マラケシュ心中 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750912

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  • 苦しい。身を滅ぼす恋愛。
    私はこの本を好きな人から貸してもらって読んだけれど、私はいつか終わると分かっても、友達のまま居ることなんて出来なかったです。

  • 『恋がいつか必ず終わるものなら、私たちは恋人同士になるのはやめましょう。何も契らず、何も約束せず、からだに触れ合わず それゆえに嫉妬もない、いかなる時も自由で、平明で、対等な関係のまま、いつまでも離れずに、この世で最も美しい友になりましょう』

  • 「恋がいつか必ず終わるものなら、わたしたちは恋人同士になるのはやめましょう。何も契らず、何も約束せず、からだに触れ合わず、それゆえに嫉妬もしない、(中略)この世で最も美しい友になりましょう」(本文より)。
    山本周五郎賞作家が『感情教育』を超えて到達した、戦慄と至福の傑作恋愛長編。

  • 痛くて切ない残酷な愛。ラストが素敵。

  • 「愛は、極めねばなりません。極めたら、死なねばなりません」

    友人にこの著者が面白いと聞いて、たまたま選んだ一冊。
    マラケシュがモロッコだと知りもせず、同性愛に関するものだとは知りもせずに読み始めました。

    ですが、これがもし同性間の愛でなければ、心中について正確に捉えられなかったのではないでしょうか。

    性というどうしても越えることのできない壁。それに加えて、社会的・人情的にもどうしても越えることのできない壁。
    そういったものを一瞬にして取り払い、愛を成就する(少なくともしたと思える)方法、それが心中なのではないかと思います。

    また、盲目的な愛とは、これほどまでに盲目たれるものか、と驚きました。
    それはもう、すべてを許すと同時にすべてを拒絶する行為です。

    個人的には最後の展開に若干違和感を感じもしましたが、全体として、激動の一冊でした。

  • この小説より情熱に溢れる恋愛小説に出会えるのか、不安でたまらない。それくらい素晴らしい。

  • あらすじに惹かれて手に取った本。

    “「恋がいつか必ず終わるものなら、わたしたちは恋人同士になるのはやめましょう。何も契らず、何も約束せず、からだに触れ合わず、それゆえに嫉妬もない、(中略)この世で最も美しい友になりましょう」”

    この友人関係に、なりたいのです。わたしは。

    けれど、中身は予想していたものとはかなり違いました。どんどん予想を裏切っていって、どこまでいってしまうのか……まったくわかりませんでした。
    本来惹かれた考え以外のところに、どんどん引き摺り込まれるように、夢中になって読みました。

    いつもなら、身軽過ぎる方には嫌悪感を抱くのですけれど……この登場人物たちだからなのか、それはあまり感じませんでした。ふしぎです。


    (以下、読みながら綴った感想)


    2022/11/26 p.9-64

    p.9
    “砂は女だ。”
    ……ん?

    p.9
    “砂に埋もれて死ぬ夢は、女の乳房に埋もれて死にたいという願いのあらわれなのだろうか。”
    ……んん??

    p.11
    “恋がいつか必ず終わるものなら、わたしたちは恋人同士になるのはやめましょう。何も契(ちぎ)らず、何も約束せず、からだに触れ合わず、それゆえに嫉妬もない、いかなるときも自由で、平明で、対等な関係のまま、いつまでも離れずに、この世で最も美しい友になりましょう。”
    あらすじにも書かれていたこの文章に惹かれて、この本を手に取りました。でも冒頭の文章を読んで、選択をミスったかな……と不安になっています。

    p.15
    “「なにか、上等のけもののような」”
    “いい匂い”と言いつつ、“けもの”と表現するのはびっくりです。

    p.19
    “見込みのない女を口説くのは、時間とエネルギーの無駄遣いというものだよ。”
    頭で理解して恋愛ができる人ばかりではないですけれどね。

    p.23
    “本業で稼ぐ一生分くらいのお金をあれ一曲で稼いでしまった”
    才能はあるのでしょう。凄いです。

    p.23
    “女の体の上で詠むのがわたしのやり方だった。”
    それってある意味冷静ってことですよね。こわくないですか?

    p.30
    “子供を産み育てるという行為は、わたしにはもっとも縁遠い偉業であった。”
    へぇ。“偉業”だと感じるのですか。

    p.64
    “あなたのおっしゃる愛がもしセックスを伴うものだとしたら、わたしはあなたを愛することはできません。”
    ……嗚呼、自分が思っていたことと同じです。


