一号線を北上せよ<ヴェトナム街道編> (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062752718

作品紹介・あらすじ

ここではないどこかに。「夢見た旅」をもとめて

旅に出たい――身を焦がし、胸を締めつける思い。ホーチミンからハノイまで、〈私〉は幹線道路をバスで走破するイメージに取り憑かれてしまった。飛行機の墜落事故で背中や腰を痛めた直後なのに、うちなる声が命じるのだ。「一号線を北上せよ!」テーマ別に再編集を加えた「夢見た旅」の記録、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • もう10年以上前に読んだものだがこのご時世、まだまだ気軽に海外に行けないのでせめて読書時間だけでも〜と手に取った。
    沢木さんバスを乗り違えてよく分からない場所に行っても、目的地に向かう道中がどんなに悪路でも、車中がひどくてもそれをプラスに捉えて、全力で楽しむ姿が素晴らしい。私も韓国や台湾で一人旅はするものの、沢木さんほど冒険はできない。
    そして全編に渡る沢木さんの綿密で丁寧な描写から、湯気を立てる料理の香り、雑踏のざわめき、その国の香りまでが読むこちら側にも伝わってきて、ベトナムに行ったことないのにそこにいるかのような感じがした。

  • 久しぶりに沢木さんの紀行文を読めて面白かった。「深夜特急」ほどダイナミックではないが、こちらも旅している気分になれるのはさすが。

  • 仕事から逃げ出したくなり再読。旅行はそんなに好きじゃないけどベトナムは一度行ってハマり、もう一度行った。また行きたい。

  • 沢木耕太郎が20年近く前にヴェトナムをバスで旅した紀行文。
    もちろん、深夜特急のような身銭の少ない若者の冒険というわけにはいかず、多少落ち着いた旅になっている。とはいえ、やはり沢木耕太郎の旺盛な好奇心は年齢などでは抑えきれない。気ままに流れに身を任せたまま進んでいく。その先での出会いもまた、人になんでも聞いて回る沢木耕太郎だからこそだと感じる。

  • 沢木耕太郎のベトナム南北バスの旅。

    猥雑な街の雰囲気に惹かれる著者独特の感性は健在。ぼられそうになって憤慨したり、マナーの悪い白人たちに憤ったり。年齢を感じさせる独白があったり。「深夜特急」の旅から30年、相変わらず行き当たりばったりの旅ながらも、かつての無鉄砲さは影を潜め、だいぶ落ち着いた旅行記になっている。

    スマホでベトナムの町並みを画像検索しながらベトナム旅を満喫した。フォーを始めとしたベトナムの庶民料理、やけに美味しそう。

  • なかなか面白かった。
    サイゴンへのあこがれや「郷に入っては郷に従え」的なこと(それと値切り等とのバランスの他、
    サイゴン河やベトナムのエネルギー、
    はたまた、偶然(の出会い)がもたらす旅の面白さなど、感じさせるところが多い。

    行先に合わせた本を読むという、これまでも続けていることの効用も感じた。
    地名や土地勘とのマッチとか、人々や都市の雰囲気をよりよく理解させてくれる相乗効果もある。

    沢木のサイゴンへの思いとして、近藤紘一『サイゴンから来た妻と娘』のこと、あるいはサイゴン川の眺望(マジェスティックホテル)、更にはフォーの代金ないしFax受信料金をめぐっての現地人とのかかわり方等。
    読んでてホーチミンに対してますますテンションがあがるものである。

  • 自分が旅行に行く時は建造物と食べ物ばかり気になってしまうので、沢木さんのように人との関わりや街の雰囲気で良し悪しが決まる旅をしてみたい。それにベトナムにも行きたい!フォー・ガーを食べ、サイゴン河の夜景を見たい。
    もっと沢木さんの旅を読みたくなったので、もう一度『深夜特急』も読み直そうと思う。

  • ベトナム旅行を前に。


    やっぱり人はオトナになっちゃうんだよなぁ。。
    でも、オトナになったからこそ、見えるものもあり。
    そのあたりの逡巡がけっこうリアルでよかったです。

    しかし
    巻末の高峰秀子さんとの対談がオチとしていい味だしすぎです。
    オトコはオトナにならないのかねぇw

  • 沢木耕太郎(1947年~)氏は、横浜国大経済学部卒のノンフィクション作家、エッセイスト、小説家、写真家。著者が1974~5年に香港からロンドンまでを旅した記録『深夜特急』(発表は1986~92年)は、当時のバックパッカーのバイブル的存在としてあまりにも有名。『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞、『凍』で講談社ノンフィクション賞、その他、菊池寛賞等を受賞。
    本書は、2003年に出版され、2006年に文庫化された。
    私は、1980年代後半にバックパックを背負って海外を旅し、沢木の作品はこれまでに、上記の各賞受賞作をはじめ、『敗れざる者たち』、『流星ひとつ』、『キャパの十字架』、『旅の窓』、『チェーン・スモーキング』、『世界は「使われなかった人生」であふれてる』、『旅のつばくろ』、『作家との遭遇』、『あなたがいる場所』、など幅広く読み、最も好きな書き手は誰かと問われれば迷わず沢木の名前を挙げるファンである。
    本書は、ベトナムの南都ホーチミンから北都ハノイまで、ベトナムの国道1号線をバスで旅した記録である。
    私は、上記の通り、これまでも沢木の紀行文(旅のエッセイ集を含む)を多数読んできて、本書についても、沢木の作品の変わらぬ心地よさを感じるのであるが、更に、本書ならではの面白さをいくつか挙げるとすれば以下であろう。
    一つは、沢木が旅の出発点ホーチミンでマジェスティック・ホテルを指定して泊まったくだりにある。沢木は上述の通り、『テロルの決算』で1979年(第10回)の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したのだが、その年には近藤紘一が『サイゴンから来た妻と娘』で同時受賞しており、沢木は、1986年に近藤が亡くなった後、近藤の遺稿を集めた作品集を編集している。そして、その近藤にとって、サイゴンの街、とりわけマジェスティック・ホテルというのは特別な場所で、沢木はそこで近藤の思いを想像するのだ。私は、近藤も好きな書き手・ジャーナリストの一人で、『サイゴンから~』のほか、『サイゴンのいちばん長い日』等も読んでおり、とても興味深かった。
    もう一つは、50歳を過ぎた沢木の穏やかな雰囲気・目線に惹かれるということだろう。もともと沢木は冷静沈着なタイプで、20代の旅を描いた『深夜特急』でも全体のトーンは大きく変わらないとはいえ、やはり20余年の人生を経た沢木の目に映る風景・人々の姿、そしてそれを著す筆致は一層優しいのだ。
    コロナ禍のトンネルから数年振りに脱した今、再び旅をしたい、そして旅をするならこんな旅がしたいと思わせる、沢木ならではの一冊といえる。
    (2023年8月了)

  • 面白かった。旅の描写が変わらず見事でベトナムに行きたくなる。船頭の操舵の手伝いをするしゃべれない少年に対して「いいなぁ」という感情を持つところが旅先での本音を語っている気がする。

    以下、印象的な一文。
    旅に出る理由をあれこれと口にしても、本当は、その「何か」が旅をしている最中にわかっていることは少ない。いや、旅を終えてもわからない。だからこそまた、その「何か」が旅に押し出すことになるのだ・・・。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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