黒と茶の幻想 (下) (講談社文庫)

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著者 : 恩田陸
  • 講談社 (2006年4月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062753616

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黒と茶の幻想 (下) (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 上巻に引き続き再々読了。

    上巻のレビューにも書いたが
    Y島の太古から続く深い森と
    登場人物たちの持つ過去との濃密さに
    ”ずぶずぶ沈んで”いきそうになりながら読んだ。

    3度目でもこれだけ作品の中に入り込まされるのはすごい。

    初読は確か10年くらい前に妹から借りて。
    とにかく高密度で夢中になって読んだという記憶しかない。
    2度目は5,6年前か?読み返したくなって購入。
    この時も夢中になって読んだ記憶はあるけど、1度目と大きな印象の違いはなかったように思う。
    3度目の今回は、多分かなり違う。
    前に読んだ時はレビュー等を残していないので比べることはできないが。
    登場人物と読んでいる自分とのキャラクターや置かれている環境があまにりも乖離している時、私はその”役”に入り込んで読む。自分の中に彼らを投影させて疑似体験しているような感覚で、その際、感情もシンクロすることが多いので違和感や反発を覚えることは(もちろんあるけれど)少ない。

    まだ20代だった1度目、
    30代になったばかりの2度目、
    利枝子や彰彦の章ではひたすら共感・共鳴し、蒔生の章では女として多少の反発を覚えるものの”そういう人間”として情報処理し、節子の章では一番現実を生きる彼女の生き方・考え方に理解しやすさを覚えていた。

    今回は3度目だからなのか、彼らとほぼ同年齢になったからなのか、”役”に入り込んでいると同時に意識の半分は彼らの世界を俯瞰で捉えながら読んだ。
    すると行間に違った景色も見えてくるから不思議だ。

    30代後半は当時の私が思っていたより大人じゃない。
    私が未熟なせいもあるだろうし、
    作中の彼らは自我が確立されていて現代の30代後半よりはずっと大人だとは思うけれど。
    でも、モノローグが真実とは限らないんじゃないだろうか。
    自己分析が好きだという節子に呆れてみせ、自分には必要ないと言う蒔生だが、彼の章で展開されていたのはどう考えても自己分析であると思えるし、自己や他者の心理分析を全くしない人間なんて多分(ほとんど)いないと思う。
    同様に実は誰よりも”三顧の桜”に執着していた蒔生のその理由は別の所にあるような気がしてならない。
    いつだって自分のことしか考えず好きなように生きてきた自分に疚しいことなど無いと言いきっていたが、
    自覚か無自覚か、彼の森の深いところには”疚しさ”や”罪悪感”が亡霊のように見え隠れしているような気がする。
    と、ここまで持論を展開して気づいたのが、
    憤りや不快感を感じながらも読み手の私自身もやはり(歪で不完全)な蒔生という男に惹かれているのだな、ということだ。

    解説に、登場人物の4人と恩田陸さんは同世代だと書いてあったが、仮に作者と同年齢だとるすると、彼らの2度目のY島ツアーはおそらく今年(蒔生の誕生日が早ければ去年のうちか)行われているわけだ。
    その旅を想像してみるのも面白い。

  • これ4人を出す順番が絶妙だと思う。
    利枝子・彰彦はまあ順当として蒔生が3番でちょっと驚きつつ、
    その前段階あたりで節子って実はどうなのと匂わせ始めるから
    締めが節子ってのも納得。

    色々謎に満ち満ちてた割には
    ものすごい事件が何にも起こらない所がまた最高。
    屋久島に凄く行きたくなる本だし、好き。

  • この展開、構成、終わり方はずるい。まさに恩田陸。
    謎解きが大に小にばらばらちりばめられてて最高。
    だいたい二章までの流れだと、蒔生が四章にくるだろうに三章においちゃう所が憎い。最後の節子がどんな章になるんだとドキドキしてたら、血みどろな場面は全部蒔生で終わらせて、節子の章では重いながらもさわやかに終わらせてる。
    それがいいところでもあり、わるいところでもあり。このどんどんどんどん血みどろでぐちゃぐちゃになっていくのがやめられない。
    正直、キャラクターとしての蒔生はエグイと思うけど、ストーリー的には三章が一番面白い。
    それまでは、蒔生と利枝子と憂理の関係をめぐるサスペンスを主軸にしてたところがあったのに、三章まででその起承転結を済ませちゃって、四章丸ごと別のエピソードにすりかえて後味をさわやかにもっていってる。そりゃずるいよ。
    蒔生のキャラクターが、どっか春樹とか龍の書く男主人公に似てる気がする。『ノルウェイの森』とか。(セックスに関して女と肉体以外は断絶しているような面だけ?共通するのは)

