六人の超音波科学者 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749237

作品紹介・あらすじ

土井超音波研究所、山中深くに位置し橋によってのみ外界と接する、隔絶された場所。所内で開かれたパーティに紅子と阿漕荘の面々が出席中、死体が発見される。爆破予告を警察に送った何者かは橋を爆破、現場は完全な陸の孤島と化す。真相究明に乗り出す紅子の怜悧な論理。美しいロジック溢れる推理長編。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。

    ですが、あまり印象に残っていなかった一冊。
    ただ、今回読んでなかなかの衝撃を受けた。あんなに凄惨な現場であったにも関わらず実は全て殺人ではなかったという、概念の根底をひっくり返す物語の構成。
    そして、このシリーズならではのいつもの気になるポイント。林と七夏、紅子の関係。詳細が明らかにされていない関係のなかでもよく考えたら実は林のダメ男っぷりは相当なもの。

  • 事件のトリック自体は古典的だった。クリスティの『オリエント急行』のパターンだ。動機も森作品としては割と穏当で、単発の作品としては地味な印象を受けた。

    むしろこの巻で感心したのは、殺人事件以外のトリックだ。ひとつはVシリーズの『朽ちる散る落ちる』との絡み。この研究所の物理的構造が次の事件のトリックに活かされていて、この巻自体がいわば前哨戦なのだ(なので『超音波』と『朽ちる』の2つはセットで読むと面白い)。

    もうひとつは、テクノロジーを利用したトリック。橋が爆破されて研究所が孤立した時、「なぜ誰も携帯を持ってないんだ」と思ったのは私だけではないと思う。山奥だから使えないという一見もっともらしい理由が用意されているにしても、だ。

    90年代以降の生まれの人はピンとこないと思うが、携帯電話は00年代に爆発的に普及したツールだ。その登場は当初、ミステリー作家を大いに悩ませたという。「外界と隔絶された陸の孤島」という設定が、携帯の存在ひとつで崩れてしまうからだ。だが次第に携帯はトリックに積極的に組み込まれるようになり、今では標準装備のツールとして書かれるようになっている。

    だが、こういう使い方があるとは思わなかった。ケアレスミスではない。誰も携帯を持っていないということ、それ自体がヒントだったのだ。森ミステリィを特徴づけているコンピュータというツールが、Vシリーズには殆ど出てこないのも同様だ。書かれていない物を、書かれていないということでヒントとする高等テクニックだ。なんのためのヒントか? 勿論、S&MシリーズとVシリーズの関係性における重要因子、時系列を示唆するためのヒントである。

    森先生の頭の中って、本当にどうなってるんだろう?

  • 何か今回の話はどことなくS&Mシリーズを思い出したのは私だけでしょうか。
    色んな話が程よくブレンドされている感じがして、読んでいる間あの2人の遭遇した事件を思い出して懐かしくなったりしていました。

    そしてこの話、前回がお洒落で優しめだった反動なのかえらくショッキングなシーンが多かったなという印象が。
    簡潔に纏めてしまうとエピローグの一文目に集約されてしまうのでしょうが(いやそう言いきってしまうのが良くないというのは重々承知なのだけれど)、その結論に至るまでにちょっとドキドキしながらページを捲ってました。
    ただ何かこう……こんなに登場人物必要だったか?という気がしなくもないんだよなぁ。
    あの人とかあの人とかもはや印象が薄すぎて「あっそういえばいたんだっけ?」みたいな事何回かあったし……うーんでもまぁメインの登場人物が多いシリーズには起こりやすい事なのかもしれませんね。

    とにかくあの子の生命力がとんでもなく強くて良かったと心の底から思いましたね。
    あと、紅子さん。
    あの鋭い推理力といい観察眼といい今回の行動といい……実は何か特殊な訓練を受けていたりします???

  • 今回は科学者たちのお話だけあって、ほぼ紅子さんの独壇場!
    格好良いなぁ✨

    舞台は王道の閉じ込められた山の中の館。
    主要人物たちにも襲いかかるような脅威に凄くハラハラした!
    超音波のお話は難しくてよく分からなかったけど、最後に紅子さんが解いた謎は確かに綺麗な暗号だったなぁ。

  • 面白かった。
    平面図です。それだけで嬉しいですね。今作ではピンチの描写が鮮烈です。息がつまります。
    そしてあの遺体の様。ある種の古典です。楽しかったです。

  • ミステリ好きにはたまらない一冊。
    森先生のお話は何を読んでも品があって、知的で、
    それでいてユーモアに溢れておまけに愛まであって楽しい。

    今回は私の一番好きなタイプ。
    フーダニット系。橋が破壊されたあたりから、自分の大好きな展開へ(笑)
    こういうのたまりませんね!