    2022/11/27 p.64-204

    p.65
    “「永遠に終わらない恋愛なんて、きっとありえないわ」”
    わたしもそう思います。だから、友情のほうが永く続くと考えてしまいます。

    p.67
    “「父というよりは……そうですね……神様のように、です」”
    神様は「父」とも呼びますよ。

    この人もまた、人間を「かみさま」と呼ぶタイプの人なのですね。何人か、そんな人を知っています。
    人間は神様ではありません。完璧な存在ではありません。だから、思い出の存在でない限り、裏切られる(と自分が感じてしまう)こともあります。
    それがこわいから、わたしは、人に対して「かみさま」と思うことができません。

    p.69
    “男のことをよく考えるようになった。”
    男とは限らないのでは……?

    p.73
    “あの男のことを思い出したいやつなんて、ひとりもいないんだ。”
    嗚呼、男性でしたか。
    そう言えば、“これまで一度も女性をそのような対象として見ることはなかった(p.64)”とおっしゃっていましたね。うっかり。

    p.79
    “幻と闘うことはできない。過去と現在が勝負しても、たいていの場合現在に勝ち目はないのだ。”
    良い思い出は、いつまでもきれいなままですから……。傷つけてくることはありません。そりゃ、いつまでもいつまでも、大切にできるでしょう。
    一方現在は、傷つけ傷つけられてしまうこともあります。不利です。

    p.83
    “「オードリー・ヘップバーンが生涯にわたって愛用した香りでございます」”
    ヘップバーンさんは、とても美しい方です。それは存じております。
    けれど、どんな人間だったのかは、そういえば、まったく知りません。ちょっと気になってきました。

    p.92
    “たぶんセックスをするのなんて簡単よ。まばたきみたいに簡単にできるわ。でも簡単にはじめたことは簡単に終わるの。”
    簡単にはじめたことは……簡単に終わる……。そうか。そうですね。それが厭だったのだと思います。

    p.92
    “わたしはとても嫉妬深いの。もしそういう関係になったら、あなたがほかの女としゃべっているだけで、頭がおかしくなっちゃうと思う。”
    そういう関係にならずとも、嫉妬してしまってごめんなさい。面倒くさいですね、自分……。

    p.92〜
    “「そう。一生涯、わたしはあなたのそばにいるから。何があっても、無条件に、全面的に、あなたのすべてを受け入れるから」”
    お強いです。
    一生を望むくせに、わたしは、すべてを受け入れることができませんでした……。とても未熟な人間です。

    p.93
    “恋がいつか必ず終わるものなら、わたしたちは恋人同士になるのはやめましょう。”
    (中略)
    “いつまでも離れずに、この世で最も美しい友になりましょう。”
    美しい友人関係……。憧れます。
    嗚呼、理想です。

    p.97
    “ちょうど一年が過ぎたころ、”
    かなり時が進みましたね。

    p.104
    “一緒に映画を見に行ったり、美術展に行ったりするようになった。”
    羨ましいです。

    p.117
    “わたしは、いい人じゃない。あなたの望むようにはつきあえないよ。”
    自分から人を遠ざける人は、その人自身が言うほど、悪い人だとは感じません。相手を傷つけないように考えられるのですから。

    p.120
    “ただ好きだという気持ちだけでは、だめなのでしょうか?”
    (中略)
    p.120〜
    “なぜわたしの心だけでは満足してくださらないのでしょうか?”
    大切な友人たちに、思ってしまいます。
    すきです。すきなのです。大切です。けれどそれだけでは、だめなのですか。すきと言うことすら、だめなのですか……?

    p.122
    “誰よりもあなたの幸福を願い、あなたが苦難に陥ることのないよう祈る者です。”
    えぇ、いつも、祈っています。

    p.123
    “お望みに添えない自分の弱さがゆるせなかった。”
    弱さ……。
    そうですね、弱くて、ずるいです……。でもそんなあなたが愛おしいです。

    p.123
    “わたしが本当に好きになるひとは、決してわたしのことを好きになったりはしないのです。”
    誰かさんと同じことをおっしゃいますね。皆、こういう思考になるのでしょうか。

    p.125
    “このままおそばにいたら、”
    (中略)
    “憎むようになるでしょう。”
    憎まれたら、苦しいでしょうか。悲しいでしょうか。

