時宗 巻の四 戦星 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062737463

作品紹介・あらすじ

蒙古軍襲来! 圧倒的迫力で描く完結編! ついに蒙古が来襲した。対馬沖に現れた3万数千人の大船団。国の命運を賭け、執権・時宗は父・時頼の遺した途方もない秘策に出た。兄・時輔らが率いる九州武士団を軸に、日本軍は蒙古軍と激闘を重ねていく。誰のため国を守るのか。国とはなにか。歴史の転換期を生きた男たちを圧倒的迫力で描く怒涛の完結編! (講談社文庫)

感想・レビュー・書評

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  • 大長編のため手を出すのを躊躇っていた高橋作品の一つ。文庫版が手に入らず電子で購入。高橋ワールド全開で、またしても熱い男達に熱狂したものの、陸奥四部作に比べると少し面白みは劣るという印象。

    本作は元寇襲来までの北条氏の内政から最後の対元の戦いまではスペクタクルに描く。まず時宗というタイトルの割に、前半の主人公は北条時頼で、後半は兄の時輔という形で少し時宗の存在感が薄いことが気にかかった。時頼の存在が非常に良く描かれていただけにどうしても二世感が強く共感ができなかった。ただ、時輔という死んだはずの人物を影の立役者に使う手法はお見事と感じた。本当にこういう腹心がいたからこそ、元を退治できたのかもしれないと何度も思った。

    実際の戦闘シーンなどは戦術も含め非常に細やかで討ち死にする武将らも短い登場にも関わらず印象的で流石と感じた。特に佐志房の戦死シーンはあまり好きではなかった謝太郎の涙にもらい泣きしそうになった。また、大陸での内偵編も興味深く、マルコポーロまで出てきたのには驚きとともにニヤニヤが止まらなかった。

    最後に、高橋先生らしく陸奥の描写もいくつかあり、十三湊は実際の戦闘にも兵を出しているなど、九州中心の本作の攻防の中でも東北が出てきたのはとても嬉しかった。

  • 執権・北条時宗、連署・北条義政、文永の役、弘安の役まで。菊池武房、竹崎季長、草野経永、杜世忠(とせいちゅう)、何文著(かぶんちょ)、徐賛(じょさん)などが登場。
    本書には出てこないが、同時代には、『十六夜日記』の阿仏尼の鎌倉入り、無学祖元の来日などもあった。こうした動きを読了後に想像するのも楽しい。

    解説(縄田一男)がいい。
    「気のはやい読者は、恐らくこの題名を見ただけで、本作を時宗率いる武士団と蒙古軍との激闘を描いた作品である、と判断するかもしれない。しかしながら、実際に元寇が描かれるのは『巻の四 戦星』に入ってからであり、それまで作者が多く意を用いて描き出しているのは、やがて来るべき国難に向けて国をまとめるべく繰り返される、北条氏の同族相食む果てもない戦いなのである…その道のりを描くために、作者はこの一篇の題名を『時宗』としつつも、物語を時宗の父・北条時頼が五代執権に就任するところからスタートしている。」

  • 時宗第四巻。
    元寇に対しては、神風が吹いて勝ったくらいの認識でしたが、完全にそういう見方を覆す内容。
    北条時頼の頃より、蒙古の脅威を認識し、何年もかけて、対策を講じて、北条一族、御家人が身命を賭して成し遂げた出来事であった。
    素晴らしいですね。まさに高橋克彦ワールド。

  • 最終巻はいよいよ元寇。
    歴史の授業では二度の神風に守られたと習ったはずですが、本書では幕府軍の駆引きと武士の気概、内部崩壊による半自滅で弱っていた元軍などの背景が加わって、色彩豊かな出来事として読むことが出来ました。
    あの時代に巨大な帝国と戦をするために国をまとめた偉大な執権がいたということを、本書を読んで初めて知りました。

  • ついに蒙古軍が襲来する。
    となると、時宗自身は鎌倉から動けないので、この巻の主人公は時輔。
    全四巻のうち、前半2巻は父・時頼が主人公で、最後の1巻は兄・時輔が主人公。
    だけど、これは蒙古襲来に対する鎌倉幕府の物語なので、父の生き方から兄の活躍に至るまでが対蒙古に焦点を絞ったことで、元寇のときの執権・時宗が全体の主人公となる。