    しかも頭部の無い遺体。何パターンも自分の推理が炸裂して、
    小説を読むことと、この後の展開を考えること、二重に楽しむことができた!
    大満足っ!!

  • 紅子と練無の招かれた研究所のパーティでまたも殺人事件に遭遇するイツメン4。研究所に向かう途中の橋は爆破され研究所は孤立…科学者たちと招かれた者、招かれちゃいない者(笑)が明かす一夜… 真相と瀬在丸紅子の思考がこのシリーズらしくて好きです。

  • 設定がとても好きだし、久しぶりに建物の平面図があるから、絶対面白いやつ!って期待して読んでいた。
    けど、やはりVシリーズに入ってから(正確にいうとS&Mシリーズ後半から)の謎が解明された時のいまいち感。
    なんというか、もっと大きな驚きとか、すげ〜って言いたくなるような仕掛けとかがなく、それまでの分量も無駄に長い。
    文句ばかり言ってるが、森博嗣さんの作品はどちらかというと、ワールドの構築だと個人的に思う。
    事件と関係会話とか、メインキャラクターの関係性とか、事件以外に楽しむことがそれなりにあるので、飽きたりはしない。
    つまり、ミステリーとして読まなきゃ全然面白い。

  • Vシリーズを読んでいた先月は、
    2~3日に1冊のペースで
    気が狂いそうになるほど焦って読んでました。
    ダメなんですよね、
    生き急いでしまいます。苦笑

    毎回思うんですが、
    Vシリーズの装丁ってお洒落ですよね。

    S&Mシリーズも、四季シリーズも好きですが、
    Vシリーズが一番表紙が好きかもです。

    本作は、山奥位置する、土井超音波研究所で殺人事件が起こります。
    しかも、事件当日は大雨、研究所に続く橋が爆破される。
    陸の孤島となった研究所。
    紅子たちが犯人を突き止めようとする中、迫りくるピンチ。
    怖くて怖くて、続きが気になり、手が止まらず。

    今までのVシリーズの中で一番印象的でした。
    それは紅子が感情的に怒る場面。
    コントロール下にある自我から覗いた、紅子さんの怒り。
    胸にくる場面でした。

    物語は佳境。
    駆け抜ける読書もあと少しです。

  • 再読。といっても内容はすっかり忘れていた。プロローグからして練無くんと紫子さんの掛け合いが面白い。ここらへんの軽妙さがVシリーズでの清涼剤だよねぇ。今回は保呂草さんの出番は控えめだったし紅子さんによる謎解きもあっという間に終わってしまったけどその割に濃く印象に残る。犯人の予想はおぼろげだったけれど死体のトリックはおそらくそうだろうと思ったのがドンピシャだったな。

  • Vシリーズ第7弾。犯人が誰かなんて考えられないくらい、息をつく暇のない展開でした。紅子さんが犯人特定に至った経緯も、もう少し詳しく説明して欲しかったです。へっくんてもしかしてあの人じゃないよね?って思ってしまう描写があって、事件とは関係ないことをいろいろと考えていました(笑)

  • この巻は、紅子さんがかっこよかったです。

  • Vシリーズ第7弾。超音波研究所が舞台で周りから孤立してしまい外部との連絡が閉ざされる。シリーズの主要メンバーや研究所の博士たちと刑事が一人。閉ざされたなかで起こる事件。手口、動機、犯人となかなか見えてこない。そしてメンバー同士の会話、ジョーク、科学の専門的な知識とたくさんの情報と伏線の回収の面白さ。シリーズの中で一番の好み。

  • 小鳥遊練無の身に危険が迫るスリリングな展開や瀬在丸紅子と祖父江七夏のバチバチな対面は面白いものの、陸の孤島、研究所、切断された死体、暗号など、『すべてがFになる』の模倣のような感じで新味がないですし、トリックや動機は予想し易いのでパッとしない印象です。巻頭に登場する見取り図も全く関係なくて残念です。

  • 凄く面白かった。
    正六角形の所は推測できたけど、その後の展開は予想できなかった。
    本当に綺麗だと思う。

  • S&M恒例の平面図が目次に記載され、話の展開もスリルがあったにも関わらず、最後に行くにつれて勢いが下がって行った感

  • 解説文がカッコ良い
    本編ももちろん面白いんだけど
    解説文が面白いです
    解説なんだけど
    落語家に解説を依頼したこと
    それを受けた落語家がこの解説を書いたこと
    森博嗣の解説って
    いろんなジャンルの人が書いてくれて
    世界を広げてくれます
    ユーモアを言葉で

  • 首なし死体、仮面とか、金田一少年を思い出すような、珍しくオーソドックスなミステリ。
    これくらい王道なのも個人的にはかなりアリ。

  • んーなんというか。前々作と前作でやっと盛り上がってきたところに、なんだか手抜き(もちろんそんなことないけど)、感を感じる作品でした。

    というか森博嗣さんの期待値が高いだけで、いろんなところが「よくある推理もの」って感じ。なのは読み込みが足りないのかな?

