文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (994ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062738385

感想・レビュー・書評

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  • 村がなくなったというキャッチーな導入の後、とんでもなく広がります。
    宗教というかマルチというか怪しげな団体とそのトップが例の村にどう繋がるのか。関口くんとあっちゃんは大丈夫なのか。気になりすぎます。
    宴の支度での最終章、前回のラスボスが出たときは興奮しましたが、まさかのオチでした。

  •  もう何度も何度も読みました。関口くんが大好きになるきっかけになった作品です。
     読了したときの率直の感想は「疲れた・・・。」です。
     とにかく疲れました。楽しかったですが、ぐったりです。 関口くんのことが心配でしたが、思ったよりいつも通りな感じがしました。細かな内容をかなり忘れていたので、面白かったです。
     茜さん、殺されたのは哀れだとは思いました。でも、それでも、前作を読んでいたからどうしても嫌だなこの人、と思ってしまいました。
     それにしても相変わらすこの作品の登場人物は魅力的な人ばかりです。十人十色という言葉のとおり、人の考え方はさまざまで、自分にとってなんでもないことが人にとっては違っていることがある。京極堂の話を聞くたびにそれを尊重することの大切さを認識します。

  •  『姑獲鳥の夏』からどんどん厚くなって、この『塗仏の宴』に至ってついに1巻本にできず「宴の支度」「宴の始末」の2巻となった。以後、だいたい『絡新婦の理』と同じくらいの厚さなのは反省したのだな。
     前半の「宴の支度」は短編の連続の形態を取っていて、おぼろげに事件の大きさ、不可解さがみえてくるという仕組み。
     まず「ぬぺっぽう」。私、関口巽は昭和12年頃にはあったはずの伊豆の韮山の「へびと村」の取材に行く。そこには万病に効く薬となる「くんほう様」というのっぺらぼう、つまりぬぺっぽうのような生きた肉の塊があるという。へびと村は最初からそんな村はなかったかのように、別の住民が住んでいる。現場を訪ねた関口は「世の中に不思議でないものなどない」と言う謎の郷土史家・堂島静軒に出会ったあと、そこで殺人事件の犯人にされて逮捕されてしまう。
     「うわん」。『狂骨の夢』の朱美は事件後、焼津に引っ越している。朱美は自殺を図る村上兵吉という男を助ける。村上は熊野に生まれるが、昭和12年、家出して、数奇な人生を送るが、戦後、熊野に戻ってみると、実家はなくなっている。そして近隣の住人すべてが焼津に集落ごと移っているらしい証拠を得て、焼津に来たのだ。なぜか自殺を繰り返す村上。その村上を救いにやって来たという成仙道なる謎の宗教集団が、村上の自殺はみちの教え修身会の術によるのだという。そこに絡む怪しい薬売り・尾国誠一。
     「ひょうすべ」。逮捕された関口の回想。京極堂のもとに古書店の同業者からもたらされた相談。元編集者の加藤麻美子の祖父がみちの教え修身会にはいってしまい、幼時、ふたりで「ひょうすべ」を見たという記憶が祖父から消されているという相談。京極堂が謎を解くが、暗躍するのは女性霊媒師・華仙姑乙女とその手下・尾国誠一……。
     「わいら」。カルト集団・韓流気道会に追われる敦子、一緒に襲われるのは華仙姑乙女。どうやら彼女も被害者だ。そして榎木津が助けに乱入してくる。
     「しょうけら」。木場刑事にもたらされる相談。24時間監視されているという女工。関わってくるのは健康カルト・長寿延命講と霊感少年・藍童子様。
     「おとろし」。『絡新婦の理』の織作家の生き残りの登場。韮山の土地。不老不死の秘薬。郷土史家・堂島が登場し、彼女は何者かに殺されてしまう。それが関口の犯行とされる殺人事件である。
     マインドコントロールとカルト集団、背後に仄見える不老不死。そして自我と意志いう問題圏。

