昭和史 七つの謎 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062736466

作品紹介・あらすじ

史実を知れば知るほど、調べれば調べるほど歴史の闇は深まる。真珠湾奇襲やソ連の侵攻、そして東京裁判の背後にはいったい何が蠢いていたのか? 卓抜な史眼の著者が資料の山にわけ入り、数多くの関係者の貴重な証言を基に昭和史に肉薄。文庫化にあたり新たに原武史氏との対談「昭和天皇の『謎』」も収めた。


過ぎ去ろうとしない「昭和」という時代

史実を知れば知るほど、調べれば調べるほど歴史の闇は深まる。真珠湾奇襲やソ連の侵攻、そして東京裁判の背後にはいったい何が蠢いていたのか? 卓抜な史眼の著者が資料の山にわけ入り、数多くの関係者の貴重な証言を基に昭和史に肉薄。文庫化にあたり新たに原武史氏との対談「昭和天皇の『謎』」も収めた。

感想・レビュー・書評

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  • 人の名前がつらつらと続く。
    かっこ書きだらけ、日付、年号と参考文献のタイトルがやたらと多過ぎて、とても読みにくい。
    七つの謎と言いつつ作者本人が謎に思ってるだけで、確かに謎だなと思うこともなく。

    ちょっと肌に合わないかな。

  • 保阪正康氏の本は何冊か読んだがハズレがない。膨大な調査の上に書かれていて信頼できる。
    しかし、本書を読み始めてすぐに、自分が昭和の通史を知らないことを痛感して、半藤一利『昭和史』を読むことにした。
    『昭和史』を読みながら、本書の関連する箇所を読んでいた。よく分かる。やはり大雑把にでも通史をおさえることが大事だ。何事も全体像をつかんでから部分をおさえることが大切なのだ。
    本書で保坂氏は、集めた事実から「確実に言えること」を推論する。そのように推論しようと試みている。
    それには高い知性が必要だ。集めた情報の断片から分からないところを推論するのは容易ではないからだ。
    本書の最後には保坂氏と原武史氏の対談が収められている。原武史氏の存在は先日知ったばかりだ。氏の『滝山コミューン1974』という著書を偶然に購入していたのだ。結果、この『滝山コミューン1974』を読む意欲が高まった。
    本書をきっかけに『昭和史』を読んだのは必然である。しかし本書をきっかけに既に購入していた『滝山コミューン1974』への期待が高まったのは全くの偶然である。
    そうなのだ。歴史とは必然と偶然が重なり合って紡ぎ出されるのだ。そのことを本書で知った。
    米国大統領がルーズベルトからトルーマンに代わっていなければ、おそらく日本は米ソの2カ国に分断的に統治されていた。そのことを本書の解説で中山隆志氏が明確に記している。

  • 目次
    ・第1話 日本の〈文化大革命〉は、なぜ起きたか?
    ・第2話 真珠湾攻撃で、なぜ上陸作戦を行わなかったか?
    ・第3話 戦前・戦時下の日本のスパイ合戦は、どのような内容だったか?
    ・第4話 〈東日本社会主義人民共和国〉は、誕生しえたか?
    ・第5話 なぜ陸軍の軍人だけが、東京裁判で絞首刑になったか?
    ・第6話 占領下で日本にはなぜ反GHQ地下運動はなかったか?
    ・第7話 M資金とは何をさし、それはどのような戦後の闇を継いでいるか?
    ・番外編 昭和天皇の「謎」

    ちょっと文章が読みにくいというか、頭に入りにくかったけれど、全体的に面白かった。

    日本の〈文化大革命〉とは、2.26事件から戦争までの、陸軍が台頭してきた世相のこと。
    2.26事件は、働いても働いても楽にならない農村の実態を憂い、それは天皇のそばにいるやつらが私腹を肥やしているからだと、陸軍の青年将校たちが起こしたクーデター。
    陸軍が起こし、陸軍が鎮圧し、のちに陸軍が台頭する。
    この本では詳しく触れていないけど、これは、陸軍の中の皇道派と統制派の派閥争いでもあった。
    青年将校は義憤に駆られて蜂起したのだけれど、彼らの後ろにいたのが皇道派。
    そして鎮圧した後力をつけて行ったのが統制派。
    「私たちが陸軍の暴走を抑えます」と言って暴走を始める。

