文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 297
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  • Amazon.co.jp ・本 (1226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754996

感想・レビュー・書評

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  • 百鬼夜行シリーズの中で、結構好きな一編かもしれない。
    冒頭から哲学的な応酬が重ねられ、論理の海に流される。膨大な言葉とページ数を尽くして語られる物語だが、実際の時間は物凄く短期間なのだ。伯爵と、鳥の城。その特殊な世界が読者の感覚も狂わせてくるのだろう。
    ある意味、はじめから全てが明らかであった。それでも、結末が気になって気になって仕方がなかった。視点者が関口くんと、伯爵と、伊庭さんに絞られていたせいか個々の思索論理の底に沈んでいけたのが、体感としてある。前作ではひたすらにひどい目にあっていた関口くんだが、今回は180度変わってひどく活動的だ。「関口巽」というキャラクターに対する印象も、上手く言えないけど変化があった。愚鈍なワトソン役のふりをしながらも、めちゃくちゃ興味深い人物じゃないか。あの連中とつるんでる時点で、只者ではないのか。
    伯爵は、一貫して公明正大で清廉潔白。だからこそ、とてつもなく悲しい。薫子さんが物語の清涼剤でもあったからこそ、なお。そして私は伊庭さんのようなキャラクターが大好物だし、木場修との会話部分を何気にめちゃくちゃ楽しんだのだった。

  • 純粋とは、生死とは、弔いとは、と無意識下の価値観を揺さぶられた。
    百鬼夜行シリーズの中でも本作が1番好きという感想を多数拝見して読んだが、納得の内容だった。

    『謎とは知らないこと。』
    知らない方が良かったことなんて、世の中溢れていて、後悔ばかりだ。
    無知は罪とも思う。いつもせめぎ合っていて目を塞ぎたくなる気持ちを思い出して噛み締めてしまった。

    世の中は汚い。嘘や虚栄、誤魔化しで人を利用しているのを見るのは本当に心が擦り切れる。
    でもはたして純粋なことは良いことなのか?本作で強く考えさせられた。

  • 白樺湖近くに建つ洋館「鳥の城」。そこに住む主人、由良昴允。
    伯爵と呼ばれる彼は過去4回、花嫁を新婚初夜に亡くしている。
    5番目の花嫁、薫子を護るために呼ばれた榎木津と関口だが……。存在について考えるシリーズ第八弾。→

    個人的に原点回帰のように感じた本作。関口が主軸、閉じられた空間での事件、儚い謎、登場人物少なめ。
    でも、作中で一年経っているし、読んでいる私も歳を重ねているので、姑獲鳥よりさらに切なく感じた。
    伊庭さんがいいんだよなぁ。木場との絡み、好きだなぁ。
    中禅寺と柴くんと絡みも良い→

    そして中禅寺=京極堂の安定感よ……。クライマックスで京極堂が出てきた時の私の気持ち、たぶん関口とシンクロしてる(笑)

    今作は榎木津があまりかっこよくなかったのが残念(笑)暴れっぷりも控えめだったような。

  • まあ榎さんと関さんが2人で旅してるだけで最高だから……

  • 恐縮ながら、シリーズもここまでくると京極堂の衒学的な演説も少々読み苦しくなってきたのは事実だし、また、他作に比べて割と早い段階から真相の予断が可能な作品ではあるが、それ以上に、これまでのシリーズの中でもっとも“感情を動かされた”ことが印象的だった一作。

    読み進めていくうちに、「ああ、そういうことなのかな」と段々と想像がついてきて、そして終幕は果たしてそのように展開していくんだけど、その最後の情景の途中で、なんだかとても物哀しく切ない気分になった。

    これまでの京極堂シリーズにも、悲哀、といった類のテーマは込められていたこともあったとは思うが、正直私はそれを剥き出しの心根で感じたことは、今までなかった。
    しかし今作に至って、作中人物のあまりの哀しさをリアルに読み取ってしまった、というのは、私の内面に変化が起こったからなのだろうか?

  • 好きだな~。伊庭さんかっこよくて何度も読んじゃうな。ハクセイの鳥たちを想像しながら読むとたのしい。

  • 「百鬼夜行シリーズ」読み直そう企画九冊目。いやはやこれも怪作。殺人事件を扱ったミステリーだけれど、全1203頁に対して、被害者の殺害が判明するのが882頁目。それまでは延々過去の殺人事件の説明や、「存在」をめぐる伯爵と関口の問答。それなのに、退屈せずに読める。そして真相が明らかにされた時(分かってはいたが)せつなくやるせない。これもまた傑作。あーあ、後残すところ『邪魅の雫』一作だけか。はやく新作『鵺の碑』出ないかな。

  • 哀しい話。
    家族に成るとはどういうことなのか?
    伊庭さんが良かったな。
    多々良センセイのところで出てきたのは君か!と思わぬ再会。
    あと、大鷹くんはここで出てきてたのね‥。そうだったそうだった。
    関口くんが、韮山の時よりも回復していて、それは安心です。
    しかし伯爵から見た関口くんは、やはりウロンなのだなあ。

  • 相変わらずの千ページ超の大長編。ただ、今回は死生観や儒教、しっぺい太郎などのウンチク話が全体の大部分を占めていたり、やたらと改行の多いページが続いたりと、密度的なことでいえばちょっとボリュームあるかな?くらいの内容。

    そして本シリーズの真骨頂である憑き物落としが始まるまでが長い長い。全部で1200ページ近くあるのに、それが始まるのは1000ページを超えてから。ウンチク話が多少(個人的に)興味深かったので、何とかテンション落ち切らずに読み切りましたが、思い返すとストーリー的に起伏のない間は結構辛かったかもしれないです。

    だけどやっぱり憑き物落としが始まると、取り憑かれたように読みふけってしまう吸引力がありますな。おぼろげに犯人が誰かと想像できたとしても、その真相はいかに?といった部分で大いに楽しめました。

    まさにレンガなみの分厚さを読み切った達成感と、読了直前の憑き物落としによるアゲアゲテンション効果で、★の数が1つ2つ多くなってるかもしれませんが、現段階での正直な評価なんで…

  • 優しいお話で、哀しくも良かったです。
    榎さん関口くんコンビで少しいつもと違った雰囲気。
    ラストといいとにかく関口くんへの愛が深まった。

著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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