マレー鉄道の謎 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750776

作品紹介・あらすじ

旧友・大龍(タイロン)の招きでマレーの楽園、キャメロン・ハイランドを訪れた火村と有栖川。2人を迎えたのは、舞い飛ぶ蝶ならぬ「殺人の連鎖」だった。ドアや窓に内側から目張りをされた密室での犯行の嫌疑は大龍に。帰国までの数日で、火村は友人を救えるか。第56回日本推理作家協会賞に輝く大傑作! 国名シリーズ第6弾! TVドラマ「臨床犯罪学者 火村英生の推理」でも話題の傑作シリーズ。

感想・レビュー・書評

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  • 火村&アリスシリーズ、やはり長篇が面白い!
    学生時代の友人・大龍も登場し、本篇とは別の3人の思い出話も楽しい。

    3分の2を過ぎた位から、物語が加速していき最後まで気を抜けない展開に…‼︎旅行に行けない今、秘境のリゾートを味わえたのも良かった。

  • 旧友・衛大龍(ウイタイロン)の招待で、マレーの楽園『キャメロン・ハイランド』を訪れた火村とアリス。二人を迎えたのは、美しい自然や建築と、殺人の連鎖だった?!内側からテープで目張りをされた密室殺人の謎。その嫌疑はなんと大龍に!帰国までのタイムリミットが迫る中、火村たちは友人を救えるのか?!国名シリーズ第6弾。

    今回はなんとマレーシアが舞台!キャメロン・ハイランドの画像を調べてみると、高原の緑がやわらかく身を包んでくれる場所だった。コロニアル様式(植民地の材料や風土と、母国の建築様式を合わせた建築のこと)の建物も素敵で行ってみたくなる。そんな高原リゾートへ向かう火村とアリス、男の二人旅。事件が始まるまでは、この土地を味わう+二人の「悪」についての対話が見どころ。蛍ツアーで煙草に火をつけ、犯罪について語り合うのがこの二人らしい。火村はまさに赤い蛍を追い詰める狩人なのだ。

    500ページ超えの長編で、事件が盛り上がるまではかなり長め。しかし、加速してきたら終点まで駆け抜けるのみ!トレーラーハウスを内側からテープで目張りして作り上げた密室。その結び目が解けた時、事件の正体が次々と露になっていくカタルシスがすごい。現在を走る事件の解明は、眠った過去をも呼び起こす。マレー鉄道で偶然発生した列車事故。それがきっかけになった必然の意味。悪とは犯罪者を指すのみにあらず。才はあれども「人間の可能性は善にも悪にも開かれている。」という霧間誠一の言葉を思い出した(ブギーポップシリーズ)。

    そんな事件の中でも、旧友・大龍との交流は温かい。火村が「君のような人間がいるから、この世界が少しは調和を保てるんだ」と呟くシーンが好き。後半はその大龍に容疑の目が向き、タイムリミットまでにその疑いを晴らそうとする二人の姿がアツかった。友情は密室も心も開くものだった。


    p.23
    「正直に言おう。犯罪をテーマにした小説を書いて口を糊してる人間としてはお粗末かもしれんけど、俺は悪について突き詰めて考えたことがない。それは、捕まえようとしたら逃げてしまうようなところがある。悪とは何かを定義することは、人間とは何かを定義づけることと同義に思えて」

    p.24
    「そう。悪の源泉をひと言で表わすなら、それは、自らの不完全性に耐えられない人間の弱さと驕りかもしれん。不完全で、不自由な存在であるにも拘わらず、それを認めることの苦しさから逃れようとする時、人間は悪の落し穴に嵌まる。中途半端に知性化したことの不幸な片面かな。それは、絶対に体験できないものである死を恐れたり、また時には反対に焦がれたりする態度にも顕われている」

    p.296
    「着崩すのは簡単なんです。コドモにもできる。しかし、本当にうまくやるには、ある種の──さっきは都会のセンスと表現しましたが──美意識がいります。それがないのなら、きちんと粧し込めばいいんですよ。でも、そちらにも別の種類の──田舎のセンスと表現しましたが、悪い意味ではない──美意識がいる。加えて、こちらの方は最低限の技術が必要でしょう。どちらも欠けている半端者、つまり都会派ぶりたい田舎風の人間が壊れてみせたがるんです」

    p.438
    「異常……いや、ほとんど狂気の沙汰や」
    「常ならざるほどに合理的な措置だよ。合理も極まれば狂気に接近する」

  • 国名シリーズ第六弾。

    旧友の待つ楽園で火村とアリスの二人を出迎えてくれたのはウェルカムドリンク、フルーツならぬウェルカム殺人事件。

    密室トレーラーから始まる連続殺人事件、やがて旧友にも嫌疑が。
    迫る帰国時間、どうこの謎に挑むのか…。観光気分も味わいながらの緩やかな前半からタイムリミット迫る後半はグッと動き出す。
    大掛かりな密室トリックは想像力を駆使してみれば、なるほど…となんだか納得できる。

    この一連の事件の根底で様々な感情がジャングルのように密に絡み合っていたのかと思うと、舞台が楽園なだけにせつなさが増した。

    あの人がジャングルで吼えるのかも気になるところ。

    火村とアリスの何気ない会話がところどころに癒しの風を運ぶ。
    これもこのシリーズの魅力の一つだ。

    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      くるたん国名シリーズ読んでいるんだね!
      私学生アリスは好きなんだけど、小説家アリスは思ったほどではなくて…...
      こんばんは(^-^)/

