邪魔(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062739689

作品紹介・あらすじ

もうどこにも、逃れる場所はない。2002年版「このミステリーがすごい!」第2位、第4回大藪春彦賞受賞。九野薫、36歳。本庁勤務を経て、現在警部補として所轄勤務。7年前に最愛の妻を事故でなくして以来、義母を心の支えとしている。不眠。同僚花村の素行調査を担当し、逆恨みされる。放火事件では、経理課長及川に疑念を抱く。わずかな契機で変貌していく人間たちを絶妙の筆致で描きあげる犯罪小説の白眉。(講談社文庫)

感想・レビュー・書評

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  • 普通の主婦だった恭子。
    夫が放火事件に巻き込まれ、小さな疑惑が湧き上がってから違う方向へ引き寄せられるように堕ちていく姿が
    じわじわと怖かった。

    何処でどう道を間違えたのか・・・終盤の普通の生活、今までの生活を捨てまいと自ら事件を起こす恭子が
    哀れで浅はかで、置かれている状況さえも判断出来なくなる姿が必死で愚かで来るしかった。

    逃げ道を失う怖さ。

    読み終わって思った事は「どんな時も冷静に判断して、選ぶ道、進む道を間違えないようにしなくちゃ!!」と、つくづく思った。

    また刑事の九野の精神的疾患の真実には全く気づかなかったのでビックリしました。
    亡き妻、早苗と恭子を重ね合わせる所は
    ちょっと思い込みの激しさが怖かった。

    事件も人間関係も別にドロドロした話じゃないのに
    「怖い」って表現が出てしまいます。
    今までの積み重ねて来た日常を失う怖さ、失ったものを受け止められずに執着してしまう怖さ。

    大きな事件が描かれる小説より
    こういう日常が少しづつ少しずつ崩れて行く方が
    身近すぎて怖いです。

  • リアリティがありすぎて、ついつい妻の恭子の気持ちになってしまっている自分にビックリした。朝から読んでたら通勤途中にはどんよりとパートに出かける恭子になっていた

  • 奥田英朗のサスペンスはやっぱりオチが弱い。途中でえ!?っとなるような展開があったのに、そこは深掘りせず進んでしまい不完全燃焼だった。むしろ、そこは本作品において"邪魔"だったのでは?
    お後がよろしいようで

  • 奥田さんの小説の疾走感というか、最近好き。
    この恭子の墜ちていく感じがリアルに描かれていて、自分は逮捕される恐れもないし心配になることもなくてなんて幸せなんだと思えた。
    旦那さんの放火の動機の整理をもう少ししてほしかったなー等最後の回収ができきってない感じがあっていまいちスッキリ終わっていない。

    本当に謎だったのは義母のこと。服部と佐伯の発言からして、事故時に亡くなっていたということは確かなのだけれど、じゃあそこまでは全部妄想だったのか!?!と思うと九野はおかしくなっていたと言わざるを得ない。確かにちらしずし作ってっていったのに自分で材料買いに行くところとか変かな・・・。うーんでもすべて妄想とか言われると変な感じだな。

  • 素晴らしい。エンタメ群像劇でありながら、人生の絶望や皮肉や希望を謳いあげている。主人公の九野刑事の屈折したキャラが魅力的で共感できる。ちんけな狂言放火に端を発するこの物語は、7年前に愛する妻を失った九野刑事と、スーパーでのパート勤務の及川恭子を軸に、緊張感とスピード感を加速させながら進んでいく。その見事な術中にはまった読者は、いつの間にか一筋縄ではいかない人生の悲哀と希望をそこに見つけ出し、決してハッピーエンドではないけれど、「強く生きればなんとかなるさ」と心が浄化されるのであった。
    影の薄いお義母さんの描写が秀逸。

  • 上巻の後半からは、先が気になり一気読みだった。奥田さんの作品は、何だかいつもそうなってしまう気がする。安易なハッピーエンドや最悪な結果の回避は、奥田さんの小説にはないのだろうと思いつつ(と偉そうに書くほど奥田さんフリークでもないのだが、何作か読んだ印象として)
    それでも読み進めるのを辞められない。

    この作品は【邪魔】なので、おそらく物語を通して、誰かが誰かにとって、ある組織にとってある組織が【邪魔】だと言うことがテーマになっているのだとは思うのだが、
    私は、途中からずっと”正義””正しいこと”とは何だろう、と思いながら読んでいた。
    もちろん、及川(夫・茂則)がしたことには、同情の余地もないのだが、それなら、警察は正義なのだろうか。捜査本部内でのメンツや権力争いは、正しさを求めるが故ではないだろう。会社も正しさを求めるのなら、隠蔽することではなく、及川のことも、これまでしてきた社内の不正についても罪を追求するべきなのに。桜桃会の活動もそうだ。一見、正義を追求し社会の弱者を救済する活動のように見えて、もはや何を目指しているのか。スーパーの社長の言う、スーパーを続けることでの地域への貢献とか、従業員の生活についても、一理あると思ってしまうし(企業が本当は従業員の権利や生活なんて重視していないと言うことは分かった上でも)。
    企業にしても警察にしても、社会や地域への貢献を目指しているはずで、それは社会を構成する我々市民への貢献になるはずなのに、必ずしもそうではないと思うと脱力してしまう。
    恭子も本当に子供を思うなら罪に気付かぬふりをしたり、ましてや自分の罪で隠すべきではなかったはずなのに。正義はどこにあるのだろう、、、正しいってなんなのだろう、、、

    恭子はどうしているのだろう。北陸にでも逃げたのだろうか。
    子供たちはどうなるのだろう。本城を離れてほとぼりが冷めたら、何とか平穏に生きていけるだろうか。
    頭を抱えたくなる気持ちのまま、エンディングを迎えてしまったな。

  • ふうむ。
    実はよくおぼえていない。
    う~~~~~ん。

  • あらすじ
    もうどこにも、逃れる場所はない。2002年版「このミステリーがすごい!」第2位、第4回大藪春彦賞受賞。九野薫、36歳。本庁勤務を経て、現在警部補として所轄勤務。7年前に最愛の妻を事故でなくして以来、義母を心の支えとしている。不眠。同僚花村の素行調査を担当し、逆恨みされる。放火事件では、経理課長及川に疑念を抱く。わずかな契機で変貌していく人間たちを絶妙の筆致で描きあげる犯罪小説の白眉。

  • 刑事・九野と義母との関係の真実に気付いた時は驚愕だった。
    彼のことを心底心配してくれている上司や同僚の助けを得て、どうかこの先しあわせになって欲しい。
    もっとも、九野本人が最後にはそのことに気付いたようなので良かった。
    少し泣けた。

    一方、主婦・及川恭子の狂いっぷりには共感できない。

  • 奥田英朗 著「邪魔」(下)、2004.3(文庫)発行。
    上下巻、長編小説です。上巻は下準備か? 下巻になって上巻のすべての伏線がテンポよくつながってきます。生きて行くことに邪魔なプライド、見栄、やせ我慢などを振り切って懸命に生きるスーパーのパート主婦、及川恭子34歳、妊娠中の若妻を交通事故で亡くしたくそまじめで心優しい警部補、九野薫36歳、この二人の生き様、ページをめくる毎に心に迫ってきます。読み応えがありました。義母を心底慕う薫ですが、義母は本当に生きていなかったのでしょうか・・・。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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