螢坂 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062758314

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ三作目。
    人生の一ページ、そこに心残りや謎を絡ませていく五つの物語。
    うん、雨の夜はこんな静かなバーとちょっとした謎解きが実に心地よい。
    じっとマスターの語りに耳を傾けたくなる。
    あくまでもマスターの想像に過ぎない、それでも誰もが耳を傾け心が解放される、そして読み手までもがゆっくり心をほぐされる、この時間が好きだ。

    表題作はもちろん、最後の「孤拳」は言葉にできないぐらい好き。
    心に宿る想い、蛍のようにぼんやり淡く光る想いがせつなさと共に心にそっと忍び込んでくる気がした。
    良かった。

  • 3作目
    じんわり。
    まずい。最後の余韻にやられてる。
    「孤拳」が好きだわ。ベタだし、わかってるのに最後にグッときてしまった。
    今回は全てが香菜里屋なのに?と思うくらいほっこりする読後。
    混乱してなんのこっちゃになりかけた「双貌」も最後にぱあっと心が晴れる。
    今まで魚介の和風テイストが多かった香菜里屋のメニュー。
    今回、洋風が多かったから、ますます行きたくなった。
    フィッシュ&チップスに生ハム?食べたい!

    螢坂
    猫に恩返し
    雪待人
    双貌
    孤拳

  • シリーズ第3弾、以下それぞれに…

    蛍坂:なんとも叙情に富んだ佳作であった、悲しく美しい情景が脳内構成される。香菜里屋の料理が痛んだハートを癒してくれることを望む…

    猫に恩返し:前作とリンクしているタイトル、内容も変化に富んでおり、最後のオチもヒネリが効いている。「犬のお告げ」にも共通したチェスタトンの味わい。

    雪待人:こちらも叙情的である、今作は過去を思い忍ぶ大人の悲哀が共通テーマか?あの時~していれば…絶対に答えのない問いを繰り返す哀しさから、いかに抜け出すか?今作では旬の素材をふんだんに使った料理とアルコール度数の違うビールのようである。


    双貌:これはシリーズの中でも初の試み、作中作のある2重構造であり、香菜里屋の常連も登場する。ニヤリとさせる元気の出るラスト。

    孤拳:こちらも過去を探るエピソード、優しさと哀しみが交差する物語。前を向いていかねば!と思える、香月圭吾も再びの登場。


    今回はどちらかといえば心温まるエピソードが多かったと思う、前作がサキ風(英国の短編作家)だったのに対してO・ヘンリ風だった、と個人的評価を下してみた。短編を読む時、常にこの二人の外国人作家と芥川龍之介を念頭に置くのが自分の読書スタイルである。短編とはその短さ故に、事象だけを大胆に切り取って見せる合わせ鏡のようであると思う、同じものでもサキのように皮肉で残酷に見えれば、O・ヘンリのように幸福に満ちたようにも見える。
    そして読者にそれを明確に感じとらせるのは、芥川龍之介の起承転結、序破急、構成の妙なのだと思う。

    次がシリーズラストとなるのは残念である。

  • 香菜里屋シリーズ③やはり切なく、悲しいストーリーだけど、どこか温かさも残してくれるシリーズ。「孤拳」がとても印象的。『猫に恩返し』はちょっとゾッとさせられる。友人の香月の登場も多くおもしろかった。

  •  世田谷区・三軒茶屋のビアバー「香菜里屋」。客から持ちかけられた謎の数々をマスターの工藤哲也が解き明かす連作短編集の第3弾。「螢坂」「猫に恩返し」「雪待人」「双貌」「孤拳」の5編を収載。
     第3弾となり、フリーライターの飯島七緒、占い師の北君彦(ペイさん)、古参の東山朋生、石坂修・美野里夫妻といった常連客も定着し、世界観も奥行きを増してきました。工藤と旧友のバーマン・香月(かづき)圭吾との過去も曰くありげ。単なる謎解きに終始せず、「香菜里屋」で交錯する人々のペーソスを行間から感じさせる筆致には脱帽です。

  • 「この街で、オレを待ってくれる人はもう誰もいない」戦場カメラマンを目指すため、恋人・奈津実と別れた螢坂。16年ぶりに戻ってきた有坂祐二は、その近くのビアバー「香菜里屋」に立ち寄ったことで、奈津実の秘められた思いを知ることになる(表題作)。マスター・工藤が、客にまつわる謎を解き明かす第3弾。
    (2009年)
    — 目次 —
    螢坂
    猫に恩返し
    雪待人
    双貌
    孤拳

  • 短編推理小説。ビアバーのマスター・工藤哲也が推理する。殺人事件なんかではなく、客にまつわる謎を解く。表題作・蛍坂では16年前の謎を解き明かすのだが、あまりに手がかりがなさすぎて、無謀な推理のような気がする。でも美味しそうな料理とアルコールだけで楽しめる。

  • 「香菜里屋」というビアバーを舞台にマスター・工藤が店に持ち込まれた謎を解き明かす連作短編集の三作目です。表題作である「蛍坂」をはじめ全五編が収録されています。前の二作のように香菜里屋に持ち込まれた事件を工藤や常連客達が解いていくと思いきや、ある仕掛けがある一編や今まで明かされていなかった工藤の過去を思わせるような場面がある一編があり、前の二作とは違う変化が面白いです。次のシリーズも楽しみになりました。

  • ★3.5
    香菜里屋シリーズの3作目で、全5編が収録された連作短編集。タイトルに冠された“螢”のように、どこか儚げで物悲しく思える作品が多かった気が。ただ、その後にはビアバー「香菜里屋」のマスター・工藤による、ほっこりとする解説が付け加えられるので、心が沈むことがないのが有難い。中でも「孤拳」が特に印象的で、真澄と脩治を襲った現実は辛いけれど、工藤の言葉に救われる思いがした。そして気になるのが、「雪待人」ラストでの香月の一言。謎に包まれた工藤を知れる次巻を早く読みたい!それはそうと、今回も料理が絶品だった。

  • シリーズ第3弾。
    「螢坂」「猫に恩返し」「雪待人」「双貌」「孤拳」の5編収録。
    お客にまつわる謎をマスター工藤が解き明かすシリーズ。
    謎解きだけでなく、さり気なく出される料理がたまらない。
    想像力を掻き立てられますよぉ。
    そして工藤の過去もきになります。
    あと1冊でシリーズ完結。
    物凄く寂しいです。

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著者プロフィール

1961年山口県生まれ。駒澤大学文学部歴史学科卒業。’95 年『狂乱廿四孝』で第6回鮎川 哲也賞を受賞しデビュー。’99 年『花の下にて春死なむ』(本書)で第 52 回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門を受賞した。他の著書に、本書と『花の下にて春死なむ』『桜宵』『螢坂』の〈香菜里屋〉シリーズ、骨董を舞台にした〈旗師・冬狐堂〉シリーズ 、民俗学をテーマとした〈蓮丈那智フィールドファイル〉シリーズなど多数。2010 年 1月逝去。

「2021年 『香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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