すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062747530

作品紹介・あらすじ

誰も愛せない。壊れた心に降り積もる物語。心変わりした恋人由美子が選んだのは、こともあろうに兄貴だった。大学生活を捨てた祐介は信州菅平の宿「かむなび」で、明るさの奥に傷みを抱えた人々と出会う。 (講談社文庫)

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと不思議な感覚。ロースタートからちょっとずつアクセルを踏み込んで、上巻が終わった今がちょうど半馬力くらいに思える。
    この本の中で移り変わっていったのは季節と、美里ちゃん、花綾ちゃん。そして由美子と兄貴。
    変わらないのはかむなびに流れてる田舎の雰囲気と園主のスタンス。
    主人公祐介と瞳子さんは、同じとこぐるぐるしてて変われてない(でも実際はちょっとずつ前に進んでる)という対比に思えた。
    下巻はこの2人それぞれに更にスポットが当たっていくんだろうなと予想してます。
    引き続き緩やかに加速するような物語であってほしい!

  • 恋人の笠松由美子を兄にうばわれた主人公・大和祐介は、恋人や家族といった濃密な人間関係のなかに走った亀裂に耐えきれなります。「とにかく東京から離れたい、兄貴と由美子の気配を感じないで済むところならどこでもいい」という思いにみちびかれた彼は、親友のタカハシのすすめにおうじて、信州菅平の農園「かむなび」でアルバイトとして働きはじめます。

    読みはじめた当初は、自然のなかで過去の傷が癒されていくといったストーリーだと思っていたのですが、そうではなく、うっとうしいくらい濃密な人間関係のなかで戸惑いつつも、たくましくなっていく祐介の姿に焦点を当てた物語のように思えました。ちょっとナイーヴな自然礼賛に流れるところもありますが、園主の神山十兵衛、姪の瞳子さん、その息子の健太、源さん、茂市つぁん、美里ちゃんと花綾ちゃんの花売娘コンビなど、登場人物がみんな魅力的に感じます。

    結婚式の花の飾りつけを全部まかせるといわれて、美里が「一番やりにくいお客よね」といったのに対して、花綾ちゃんが「一番やりやすい、お客さんよねー」といったところに、おっとりしているように見えて芯の強い彼女の性格が感じられ、強く印象にのこっています。

  • 村山作品初読了作品。
    当時、感想を書いたが使っていたソフトウェアがパソコンが壊れてパーになり・・・結局、今は覚えていない。
    上巻を読んで下巻の購入を決めたので、いい感想だったのだと思う。

  • 10年ぶりぐらいに再読。好きだったな、という感覚だけが残っていたので、10年経ってみてどうだろうかと思ったけれど。

    かむなびの人たちは、とても自然。そう在るように在る。そんな気がする。「手伝う、という言葉はおれは嫌いや」園主の価値観から来る言葉に、はっとさせられる。大人はどこからが大人で、どこからが子供なんだろうか。

    瞳子さんがとても好き。お日様みたいに明るい人には、それと同等の影ができる。大人しく、穏やかな人には、それと同じだけの激情がある。強く、気丈なひとほど、繊細で、傷だらけかもしれない。

    個人的に、昔からそう思っている。この人だから大丈夫、なんて無下に扱っていい理由なんてない。自分も含めて。
    そんなことを、改めて考えた。

    この人の本は、読めば読むほどに、行きたいところが増える。長野も、いいなあ。

  • 長野の民宿での田舎生活については、どれも人が生き生きしていて、心温まる場面がたくさんある。
    でも登場人物それぞれが抱えるものはかなり重いものばかり。

    本の内容としては、
    「Every cloud has a silver lining」
    どんなことにも表と裏がある、どんな幸せにも不幸はついてるし、その逆も然り。みたいなことがメインなのかな。

    自分が幸せかどうかは自分だけが知っていればいいし、自分だけが決められる、とか。

    田舎での生活を、閉鎖的で利便性も悪くて気候環境の厳しい嫌な場所として捉える人もいれば、自給自足の生活に生き甲斐を感じたり、都会の喧騒から離れて静かに暮らせるのが美徳と考えたりする人もいて、
    要は全てその人の考え方で幸せにも不幸にもとれる。

    登場人物の抱えるものの重さと、民宿での心温まる描写のコントラストが上記のメッセージ性を強くしていると感じた。

    結局、どんなに辛いことがあっても、二度と前と同じには戻れない状況に陥っても、周りに助けられながら、気持ちに折り合いをつけて生きていかなければならないんだなあっていうのが読み終わった時の感想。

  • 主人公の大学生祐介は、ちょっときっつい失恋を体験し、日常から逃れるように信州菅平の宿で住み込みのバイトを始めた。ちょっと風変わりで子連れの瞳子をはじめ園主や花屋の女の子たち、近所の農家のおじさんなど、個性的な面々に囲まれて自然の中で生活するにつれて、心身ともに逞しくなっていく。
    今時こんな素直な青年はいないぞ、とれいによってちょっと距離を持って読んでいたのだが、不覚にもうるっときた場面があった。疲れているときに読むと安らぐかも。

  • 表題は「すべての雲は銀の裏地を持っている」というどこかの国のことわざで、どんな不幸にもいい面はある、というような能天気な意味だそうです。その表題のとおり、いろいろな不幸を抱えた登場人物たちが明るくけなげに会話をして仕事をして信州の厳しい自然の中で生活していくという物語です。村山由佳の文章は読みやすく、ソフトクリームのような感触ですが、この小説もあっという間に読み終えてしまいます。主人公の男の子はタイプは違うにしろ、本質的にはほとんどきみのためにできることの主人公と同じに感じられます。このタイプの男の子が村山由佳の理想の男性像なのかもしれません。ところで、この物語の瞳子さんは忘れがたくなります。こんな人が身近にいたら人生も楽しくなるだろうに。

  • 下巻で

  • 読みやすかったなー
    男子素直だねー

  • 園主の言葉に重みあり。

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著者プロフィール

村山由佳
1964年、東京都生まれ。立教大学卒。93年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞をトリプル受賞。『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞受賞。著書多数。近著に『雪のなまえ』『星屑』がある。Twitter公式アカウント @yukamurayama710

「2022年 『ロマンチック・ポルノグラフィー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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