    p.128
    “わたしはあなたの前から消えてなくなるべきなのでしょうか。”
    消えるべきなのでしょうか。邪魔でしょうか……。
    それをよく考えています、最近。

    p.131
    “この言葉にわたしはかるい衝撃を受けた。”
    わたしにとっては、軽くないです。同じように、“「えっ?」”と思ってしまいました。

    p.144
    “人間にとって一番幸せなことって何なんだろう?”
    何でしょうね……。

    p.144
    “死んだらきっと気持ちがいいと思うなあ”
    長らくしにたいと思ってきた人間ですけれど、しんだあと“気持ちがいい”だろうと思ったことはないです。この世の苦から逃れることはできるでしょうけれど。

    p.145
    “わたしが一緒に死んでやる。約束する”
    (中略)
    “あなたをひとりでは死なせない。”
    羨ましいです……。そんなことを、言われてみたいです。

    p.167
    “わたしはこんな年になっても、いまだに夜がこわいのです。”
    いくつになっても、夜はこわいです。孤独です。

    p.199
    “彼はもう一度ウインクで応えた。”
    いい人……!


    2022/11/28 p.204-218

    p.207
    え……。そうですか。それが、あなたたちの選択なのですね。

    p.212
    “泣きながら殴ってくれた。それだけがわたしたちの唯一の愛情表現だった”
    そんなの、愛ではありません……。

    p.213
    “愛する女が見る見る不幸になっていくのを黙って見ていられるわけがない。”
    何もできないわたしは罪人でしょうか……。不幸になってほしくないのに。


    2022/11/30 p.218-252

    p.252
    “あなたがなぜ女の人を抱きたがるのか、その秘密が少しだけわかった気がするわ”
    それが少し、伝わってきました。


    2022/12/01 p.252

    2022/12/03 p.252-394

    p.274〜
    “わたしは多くのことを知ることになった。知りたくないことや、知らなければよかったと思えることも含めて。”
    知らないほうがいいことも、あるのかもしれませんね。世の中には。他者の中には。

    知らないままだったら、どうなっていたのだろう……と考えることがあります。きっと、いまの関係とは違うものになっていました。

    p.299
    “……本当ですか?”
    本当に……? まさか、こんな展開になるとは……。

    p.313
    “「蹴って」”
    暴力は愛ではありません。

    p.327
    “なんてお笑いぐさだ。”
    ひさしぶりに出ましたね、このことば。
    愛憎紙一重とはいえ、こんなに変わってしまうとは……。

    p.335
    “こんな渇ききった山の中にも人々の暮らしがあることに驚かされる。”
    自分が知らないだけで、いろんな環境で、いろんな人が暮らしているのですよねえ。
    知らない街に行って、「生活」を感じるたび、毎回新鮮に衝撃を受けます。当たり前のことなのに。

    p.360〜
    “できることなら星の王子さまのように金色の蛇に嚙まれて死にたいと思った。”
    そうですね、そんな最期ならいいのに……。

    p.365
    “マラケシュで心中事件を起こしたんですよ。”
    そっちでしたか……。

    p.384
    “書くのにこれほどしんどい思いをした小説はなかった”
    そうでしょうね!
    ここまで、ぐっさり、刺さるとは思っていませんでした……。ずっと、目が離せませんでした。

    p.387
    “わたし自身が、よりよい女といつまでも恋をし続けること、”
    嗚呼、そうなのですね。そりゃあ、絢彦さん寄りになるでしょう。

    p.394
    “小説や戯曲を書くために、長い時間、机の前に座ることを許された女性は、古い時代にはごくまれだっただろう。”
    確かに、そうですね。短歌でなければならなかった……そういう方々が多くいらっしゃるのでしょう。

  • 綾彦の視点から書いてあるため、他の登場人物は想像するしかないけれど、それぞれに愛している人がいて守りたくて自分すら犠牲にしている姿が痛々しかった。死ぬとか殺すまでいってしまうような恋愛は現実的でないからこそ引き込まれてしまう小説なんだろうなと思った。

  • 2021/12/07-12/11

  • これはすごい。愛したら殺すか心中するか、激しすぎる。読む側まで体力が削られる中山可穂、めちゃくちゃ良い。

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学卒。93年『猫背の王子』でデビュー。95年『天使の骨』で朝日新人文学賞、2001年『白い薔薇の淵まで』で山本周五郎賞を受賞。著書多数。

「2022年 『感情教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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