  • 関口君、今までにない程卑屈になってる。心配です。

  • ぬっぺっぽう、うわん、ひょうすべ、わいら、しょうけら、おとろし。
    六匹の妖怪に付随する六つの事件。それぞれの事件は緩やかにつながり、そして宴の支度は完了するーーー。
    過去作の登場人物たちが惜しげもなく登場してくるシリーズ6作目。

    連作短編集っぽい作りとなっている今作。それぞれの話の中でとりあえず事件は解決する(?)ので、分厚いけど読みやすい。というか、このシリーズは読み始めたらずーっと読んでいたくなるので、読んでいる間とても楽しかった。主人公となる人物は毎回変わり(関口だけ2回出る。というか、彼はずっと→
    出ている?)それがまた良い。
    私は朱美さん回と敦子ちゃん回が好き。敦子ちゃんの回は中禅寺家の話や榎木津の話も聞けてすごく良かった。榎木津、今回もめちゃくちゃカッコいいしね。京極先生、なんてキャラクターを作ってくれたんだ……最高だよ……(笑)

    支度へと話は続くので、引き続き楽しむ!


    以下、リアルタイム感想。

    『塗仏の宴』は今「ひょうすべ」。
    「ぬっぺっぽう」が関口
    「うわん」が朱美さん
    で、今回はまた関口。
    (連作短編集っぽい)
    じわじわ繋がっている気配を感じてゾクゾクしてる。
    これはまさに『宴』!!

    ひょうすべ、読んだ……。
    うわぁぁぁあぁ!!
    毎回毎回怖いよッ!!京極センセー!!
    繋がって……ツナガッテルダケジャナイ……。
    残り三妖怪……怖い……支度が終わったとき何が起こるの……?

    榎木津ぅぅぅー!!!
    うっはー!!たまらーん!!カッコよすぎだろぉぉぉぉ!

    支度が……完了しちゃったんだが!!
    ここで終わるの?!マジで??ソッコーで始末読まなあかんやつやーん!!
    いやもう、いやいやもうね?すごいわ。
    絡新婦で満足してる場合やなかったね(笑)
    とりま『宴の始末』参ります!

  • ついに一冊で収まらなくなりましたね…

    京極堂シリーズは楽しみたいのでなるべく事前情報を入れないようにしてる。
    この「宴の支度」と「宴の始末」があるのは知ってたけど、こんなあからさまな前後編だとは思ってなくて、珍しい、短編集なんだ、くらいな軽い気持ちで読み始めてしまった。

    実際、短編集のフリをした長編だった。

    一言で言うと、関口が虐められまくる一冊。
    驚かされっぱなしで、何も解決しない一冊(笑)。
    各短編には妖怪の名前が付いていて、話の中でその妖怪に関する民俗学的考察が披露されるので、これまで以上に民俗学寄りの作品だと思った。

    二話目で、『狂骨の夢』の朱美さんが出てきてびっくりした。
    シリーズ過去作品の登場人物があとあと出てくるのは京極夏彦の常套手段なのに、未だにびっくりする。
    さらに織作茜まで出てきて尚びっくり!
    でもやっぱり頭いいし、これは準レギュラーくらいに定着しそうだ…と思ってた矢先に殺されちゃって、ホントびっくり!!
    中禅寺と木場修の一対一の絡みは新鮮。
    京極堂、徹頭徹尾丁寧語で話してる…。
    詳しすぎる説明に、中禅寺やっぱり親切だなぁと思った。

    消えた村、薬売り、修身会、佐伯家、予言者…。各短編には、ほかの短編のエピソードを匂わせるところが散りばめられていて、ああ繋がるんだなあ…と予感させる。
    これは再読しよう…と思ったのに、読み終わったら続きが気になっちゃってすぐ『宴の始末』を手に取ってしまった。(多分シリーズ中最も再読されない一冊だ)
    つまり、掴みとしては申し分ない作品に仕上がってる。
    あとの感想は、後編を読み終わってから得られるだろう。