    神風が吹いたことで、日本は元寇に勝ちを収めることができた、という定説とは違い、この本では周到に元を迎え撃つ準備をしている。
    だった1回、徹底的に元を叩き潰すことができたら、二度と元は日本にやってこないだろう。
    負けない戦いではなく、絶対に勝たねばならない戦い。
    そのためには、多くの武士に死んでもらわなければならない。

    御家人にとって領土はとても大切なものだ。
    しかし国土はどうか。
    国という概念がない場合、そこにある地面は誰のものなのか。
    住んでいる者たちが、住んでいる範囲だけを守れればいいのか。

    元との戦いの場を大宰府に決めた。
    九州各地の武士が、鎌倉の武士が、東北の海の民が一体となって、日本という国を初めて意識する。
    日本という国を守るために、一体となる。

    吉田松陰が九州を旅したときに元寇襲来図を見て、初めて藩から国へと視野を広げることになったように、もしかしたら孝明天皇のかたくなな攘夷主義の根幹は、過去に一度外敵を防いだという実績にあったのかもしれないと思った。

    元も日本も決定的な勝敗を認めることがないままに、一度目の元寇は終わり、改めて大軍を投じてきた二度目の元寇。

    たった一度で勝ちきるはずだった鎌倉幕府には、もう一度九州の武士団に「死んでくれ」ということはできなかった。
    そのために、時輔が縦横無尽に活躍するのが今巻の目玉だ。
    しかしそれは常に、時頼や時宗の存在あってのことなのだ。

    歴史小説というのは、結末が決まっているのでしょうがないのだけれど、これほど大きな出来事の結末があまりにもあっけなくて、最終章を二度読みしてしまった。

  • 全四巻読了。
    鎌倉幕府が、元の脅威にどう準備していたのか。その流れを何代も前から描いており、なんとも面白い。

    幕府側の「神風が吹かなくても勝てた」「戦いで退けないことの方が将来に不安が残る」とは、歴史感がくつがえる。

  • 高橋克彦氏の小説はいつも時代イメージが広がり興奮するので楽しい。時宗を読んでみる。
    鎌倉幕府衰退の時期の話で最初あまり「ぱっとせんな」と思っていたが、「元寇」に繋がっていく。元寇に繋がるのかと思うと俄然興味がわき話にのめり込んでいく。
    最初は鎌倉、御所も巻き込んでの権力争いの話だが、元寇の脅威をだいぶ前から感じ、鎌倉の意志を統一し、元寇に備えていく。

    また時代イメージが広がり嬉しいのと、神風だよりだけで回避した訳じゃなく、色々準備をしていたのだなあと感心。

    元寇
    モンゴル帝国(大元ウルス)およびその属国の高麗王国によって2度にわたり行われた対日本侵攻1度目を文永の役(ぶんえいのえき・1274年)、2度目を弘安の役(こうあんのえき・1281年)という。蒙古襲来とも。

  • 蒙古に勝ったのは、神風が吹いたからではなく、立派な作戦勝ちだったということが、よくわかります。大河ドラマの時は、ほとんど見ていませんでした。

  • 第4巻は、いよいよ文永、弘安の役。文永の役は、時宗の戦略(奮戦しつつも敢えて負け戦として蒙古軍を陸に誘い込む戦略)に対して、蒙古軍は深追いをせず、示威行動に満足して早々に引き返してしまう。その後、時輔、謝太郎らは元の首都、大都で諜報活動を行い、マルコポーロを通じてクビライに日本が黄金の国であり、大宰府に多量の黄金が蓄えられていることを吹き込む。弘安の役では、時宗らは博多を始め主な沿岸に石の築地を築き、万全の防御態勢をとる。そして敵の失策(疫病の蔓延、合流策の失敗)にも助けられて元軍に快勝。何れの役においても、暴風雨が決定的な勝利をもたらした訳ではない、と解釈しているところが面白い。

  • ついに蒙古襲来
    全国の武将が日本の為に命を懸ける
    この構造を時宗親子が作り出したのだ
    倉山満の歴史観では神風なしで勝てる体制を作った時宗が世界史に一石を投じたのだ

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著者プロフィール

1947年岩手県生まれ。早稲田大学卒業。83年『写楽殺人事件』で江戸川乱歩賞、87年『北斎殺人事件』で日本推理作家協会賞、92年『緋い記憶』で直木賞、2000年『火怨』で吉川英治文学賞を受賞する。他の著書に『炎立つ』(全5巻)、『天を衝く』(全3巻)などがある。

「2009年 『To Tempt Heaven』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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