流星ワゴン (講談社文庫)

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著者 : 重松清
  • 講談社 (2005年2月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749985

流星ワゴン (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに本を読んだ。
    年が明けてから、ダラダラと忙しくて、ワープロ仕事で目も疲れたしと、あれこれ理由をつけて、本を読む時間を確保しなかった。

    で、久しぶりの一気読み。
    やっぱり、重松さんは上手い。ギリギリの欲しいセリフを少しじらしたタイミングで言ってくれる。
    素直になるには、こじらせた時間の分だけ必要な時間がある。それを、周りの人は待たなくちゃいけないのに、そんな簡単なことが当事者になるとわからない。
    読んでいて、しまったと思うことがいくつもあった。


    受験の失敗から引きこもりとなり、家庭内暴力までするようになった息子と家を空けることが多くなった妻。
    自身もリストラされ、生きていることが億劫になった38歳のカズは、帰宅途中の最寄駅で、父子が乗ったオデッセイに出会い、深夜のドライブへ。
    その父と息子は交通事故で5年前にすでに亡くなっていた。遣り残した思いや現実を受け容れられず苦しむ人をその人にとって大切な時間を取り戻すために案内を続けているという。
    どこだかわからないが、2人はカズを大切な場所へ連れて行ってくれるというのだった。

    カズは家庭崩壊が兆した1年前のある日へ連れられて行き、そこで38歳の父親・チュウさんにも出くわす。
    意識不明で病院にいるはずのチュウさんが25年前の姿現れたのも、どうやらこのままでは死んでいけない強い思いがあるらしい。
    中学生の頃から父親とだんだんとうまくいかなくなっていたカズは、チュウさんとの関係をやり直し、また、家族との危機に立ち向かうことができるのだろうか・・・。

    少し前に、TVでドラマ化され、見るつもりで録画したものの結局消去してしまった。けれど、予告で見た香川照之さん演ずるチュウさんと、小説のチュウさんは印象がぴたりと重なっていた。
    香川さん、いい役者さんだなあ。
    いい役はもちろん、悪役でも人間の弱さが滲む深みのある演技が好きだ。
    勝手に香川さんの声でチュウさんに広島弁をしゃべらせて、読んでいく。

    連れて行かれた過去で最初は前回と同じ状況をなぞるにすぎなかったカズが、だんだんと自分がすべき対応やしたかった言動を主体的に選択するようになる。最後は、自分が言いたかったことを言い切ったと納得して旅を終える。
    まるでただ夢を見ていただけのように、旅の始まりの夜の駅前に戻ってきた。現実の世界は何も変わっていなかった。
    「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のように、うまくはいかない。
    けれど、深夜に帰り着いた自宅のマンションで、シンクに積み上げられた大量の食器を自分の手で洗い、片づけるのは気持ちがよかっただろう。
    たまった洗濯物を要領を得ないながらも、洗い上げるのはどんなにすっきりしただろう。
    バスルームの目地のカビも昨日は気づかなかった。
    でも今は、気になり、こすり洗いをする。
    朝になれば、自分でコーヒーを淹れ、朝食を用意する。

    人は変わろうと思えば、変われる。
    人を変えるのは難しくても、自分の行動や思考は変えられる。

    どうにも辛くて、明日が来ることを信じられないときにも、誰かに話を聴いてもらうことができて、自分を整理することができるのなら、自ら一歩を踏み出す勇気が湧いてくるだろう。最後に温かな余韻を残している。

  • 死んじゃってもいいかなあ、もう…。38歳の永田は家庭にも会社にも居場所を無くし、そう思い詰めていた。
    一人息子は中学受験失敗を機に家で暴れるようになり、妻からは離婚を切り出され、仕事はリストラされ…。病床にある父とも長年心の溝を埋められずに。

    そんな彼の前に現れた古い型のワインレッドのオデッセイ。何かに操られるように乗り込むと、中には5年前間抜けな事故でこの世を去った橋本親子。

    実の親子だから気が合うなんてことはない。ずっとずっと嫌いだった父。その父が自分と同い年の「チュウさん」「カズ」と呼び合う朋輩として現れたら…。

    悪いことなんて何もしていないのに、人並みに幸せだったはずなのに、いつの間にか全てを失いかけていて、もはやその取り戻し方も分からない。不器用な人を描かせたら、重松さんはピカイチだと思う。

