子どもたちは夜と遊ぶ (下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062760508

感想・レビュー・書評

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  • 今作はは2005年発行された辻村深月先生によって書かれた第二作品目の作品である。
    物語は二年前、同じ大学の同じ学部大学四年生である狐塚孝太と木村浅葱最優秀賞を取れば海外留学が決定するというコンクールの結果を待っているところから始まる。
    しかし、最優秀賞は「i」と名乗る匿名の人物であり、狐塚と木村は敢え無く留学を逃すことになる。
    それから二年後、二年間の間に浅葱はネット上で「i」に接触する。
    そしてなんと彼はある日を境に別れてしまった兄であったと判明し、なんとかして会おうとする浅葱に対して、「i」は2人が出会うために一つのゲームを提案する。
    そのゲームというのが交互に人を殺していくというもので…

    今作は辻村先生の2作品目ということで、不条理な殺人によって自らの親しい人までの命を奪われ、犯人の姿を追うミステリーものであり、人間らしさが垣間見えた登場人物達による等身大の群像劇でもある。
    前作とは一風変わった今作ではあるが、ラストの謎が解ける瞬間や、物語の深層に近づいていけば行くほど読み進めたくなるような展開は1作品目と変わらず、辻村先生の良さがとても出ていると思った。
    脆くて壊れそうな一面を常に登場人物に出しときながらそれでいて人間らしいというかすぐに壊れてしまう儚いものとしての処理ができててとても良かった。

    特に今作では、誰しも心には孤独を抱えそれをどこかへ依存して、託して、そうして人間誰しも楽になろうとしている。
    その執着は時に人を救うが時に人をダメにしてしまう。
    そんなものと戦っている登場人物達だけによる答え、それらもまたこの物語の魅力ではないだろうかと私は思う。
     
    あと個人的に作中で放たれた言葉である「生きることに手を抜いてはいけない、終わりなんて唐突にやってくるし人生っていうには死ぬまでの暇つぶしに過ぎない。だからって手を抜いちゃ駄目だ。時間の中身を決めるには自分の責任なんだからダラダラとした暇つぶしはしちゃ駄目だ」っていうのには心を打たれた。
    本当にそうだと思ったし、発行された近年である二千年前後には不条理に命が奪われる事件や事故などが多く、誰しも予想できない人生の最後。
    それまでに自分だけの残された時間をどう歩むのかそう言ったメッセージもこもってるのではないかと思わせてくれたのと同時に、自分自身どう生きていくべきなのか再確認させてもらうことにおいてとても心にささった一言である。



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    〈※ネタバレ有り〉



    全て読んだ後になって前作などでも現れていたのだが人間の儚さというのが全体的に取れることではある。
    そして、それらを体現するのに今回は不条理な死が利用されてる。
    これは先ほどにも書いたが現代ではあまりなくなってきているものの、2000年前後には今よりは多くそういうことが起こっておりそれを目の当たりにした辻村先生はそのことからいつ死ぬかわからない人間というものの脆さを感じ、この作品を通じて伝えようとしてたのではないかと私は思う。
    さておき、人間の儚さそれを体現した今作ではあると言ったもののそれとは別のこともこの作品からはしっかり読み取ることができたので、それをここに書こうと思う。

