砦なき者 (講談社文庫)

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著者 : 野沢尚
  • 講談社 (2004年2月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062739641

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砦なき者 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  •  江戸川乱歩賞受賞作『破線のマリス』の続編。前半2章は実質的に別個の通俗的な内容の短編で、表題作と言えるのは後半2章のみ。変則的な構成も含めて、小説としての完成度やリアリティは前作より劣るが、問題意識はより尖鋭的に表出されている。もはやマスメディアが対峙しているのは権力ではなく、疎外されルサンチマンを抱えた大衆であることを的確に表現している。
     本作が描く「橋下徹の頭脳を持った本村洋」とも言うべきニヒリストのカリスマが、メディアとITツールを駆使して、大衆の憎悪=歪んだ正義感を煽動していく姿は、犯罪容疑者や社会的弱者へのバッシングや「劇場型政治」、さらに「在特会」のような排外主義運動を戯画的に予見しており、すくぶる現在的である。本書が「拉致ヒステリー」や「郵政選挙」よりも前に執筆されたことを考えると、著者の嗅覚の鋭さに感嘆を禁じ得ない。

  • 破線の続編として何を謳いたかったのか見えてこない。シナリオもはっきり言って樹一郎の存在がリアリティを逸脱しすぎている。ただのエンターテイメント作品として仕上げたかったのか。それなら破線の続編を謳う必要は全く無かった。

  • 面白かった。 マスコミが育てた化け物はマスコミが始末せねば。ラストにどんどん化けの皮が剥がされて行くと予想したのに・・ カリスマとしたまま終るとは。 最後の遺書で賛同した若者らに「こんな作り物の自分に騙されてばかだなぁ」くらい言って欲しかったな。

  • 実際にありそうで怖い。
    これ、前にドラマ? になったよね。
    最後だけ見た記憶が甦った。
    TVとは全然違う結末で、これはこれでよかった。

  • こういうひと いそう。こわい。

  • 『大衆は退屈の中で阿片を求めているわけだから、無意識のうちに阿片に適合したような物語を作ってしまうんです。

    つまり共同幻想できない新しいもの、ショッキングなもの、感動的なものは、ことさら演出しなくても、情報の受け手が貪欲に吸収して、肥大化させていく。』

    本作も良かった。野沢さんの作品は好きだ。
    早くに自ら死を選んでしまったことが悔やまれる。

  • 「破線のマリス」の続編とも言える作品。どちらも面白い。
    メディアの可能性を信じる者、そのメディアによりカリスマとなった青年。メディアの可能性を信じる者によってカリスマ青年の本当の姿を暴くことは出来るのか。

  • 破線のマリスの続編、前作よりもこちらの方がおもしろいと思う。

  • 『破線のマリス』の続編的なもの。著者はテレビ界の人だった(故人)けどテレビのネガティブ面へ目配りがすごい

  • 破線のマリスの続編。前回よりもこちらの方が好きかも。マスコミは表面的で一方的な情報を流していると、視聴者は理解した上で、テレビと付き合わねばならない。影響を受けやすい我々が歪んだカリスマを生み出す。

  • 前半と後半で大きく物語は変わりますが、後半は何となく現実味に欠ける部分が目に付きました。そんな簡単に八尋が人気を得てキャスターにまでなれるものか、どうやって数多くの信奉者達を操れるというのか…。このあたりは少し納得しにくかったです。

    しかりながら破線のマリスと連続するテーマである「報道の2つのF」についてを描かれる様はその内容とあいまってリアルな危機感を煽ります。実際、恐ろしくもありました。
    報道が、テレビが育てたモンスターとの対決となるクライマックスでは何が起こるか分からない緊張感もあって読み応え抜群でした。八尋が模倣犯に出てくるスマイルと少しかぶるようなイメージでもありますね。

    この作者の書くサスペンスは非常に好きです。近いうちに読破したいと思っています。

  • 【煽動するテレビの怖さを描く傑作サスペンス報道被害者を装い、メディアを巧妙に利用し、若者のカリスマとなった男・八尋。一敗地にまみれた硬派の報道番組のキャスターらが八尋の欺瞞を暴く。】

