魔王 (講談社文庫)

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著者 : 伊坂幸太郎
  • 講談社 (2008年9月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062761420

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魔王 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • タイトルの『魔王』はシューベルトの楽曲「魔王」から来ているらしい。

    「魔王」は、父親が息子を脇にかかえながら、馬を疾走させ森を駆け抜ける、というストーリーのある曲だ。
    魔王が息子についておいでと囁くのだが、「魔王がぼくをさらおうとしている」と父親に訴えかけても、気のせいだと宥められてしまう。
    ……そんな楽曲。

    「魔王」の不穏なピアノ音が、小説『魔王』のバックグラウンドで鳴っているような気がして、なんとも不穏で不気味だった。

    お話自体は重いというわけではないが、群衆(民衆)の思いが一つの潮流となって、予期せぬ場所に向かいかけたら止められないみたいな(イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ政権樹立のような)事象を書いていて、エンタメ作品というのでもない。

    政治の大きな流れをいち早く予感し、自分なりの方法で向かっていく、超能力(と自覚はされていないが)を持ったある兄弟のお話。

  • 最後に千葉さんが出てきたところで嬉しくなったが、それは 魔王 とは関係のない話。他の作品とのつながりがあるのも伊坂さんの作品の良いところ。ただ、政治や思想の話が絡むので本筋の話は少し苦手。

  • 二人の兄弟が主人公として描かれ、兄のエピソードが表題の『魔王』。弟のエピソードが『呼吸』という2部構成で語られるお話。始めは政治物?次は思想物?、心霊ホラー物?えっ、SF?と思える程に、お話のポイントがパズルのピースのように散りばめられているパターンは後の名作『ゴールデンスランバー』の良い意味での“習作”ともいえる趣があります。人が生きる社会において、多くの人の思想を冷静に見つめて自分を失うことの無い生き方という『社会を生きて行く為の指標』と考えさせられるラストは兄の存在が胸に熱い物を感じさせてくれます。

  • これを読んでいた時期は、維新の会が破竹の勢いで大阪府民にセンセーショナルなインパクトを与え、中国や韓国との領土問題が表立ち、日本国民が愛国心を大きく声に出した珍しい時であり、現実とリンクするような感覚で小説の中の出来事だと片付ける事なく、深く考える事が出来た。

  • ある特別な力を手に入れた主人公がその能力を利用して世界を変えようとする物語、というと、思い浮かべるのは「他人の心を読む能力」だとか「誰かを自分の意志のままに操る能力」だとか、「未来を予見する能力」だとか「ノートに名前を書くだけでその人物を殺害できる能力」だとか、そういうのが多いんじゃないだろうか。
    しかしこの小説の主人公に与えられた能力は、「自分の思念を相手に喋らせることができる」という、それだけのものである。

    主人公は自分自身の肉体に相当な負担を強いるらしいこの能力に侵されながらも、一人の政治家に近づいて、その口からある言葉を話させようとする。
    「そんなことで世界は変えられるのか」、「無理だ」、「俺がどうこうできるものじゃない」、「なら、どうして進むのか」、自問自答しながら主人公は、ぼろぼろになった体を引きずって「力」を使おうとする。まるで、「力」を持ってしまったがために生まれた、已むに已まれぬ衝動に突き動かされるように。

    この「力」とは、もしかして小説家にとっての、「小説を書く」という行為そのものの寓意でもあるのかもしれない。
    「こんなことでは世界は変えられない」と分かっていても、それでも小説を書かずにはいられない。
    ぼろぼろになって、息も絶え絶えになっても、それでもこの「力」を使うしか自分にはない。
    主人公が「力」を使うとき、集中力を高め、相手の姿を視界にとらえ、相手の中に自分を潜り込ませ、その姿に自分を重ねるイメージをする、という過程が必ず描かれている。それはきっと小説を書く時に小説家が行うことと同じなのではないだろうか。そうして小説家は、自分が生み出した作中の人物に自らの思念を喋らせる。まるで言霊みたいに。

    シューベルトの「魔王」以上に、宮沢賢治の詩二編が頻繁に、印象的に引用されていた。
    生前には無名だった宮沢賢治は、岩手で自然の力と向かい合う生活を送っていた。
    しかし死後に多くの作品が発見された宮沢賢治は、今でも言葉だけの存在になってそこに居る。
    「安藤兄弟」二人の人格を束ねたのが、恐らく作中で使われる「宮沢賢治」という存在なのだろう。「呼吸」で、兄を失った弟が移住する先が「岩手」である、というのも思惟的に思える。

    というのは個人的な、恐らく屈曲しすぎた解釈なんだろうけど、幾つもの隠喩が隠されていることには間違いない。

    世界を変えるにはどうすればいいのか?
    きっと、ペンは剣よりも強し、だと思う。
    小説って面白い。言葉ってすごい。

  • 今の日本の閉塞状況を どう打ち破るのか?

