新装版 歳月(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749961

作品紹介・あらすじ

新装版 司馬遼太郎の名作

肥前佐賀藩の小吏の家に生まれた江藤新平。子供の頃から一種の狂気を持った人物だった。慶応3年、大政奉還を知るや「乱世こそ自分の待ちのぞんでいたときである」と、藩の国政への参画と自分の栄達をかけて、藩の外交を担い、京へのぼった。そして、卓抜な論理と事務能力で頭角を現していった。が……。

感想・レビュー・書評

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  • 江藤新平といえば、新政府の国家デザインを担える人材でありながら、やがて大久保利通と対立。征韓論で敗れ、佐賀の乱を起こす、という程度の認識でした。
    こういう教科書では単語やセンテンス程度の人物の物語を読むというのは、その時代の背景や流れを知ることに繋がるとともに、他の歴史的な人物との関係もうかがい知ることができるので、とっても刺激的。それなりに歴史小説を読んできて今更ですが、やっぱり歴史小説っておもしろいなと、再確認しました。

    さて、本書の江藤新平は、なんというか正義感の塊のような人物で、とにかく苛烈。政治に関心(というかセンス)がなく、真面目一直線で行動するがゆえ、大久保の権謀術策にかかり自滅したように描かれています。どうも大久保に比べると一回り小物の印象を抱くのは司馬遼太郎氏の感性によるところでしょうか。
    これまではどちらかというと清廉潔白の印象の強かった大久保ですが、江藤との関係を通じて利己的な一面を垣間見られたようで興味深かったです。

    上下巻の構成ですが、特段の中だるみ感もなく、論点も整理され、とても読みやすかった作品でした。

  • 「三国一の何々」という「三国」とは(近隣国では)
    「唐天竺(中国インド)」と日本の中で一番だということで
    「韓」というものがふくまれていないのだった
    と、司馬ワールドではいう

    古来、朝鮮という半島は国家については地理的位置が近接しすぎており、
    しかも人種までが類似し、このため厳密な外国意識をもたずに数千年経てきている。
    から
    含まれなかったのはあまりにも近縁で他国視できなかったのであろう。


    今読んでいる司馬遼太郎『歳月』(江藤新平栄光と転落の生涯)にある文章で

    これ、わたしは「ははーん」と思ったことだった
    おもしろいものだ
    いまではとても同じ人種と思えない気質なのにね
    でも、むかしからお互いに尊敬しあってないのだからね

    この小説の舞台時代
    (西郷隆盛を中心に「征韓論」が起こった一件に関係して江藤新平は転落していく)
    明治初期のまだまだ政府の屋台骨があやふやな時
    近代化しようとしている日本が近隣国(ロシアや清国)を意識し
    富国強兵に進もうと、どこの国でもあるように、外に目を向けた

    そして冒頭の日本の側の意識!
    反対に朝鮮半島では中国の属国のような庇護を受け、かさに着ていて
    朝鮮半島は中国の姓名を使ってるのに、日本は独特の苗字を名乗り
    儒教という中国の文化も影響少なく、八百万の神を敬う
    倭の国(日本)を尊敬していなかった
    とある

    まあね、お互い、これじゃねえ

    この本の上巻、一章「征韓の一件」はおもしろかった

    ところで、最近、天竺(インド)とは仲良くしようとしているね

  • 本流の薩長ではない肥前佐賀藩の出身ながら明治新政府の司法制度のほとんどを作り上げた男、江藤新平。上巻は江藤が脱藩、帰郷、蟄居を経て明治新政府に登用され、司法卿(当時の法務大臣)として改革を成し遂げつつも、征韓論を巡って大久保利通と対立するまでを描く。正義感が強く、時の権力者にも盾突きつつも、同時に34歳になるまで世に出られなかった焦りを抱えた野心家でもある複雑な人物として描かれている。下巻が楽しみ。

  • 主人公江藤も決して良くは書かれていないし、維新の元勲たちも悪者として描かれている。たぶんそうだったのかもしれない。

  •  明治維新時の日本において、近代的司法制度の創設を一手に担った鬼才・江藤新平の伝記。肥前佐賀藩に生まれ、佐幕を是とする藩風の中、命がけで勤皇を主張する。倒幕後の新政府における江藤の活躍がこの小説の主題。
     薩長が牛耳る政府にあって、江藤はもう一度乱を起こし自らが政府の実権を握ろうとしていた。「正義」だけが彼の全てであり、いっさいの腐敗を許さない性格だった。
     政府に機構を創るという仕事を誰よりも高い能力でこなした江藤の凄まじいまでの仕事力。彼の暗躍する姿がよく読みとれる。江藤に限らずこの時代の男達は本当に仕事に対して誠実であり命がけだと感じた。大学生の時に一度読んだ本だが当時より深く理解できた気がする。

  • 2023.09.17読了

  • 若い時に読んだ司馬遼太郎作品を一から読み直し中です。

    飛ぶが如くの時代を別視点(主人公を変えて)の著作です。
    前巻は江藤新平の前半生であり、薩長土肥の肥前の幕末での立ち位置を知ることができます。
    江藤新平は才あるも、人間関係の調整、機微が分からない人物として描かれていて、私の会社にもそういう人がいるなぁと勝手なことを思って読んでしまいました。

    (著者の私見も入っておられる思いますが)幕末という騒乱期では英雄であった参議等が、国家を作る政治家、行政家として活動しなくてはならなくなった時の立ち振る舞い、政治家等としての能力、性格を知ることできます。
    幕末小説は多くの小説はあれど、その後のことを書いた小説として秀逸かと思います。

    ハードボイルド的な主人公が活躍する歴史小説、時代小説ではなく、淡々とした書き方ではありながら、中味はギュッと詰まった感じのこの内容は私には合っております。

  • 2020.9.2(水)¥280(-20%)+税。
    2020.9.2(水)。

  • 肥前佐賀藩の江藤新平を描く歴史小説です。
    倒幕には間に合いませんでしたが、大政奉還を知るやいなや、乱世こそ自分の待ちのぞんでいたときであると、藩の外交を担い、京へのぼります。
    卓抜な論理と事務能力で頭角を現していきます。
    特異な人格と容貌、類稀なる才能は、革命後の政府を作り変えることが出来るのか。
    江藤新平の活躍が、見逃せません。

  • 20190522

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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