照柿(下) (講談社文庫)

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著者 : 高村薫
  • 講談社 (2006年8月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062752596

照柿(下) (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 合田刑事って、こんな人だったっけ?とずっと思いながら読むw 「マークスの山」を読んだのが昔過ぎて、面白かったのに内容は忘れてるしww 一目惚れって・・・ねぇ、そこまで執着されるとコワいよ、逆に( ̄ω ̄;)
    刑事としても、どうよって感じだけど、人間臭くていいのかもしれないなぁ。。。読めてよかったです、ってことでw

  • 真夏の太陽の熱でじりじりと焼けたコンクリートから立ち上る陽炎の向こうで男二人がもだえ苦しむシルエットが浮かぶ。彼らが追いかけてやまないのは目の覚めるような青いスカートの涼しげな女。その女を追いかければ追いかけるほど彼らの魂は腐った柿のようにドロドロと腐敗してゆく。読後一ヶ月以上たってもそんなイメージが焼きついて離れず視覚と感覚に深く刻み付けられている。

    一人の女を通して嫉妬に狂うのはほんのきっかけで、お互いを照らし合わせ自分に無いものを相手の中に見て憎しみを抱きつつ精神を崩壊させてゆく。達男は彫刻をやり合田はバイオリンを弾き、本質的に持っている芸術志向の対極にあるような世界で彼らは自分を埋没させながら暮らしており、気づけばなんとなく成り行きで築いてきた己の人生に「何故、今、自分はここにいるのか?」と疑問を投げかける。

    人間がズレを修正しながら生きていたら完璧なのは当たり前で、それができないから個性が生まれ、取替え不可能な自分だけの人生が存在する。そのズレを見てみぬふりをするのも簡単だけれど、不器用で愚直な人間であればあるほど、いずれはそのズレが引き起こす崩壊に直面する。まるで適正な温度で熱せられなかった亀裂の入った部品のように、幼少期に背負った傷がきちんと対処されないまま長い年月を経て、突然平坦な人生に亀裂を起こすこともしかり。いつどこで間違ったのか。人生という名のベルトコンベアのどの時点で。達男は亀裂の入った部品を握り締め、睡眠不足と頭痛を抱えたふらつく体で工場を駆け回り奔走する。どこで狂いが生じたのか?何がいけなかったのか?早く対処しないと手遅れになる、全てが駄目になるという強迫観念に追われながらの必死な姿が、達男自身の人生とだぶり切なく思う。突然何かをきっかけに、例えば葡萄のような目をした青いスカートの女をきっかけに、歯車を狂わされ壊れてゆくのは遅かれ早かれ必至なことだったのだと彼らは知っていただろうか。

    各々が知覚し感情や思考で都合良く創造された物語を事実とする人間の性質を、信じがたいほどに妄想を抱いて暴走する男達をみて、痛いほど実感する。二人の意識の流れが必要以上にトレースされた文章を執拗に追わされた私達は作品全体に漂う茹だるような熱さと共に眩暈を起こす。全ては彼らが何を見て何を想ったかの連続の世界だ。今でも蘇る疲労感。それと引き換えに、一瞬の莫大な想像と可能性や推測を行い、情報をインプットし、間違ったアウトプットをするという人間の面白さ、愚かさを見せてもらった。文庫ではそれが顕著であり見事なまでに客観的事実が省かれ二人の意識に重点がおかれているようだ。実際そこで何が起こったのか?を見失いやすいのが文庫で、ハードカバーで情報を捕捉するといった、想定外の作業が発生した。

    女同士の争いごとは醜いねという結論で落ち着こうとする中「いや男のほうがすごいぞ」と説明なく言い放った男性がいるが、確かにこの作品の中で魂が熟れて腐った柿のようでありながらも自分の人生にどれだけ正直にいきているかを競う二人を見ると、女達が体の一部や所有物で競う動物的レベルの争いごとと比べれば、本当は各々が自分自身と戦っているだけなのに、やりきれない思いを相手にぶつけ、第三者が止めようにも止められない戦いを、確かに女のそれよりも"すごい" と気づく。ただしお互いの中に自分が憧れていたものを認めていたからこその争いで、そこに気づけば争いが収束するどころか男の友情といった言葉をあてがうには物足りない、熱い関係へと昇華するというドラマの筋書きはいつも待ち遠しい。

    合田の叫び「達男、好きだ.....!」は達男の耳に届いたのかどうか。雨の音でかき消されたか。届いていてほしい。この台詞、ハードカバーにしかなかったけれど。

  • 合田も達夫も壊れてゆき・・・
    なんかもう一緒に濁流に飲み込まれ、気付いたらココにいました的な感じ。
    自分とは、かけ離れた所にいる人達なのに、よく解らされちゃう。
    この独特なゴリッとした文章も良いし、色々踏まえた上でまた読もう。

