QED〈龍馬暗殺〉 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062756761

作品紹介・あらすじ

山村に起こる惨劇と龍馬暗殺を繋ぐ謎!?
シリーズ第7弾!!

高知の山深く、平家の落人伝説が残る蝶ヶ谷村。土砂崩れで密室と化した村の一夜に起こる殺人と自殺。大学の後輩全家美鳥(ぜんけみどり)を訪ねてきた桑原崇と奈々たちも事件に巻き込まれるが、その最中、維新の英雄・坂本龍馬暗殺の黒幕を明かす手紙の存在を知る。因習に満ちた山村と幕末の京都を結ぶ謎に挑む崇の推理は!?

感想・レビュー・書評

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  • 今回はぐっと現代に近づいて幕末の龍馬暗殺がテーマ。
    たまたまこの前に榎本武揚に関する作品を読んでいたのでこの時代の世相が頭に入って残っており、普段より容易に読み進めることができた。
    とにかく卑怯な裏切りを繰り返してきた薩摩藩だけに、この仮説に一票です。
    ただ本シリーズらしい独自の理論展開は、時代が近いだけによわかったように感じます。

  • 高知の山深く、平家の落人伝説が残る蝶ヶ谷村。土砂崩れで密室と化した村の一夜に起こる殺人と自殺。大学の後輩全家美鳥を訪ねてきた桑原崇と奈々たちも事件に巻き込まれるが、その最中、維新の英雄・坂本龍馬暗殺の黒幕を明かす手紙の存在を知る。因習に満ちた山村と幕末の京都を結ぶ謎に挑む崇の推理は―。

  • コナン君レベルの事件遭遇率!

    まだこんな田舎あるんだろうな、と思ったらなんか腑に落ちた事件でした。

    坂本龍馬はあまり知らないから、暗殺の実行犯とか黒幕とかの話はふぅん、って感じでした。

  • 坂本竜馬の暗殺について定説をひっくりかえす。「事件は得をしたものを疑え」ここから導かれる竜馬暗殺の真実の新予想。



     QEDの古代日本史シリーズ以外はテンション上がんないな。古代史は現代人にとって神話の世界なところがあるから、トンデモ理論とか深読みをしても悪い気がしない。そもそも真実である可能性がかなり低いから、定説を疑うことの方が真実味を帯びるんだよね。
     しかし、明治維新の頃だと時代が近いから現実味があって、憶測で論を展開するのは胡散臭くなってしまう。だから斜に構えた読み方になってしまって楽しめないんだろう。

     とはいえ、明治維新は常識以上に胡散臭いことばかりだと思う、そういう時代だったはず。もう、陰謀と権謀術数と裏切りの連続、最低な時代の一つだろう。その歴史が美談にされていないわけがない。だからこの竜馬暗殺の新論は、とても真実に近い、空論なのだろう。


     殺人事件はおまけ。

    ______
    p77 姥捨て
     四国お遍路八十八か所詣は、当初は真言宗の信仰が目的だったが、時代を経ると「死出の旅」が目的で回る人も出てきた。
     姥捨て山という言葉があったくらい、昔の農民は生活が厳しいことがあった。食い扶持を減らすための捨て子や老人の遺棄。これとお遍路がリンクした。死ぬ前に親交を深めて極楽浄土へ旅立つ(真言宗の教義じゃないが)そのため片道切符のお遍路の旅を村の老人にさせたというのだ。
     お遍路の白装束は仏様の恰好だしね。江戸時代の川柳に「山中に 笈(オイ)ばかりある むごいこと」というものがある。お遍路の背負っていた荷物の残骸が道中落ちている、持ち主は白骨化したか野犬のエサになったか。
     お遍路って、そういう側面もあるってこと。

    p88 河中
     高知県は元は河中だった。長宗我部に代わって高知の地に築城した山之内一豊は、江之口川と塩江川に挟まれた山に城を建てた。だから河中山(こうちやま)と名付けた。しかし、度々おこる川の氾濫に悩まされ、縁起を担いで「高智」と名を改め現在の高知にいたる。

    p95 明智系列
     坂本竜馬の坂本家は才谷家の分家である。竜馬が使う変名の「才谷梅太郎」はここから来ている。
     才谷家は戦国時代までさかのぼると、明智光秀の娘婿の明智秀満の庶子:太郎五郎の末裔とされている。
     太郎五郎は山崎の合戦で敗れたのち四国に逃れ、才谷村ー高知長岡郡に住み着いたという、そこで長宗我部の家臣になったという。
     坂本竜馬も家紋も明智家と同じく桔梗紋である。坂本は明智家の普請した近江城のあった坂本(比叡山の麓)からきているといわれる。

