日曜日たち (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062753593

作品紹介・あらすじ

別々に東京で生きる5人を結ぶ「日曜日」

ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。都会の喧騒と鬱屈した毎日のなかで、疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。ふたりに秘められた真実とは。絡みあい交錯しあう、連作短編集の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 吉田修一さんの本は8冊目。

    表紙には連作短編集と書かれていますが、連作の意味がじわじわとわかってきます。
    後半になればなるほど、じわじわ良い感じ。
    特に、最後の表題作でもある「日曜日たち」はホロリとします。
    『日なた』や『7月24日通り』と同様の読み心地。
    吉田さんのこういう感じの本、好みです。

  • どこにでもいる男女たちの

    ありふれた日曜日。

    だけど彼等にとっては

    特別な日曜日。


    私なんぞの日曜日でも
    吉田さんならうまく小説にしてくれちゃうんじゃあないかと思ってしまう。

    そんな一冊。

  • 「もっと簡単にいえば、誰かを愛するということが、だんだんと誰かを好きになることではなくて、
    だんだんと誰かを嫌いになれなくなるということなのだと知ったのだ。」

    「何かを忘れずにいたいと健吾は思う。何かを忘れずにいるということが
     絶対に不可能だと思うから、ますます何かを絶対に忘れたくないと思う。」

    「ただ、強引さというのは、度を越すとロマンティックになる。」

  • 「たとえば、誰かに親切にしてやりたいと思う。でも、してくれなくて結構だ、と相手は言う。だったら仕方が無いと諦める。考えてみれば、ずっとそうやって、自分の思いをどこかで諦めてきたような気がした。親切など結構だと強がる人が、実はどれほどその親切を必要としているか、これまで考えたことさえなかったのだと気がついた。相手のためだと思いながら、結局、自分の為にいつも引き下がっていたのだ、と。」

  • 東京に暮らす、5人の男女がそれぞれ抱える日曜日の思い出を描いた短編集。

    大事件ではないけど、平穏ではない思い出。
    こういうものに対する心情を表現するのが本当に上手いと思います。

    何の関係もない5人のお話に登場する兄弟が、各編の共通項。
    5人の登場人物にハッピーが訪れるのかは分かりませんが、みんな大人だから良しとして最後にほっこりと暖かい気持ちになれる一冊でした。

    2時間ほどで読み終えられます。

  • 5つの短編からなる本。
    共通して2人の兄弟がでてきます。
    彼らはどの話の主人公になるわけでもないのですが、登場します。
    それが5つの話に繋がりを見出しています。

    吉田修一さんの本は好きなのですが
    どよんとしていて晴れやかな気持ちにはなりません。
    だから晴れの日には読みたくなくて、
    これも天気の良くない日に読む気になって読みました。

    ほんとにどよんとしてるんですが
    5つ目のラストで不覚にも涙しました。
    曇天の中の光には妙に感動しますね。


    吉田修一さんの話に出てくる人たちって、
    「キラキラな人生を送るひと」でなくてそれを主人公として物語を書いているのが、誰しもの人生は物語である、と思わされるような感じがするから、好きなのかも。
    失業中の男性、女に振り回されてきた男、男にDVをされた過去ある女性など…
    今回も本当にその通りでした。


    2つめのお話は女子の友情関係、千景の時の流れで変わりゆく価値観など共感できることが多かったです。ラストが不思議な終わり方だけど。

    東京を舞台に書いているのも、とっても好きでした。

  • 短編集。何気ない日常を切り取るのが上手い吉田さん。
    これは〝重松清〟風のテイストだった。
    現在(今)を決して活き活きとは生きていない男女が過去の出来事を回想しながら、今日を生きる話。
    単独ストーリーですが、過去に共通して登場する子どもが重松氏っぽい。
    幸不幸を決めるのは他人ではないけれど、それでも明日は誰にもやってくる。
    別に日曜日にこだわらずともよいけど、人生には日曜日は必要だね。


    すれ違いのカップル。恋人に先立たれた男。
    女に振り回されて職さえ捨ててしまう男。
    友情が破たんする女友達。
    先が見えず年齢だけ重ねる派遣社員。
    どこにでもありそうな悩み、誰にでもありそうなエピソード、其処彼処にありそなシチュエーション…そんな何気ない毎日を繰り返しながら生きている。
    結局、今の自分ってものは、過去の自分の積み重ねでしかない。今とあの日は繋がって、繋がって…そしてこれからもずっと。
    そうやって、毎日を生きていかなくちゃならない。
    だからどうした?と云うのがない。
    だけど、なんかいい!
    生きるって多分そゆことなのかな。

    2016.05.16今年の17冊目

  • 初めての吉田修一さん。

    不思議な小学生の兄弟の存在が、別々の物語を繋ぐ。
    こういう、主人公自体は関わりないけどどこかしら繋がっている短編集は凄く好みだったので良かった。

    なんかホッとする。優しい感じ。
    吉田修一さんの他の作品にも手を出してみようかなーと思います。

  • 読後感が良い。なかなかに好みでした。特に物語全てに現れる兄弟の別れとその後を描いた表題作は秀作。嫌なことばっかりだったわけではない。心に明かりを灯す一冊。

  • 5作品に登場する、母親を探す小学生の兄弟。
    全く関連性のないと思っていた5作品が、この兄弟によってつながっていた。
    都会に暮らす若者たちが、日々苦悩しながら生きていく。
    ちょっと辛いな。
    でもラスト、この兄弟によって救われたかも…。
    「嫌なことばっかりだったわけではない。」
    この言葉が象徴的でした。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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