    なんだか泣きそうになってしまった。だから重松さんは危険なんだ。

  • 人生には大切な分かれ道がたくさんある。その時は大切と気づかない事もあり、私達は後になって色々悔やむ事も多い。
    分かれ道も何が悪かったのかもわからない一雄の家庭は崩壊してしまった。投げやりな一雄にオデッセイと橋本親子が魔法をかける。大切な分かれ道へと彼を導く。一雄と朋輩チュウさんのドライブの結末は…。

    3組の不器用な親子に私は自分を重ねる。良かれと思って言った言葉でも、相手を追い詰めたり、不快にしたり、傷つけたりする事もある。親子の場合は特に。「頑張れ」の気持ちをうまく届けたいし、受け止めたい、そう思えた作品でした。

    奥さんだけはちょっと理解に苦しむ。

  • 本当に大事な分かれ道って、後になってみないと分からないんだよね。「戻れるならあの時に戻りたい」と願わずにいられないのが人間だけど。
    筆者が伝えたかったのは「後悔しない生き方をして欲しい」ではなく、「後悔してもいいから懸命に生きよう」ってことなのかなと思った。

  • 人生をやり直せるとしたら。
    たくさんの分岐点で、数え切れないほどの選択をしながら人は生きていく。
    そのどの分岐点に戻りたいと思うのだろうか。

    この物語には三組の親子が登場する。
    事故死した橋本とその息子・健太。
    主人公であるリストラされた僕と息子・広樹。
    そして何故か若返った僕の父・チュウさんと僕。
    親子だからといって、何でもわかりあえるものではない。
    親子だからこそ、きっと他人よりもわかりあうことが難しい面があると思う。
    他人ならば譲歩することだって出来る。
    他人ならばわかってもらおうと努力することだって厭わない。
    他人ならば許せないことがあれば離れればいい。
    だけど、親子には逃げ場がない。
    どこまでいっても親は親で、子供は子供のままだ。
    橋本の健太への切ない思い。
    実は不器用なだけで、僕への愛はたくさん持っていたチュウさん。
    そして、息子の広樹からも妻からも逃げてばかりいた僕。
    単純に、時間を戻れば人生をやり直せるわけではない。
    どんな選択をしても、結局はそのときに気持ちがしっかりとついていかなければ意味がないのだ。
    チュウさんが何故若返った姿で現れたのかは、はっきりとは書かれていない。
    けれど、たぶんちゃんとした親子として僕と関わりたかったのではないだろうか。
    過ぎてきた時間の中では叶わなかった交流を、こんな形になってしまったとしても、実現したかったのだと思う。
    現実は厳しい。
    父親になろうと無理をして自分も健太も死なせてしまった橋本。
    不器用すぎて息子に素直に向き合うことが出来なかった過去のチュウさん。
    そして、荒れる息子や不審な行動をする妻と向き合えずに見て見ないふりをする僕。
    一番身近で小さな人間関係は、家族だ。
    少なくてもそこでは素直に互いが見つめあい、わかりあう努力をし続けなければ・・・と思った。
    父と子の物語ではあるけれど、女性が読んでも感銘を受ける物語だと思う。

  • 3月16日

    「死んじゃってもいいかな」と思っていた男が
    5年前に交通事故で亡くなったはずの親子が乗るワゴンに連れられ
    過去へ戻り、知らなかった事実を知り、そしてやり直しを試みる話。

    何ヵ所か泣きました。
    たぶんどこも主人公とその父チュウさんの絡みの場面だったと思います。
    息子が死んでしまうかもしれないと分かった時の父親チュウさんの必死さが一番グっときました。
    「カズはわしの息子じゃ」この深い愛情が込められた台詞好きでした。