    それは、自立というものである。
    これは推理小説というものに隠れて前作とは大幅に違う人間そのもの等身大を用意し、辻村先生あるいは何かモデルがあってそれを模して人間のめんどくささというのつまり人間らしさ、執着してそれでいて必要とされたい、この作品では愛されたいを出しつつ自立していかなければならないのだということを示しているような気がする。
    月子は最終的には孝太からは自立しないといけない。そしてそれは浅葱というものを見つけたことで解決するはずのことだった。親代わりを務めてもらった孝太それを追って大学を決めてしまうほどだから相当だ。
    しかしそれではだめだ人間は生かされてるのではなく生きているのだから。
    そして自立を如実に表すものそれは今回のゲームの最初の被害者赤川翼。
    事件の最初の被害者に思われた赤川だが、彼は生きていて上原と名乗るもののゲームに耐えていたということが物語終盤にわかる。
    そして、親から離れた青森から帰ってきた彼は逞しくそして親を必要としなかった。自分で自分のことを考え自立してしたいことを決めて大学に入学するとも明かした。作中で上原藍はゲームは君(赤川)の勝ちだ。と言っていたがこれは単に生き残って見せたというだけではなく、最後まで人間らしく藍に憧れを抱きそれを投影してしまった浅葱に対しての執着を最後まで自分から取り除けなかったこと。
    自分自身が自立できなかったのに対して、ゲームに利用された赤川はしっかりと自立してみせたそういう意味でも藍は赤川に敗北していたんではないかと思う。
    彼はゲームの一つに利用された1人なのかもしれないしかしそこにはしっかりとした人間としての自立があり、今作の子供達の中でもっとも大人になれた存在なのかもしれない。
    そしてその自立があってこそ人間は成長していくのではないかと思う

  • 上巻から読みながらずっと抱いていた小さな違和感が、最後の方ですとんすとんとはまっていきました。

    また、「僕のメジャースプーン」と合わせて読むと、秋山教授がもっと好きになります。(笑)時系列でいくと「子供たちは夜と遊ぶ」→「僕のメジャースプーン」です。個人的には、2作品は間をあけず連続で読むことをおすすめします。

  • この終盤のドキドキが好き
    孝太と月子の関係、なんで気づかなかったんだろう!
    恭司みたいな人すごく好き

  • 交わることのない、人の想い。切ない終わりがやってくる。「浅葱、もう少しで会える」『i』は冷酷に2人のゲームを進めていく。浅葱は狐塚や月子を傷つけることに苦しみながら、兄との再会のためにまた、人を殺さなければならない――。一方通行の片思いが目覚めさせた殺人鬼『i』の正体が明らかになる。大人になりきれない彼らを待つ、あまりに残酷な結末とは。

  • 読み終わった後の
    鳥肌が止まらなかった

    みんなみんな愛しい
    優しい嘘
    目の奥がじんわりあつくなった

    どうかみんなが幸せでありますように

  • 上下巻読了。登場人物の掘り下げがしっかりしており、特に浅葱の不幸な境遇に胸が痛んだ。その為、浅葱は人殺しで取り返しのつかないことをしているのに、浅葱に感情移入してしまう自分がいた。iの正体が気になり後半一気に読み進めたが、理解が難しく、解説サイトを読んだ。(それでも理解が難しかった。)
    読後感は何とも言えない。そして切ない。でも少し希望を感じる終わり方で良かった。

    話に引き込まれたが、長くて読むのがきつかった部分もあった。だがそれは1人1人の人物描写がとても丁寧だからで、普通のミステリー小説では味わえない魅力を感じる。
    最後は浅葱を含め皆幸せになってほしいと思えた。

  • 誰なのか、誰なのか。本当に最後まで緊張した。そして全てが終わったその後にもまた裏切られた。すごすぎるこの作品。しばらく放心状態になった。すごい。

  • 上巻の最初のチャプターで、おそらくこういうお話なのかなぁと推察されましたが、想像以上に胸が痛むお話でした…
    殺人ゲームのお話がこういう結末を迎えるなんて思いもしませんでした!


  • iとθ二人のゲームは続くが、
    ゲームが続くにつれて心が歪んでいく。

    iは誰なのか?
    交差する記憶、姿が見えないi。

    楽することは許されない、
    必死にならなくてはいけない。

    目を逸らしたくなるように劣悪な
    環境で育った人間は、 
    なりたいものになるために
    きちんと生きて行けるのか


    何人もの登場人物の思いが交差する。

  • 登場人物全員に幸せになって欲しかったと思いました。浅葱もどうかこの先無事に生きていて欲しい、と思います。浅葱の隣に月子がいたらもっとずっと良いんですけど...

    辻村深月さんの作品は言いようのない日常の気持ちを代わりに代弁してくれているようで読んでいて救われます✨(言い過ぎですかね?)

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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