日暮らし(下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062762052

作品紹介・あらすじ

「ねぇ叔父上、ここはひとつ、白紙に戻してみてはいかがでしょう」。元鉄瓶長屋差配人の久兵衛からもたらされた築地の大店。湊屋が長い間抱えてきた「ある事情」。葵を殺した本当の下手人は誰なのか。過去の嘘や隠し事のめくらましの中で、弓之助の推理が冴える。進化する"宮部ワールド"衝撃の結末へ。

感想・レビュー・書評

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  • 弓之助の推理、そして「晴香先生の鬼――古着屋のお春の鬼」が犯人という結末、何だか不自然で今一だったなあ。たまたま葵の屋敷を訪ねた晴香先生が、連枝薫という煙草の香を嗅いだ途端に過去に犯した過ちが甦って豹変し、我を忘れて犯行に及んだなんて。

    いっそ、葵は息子が訪ねてくることを知り、今さら合わせる顔がないと自害して果てた、とでもした方が良かったんしゃないかな。人情ものの時代小説としては面白かったんだけどなあ。ちょっと残念。

  • 「1日、1日、積み上げるように。てめえで進んでいかないと。おままんまをいただいてさ。みんなそうやって日暮らしだ。」なんて、滋味深い言葉だろう。

    生きていれば、色々ある。嬉しいことも悲しいことも、思い通りにならないことも。日々儘ならないことだらけだ。でも日々積み上げていく。誰かの所為にせず、他人の事情をすべて自分で背負い込まず。

    シリーズの「ぼんくら」から始まり、最後の「日暮らし」で沢山の登場人物に出会えた。時間を空けてしまい、再読したり、運よくテレビドラマ「ぼんくら」の再放送も観ることが出来て、人が人を想うことの温かさも、醜さも、どちらも味わいながら、最後柔らかな光を見つけることが出来た作品だった。

    「どんな理屈よりも、この世の決まり事よりも、旨いものを食う喜びが、俺に物事をちゃんと感じさせ、考えさせるのかもしれねえ。」日々の営みの中で、旨いものを気の置けない家族や友人と食べることで、前に進んでいける。私もそう信じている。その日暮らし、素敵な言葉。

  • 今回も弓之助とおでこのお手柄
    馬面の同心 井筒平四郎は、必殺仕事人の藤田まこと演じる中村主水そのものだなと思って、読み進めていたら、岸谷五郎でドラマ化されていた
    なるほど、岸谷五郎もありか

  • NHKで放送されている「ぼんくら」を見て思い出した。
    そうだ!「日暮らし」はまだ読んでなかった。
    ということで、さっそく読みました。
    宮部みゆきの時代小説はなかなか良いです♪

  • 宮部みゆき著「日暮らし(下)」を読みました。

     中巻で起きた殺人事件の真相を、同心の井筒兵四郎と甥っ子の弓之助の活躍で見事に解決していく時代劇ミステリーです。

     今まで明らかにされていなかった秘密が次々と判明し、最後は弓之助の明晰な推理で見事真犯人を捕まえます。

     しかし、それは捕まえるというより、ある意味助け出したといったほうが正しいのかもしれない展開でした。
     
     設定は時代劇ですが、格差社会や親子の確執など、現代の問題を織り交ぜながら、そしてラストの展開は、サイコミステリーを思わせるようなスリリングな展開でした。

     最後は3巻にわたって登場した人物たちが、それぞれの落ち着いた場所を見つけながら、その日その日を送っていく様子が描かれ、穏やかな気持ちで読み終わることができました。

     さすが宮部みゆきです。

  • 「日暮らし」の下巻を読んだ。この巻で名脇役の「弓之助とおでこ」が成長していく様子が描かれ、葵に関する事件の下手人探しのため、井筒平四郎は走り回る。弓之助の推理と立ち振る舞いが読みどころ。読み終わった後、温かい気持ちになります。

  • おまえさんへ

  • 一日、一日、積み上げるように。
    てめえで進んでいかないと。おまんまをいただいてさ。
    みんなそうやって日暮らしだ。
    積み上げてゆくだけなんだから、それはとても易しいことのはずなのに、ときどき、間違いが起こるのは何故だろう。
    自分の積んだものを、自分で崩したくなるのは苗だろう。
    崩したものを、元通りにしたくて悪あがきするのは何故だろう。

  • 「宮部みゆき」の長編時代小説『日暮らし』を読みました。

    『震える岩 霊験お初捕物控』、『天狗風 霊験お初捕物控【二】』、『あやし』、『ぼんくら』に続き、「宮部みゆき」作品です。

    -----story-------------
    〈上〉
    一日、一日積み上げるように、みんなそうやって日暮らしだ。
    時代小説(ミステリー)の最高傑作『ぼんくら』に続くシリーズ最新作

    浅草の似顔絵扇子絵師が殺された。
    しかも素人とは思えない鮮やかな手口で。
    「探索事は「井筒様」のお役目でしょう」――。
    岡っ引きの「政五郎」の手下、「おでこ」の悩み、植木職人「佐吉夫婦」の心、煮売屋の「お徳」の商売敵。
    本所深川のぼんくら同心「平四郎」と超美形の甥っ子「弓之助」が動き出す。
    著者渾身の時代ミステリー。

    〈中〉
    「弓之助」と「おでこ」、ころころと走る、走る!
    本所深川の同心と超美形の甥っ子が挑む、探索事は――

    「佐吉」が人を殺めた疑いを受け、自身番に身柄を囚われた。
    しかも殺した相手が実の母、あの「葵」だという。
    今頃になって、誰が「佐吉」に、18年前の事件の真相を教えたりしたのだろう?
    真実を探し江戸を走り回る「平四郎」。
    「叔父上、わたしは、本当のことがわからないままになってしまうことが案じられるのです」。