    ということを 目標に 物語を つくろうとする。
    青春の息吹みたいなものを感じた。
    伊坂幸太郎の意気込みをかいたい。

    安藤は 不思議な能力に 気がつく。
    自分の思っていることを ヒトに言わせる能力だ。
    安藤は それを 腹話術 と呼ぶ。

    言わせることができるのは
    ワンセンテンス・・・。
    それだけでは 世界を変えることができない。

    しかし 世界を変えたいと思う 志 がある。
    そして いつも 唱えるのだ
    『もっと考えろ』と・・・

    無関心に ヒトの心が奪われている時に
    考えようとする 意思は 尊い。
    その尊さの中で
    自らの命を ちぢめていく。

    ファシズム の台頭を おそれる。
    そして 降ってわいたような 宮沢賢治 ブーム。

    未来を語り 希望を語る 犬養。
    政権を任せて うまくいかなければ 首をはねろ
    という。

    そこに ファシズムの匂いを見つける 安藤。
    ムッソリーニ と結び付ける。

    ヒトビトは 微妙に変化する。
    その微妙さが みょうに リアルである。

    戦争に行って 人を殺す理由は・・・
    殺されないためではなく 命令されたから・・・
    という 兵隊の言葉は 刺激的だ。
    あらゆる言葉が 生き始める。

    いきていたらこんなことがある
    と達観する・・・
    日本人と結婚した アンダーソン。
    それは 安藤さん と名前が似ている。

    伊坂幸太郎の ごろ合わせは・・・
    さまざまなところにちりばめられる。

    考察が 絞殺になる。
    パソコンの変換 間違いを楽しんでいるように・・・
    ほんとに 面白かった。

  • ひっさしぶりに伊坂作品読んだけど、
    やっぱすごいおもしろい。軽快で痛切。

    私は重力ピエロが好きだから、
    この話に出てくる兄弟愛もだいぶ好みで、
    互いを信頼し合って尊重し合って、な関係に胸の奥熱くなります。

    『猛禽類の定点調査』にものすごい魅力を感じちゃったので、
    今の仕事に限界感じたら転職しよっと。

    次、モダンタイムス行きます!

  • 「モダンタイムス」を読んだ余韻が残るうちに。本来は「魔王」➡「モダンタイムス」と読むべきなんだろうけど、皆さんのレビューを見ていると「魔王」で不完全燃焼、という方も多いみたいなので「モダンタイムス」が面白かったので「魔王」でさらに遡る、という読み方で逆に良かったかも。

    自分が思い描いた言葉を相手に腹話術のように喋らせることが出来る能力を持つ安藤。彼がその能力を使ってしようとしたことは…。

    ネットしかり、ニュースしかり、情報の溢れている社会だけれど、大衆は自分で考えているつもりで実は踊らされているのかもしれない。ファシズム、ムッソリーニ。いつだって一人だけでは改革など起こせないのだから。

    シューベルト「魔王」の歌詞を教わったときの怖ろしかった思い出が甦る、このタイトルだけで秀逸だと思う。
    宮沢賢治の「注文の多い料理店」「生徒諸君に寄せる」の活用も流石。

    安藤の弟 潤也があのモダンタイムスの…。じゃんけんに負けない能力がこんなに汎用力あるとは。

    アメリカ憎しのシーン。韓国や中国に向けた嫌悪感情はネットでもよく目にするが、実際はだしのゲンにもデマから叩き殺された中国、韓国人のエピソードが実話として描かれていたのだからアメリカにそれが向かうこともあり得ないとは言えない。

    よくも悪くも影響力の少ない政治家揃いの政治にしらけた日本人の前に、犬養のような政治家が現れたら…。

  • マガジン経由で読んだけど、原作のが良いね。

  • やっぱり『魔王』を読んでから『モダンタイムス』を読めば良かったな…と後悔。

    とても怖い、不安をかき立てる小説だなと思う。
    安藤兄弟、詩織ちゃん、アンダーソンの4人にとても好感が持てる。
    彼らの日常にはほっとする一瞬が確かにある。
    私もあの虫のことは「せせらぎ」って呼ぼうかななんて考えてみるととても楽しい。

    そして政治(とそれによって引き起こされる周囲の人々)の変化は、その愛すべき日常を飲み込み、破壊するものに見える。
    自分が攻撃の対象になることも怖いけれど、自分がその変化に気づかずに飲み込まれて熱狂してしまうことも怖い。

    でも今そうなっていないなんてどうすれば分かるのか?
    生まれた時から飲み込まれているかもしれないのに、どうやって気をつければいいのか?
    何を基準に見ればいいのか分からないから、余計怖い。
    そしてこの恐怖もしばらくすると薄れて忘れてしまうんだ。
    どうしようもなく。

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魔王 (講談社文庫)の作品紹介

会社員の安藤は弟の潤也と二人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、一人の男に近づいていった。五年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。

魔王 (講談社文庫)の単行本

魔王 (講談社文庫)のKindle版

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