  • 暑い夏にジリジリ焼かれながら読もうと思っていた本。
    高校の時、マークスの山や、我が手に拳銃を、を読んだ時は、誰かが評したとおり、鋼のような文章がよくわからないけれどかっこいいと思っていた。今この作品を読んで感じる印象は、固いフランスパンのサンドウィッチみたい。どうにかこうにか噛んでいるうちに味が出てくるような。そして時々ハッとするほどみずみずしくて、色彩も鮮やかで切ない話だった。
    作者は、人格を形成する要素のなかでも、とりわけ生い立ちを重視しているようで、それが作品を暗くしているように思う。それが好き嫌いを分ける作品かもしれない、と思う。

  •  正直、ミステリーとしては下の部類(>_<)
     ホステス殺しに関しては、結局唯一の怪しかったやつが犯人で、トリックらしきトリックもどんでんも何もない(>_<)
     もう一つの殺人事件の方は、あれで犯人の動機が理解できる人はいまいし、いたら病院に行ったほうがいい(>_<)

     じゃあ、つまんなかったかと言えばぜんぜんそうでなく、これがめっぽう面白いんだなあ( ´ ▽ ` )ノ
     解説にある通り、ミステリーと言うより「小説」だね( ´ ▽ ` )ノ
     ジャンル分けなんか意味がない( ´ ▽ ` )ノ
     京極夏彦の妖怪シリーズも、背表紙のジャンル表示がいつの間にか「ミステリー」から「小説」に変わったけど、それと一緒だ( ´ ▽ ` )ノ


     ただ、ずっと読んでてドストエフスキー、ましてや「罪と罰」は連想しなかったなあ……(´ェ`)ン-…
     薄汚い人たちがカビ臭い世界でゴタゴタやってるところはたしかにそれっぽいけど、ドスト特有のユーモア感覚が本作にはまったく見受けられないからなあ……(´ェ`)ン-…
     カオルちゃんはどこまでも大まじめ。アリがコツコツ地下に巣を掘るように、ただ黙々と人間心理の奥底に潜り込んでいく( ´ ▽ ` )ノ
     合田も野田も徹底して自らの心理を探り続けていくけれど、なんというか、愛情を注ぐことによってアイデンティティを保つべき対象を持たないから(もしくは対象を間違っているから《上巻のレビューで書いたとおり、潜在的同性愛者である自覚がないので》)、この自己探索は常に見当外れのものになっている(>_<)
     で、正気を失うハメに……(´;ω;`)
     そういった点から、「罪と罰」より「タクシードライバー」とか「シャイニング」「アメリカン・サイコ」に近い作品のように感じた( ´ ▽ ` )ノ

     あらすじだけだとまるっきり面白くない(被害者もなんで自分が殺されたんだか、まったく理解できないだろうな)こんなストーリーを、よくぞこれだけ重量感のある作品にまとめ上げたもの( ´ ▽ ` )ノ
     ここまで徹底したキャラクターの心理描写をすると、書いてる作者までおかしくなるんじゃないか?、と心配になるくらい( ´ ▽ ` )ノ

     どっしり読み応えがあった( ´ ▽ ` )ノ
     歪んだ心理をリアリティたっぷりに描きこんだ本格小説( ´ ▽ ` )ノ
     やっぱり、これは映像化しても意味なしだ( ´ ▽ ` )ノ

    2018/01/03


     とはいえ、「マークス」「照柿」のあと、さらに「レディージョーカー」と続けるのはさすがにキツイので、次はカラッと明るい本を読もう……(´ェ`)ン-…

  • 読み応えはそこそこあったのだけど、1人の男が殺人を犯すまでの経緯が事細かく描かれているが…私には理解出来ない。
    合田刑事が偶然出会った1人の女に執着し、女と愛人を引き離そうと妄想して画策する所も、やはり理解しがたい。

  • 苦痛だった。ドストエフスキーの「罪と罰」を思わせる緻密な描写。最後の解説に日本のドストエフスキーで罪と罰を意識してかかれた作品と書かれており納得した。

  • 照柿「上」のレビューご参照。

  • 「照柿(上・下)」髙村薫◆殺人事件を追う合田の前で電車への飛び込み事故が発生。現場にいた女と、18年ぶりに再会した幼馴染が合田の心を揺さぶるー。狂ったように暑い夏、熱処理工場、渦巻く感情、作品全体が熱く赤く燃えているようです。冷静なイメージだった合田の感情の動きが生々しい。合田雄一郎シリーズ一作目の「マークスの山」が雪山の話だったので青黒い氷に覆われたイメージでしたが、二作目の「照柿」は赤黒い炎が燃え盛っているイメージ。意識が朦朧としそうな今の季節にぴったりでした。

  • 下巻。第三章の前半は少し疲れたけれど、後半そして第四章とヒートアップ。
    最期は大阪で二人で・・・と思ったけど良い意味で期待を裏切る高村ワールドです。
    合田雄一郎は、ここからレディ・ジョーカー(既読)に繋がるのですね。
    照柿、臙脂色、青。象徴の色です。
    達夫が見た燃える雨。
    合田の白いスニーカーは出ないけれど色彩が鮮やかな見事な小説でした。

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