    まぁ全員そうだろうけど、彰彦かな、綺麗なのは。それと節子の超人的な面とか。恩田陸、綺麗だったり超人だったりするのよく書くな。
    あと、とにかくこの人は会話劇なんだな。
    ミステリー的な要素がそれだけ強いってことだろうけど、人が会話することを物語を動かす大きな力にしてる。(そうじゃない作品もあるけど、少なからずそういうところはあるだろう)
    だから、遠足だとか山登りだとか、俗世と隔絶された学園、お茶会、寝台電車や車の中、無人島っていう、とにかく長く持て余した時間と話さざるを得ないような状況が場面に選ばれるんだよな。
    それは好き。
    ただ、やるせない、この物語の収斂に入るとフラフラする点。
    すごく好きな反面、後一歩と勝手なことを思ってしまう。

  • 最終章とその前は逆かと思っていたのでちょっと驚いた。
    最終章の人はちょっと蚊帳の外感があったのだが、なるほどそういう動かし方かと。

    特に結論や解決がある訳ではなく、まして真実に到達した訳でもない様な終わり方だが、まぁ月並な表現をすれば人生に解決なんてないのよ、といったところか。

    当初の屋久島関連書というのを軽く忘れて楽しめた。

  • 再読。
    以前読んだ時はそこまで印象に残らなかったのに、今回はとにかく面白く感じた。こういう本に出会いたくてワタシは本を読むんだ、って思ったくらい(笑)
    もちろん屋久島の魅力もたっぷりだけど、4人の会話や心情がとにかく読んでて楽しかった。読んでる途中に、近くにいた旦那サンに「一番好きな映画は??」って聞いたら返答じゃなく難癖がかえってきた(´Д`)あーあ、美しい謎を一緒にとめどなく考えてくれる人と旅行したいなぁ~☆

  • 下巻です。
    下巻は蒔生と節子の章になってます。
    そして上巻から引き続き4人の旅行で、「美しい謎」と過去の話がされてます。
    相変わらず切ない話が続いてます。
    憂理に関しては特に。

    ちょっと不思議に思ったのが、章の順番です。
    なぜ利江子→彰彦→蒔生→節子の順なのか気になりました。
    というのも、4人の中では節子が一番重要じゃない人物だと思ったからです。
    でも解説を読んで納得しました。
    確かに節子は「こっち側」です。

    もし自分が40歳くらいになって、学生時代の友人と旅行に行くなら誰と行くだろうっていうのをちょっと考えてみました。
    私の場合、社会人になっても定期的に会ったり、連絡取り合ったりするか、まったく会わないかのどっちかだと思いから、こういう旅行は実現できなそうです。

  • 最後まで特にこれといった事件が起きるでもなく、淡々としていた。
    半分以上は森の中を散策しているシーンなんじゃないだろうか。
    私はこういうの好きだけど。四人がとりとめのない話題でぽつぽつと意見を交わしているのに、ああ、これ分かる、と一人相槌を打つ。
    刺激を求めてる人には、退屈かもしれないが……。
    「美しい謎」については、解き明かすのではなく、話し合っている感じが普通のミステリとは違っていて良いなと思った。
    (それと、恩田さんは女の方だったんですね……。どこか女性的だなとは思ってたんですけど、勝手に名前のイメージから男だと決め付けてました。)

  • 章の構成からもう、いいですね。
    上からの流れだと蒔生が最終章で憂理の謎を吐露するものだと思い込んでました。
    解決された謎、そうでない謎がある中で節子の夢の話が時間を置いて解明されたのは印象的。
    叶うならば辻蒔生氏五十一歳記念の旅話も是非に(笑)

  • 2017.8.13読了
    感動も驚きもない作品。

  • 屋久島に行った人は二度美味しい…かもしれない。

  • あとがきには「特定の世代に強く響く」みたいに書かれていたけれど、これは誰が読んでもどこかに深く共感できるポイントがあるのではないかと思う。
    でもいつか登場人物の年代になったとき、またゆっくり読み返してみたいな。

  • あ"~~~もう、
    旅がしたい!旅がしたい!旅がしたい!
    過去を取り戻す旅がしたい!
    美しき謎を持ち寄った旅がしたい!
    気心の知れた仲間内で、普段と全然違う脳の使い方を。たまにはしたい!