    戦前にはあったはずの伊豆のある村が、キレイさっぱり無かったことになってる、って話が関口にもたらされ、幻の村にフィールドワークに出掛ける関口。旧家佐伯家らしき家を確認するも、中で見たものは大量の遺体と、生きている肉塊…。
    しかし次の記憶は、裸体の人形(実は死体)が吊るされた現場を見る自分だった。
    逮捕され、サディスティックな刑事に事情聴取され、関口の精神は崩壊する。
    果たして溶け出した関口の実体は残るのか。(←違う)

  • 「知りたいですか」。そう怪しげな郷土史家の方に問われたら、私は思わず「し、知りたいですっ」と前屈み気味に答えることでしょう。

    塗仏、宴の支度。やっとこさ読了。
    相変わらず厚みのある物語で、深みのある内容で、難解な論理と主張で、低スペックな私の脳神経の回路では理解できないところが多く……少し悔やまれます。
    絡新婦をもう一度読み返して理解し直してから読み直さないと全部わかれなかったかなと思うところ多々あり。その点記憶があやふやなのが力量及ばずなところで、もう一度読み返すと決意をしました。

    個人的には狂骨に惹かれ本格的に百鬼夜行シリーズを手にとったクチなので、朱美さんが出てきてくれたことは嬉しかった。朱美さんの話し方が好きです。価値観も共感できるところが多いので、シリーズの中では結構好きな登場人物です。
    ですが、絡新婦の茜さんは薄い印象しかなくて苦手意識があったところで『おとろし』で再登場。彼女についてもっと理解し直したくなりました。

    待ちに待った堂島さんが登場して、鼻息荒くなるほど嬉しかったです。
    「不思議ではないことなどない」を初めて見た時、何だそれ対偶か何か?どういうことだ?と上手く理解できなかったけれど、京極堂の鏡合わせの言葉だと理解できたとき戦慄が走りました。
    それに明瞭に解決していく京極堂に惚れぼれする反面、どうしても引っかかりを感じていたところを代弁してくれていたので、待ってましたーということです。
    不思議なことなどないのだとするなら、現実にいておきながら不思議だと認識している人の奇妙さよ。不思議だと思うから不思議なのであって、それはそれで現実にそうなってしまうこともある。

    往々にして、主人公側は「強い」立場になるものですが、こうして真っ向から反対を行く怪しげな存在というのも等しく魅力があるものです。
    これが堂島さんか……!っと勝手に作り上げていたイメージを越えた彼の登場に嬉しい限りです。
    京極堂と違っていやらしいところもあるのも、なんだか堂に入っていて期待を高めます。
    お噂はかねがね聞いているので、これから彼が何をしてくれるのか楽しみなところ。

    ぬっぺらぼう、うわん、ひょうすべ、わいら、しょうけら、おとろし。
    数々の妖怪が登場しますが、共通しているのは、消えた村、記憶の交差、不老不死、詐欺まがいなことをしているのに詐欺じゃない宗教団体、予言と予知の本末転倒。
    今までの登場人物が全て引きずり出されて、巻き込まれて、噛みつかれているような物語の前哨戦といった感じが、読み進めていくうちにどんどん深まっていく。
    提示されていく謎と、続く謎。提示されている課題は、根源はひとつではないということ。
    ボトムアップとトップダウンの誤差の仕組み。頭の中身をひっくりかえしてぐるぐるとかき混ぜられたように全てが絡み合い混じり合ってひとつの宴の「支度」をしているのでしょう。
    ここまで混じり合わせた者同士をどう整理し「始末」していくのか、下巻への期待を膨らませる巻でした。

  • これまでのシリーズの登場人物が総出演。妖怪もいろいろな種類が出てくる。連作短編のような構成で一つ一つのエピソードは面白い。宴の始末でどんな結末が待っているのか。

  • 色々忘れているので楽しい。私は青木君が好きです。潤子さんのスピンオフはないのかな~。

  • 5-

著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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