      くるたん国名シリーズ読んでいるんだね!
      私学生アリスは好きなんだけど、小説家アリスは思ったほどではなくて…
      いつも短編だからかな?長編だったら読み応えありかなぁ。
      火村も好きなタイプだし不思議なんだよね。
      私この本持っているような気がする(。-∀-)ニヒ♪
      2019/06/10
    • くるたんさん
      けいたん♪
      こんばんは(o^^o)

      うん、基本長編が好きでね、なんとなく積んでいたのをひっぱりだしたの。

      シリーズ順番なんか関係なく読ん...
      けいたん♪
      こんばんは(o^^o)

      うん、基本長編が好きでね、なんとなく積んでいたのをひっぱりだしたの。

      シリーズ順番なんか関係なく読んでるから学生アリスは未読だわぁ。
      しかも有名どころをまだ読んでいないという…(*≧∀≦)ゞ

      これは異国の地へ行った気分を味わえて満足だったよ♡
      2019/06/10
  • 国名シリーズで短編が続いていたので、長編嬉しい!
    今回は海外旅行先での事件。
    帰国のタイムリミットが迫る中で、殺人事件が次々と起こる。

    海外と言うことで言葉の壁(アリスの英語力)がちゃんと表現出来てるのも面白かった。
    旅行目的の友人である大龍もすごく良い人で好感が持てる。
    火村&アリスの掛け合いも多いし、アリスの内心の突っ込みなど笑えるところがする多かった。

    トリックは最初の密室くらいだったけれど、これがまた難しい。
    真相が明らかになる最後の最後もまた驚く事実が残っていたし。
    複雑…
    でも楽しそうな3人で締めくくられていて良かった!

  • ドアと窓が粘着テープで目張りされたトレーラーハウス。その中に置かれたキャビネットの中に押し込まれた死体。

    500頁超えの読み応えのある作品だが、肩肘張らずにスラスラと読める。やはり火村、有栖川のコンビは好きだな。
    で、肝心の内容はというと、密室トリック自体は面白いは面白いが、長編一個を支えるには少し心許ない。だが次第に明らかになる、犯罪の思いもよらない全貌に驚愕。
    解説にあるようにまさに”玉突き”のように犯罪が起こっていく――けれども、そこには法では裁けない”悪”もある。和やかな雰囲気の物語だが、しっかりと強弱があり、考えさせられることもある。

    少し影は薄いが、「ジャック(jack,ジョンの愛称)」と「ジョッキ(jack)」の聞き間違いも面白かった。

  • 海外での話。
    登場人物の名前だけが最初にどんどん出てきて何者なのかを把握するのが難しかった。

    でも読み終わる頃には旅行の終わりみたいな寂しさがあった。 

    密室の謎はこうやったんだろうなと予測はついたけどまさかの真相で驚いた。


  • 時刻表トリックではありません。

    大学時代の友人・衛大龍(ウイ タイロン)に招かれて、火村とアリスはマレーシアの高級リゾート地、キャメロン・ハイランドを訪れた。
    今回も、彼らの旅の描写は、なんとも旅情を誘う。
    マレーシアに行きたくなってしまった。

    さて、彼らの訪れる1週間ほど前に、マレー鉄道で、二重追突事故の悲劇があった。
    火村とアリスは、その関係者たちと知り合うことになる。

    一つ嘘をつくと、その辻褄を合わせるために、どんどんと嘘をつく事になる。
    殺人もそれに似ている。
    このお話は、料理は完成したのだが、さらに魔法のスパイスをかけて味変したところに意表をつかれた。
    火村たちには、後味が良くなかった(というか、胸クソ?)かも知れないが。

    鉄道事故が呼び起こす、過去の因縁。
    この事故がなければ、真実は眠ったままだったのか?
    いや、神様は見ていたのだろうなあ〜
    神様も赦さなかったのだろう。
    そのために、余計な犠牲も出てしまったが・・・

    声なく身を焦がす蛍たちには、ぜひとも幸せになってほしいものです。

  • 解説にある通り、A→B→C→DのCあたりはそうなの?となったけど、違和感なく読み進められつつ、ハラハラできて良かった。最後にもうひと手間あるのもいい。
    旅行描写が豊かで、こちらも外国情緒に浸れる作品だったのも良かった。

  • 国名シリーズはロシア紅茶の謎から始まり、これが6作目。長編でマレー鉄道の事故から始まる。
    舞台はキャメロンハイランドへ。私が訪れた時も長閑な紅茶畑のある避暑地のイメージだった。確かジムシンプトンが行方不明になった場所だったような記憶がある。(この作品にも少し触れていた)

    そのキャメロンハイランドで連続いや連鎖殺人が起こる。連鎖のため複雑な構成になっていてそれが良い。火村と有栖川が謎を解いていく。密室トリックは楽しめる。マレーシア の滞在期間という締切もあり、制限が加わる事も作品を引き締めている。長編で読みやすい作品だった。

  • 好きな作家はたくさんいるけれど、必ず一番目に名前を挙げることにしているのが有栖川有栖。
    ……なのに、そろそろファンを名乗ると怒られるんじゃないかというくらい長い期間読んでいなかったことに気付き、慌てて積んでる本から何冊か引っ張り出してきた。

    その中からまずはこちらを読了。
    タイトルと著者のご趣味から鉄道ミステリかと思いきや違うようでまず一安心(鉄道ミステリはニガテ)。
    火村&アリスの国名シリーズとあって厚さも感じず読みやすい。

    トリック、割といろいろ考えたのに当たらず…
    タネ明かしを見れば、有名なあの作品のバリエーションなのに。
    何度目かのドラマになった時にも目にしてたのに。
    思いつかなかった。
    火村シリーズを読んでいると思考がアリスに近くなるのか、思いついたこと悉く、作中でアリスが発表→火村先生に即却下される、の繰り返し(苦笑)

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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