  • 模倣犯を単純にしたかんじ。
    スピードよく、一日で読めた。

  • テレビドラマを先に見ました。
    小説の方が面白かったなあ。リアルなような、一部リアルではないような。ただ、引き込まれます。

  • 野沢さんが死んでしまったのがわかったような気がした。
    嫌な世界を見尽くした人にしか描けない作品だと思う。

  • ある日テレビ局に女から「これから私は殺されますのでそのシーンを撮影してください」という電話が来る、という冒頭。

    つかみとしてはうまいと思う。

    著者は日芸の映画学科出身で映像に関係した作品を多く手がけているらしいと紹介文にあるが、確かに読みながら映像が浮かびやすい気がする。

    ただ、例えばここの文章はAさんの視点だよなあと思って読んでいると、Bさんの視点に変わっている感じがして、少し前に返って読むと最初からBさんの視点だったと勘違いしていた事に気付く事がしばしば。

    自分が悪いとはわかっているが、もう少し誰の視点か判り易く書いてほしいと思った。

  • ある種のカルト宗教のような感覚。現実的でもあり、ドラマ的でもある。個人的にはとても好きです。

  • こういう短編が長編を構成してる感じ、わりと好き。

  • 報道番組『ナイン・トゥ・テン』に売春の元締めとして登場した女子高生が全裸で首を吊った。恋人を番組に殺されたと訴える青年八尋樹一郎の姿は、ライバル局の視聴率を跳ね上げた。メディアが生んだ一人のカリスマ。その邪悪な正体に気づいたのは、砦を追われたテレビマン達だった。『破線のマリス』を超える衝撃。(「BOOK」データベースより)
    一気に読める。破線のマリスを読んでなくても問題ないとは思うが、読んであるとより一層楽しめるかも。

  • 好き嫌いはさておき、読んだタイミングも合わせて色々と衝撃深い本でした。

  • 八尋はたびたび「テレビがつくった化け物」という言い方をされる。
    なぜ彼が化け者なのか。

    彼の怖いところは二つある。一つは、彼が自分の成り上がりのためには手段を選ばないこと。これには、彼が力を持っていないこと、力に対する強烈なこだわりが影響している。二つは、大衆をいとも簡単に動かせること。
    この二つの怖さを持った、ただの元大学生が「化け物」になってしまうのは、私利私欲のために大衆をいとも簡単に動かすことだってできるかもしれない、それだけの影響力を持つテレビの怖さゆえである。

    八尋が、ネットでカリスマ性を発揮するのよりも、活躍の場をテレビに選んだことが怖いのだ。私たちは今テレビで垂れ流されていることの不確実さを知らないし、それを思考停止状態で見ていることの愚かさも知らない。だから、いつ八尋が現れるんだろう、と思う前に、今もう八尋はいるかもしれない。

    この本が書かれたのは2004年である。それから8年たち、テレビは少しずつ、そのあやふやさと作り手の存在を露わにしている気がする。

  • 「破線のマリス」の続編という意識はなく最初は読んでしまったのですが、微妙にいろんな場所がつながっていて、最後に恐ろしい存在を作り出して主人公と対峙させる、その背後には…という構造が、ビッグコミックスペリオールでやっている「総理の椅子」のストーリーに似通っているなぁと気づいたのは途中。最後の最後までどう締めくくらせるかがわからないのはこの人の凄さですが、今回も今ひとつすっきりはしない幕引きでした。テレビを生業にしつつ、その限界を感じたからこそ、死を選んでしまったのでしょうか。

  • 『破線のマリス』に続いて再読。


    “報道番組『ナイン・トゥ・テン』に売春の元締めとして登場した女子高生が全裸で首を吊った。恋人を番組に殺されたと訴える青年八尋樹一郎の姿は、ライバル局の視聴率を跳ね上げた。メディアが生んだ一人のカリスマ。その邪悪な正体に気づいたのは、砦を追われたテレビマン達だった。『破線のマリス』を超える衝撃!”―裏表紙より。

     第一章 1997 殺されたい女
     第二章 1998 独占インタビュー
     第三章 1999 降臨
     第四章 2001 Fの戒律


    前作に続いて、メディア・マスコミの影響力とその恐ろしさについて考えさせられます。
    読み始めは、各章が独立したストーリーのように思えるけど、それぞれの物語が4章への伏線に。

    前作『破線のマリス』もそうだけど、数年ぶりに再読すると、冒頭部分は覚えてるのに、後半はなんだか初読のように、ひきこまれていきました。…ワタシの記憶力が悪いだけかしら?

    今さらだけど、2006年の著者の急逝が悔やまれます。こんな面白い作家の新作が読めなくなってしまったなんて…。

    役所広司、妻夫木聡の演で、ドラマ化もされたみたいですね。観てみたいなぁ。

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