    p103 三月三日
     桜田門外の変が起きた日。これを歌った川柳がある。「桃の日に 葵橘争ひて 紅葉を散らす 桜田の雪」華々しい血なまぐさい歌だ。桃の節句に、葵(水戸家)と橘(井伊家)が争って、紅葉のように血しぶきがあがる、雪の降る桜田門。とてもいい。

    p172 少々飲める
     高知語では「少々飲める」は「升升飲める」なので、一升瓶二本は飲めるということです。

    p254 清和から始まる禁忌
     日本の肉食忌避は清和天皇のころに貴族たちによって無理矢理定められた慣習である。貞観三年(861)に東大寺大仏修復に向けての仏教儀式として、すべての皇族・貴族・官僚にたいして肉食禁止などの穢れ落しを強制した。これのことかな?

    p286 連続切りは不可能、おかしい
     坂本竜馬が近江屋で暗殺された際の矛盾。刺客は飲み嫌の入り口で番をしていた坂本の下僕の藤吉を切り捨てて二階に上がっている。その際、切った刀を鞘に納めて二階に上がったという。冷静に考えれば血糊のついた刀を鞘にしまえば血が固まって抜刀できなくなる。
     こういった細かい矛盾が幾つもあるため、竜馬暗殺の史料は信用を落としている。らしい。

    p320 明治37年
     坂本竜馬の名前は、明治37年まで一般人はほとんど知らなかった。知っていても志士の間だけだった。
     坂本竜馬の名前が知られるようになったのは、日露戦争の宣戦布告に際して戦争の吉兆として登場したからである。宣戦布告した二月十日の前夜に昭憲皇太后の夢枕に竜馬が現れて「誓って皇国のために、日本帝国海軍を護り奉る」と奏上して消えた、という皇后の奇夢があったと言われている。
     これは維新後の政界進出で出遅れた土佐藩が、自分たちの政府での存在感をあげるための作戦だと言われている。明治維新には坂本竜馬や中岡慎太郎という土佐藩士の功績が大きかった、これを喧伝することで自分たちの存在感を高めたかった。ようは竜馬らは道具として使われて有名になったということだ。

    p331 長岡謙吉
     船中八策という坂本竜馬の新国家体制の基本案がある。竜馬はこれを藩主の山内容堂に進言するため上洛したが、その道中に夕顔丸の船上で後藤象二郎にも提案した。その際に長岡謙吉がそれを筆記したという。
     後藤象二郎が竜馬のこの献策(大政奉還とか)を独り占めしようとして竜馬を暗殺したという説があるが、この船中八策を知っていたのはこの長岡謙吉もいたのだから、そもそも独占はできない。だから後藤暗殺犯説は説得力に欠けるという。

    p356 西郷の策略
     西郷ら薩摩藩士は慶喜の大政奉還で討幕の建前を失った。なんとしても徳川家を血祭りに上げて、全く新しい世の中を作りたい薩摩藩は、徳川家が薩摩に弓を引いて戦争を始めるキッカケを作ろうとした。
     江戸に浪人を送り込んで乱暴狼藉を横行させる。それを薩摩藩のせいだと噂を流して、徳川家が薩摩藩に報復するのを待った。「根も葉もない噂だけで攻撃された」と逆襲に出て徹底的に徳川家をぶっ潰す。この策略を実行した。
     幕府は慶応三年十二月二十五日、浪人の根城になっていた三田の薩摩藩邸に焼き討ちに入り、薩摩藩士数十人も殺した。その知らせを聞いた西郷は「我、こと成れり」と狂喜しさっそく戊辰戦争を開始した。
     汚い。

    p366 龍馬は邪魔だった
     薩摩による竜馬暗殺説を考える。竜馬の献策した大政奉還では薩摩の望む武力革命は成されない。徳川家は一大名に成り下がるが、新政府の一大勢力として残る。そうしては薩摩が新しい時代の当主になることができない。その障害になる考えを持つ坂本竜馬らは邪魔だった。だから暗殺した。という説

