ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062756938

感想・レビュー・書評

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  •  登場人物は第一人称もしくは職業名で呼ばれ、わざと「個」を掴みづらい感じにしているように感じた。それが作品を貫く少し不思議な雰囲気に良く合っていた。唯一、名前が割り当てられている「僕」が飼っているペットの「ブラフマン」もなんの動物なのかが具体的に書かれているわけでもなく、不思議な生物としての印象が与えられていた。
     作品や登場人物のもつ「不思議さ」や「不可解さ」は決して解き明かされるべきものではなくただそこにあるものとして肯定的に描かれていて、これがほんの少しの寂しさを含みながら作品全体を柔らかい優しい印象にしていた。

  • ブラフマンが何の生き物だったのか、最後まで分からなかった。
    この小説のテーマが良く分からなかった。

  • 最後は嗚咽するほど泣いた

  • 森から迷い込んだ不思議な小動物を飼うことになった青年のお話。不思議な生き物がいじらしくて可愛くてたまらない。幻想的な、静謐な雰囲気のあるお話。

  •  引き込まれるように読んでしまった。ページを手繰ること数時間、日をまたぐことなく読み終えました。その誘いは至って優雅であり、決して推理小説のように貪るように本へ向かわせるのではなく、寧ろ私をそそのかすかのように優しく誘うようでありました。

     としゃれ込んだ書き出しをしたくなるほど、本作の文章は美しく、帯に書いてある通り、静謐という形容が一番しっくりくる書きぶりでした。

     文体が綺麗といっても、感覚とは相対的であり、人によって当然違います。異性の好みで例えると(ごめんなさい)、ちゃきちゃきした子がかわいいと思う人や、お嬢様系の人をかわいいと思う人、所謂グラマラスな方がいいとか、それはもう好みの問題とおんなじで千差万別です。
     私が文章が綺麗と言うとき、真っ先に思い立つの西加奈子さんです。なんというか、個性的な美しさ、あるいは横溢する生命力のような力強さに惹かれます。一方小川洋子さんの作品もこれはもう美しいという以外の形容ができない文章でして、非常になめらかでおしとやかと言うのでしょうか。深窓の令嬢というか正統派美人というかのごとく、生まれや育ちが雰囲気から違うのを感じてしまうかのごとき美しさ。でもその雰囲気は、自然でいてかつ押しつけがましくない、寧ろ控えめといった体です。
     と、書いた後で本作の文体の美しさが伝わったかやや不安になりましたが。。。

     さて、本作の内容ですが、先ずタイトルからして予想がつきませんでした。冒頭で主人公の住処の窓を叩き、助けを求める存在。それが何らかの小動物だとわかりますが、ん?タイトル何だっけと肩に目をやりますと、ブラフマンの埋葬、とあります。ああ、何かしらの動物がブラフマンという名前で、これとの絆が構築され、そしてそれが途切れる、系の哀しい話なのかな、と当初は想定しました。
     ところが実際には手に汗を握るような展開などなく、展開はいたって淡々と進みます。そしてあっけないばかりの突然の終了。

     また、主人公以外にも数人の登場人物が出てくるものの、それらの背景や主人公との関係が騒がしく語られることもなく、その意味でも「静謐」。文脈や行間を想像しながら味わう作品であると思いました。

    ・・・

     実は小川氏の作品は遅ればせながら、私にとっては今回が初めてでありました。いくつかのブログで書評を拝見しておりとても気になっており購入に至ったものです。

     ドラマチックな展開や大胆な構成が取られているわけではありません。ドラマ好きやアッと驚く系が好きな人にはお勧めできかねます。文章そのものの書きぶりを味わえる方にはおすすめできます。その点ではちょっと難易度高めだと思います。

  • どんな生き物か分からないけどどんどんかわいく思えてくる。

  • 和製純文気分で、ブラフマンの埋葬読了。
    ブラフマンは、主人公と暮らしはじめた何かの哺乳類に付けられた名前。
    ブラフマン以外の者に名前のない物語の中で、ブラフマンと共に送る日々日々、その喪失が静かに語られる。

  • 2018.2.14

    ブラフマンがなんの動物なのか、本当に存在する動物なのか。

    タイトル良い

  • ブラフマンはカワウソだと予想

  • ある出版社の社長の遺言によって、あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に仕事場を提供している“創作者の家”。その家の世話をする僕の元にブラフマンはやってきた―。サンスクリット語で「謎」を意味する名前を与えられた、愛すべき生き物と触れ合い、見守りつづけたひと夏の物語。第32回泉鏡花賞受賞作。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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