですが、土佐地方の歴史を織り交ぜつつ、明治・大正・昭和と激動の時代を股にかけて、次々に襲いかかる困難に力強く立ち向かう主人公の生き方が、とても痛快です。
     こういう小説を大河小説というんだな、と納得した作品です。

  • 人生について深く考えさせられた!なんか読みあわってじ~~ん!と感動してしまった。
    これは私の中の大ヒットです!

  • 久々に物語を読んだ気分。読み応えがあったし、内容も面白かった。

  • 郷土の高知を舞台にした作品は多く、明治中期とか山村というのも別作品とイメージがだぶりました。しかし、旧家地主に嫁した女性の話は、民権運動、大正デモクラシー、第二次大戦、オリンピックまで続き、死後のエピソードを現代の曾孫が締める。
    都会や事件からでなく、昔からの因習を抱えた田舎村の視点で歴史を見ると、また違うものです。ただ、坂東さんらしく重い。こういう本を読むと、次は軽い恋愛短編はないかと探してしまいます(笑)

  • どぶろく・・飲みたひ。(2001.7.11)

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著者プロフィール

高知県生まれ。奈良女子大学卒業後、イタリアで建築と美術を学ぶ。ライター、童話作家を経て、1996年『桜雨』で島清恋愛文学賞、同年『山妣』で直木賞、2002年『曼荼羅道』で柴田連三郎賞を受賞。著書に『死国』『狗神』『蟲』『桃色浄土』『傀儡』『ブギウギ』など多数。

「2013年 『ブギウギ 敗戦後』 で使われていた紹介文から引用しています。」

坂東眞砂子の作品

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