    は~。世に“旅は命の洗濯”なんてよく言ったもんで。もうずっと旅行もしていない今現在自分の境遇がホント不健全に思えてなりませんよね。

    え?物語?
    そんなんもう傑作ですよ。
    恩田陸がこのシチュエーションを見つけ出してしまったが最後、そりゃ間違いようがありませんからね。
    深いですよ。闇とか人生真理とか。


    最低でも二泊三日は欲しい。
    Y島(屋久島)なんて贅沢言いませんから自然の中を闊歩したい。
    でも時間がとれるなら屋久島ほんと行ってみたい。

    あぁ・・・。あぁ・・・。


    ♪本日の読書中BGM
    『12Memories』/Travis

  • 下巻は蒔生、節子視点。最終章がいちばん中立で、でも4人を繋げる話。とけた謎と、持ち越される謎。それが心地よい。

  • 予備知識が無く読んでいて、途中であれ?って思って書棚へ。
    「三月は深き紅の淵を」と「麦の海に沈む果実」の関連本でした。
    明確に続編とあるわけではないのだけれど、『黒と茶~』を読む場合はこの2冊必須かも。
    あとは物語にぐいぐい引き込まれて一気読み。
    相変わらずこのシリーズは読み終わったあとも濃厚な気配が残っているような、そんな本でした。満腹。

  • おもしろく読めた。
    日が進んでいく形式、旅行記のような話、過去や想像を行き来する構造、
    人間の思考の違い、そういうものが好きだからかと。
    読み始めて深く沈んだ後、最終章によって帰ってこられるという親切設計な感じ。
    自分の森とはどういったものだろう、などと考えてしまう。

  • 手に取ってしまってから、合わない!と気づくが、なんとか最後まで読了。

  • 上巻は2人の女性、男性
    下巻はまた違う男性、女性の目線に変わるのだが
    こうも人の外面、内面を描き切れる作者に驚愕。。

    本人でさえ気づいていない本質が他人には明らかだったり
    周りの人が抱いているイメージは本人によって周到に計算しつくされたものであったり。
    人には説明できない、とても理解できないような思考回路だったり。

    男と女 というテーマは良く見るけれど、人としての性格、性質について考えさせられる。
    が、全然固くなくてむしろすいすい読めてぐいぐい惹きこまれる。

    解説の川端裕人氏の最後の見解がまた興味深い。

    文章について。
    『この男の単純さは美点である。』という表現が何故か強く心に残った。
    『この男の美点は単純さである。』とは全く違う印象を受ける気がする。
    又吉氏が書ける気がして書いたら全然書けなかった、というような事を以前テレビで言っていたが
    文章の素晴らしさ、に気づくことがはたして自分は出来ているのか、とふと思う。

  • 大人のピクニックという感じ。たしかに大きな事件というものは無いかもしれないが、それぞれの視点から人間模様が描かれていて面白い。

    結局4人とも蒔生が好きということだが、本人はポーカーフェイスでミステリアスな感じだった。

  • 麦の海に沈む果実、三月は深き紅の淵を、と合わせた緩やかなシリーズ物。いずれも独特の世界観。物語として完全に繋がっているわけではないけど、登場人物のキャラクターは引き継がれているから、自分の立ち位置が微妙に揺らぐところは作者が上手く練り込んだ仕掛けなんだろう。

    縄文杉を目指すまでの間の、些細な気持ちの動き、過去との決別、過去との対峙、未来との対峙。鳥肌が立つくらい移入できた。
    自分はこの四人の誰に当てはまる?かを考えると楽しい。僕は、、

  • ミステリと思って読んだら青春だった。
    目次を見たときは最後が蒔生でなく節子なので、何故?と同時に、どんでん返しに節子に深い謎があるのかと考えた。それとは違ったけれど、最後の章が節子であることは必然でした。締まるし面白いしスカッとするし感傷的になれる。
    蒔生は愛されてるなあ。私はきっと彼を振り払えずモヤモヤする彰彦や利枝子の方を好きになっちゃうけどな。
    とりあえず屋久島に行きたい。

  • 再読。やっぱり恩田さんの作品の中ではこれが一番好き。ゲームのような謎解きは控えめになり、それぞれの自分探しになる。森の描写と相まってどんどん深くなっていく。節子の章で節子が蒔生を怒鳴りつける場面は、泣いてしまった。(ここで泣く人はいないと思うけど。)最初に読んだときは、蒔生の章がインパクトが強かったけれど、何回も読むと節子の章が全体をバランスよくまとめていて、最終章にふさわしいなあと感じられた。誰が好き?って話になると、うーん、利枝子かなあ。蒔生に振り回されてるのは悔しいけど、振り回され方が魅力的です。

  • 再読。あぁぁ、おもしろかった。以前読んでいた頃は過去の4人の年齢近くで、過去の4人と現在の4人の間くらいの年齢だけど、今回は読後の希望が大きいなぁ。「過去を取り戻す」旅で、忘れてた・知らなかった過去に苦しんで、でもちゃんとそれぞれ縛られず埋もれず、最後はすっきりした顔で前を向いてて。みんな。その流れに希望を抱いてしまった。(まぁ自分に大した過去なんかないけど)「美しい謎」解きも、もちろん楽しいし。ちっとも感情移入できない蒔生の章も含めて、ちゃんと作り込まれた順番で進んでたんだなぁ…。すっきり。

  • 黒と茶の幻想<上>のレビューご参照。

  • 屋久島に行きたくなる。皆それぞれ自分のことを話しているはずなのにいつの間にか1人の少女のことについて考えている。

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