    〈下〉
    岸が違えば、眺めも変わる。本当に真実(ほんとう)のこと
    築地の大店「湊屋」の抱える“お家の事情”。クライマックスへ

    「ねえ叔父上、ここはひとつ、白紙(まっさら)に戻してみてはいかがでしょう」。
    元鉄瓶長屋差配人の「久兵衛」からもたらされた築地の大店「湊屋」が長い間抱えてきた「ある事情」。
    「葵」を殺した本当の下手人は誰なのか。
    過去の嘘や隠し事のめくらましの中で、「弓之助」の推理が冴える。
    進化する“宮部ワールド”衝撃の結末へ。
    -----------------------

    ぼんくら同心「井筒平四朗」シリーズの第2作、、、

    前作『ぼんくら』から1年後の物語… 前作に引き続き、時代ミステリを堪能できました。

     ■おまんま
     ■嫌いの虫
     ■子盗り鬼
     ■なけなし三昧
     ■日暮らし
     ■鬼は外、福は内
     ■解説 末國善巳

    冒頭に短篇小説が数篇並び、その後に長篇が置かれる… 前作を踏襲した構成でしたね、、、

    一見すると無関係に思える冒頭の一話完結の短篇の中に、長篇部分の伏線が張り巡らされており、後半の『日暮らし』でパズルのピースが嵌るべきところに嵌ってスッキリする展開… このスタイル、好きですね。


    『おまんま』は、気鬱で寝込んでしまった「三太郎」が、扇子に似顔絵を描く人気絵師が殺された事件を捜査する「平四郎」を助ける物語、、、

    「三太郎」は、自分がおまんまを食わせてもらうだけの働きをしているかに悩み、伏せってしまっていた… 働くことの意味を問い掛ける作品でした。


    『嫌いの虫』は、鉄瓶長屋の差配人を辞めた後に植木職人に復帰した「佐吉」と、「総右衛門」の妾腹の娘を育てていた王子の水茶屋の娘「お恵夫婦」の物語、、、

    まだ新婚の「佐吉」と「お恵」だが、「佐吉」の不可解な行動が夫婦の間に波乱を巻き起こすことになる作品。


    『子盗り鬼』は、前作でのキーパーソンながら名前だけの存在(幽霊のような存在)だった「葵」が初めて姿をみせる物語、、、

    「葵」は「総右衛門」の姪で、「佐吉」の母… 「葵母子」は成功した「総右衛門」の家で育ったが、「総右衛門」が「葵」と「佐吉」ばかりをかわいがるので、正室の「おふじ」との間に確執があったという。

    「葵」は、その渦中に失踪したため、何者かに殺されたとも、「佐吉」を捨てて男と出奔したとも噂されていた… 前作では掴みどころのなかった「葵」だが、本作品では、ストーカーにつきまとわれ命の危険に晒されていた「お六母子」を救う人情家の一面をみせる、、、

    大仕掛けを用意してストーカーを罠に落とす展開はスッキリしましたね。


    『なけなし三昧』は、鉄瓶長屋のまとめ役だった「お徳」が主人公の物語、、、

    幸兵衛長屋に越して、再び煮売り屋を開いた「お徳」… だが、同じ長屋で婀娜(あだ)な美女「おくめ」が総菜屋を開店。

    豪華なおかずを破格な値段で売る「おくめ」の店に押され、「お徳」の店には閑古鳥が鳴いていた… 「おくめ」の放漫経営を不審に思った「平四郎」が調査を始めると、異常な商売の裏事情が明らかになる。


    そして、メインとなる『日暮らし』は、芋洗坂近くにある「総右衛門」の別宅で暮らしていた「葵」が殺され下手人として「佐吉」が捕まってしまう物語、、、

    「佐吉」の無実を信じる「平四郎」は、「弓之助」、「三太郎」らと捜査を開始… 再び「湊屋」の闇と向き合うことになる。

    過去の嘘と隠し事の目くらましに、迷って悩む「平四郎」、夜ごとの悪夢でおねしょをしても、必死に謎と向き合う「弓之助」… 「ねえ叔父上、ここはひとつ、白紙(まっさら)に戻してみてはいかがでしょう」、、、

    「平四郎」は、散り散りになった元鉄瓶長屋の住人はもとより、「湊屋総右衛門」と腹心の「伊兵衛」、「総右衛門」の息子「宗一郎」らを訪ね事情を訊く… 「湊屋」の人々の数奇な運命と、人間の業の深さを前に、懊悩しつつも、謎に迫り続ける「平四郎」と「弓之助」。

    二人はたどり着けるのか… いやぁ、意外な女性が犯人でした、、、

    ミステリを堪能できましたね… 「弓之助」の成長が著しく、推理の鋭さが増していて、頼もしかったですね。


    最終話の『鬼は外、福は内』は、エピローグ、、、

    「おとよ」(「弓之介」の従姉)の結婚式に「平四郎」の憧れの人、死んだはずの三代目「白蓮斎貞洲」が出現… 「平四郎」が大喜びするシーンで締めくくりです。


    でも、全編を通じて随所で良い役を演じているのは「お徳」ですねぇ… 「お徳」の総菜を食べてみたいなぁ。

  • 世の中には善悪だけで判断すべきではない事柄が多いと気付かされる内容でした。
    単純な人情ものでも勧善懲悪でもないところが宮部さんの持ち味だと思います。
    残るは「おまえさん」です。次作で終わってしまうのが残念だな。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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