    主人公とその息子の親子関係
    主人公とその父親の親子関係
    そして橋本さんと健太くんの親子関係
    どの親子関係も複雑で明るいものではない

    親の愛はなぜ伝わりにくいのか、なぜ目を背けてしまうのか
    分かっていながらなぜ反感が生れてくるのか
    子供の気持ちになぜ分かった振りをするのか、なぜ自分が正しいと思うのか
    なぜ余計な言葉を足してしまうのか

    どの家庭にも普通に存在する
    そんな些細なすれ違いが
    大きな溝に変わらぬ前にと
    警告を鳴らす物語であったとも思う

    現実が変わるわけではない終末
    だけど読み終わった後
    少し前向きになれる余韻がある
    読み応えある長さと濃さだったと思います。

  • まず最初に言いたいのは、感動。

    父親が大嫌いな主人公は
    橋本親子のワゴン車に乗せられて
    やり直しの世界を経験する。
    そこには同い年の父親。

    見過ごしていた大切な時間を
    やり直しの世界で気がつく。


    家族の気持ちが複雑に絡み合って
    最低の現実で生きている主人公。

    やり直しの世界で経験したことは
    決して現実を変えられるものではなかったけれど、少しだけ周りの人達の心を動かすことができた。


    家族の絆がとても感じられる作品です。

  • 「感動もの」という感覚で購入し、暫くのあいだ積読本だった本書。読み出しがとてもカッタルイと思ったが、物語が進むにつれてどんどん引込まれていく。親父を中心に語られる物語は、女性が読むと違和感があるかも知れないが、2児の父親として読むと、妙に納得してしまう。特に、終盤は自然と涙が溢れてしまうという感じ。装丁の暗闇にガソリンスタンドの看板と小さな月(?)が、良く合っている。

  • 38歳ってやはりひとつの人生の分かれ目のようなタイミングなのかもしれないな。そんな気がいたしました。

    昨年(2016年)にドラマ化されたのを見てからの本書読みですが、やはり現実のドラマとはこんな感じなのかもなと読み終わった最初の感想

    あ、といってももちろん、死後の世界の人達やらが登場するこの世界、 「現実のドラマ」なんてわかりゃ~せんのですが。

    筆者は同世代の方でした
    なので、感じかたがなんとなくわかるような気がします。
    この歳で読めて、そして両親、家族も健在でよかった、自分もいままでも、これからもいろんなことがあるだろうけれど、その時を大事にせないかんな
    という思いをもたせてくれる本書でした。

  • 息子の家庭内暴力と無断外出を繰り返す妻、勤めていた会社からのリストラというストレスの中、「もう、死んでもいいかなぁ」と考えていた38歳の主人公の前に、一台のオデッセイが現れる。

    そのオデッセイに乗っていた8歳の男の子に促されて乗り込むと、運転していたのは、見ず知らずの男で助手席の男の子の父親だった。

    実はこの親子、五年前の家族旅行中に父親の運転ミスで事故死している親子だった。その親子は、主人公の人生の分かれ道となった場所へタイムスリップし、人生のやり直しをさせてくれる。

    やり直しした人生は、その後の人生をどう変えてくれるのか。


    主人公の人生のやり直しの中で、自分と同い年の父親と出会う。本当の人生では嫌いだった父親との関係や、家庭内暴力に至った息子との関係、車内の親子の関係など、父親と息子の関係について多く書かれてあって、父親としての自分に置き換えられたり、息子としての自分に置き換えられたりして、感情移入してどんどん読み進められた。

    人生で『やり直し』なんてできるわけがないけど、もしやり直せたら、今はどう変わっていただろうと考えることはある。でも、やり直したかった現実を変えてしまうと、今の自分はなくなってしまうし、仮にやり直せるのだとしたら、人生なんて真剣見が欠けて、そんなに楽しいものじゃなくなってしまうと思う。

    どんなに真っ黒でいびつな形をしたピースでも、自分の人生を完成させるための重要な1ピース。やり直したいと思うような過去も、人生というパズルを完成させたときには、きっと、あの出来事のお陰でという過去になるはず。

    また将来、やり直したいと思ってしまうような今にしないよう、人生を楽しんで、深く味わいっていこうと改めて感じた。

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死んじゃってもいいかなあ、もう…。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして-自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか-?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

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