     しかし、竜馬は維新後の政治にはかかわらないと公言している。そういう史料が残っている。それは西郷らも知っている。そう考えると薩摩が竜馬を殺す理由は弱くなる。どうなんだろう。この竜馬が参政しないというのも捏造なのだろうか…。

    p385 ドクニンジン
     ドクニンジンはかのソクラテスが死刑の際に飲んだ毒として有名。解毒剤が無く、神経毒として最後まで意識が残り30~60分で呼吸困難で死亡する。

    p391 龍馬の句
     「世の中の 人は何とも 言わば言え 我為すことは 我のみぞ知る」

    p425 注連縄
     注連縄は標縄とも書き、神聖な結界を張り、その境界を表すものである。天照大神が天の岩戸から出た後、再びそこに籠らないように岩に巻きつけた「尻久米縄」が端緒だとされる。

    p427 逆巻の注連縄
     出雲大社の巨大注連縄は逆の捻り方になっている。これは注連縄が死霊の類を締め出す意味を持っているなら、その逆で死霊を外に出さないようにするという意味がある。つまり、出雲大社は大國主命を封印する場所だということである。

    p428 紙垂(しで)
     注連縄に垂れさがっている紙。紙垂という言葉は「死出」と同じ読み方だね。この紙垂の紙が何を表すかというと、白装束の死出の旅に発った者を垂れ下げる、つまり処刑者を表す。紙垂の「垂」は「ず」という読みを持つ。それで読めば紙垂は「しず」であり、鎮めるという読みと同じである。
     生贄を吊るして、怨霊を鎮める、そのための注連縄なのかな。

    p443 豆撒く人
     節分で豆をまくのは厄年の人という慣例がある。これは豆まきで少しでも自分の厄を落とすためという名分がある。しかし、QED的な考察をすると、鬼を倒しに行く危険な役目を任される貧乏くじが豆をまく人である。つまり、厄年とは穢れに触れる貧乏くじを引く順番の年だという意味が隠されているという、説!

    p465 死後の世界
     タタル曰く「普遍的な死後の世界は存在しない。しかし、個々人の中には死後の世界が存在するだろう。その人が死ぬ直前に脳の中に構築される世界が死後の世界である。走馬灯なんかと同様にありえない速さで構築され、死とともに消え失せる、その想像上の世界が『死後の世界』である。死の淵から蘇生した人が語るのはそれである。」
     個々人の幻想でしかないが、共通する物もあっておかしくない。みんなの知ってのとおり、三途の川という死後のイメージは生前に共有されている。だから、死ぬ前にその記憶がそれを再生する。また、結局同じ種の生物だから思いつくものが似通っているということも想像に難くない。
     なるほどな~。ロマンティックは無くなるが、納得いく。

    p494 犯人は西郷
     今井信郎という坂本竜馬暗殺の実行犯がいる。彼は幕臣とし京都見廻組に所属し、幕末の過激派取締りに参加した。彼は維新後の扱われ方が異質であることから西郷の竜馬暗殺説がでた。
     今井信郎は、近藤勇や大石鍬次郎のように即刻処刑にならなかった。彼の維新後の公判は約七か月もかかって、特赦をうけて釈放されている。これには西郷の口添えがあったと噂されるが、証拠となる史料はない。
     この判決は土佐藩士には知らされず秘密裏に処理された。坂本竜馬暗殺犯であるのに。

    p498 懐に入れた右手
     坂本竜馬が写真で右手を隠しているのは、右手に深い傷跡があったからであろう。右手に障害があることを知られたくなかったからだろう。
     龍馬が寺田屋事件で負った手傷である。竜馬の手紙の字がこの事件後に不器用になっていると言われている。やはり後遺症の残るくらいの傷だったのだ。これだけの傷が残っていたのだから、近江屋事件で刺客に襲われても満足に応戦ができなかったのも納得がいく。自慢のスミス・ウェッソンの拳銃も撃てなかったのだろう。

    p510 明智家を恨む薩摩藩
     薩摩は徳川家を恨んでいた。関ヶ原の戦いで西軍だった薩摩は江戸時代には徳川家の管理下に甘んじなければいけなかった。
     突然ですが、明智光秀が僧正天海だったという伝説があります。もしこれが本当なら、徳川政権に明智家が大きく関わったということになる。つまり、薩摩にとっては明智も怨念の対象に入る。
     坂本竜馬は明智の血を引くものだったという。薩摩には坂本を恨む何かがあったのだ。
     これはトンデモな話だろうが、一応関連がある。覚えておこう。