    そもそも明治維新の時もそうだったけど、目的が善なら手段を問わなくてもよいという暗黙の了解が日本にあるっぽい。
    そして、海軍の将校主導の5.15事件では、首謀者にあまり厳しい処分が下されなかったので、イケイケの空気になってしまった部分もある。(でも安藤大尉は最後までめっちゃ悩んだんだよぅ)
    ああ、いかん。この本の内容からどんどん離れていく。
    まあ、そんな感じで、陸軍はどんどん力を増していった。
    天皇のために存在し、天皇を守るために戦う。それは全きの善であると。

    “昭和十九年、二十年になると、日本の政治、軍事指導者も国民も、あの紅衛兵と同じように目を血走らせて、他者へのコミュニケーションを拒否していたのではないか。太平洋戦争の後期を、カタルシスで戦っただけの日本は、どうあれ中国の〈文化大革命〉やイスラム圏のジハード(聖戦)、あるいは北朝鮮の金正日体制を軽々には批判できない。”

    敗戦の理由は、まあいろいろあるけれど、まず第一に個別の作戦計画はあったけれども、戦争自体をどう持って行ってどう勝つかという具体的な計画が一切なかったこと。
    相手が「負けました」というまで闘い続ける。将棋の国日本。
    そして、情報が武器になることを認識していなかったことも大きい。

    東京裁判で陸軍の軍人だけが絞首刑になったのは、天皇の戦争責任を回避するためのストーリーを作っていく上で必要だったのが、陸軍の暴走。
    そもそも真珠湾を攻撃して開戦にもって行ったのは海軍だったのに、気がつけば全責任を陸軍が負わされて、2.26の負の遺産をここで精算することになった。

    さて、聞いたことはあるけど、実態のわからないM資金。
    結果から申しますと、やっぱりわからないらしいのね。
    戦前にあったはずの皇室の財産や、戦費としてあったはずの大金が、戦後GHQが調べてみると無くなっている。
    それは多分、どこかで誰かが、いろんなタイミングで横領してたからではないかと思うけど。
    敗戦のどさくさで、要領のいい人たちはちゃっかり自分のものにしたこともあるのかと。
    でも、徳川埋蔵金のように「きっとある」と夢見る人が多いので、M資金詐欺が無くならないのだそうです。

    そして、天皇の戦争責任。
    戦前の天皇は、国民に対して責任を感じていたのだろうか?と思いました。
    天皇のために国民があると教えられ、帝王学を学んでいたのだとしたら、国民に対して権力を持っている自覚はあっても、国民に対して責任を感じるような教育を受けたのかな?と。
    敗戦後、初めてそのような概念が天皇に生まれたのだとしても、しょうがないんじゃないかと思います。当時の日本を考えると。
    もちろん、自覚はなくても責任はあると思いますよ。

    ただ、責任がある=天皇を処刑というものでもないと思っています。
    私個人の天皇制への思いはありますが、それを別にして、天皇制を残したまま責任を取らせることも可能だったはず。天皇退位とか。
    それをしなかった、させなかったことにはまた理由があるのでしょう。

    昭和天皇が皇太子だったころ、イギリスに留学した時に、当時の国王ジョージ5世が「第一次世界大戦の戦場跡を見るように」促したのだそうです。
    戦場跡のひどい有様をたくさん目の当たりにした皇太子は、天皇になって敗戦を迎え、焼け野原になった東京を見て、一体何を感じたのかなと思います。
    それは戦後の天皇の行動から察することしかできませんけれど。