    それにしても、他の方のように、紅子さんのかっこよさがいまだにわからない。嫌いなタイプではないはずなんだけど、今回は特に人を見下してる感じが全面に出てて(いつもだけど)、最初は苦手だった祖父江さんに同情してしまうほどだった。かと言って祖父江さんの方が好きとかでもないから、どうも感情移入でいきないシリーズだなぁ。

    強いて言えば保呂草さんのミステリアス感だけが、この先も読むモチベーションになってる


    れんちゃんは好きな方だけど...

  • 第7弾
    超音波の研究所のパーティで起こった殺人事件。
    紅子は元六角邸の持ち主長原博士の代わりに、練無も招待されて居合わせる。
    研究所近くの橋の爆破予告を受けて調査していた警察も取り残され、研究所へ向かう。
    おなじみのメンバーが揃う中、研究所の所長と思われる首なし死体が発見されるし、紅子たちは無響室に閉じ込められて練無は殺されかける。
    どこで紅子が真相にたどり着いたのかわからないくらい事件はのっぺりとしてた。

  • なんか知ってるシチュエーション!みたいなのがところどころ出てきて、内容的にはわくわくするべき場面ではないけど高揚した。
    最後に判明するトリックというか演出が粋っぽくてよかった。

  • 森博嗣のVシリーズはミステリとしてもしっかりしているが、メインの4人の掛け合いが実に面白い。一人一人のキャラがたっていて、回を重ねるごとに魅力的になっていく。本作は特に練無がピンチあり、ユーモアありで際立っていた。

  • 220213*読了
    この巻も先々に繋がるなんて思わなかったなぁ。
    超音波科学といいながら、超音波はほとんど使わないという。
    自分と同じ名前のキャラクターが出てきてほしいと思っていたら、本当に出てきてびっくりしたのだけれど、そのキャラクターが…。笑
    超端役でもあったけれど、普通の名前でも森博嗣さんの作品に登場で来たのは嬉しかったです。

  • Vシリーズ第7弾。

    山中深くにある土井超音波研究所。唯一のアクセスルートである橋が爆破されるというクローズドサークル的な状況に気分が高まる。電話回線も分断され、外界との連絡手段がない中で発見される遺体。
    研究所に招かれていた紅子と練無、作為か不作為かその場に残った保呂草と紫子。偶然そちら側に居合せることになった祖父江刑事。

    紅子の論理的な推理がなんとも美しく、読後に余韻を残す。
    林をめぐる紅子と七夏の火花が散りそうなやりとりに苦笑し、怜悧で論理的な紅子が林のことになると感情に支配されただの恋する女になる可愛さも魅力的。
    相変わらず紫子はガサツでうるさくて好きになれないけど。

    だけど一番びっくりしたのは、立川志の輔による解説だろう。これ2004年に発刊された文庫だから許されているんだろうけど、今なら大炎上だろうな〜。読んでいて「大丈夫なんかい?これ」と心配になりました。

  • 首がない、ということは概ねその方向性が予想ができることではある。あとは誰がそれに関わるか、という話。今回は比較的王道だったので、違和感はない。その分、キャラの悪目立ち感は毎度のコト(笑)。ねりながやられるという、あまりない展開だった分いつもよりは薄目だったかもしれないけど。

  • あまりごちゃごちゃしてないストーリーで良かった
    真相は驚くようなものではなかった

  • 山中深くにある土井超音波研究所。外界をつなぐ橋が破壊され、研究所は陸の孤島と化す。研究所内で発見された遺体。不可解な事件の謎に瀬在丸紅子が迫ります。
    Vシリーズ第7作。

  • 最初の方からどこか不気味さを感じる広い研究所で、橋の爆破が起き、閉じ込められたり、死にそうな目になったりする子もいるし、まさかの首なし死体にちょっとドキッとする。

  • 個人的に体調が悪かったせいか、全然ハマらなかった。いつもはグイグイ読めるのにブレーキ気味。
    この、陸の孤島的な舞台設定ってどこかで読んだような。犯人もわりと普通だし。
    七夏と紅子と林の三角関係もこんなだったっけ⁇
    とにかく今作は残念。

  • はー全然覚えてなかった!面白かった!
    どのキャラクターもそうだけど、祖父江さん、読めば読むほど好きになるな。
    最後のエレベーターでのアクセス方法、紅子さんが言うようにとても綺麗。
    S&Mでもだけど、やっぱり誰かが推理ショーしてるところがかっこよくて好きだな〜。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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