    _______


     高知には行ったんだけど、坂本竜馬の博物館には行ってないです。お遍路だったから通り過ぎた。
     これを読んだら、もう一度高知に行きたくなった。土佐藩が有名になるために利用した坂本竜馬をもっと知るために。
     今も高知県は坂本竜馬が居なければ観光客なんてほとんどいないだろう。なんだ明治のころから何も変わらない。龍馬は死んでも高知の人々のために、道具としてよく使われ、立派に役目を果たしている。

     すばらしい偉人だ。後世の地元の子孫を死んでも助けているなんて。

  • 『一般的 ー 誰にでも共通して存在している死後の世界というものはありえない。しかし、個人個人に立ち戻ってみれば、可能性はある。

    つまり、その人が生命体ではなくなる寸前に、脳の中に構築される世界だ。おそらくカウントできないほど短い時間だろうけれど、そこで何かを見る。その『世界』のことでしょう。

    蘇生した人たちが語っているのは、その世界だ。そう考えれば、在るといえば在るし、無いといえば無い。』

    QEDシリーズ7作目。今回はクローズドサークル&村の因習物。相変わらず素晴らしい、の一言に尽きる。

    ドクニンジンと永遠の不死の世界だなんて、ほんとこの物語世界の人たちは不思議な世界観の中で生きているな。

  • 自分で思ってた以上に幕末に興味がないらしい。順番通り読もうと決めたはずなのに、途中で挫折、シリーズの次の次まで先に読んでしまった。

    話のテーマが(いつも通り現代の事件はどうでもいいとして)龍馬の暗殺という、具体的すぎる出来事に絞られていたせいかな。しかも近代…資料が多い分、本当にただただ歴史考察しているだけ。
    個人的には、神話や伝説やオカルトに、あり得そうな解釈を加えた話が好き。長い長い歴史のうねりに飲み込まれ、捻じ曲がり、消えていった事実達。それが、現代まで微かな面影を残しているとすれば、そこにロマンを感じる。
    残念ながら本作はそういった趣ではなかったと思う。

  • 土砂崩れで閉じ込められた二人がまたも事件に巻き込まれてしまう。村の秘密、今でももしかしたらどこかの村で・・いやいやまさかと思いましたが、そんな昔でない時にあったならば、本当にないとは言い切れない・・?ずっと小さいころから刷り込まれてきたからこそ今回の事件、というより犠牲はおきたんですね。今しか知らないからこちらから見ると酷く理解するのは難しいだけで誰でもそうなる可能性はあるからこそ言葉って怖いですね。

  • ”QED 龍馬暗殺”高田崇史著 講談社文庫(2007/03発売)
    (2004/01発売 講談社ノベルスの文庫版。解説:加来耕三)

    ・・・四国の過疎村に来た、崇と奈々は土砂崩れに伴い村内に閉じ込められてしまう。密室と化した村で起こる殺人と自殺。因習に満ちた山村と龍馬暗殺をつなぐ糸とは。

    ・・・過疎村の恐るべき因習や龍馬暗殺の黒幕をめぐる考察はそれぞれ楽しめたのですが、それぞれの関連が薄いようにも感じられました。
    崇の行動にやきもきする奈々はかわいらしかったのですが。

    作中、次々と事件に巻き込まれる二人に対して、”また!”と発言する人物がいましたが、シリーズは現時点で10冊増えています。
    著者もそこまで続くとは考えていなかったのかも。(笑)

  • QEDシリーズ7作目

    龍馬の暗殺が誰の手によるものなのか?
    とても興味深い話でしたvv
    龍馬暗殺についてもっと他に本を読んでみたくなりました!

    やっぱり龍馬が好きです(*^_^*)

  • またしても学会を肩代わりさせられた今回は
    妹も連れた旅行。
    そして現地で落ち合った人物の実家にいけば
    そこにちょっこりといた、彼。

    今回初、事件勃発(?)に居合わせた状態に。
    今まで事件が発生したのの横で、関係ない(?)話をして
    そのうち真相に…という形でしたが、今回は横で殺人事件。
    しかしやってる事は変わりないですが…w

    事件が起きて不安だからそれを紛らわせたい、と思うには
    かなりのめり込んでいる議論。
    確かにこういう推理をすれば、納得の最後ではありましたが
    暗殺された本当の所は一体どうなのでしょう?

    死体が出来上がった事件の方は…どうつじつまを合わせたのか。
    そこも気になりますが、今回憶えているのが
    注連縄が通常右回り、というくらい、です。

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著者プロフィール




「2023年 『江ノ島奇譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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