実録・老舗百貨店凋落 〈流通業界再編の光と影〉 (講談社文庫)

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  • 講談社 (2006年2月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062753302

実録・老舗百貨店凋落 〈流通業界再編の光と影〉 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 業界人として、無視できないと思い、思わず買った本。

    丸井今井というお店は、東京では『赤いカードの・・』と
    間違えられそうだけど、北海道では知らない人はもぐりといわれる
    創業120周年の老舗名門百貨店。
    地域一番点の札幌店を本店に、北海道各地に店舗網を張り巡らして、
    その名声は遠く北九州の私でも知っている。

    しかし、その会社が、実は大変なことになっていたらしい。
    経営不振から事実上の倒産状態。

    この本は、それにいたる道程と、全国の地方百貨店に共通する
    問題を余すところなく描いている。

    実は私の勤務先も、このお店と、不気味なほど共通点が多い。
    連結売上高や、経常利益などの基本的経営規模、
    イオンとの業態間競争、或いは近隣都市との都市間競争といった市場環境。
    更には借入金の残高まで、他人事には思えない。

    思えば方角の違いこそあれ、北と西、日本の果てという意味では
    似たり寄ったりなのだ。
    当然のことながら、私の勤務先の経営も、楽ではない。
    そもそも、今時、全国規模のネームバリューを持たない
    地場資本の百貨店が、独自の経営を維持するということは、
    そろそろ業界の常識からしても、無理がある(らしい)。
    そんな中で、銀行の債務免除を受けるわけでもなく、
    社長が突然辞任するでもなく、大手百貨店の参加になるわけでもなく、
    辛うじて生き永らえているのは、どこか違いがあるのだろうかと、
    不思議な思いであった。
    当事者の立場から言えば、それこそ『ウチはウチ、よそはよそ』。
    業界の流れがどうであれ、絶対に守っていかなければならないという
    意識はある。
    傍目から見たら、『時間の問題じゃん』という風に見えるかもしれないが、
    先日入った新入社員のためにも、『会社の独立性』
    それだけは、守っていきたいと思う。

    それはそうと、この本を書いた北海道新聞社の取材力は、
    驚嘆に値する。
    いくら地元の新聞社だからといえ、
    相手は非上場会社である。
    私の勤務先が上場会社だから実感するのだが、
    非上場会社というのは、基本的に、情報公開に関しては、
    非常に消極的なものだ。
    例えば、上場していれば、今は『四半期決算』と言って、
    年に4回は、良かれ悪かれ、財務内容を公表しないといけない。
    (言ってみれば、私がしている仕事はそれを作る仕事だ)
    決算書は、基本的には嘘はつけない。
    どんなイメージ広告より、ネットの掲示板より、
    その会社の実態を性格に表現する。

    しかし、非上場会社には、それがない。
    ためしにホームページを覗いてみたが、
    売り上げすら載せていない。
    まぁ、売上げくらいなら、業界紙などを読めば、
    それとなくわかるのだが、この本の内容は
    とてもそれどころのレベルではない。
    恐らく、ほとんどの社員ですら知らないであろうことを、
    よーく調べてある。

    警察のように、捜査権力があるわけでもない
    いちマスコミが、よくここまで調べたものだと、
    妙に感心した。

    当然のことながら、この本は北海道ではバカ売れらしい。

  • かつて北海道で「丸井さん」と呼ばれ親しまれてきた老舗百貨店が凋落していくさまを書いた本です。ねがわくばこれを教訓としていただきたいところです。

    僕の町には「丸井今井」という百貨店があった。「丸井さん」という愛称で親しまれていたと知ったのは、つい最近のことだった。少し前になるが、二度めの経営破綻をして、民事再生法の適用を申請したと聞いた時には、少なからず驚いた。地元の丸井今井が閉店したとき、私は故郷を離れていたので、その辺の事情についてはとんと知らなかったのだが、その時点で相当経営が危なかったのだと、母から聞かされた。

    僕はそこの本屋が大好きで、専門書がほかの書店に比べて大変充実しており、学校帰りによく通ったものだった。事情を知りたくて、図書館で見つけて読んでいた本がこの本である。この本によると、凋落の決定的な要因となったのは本業の不振ではなく、バブルの時期に行ったフィットネスクラブなどほかの事業への拡大。そして、当時の社長が行った海外の不動産投機の焦げ付き。これが決定的な要因だったそうである。

    僕は株主でも従業員でもないので是非を云々するつもりは、ない。ただ、経営が健全になってくれることを祈るのみである。そして、シャッター街や空きビルが立ち並ぶ僕の地元の中心街の真ん中では、主を失ったビルが看板も取り払われずにうち捨てられ、まるで墓標のように白く大きく、そびえ立っているのであった。

  • 4062753308  349p 2006・2・15 1刷

  • 北海道を代表する百貨店、丸井今井の凋落と再生を描きます。地元紙として定評のある北海道新聞の長期取材をもとにまとめられています。(北海道新聞は道警の覚せい剤汚染をえぐったレポートで道警と冷戦状態にあり、取材面で苦境に立たされています。がんばれ、北海道新聞!) そごうが破綻したときと重ね合わせると、地元密着度と看板の重さ(丸井さんを倒すわけにはいかない)、再建手法の確立(私的整理ガイドラインなど)の背景に大きな違いを感じます。本当に再生とはケースバイケース、時代の流れに沿ったもの、だと感じます。文庫本ということもあり、非常に読みやすい作りです。

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