  • 「太平洋戦争、七つの謎」とかぶる部分もあるが、豊富な取材に基づいて昭和史、特に戦前、戦中、戦後占領時代の状況が、著者のユニークな視点で語られていて面白かった。
    なお、東京裁判が「相応に良心的」と見ているのにはやや違和感を感じた。著者のいう通り、天皇を被告として法廷にに引きずり出さずに済むよう仕組まれたシナリオ、ということなのかもしれないが、被告の中には立派な人格者も多かったのだから、良心的というのは言い過ぎでは? また、著者の先の戦争に対する批判的な眼差しが、特定の者にやや厳し過ぎるような気がする。
    戦後復興期、横流しされた不透明な資金が今の幾つかの大企業の栄華の基となっているのだとすると、複雑な感じがする。戦後の歴史から見ても、会社は社会の公器という意識、やはり大切なんだな。

  • 日本人の過去に向き合えない特性が、根本的な謎。昭和の戦争しかり、原発事故しかり。

  • 昭和前期は、私たちの親の世代が体験した壮絶な時代であるにも関わらず、教科書でも教えられず、身近な時代なのに余りに知識を持っていない歴史。本書でも書かれているが、後の世代が感心を寄せる時代となる。本書からそのことが伝わってくる。

  • 歴史ミステリーに関心を持ち出して久しいが、どんな謎が存在するのか、調べたこともなかった。昭和前期という、まだまだ自分に近い時代にも謎があるという。
    ついつい手にしてしまった。

    第一話 日本の(文化大革命)な、なぜ起きたか?
    第二話 真珠湾奇襲攻撃で、なぜ上陸作戦を行わなかったか?
    第三話 戦前・戦時下の日本のスパイ合戦は、どのような内容だったか?
    第四話 (東日本社会主義人民共和国)は、誕生しえたか?
    第五話 なぜ陸軍の軍人だけが、東京裁判で絞首刑になったか?
    第六話 占領下で日本にはなぜ反GHQ地下運動はなかったか?
    第七話 M資金とは何を指し、それはとのような戦後の闇を継いでいるか?
    番外編 昭和天皇の『謎』

    なるほど、たくさん謎があります。
    年齢を経てから幕末、近代史にも興味を持つようになりましたが、実は毎年夏にマスコミが盛り上げる戦争責任等の話はあまり関心を持ててなかった。
    靖国神社参拝問題もしかり、A級戦犯、B級戦犯の違いについてもよく知らなかった。
    そんなくせに中国や韓国が問題を取り上げることを言いがかりをつけてるのか?と言う程度にしか受け止められていなかった。

    自分自身を振り返り、きちんと事実を理解しその上で判断をするようにしなければと反省。
    勉強とか難しく入るのは苦手なので、まずはライトな感じのところから入ってみようと思い、早速図書館で予約をしてみた。

  • 教養として日本史、昭和史を含む近代史を勉強するため知人から借りました。日本史に疎い私ですが、昭和史(特に前半)の勉強という目的は果たせた気がします。戦前、そして戦後の謎をテーマにしているため、かなり踏み込んだ話ではありましたが、その背景も丁寧に説明をしているため、予備知識の無い私でも面白く読む事が出来ました。

  • なぜ日本軍はハワイ上陸をしなかったのか、それは日本が米国に勝つということがどういう結末なのかがイメージ出来ていなかったことによる。確かに勝つことが単に敵が意欲を失うことを考えていたとすれば、あまりにも中途半端だった?・・・。また東京裁判陸軍に厳しい結果になったのは、天皇免責としたいマッカーサーの意図による?ソ連占領による日本の東西分割がなぜ免れたのか、実はかなり際どいところまで行っていた?反GHQ地下運動が日本でなかった理由、なぜ日本人は玉砕といっていたのに素直にGHQを解放軍として迎えたのか?M資金がなぜ戦後長い間、現在に至るまで謎とされ、多くの人を騙してこられたのか?どれもつい数十年前の出来事だが、謎に包まれている。著者の説明は説得力があり、面白く読むことが出来ました。

  • 途中で何回も休みながら正月休みで読み終わり。
    昭和が終ってもう20年以上が経つのに謎は謎のままだ。

    2012/11/09 BookOffで100円で購入;2012/11/10から読み始め;2013/01/03読了

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著者プロフィール

1939年生まれ。同志社大学卒業。ノンフィクション作家。とくに昭和期の軍事主導体制についての論考が多い。

「2022年 『時代の反逆者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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