小説 離婚裁判<モラル・ハラスメントからの脱出> (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062762786

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  • 家庭内のモラハラについて、法廷内でさえも今以上に理解が広まっていなかった一昔前。自分の人生と自分自身を取り戻すために、加奈子は一大決心をする。著者は弁護士。勇気をもらえる一冊。

  • 言葉や態度により人を傷つける精神的虐待であるモラルハラスメント。職場や家庭で如何にそれが行われ、人格が崩壊していくのか、またモラハラにまつわる法廷闘争を、弁護士である著者が小説の形で描く。物語としても解説書としてもアッサリしすぎているがモラハラを知らない人に知らしめる効用は抜群。

  • 現代人は刺激慣れ。

  •  モラル・ハラスメント(モラハラ)という言葉をご存じでしょうか?

     モラル・ハラスメントとは、肉体的な暴力を伴わず、言葉や態度によって行われる精神的な嫌がらせです。多少語弊があるかも知れませんが、家庭や職場と言った閉鎖環境の中でしつように続く陰湿な「いけず」とお考え頂くとわかりやすいかと思います。
     言語や態度だけなので証拠が残りにくく、しかも外形的には「間違ったことを注意する"正しい指摘・苦言"」だったりするので、被害者はやがて「悪いのは自分の方だ」と自罰的・内罰的に考えるようになり、自ら進んで加害者に支配されるようになる(サレンダー状態)ことも特徴として挙げられるでしょう。
     モラハラの詳しい特徴はこちらを是非参照してみて下さい(http://www.geocities.jp/moraharadoumei/morahara.html)。

     主人公の鮎川加奈子は、美人だけど生真面目で隙が無く、そのせいで男性に縁が無かったタイプの女性です。
     第一章では、大手商社の総合職として入社するも、コネがなければチャンスも回ってこない現実に直面する姿が描かれています。そんな加奈子には、ここ30年くらいの間に煽られまくった「自己実現思想」の影響が見え、生真面目に仕事にやりがいを求めることの不幸みたいなものを少しだけ感じました。
     加奈子は不遇な中で後に夫となる英一郎と出会います。生真面目で向上心が高く、美人で高嶺の花になってる加奈子のような女性に限って、こういうこだわりの強いインテリ野郎に引っかかるんだよなぁ~、と読みながら思いました(こういうヤツはたいてい真性の変態で、ものすごく紳士だと思って結婚した新婚初夜の晩に、ゼロハリバートンのアタッシュケースから競泳水着を取りだし、真顔で「これ、君の分」とか言うに決まってるんです)。

     第二章では、職場でのモラハラによる人格破壊が描かれています。
     リストラ対象の社員を研修所に集めて何もさせず、一時間に一回「私は給料泥棒です」「私は無能です」と大声で唱和させるというもの。
     端から見れば「何じゃそりゃ?」と呆れるかも知れません。が、人間、外界からの刺激を絶たれた上で何もさせてもらえないと、そういうことでもやりたくなるものです。そして、このようなみっともないことをさせられる内にどんどん自罰的・内罰的な性格が形成されていきます。
     読んでて「他人事じゃねえぞ、これ」と思ったのは、私が以前所属していたところでは、トップがやたらと謝罪文や反省文を提出させたがる人でした(笑)。先ほども紹介した「モラハラの特徴」(http://www.geocities.jp/moraharadoumei/morahara.html)にも、「レポートを書かせる」という項目があり、モラハラ人間は支配の一手段としてこれを使うようです。そもそも、謝罪文や反省文って当人が真摯に謝罪・反省して自発的に出さないと意味が無いわけで、そういう意味で謝罪文や反省文の提出を求めるのって『賭博黙示録カイジ』に出てきた焼き土下座の「土下座強制機」みたいなものと言えます。「誠意を持たぬ者に誠意を強制するっ…!!」って、もうそれ、誠意じゃないだろ、と(笑)。
     人間は理不尽に惨めなことをさせられたとき、その理不尽な事実を認められず、他の事情を歪めることで(典型的なのが「自分が間違っているのだ」と思い込むこと)理不尽に尊厳を踏みにじられた辛さから逃避することがあるようです。私は根が不真面目なのか、胃をやられた時点で「何でこんなめに遭わんといかんのんじゃあ!」とキレちゃったので自罰・内罰サイクルにはハマりませんでしたが、生真面目な人ほど理不尽な嫌がらせの存在それ自体が許せなくて、何か原因を求めてしまうのかも知れません。

     第三章以下では夫婦間モラル・ハラスメントの実態と、離婚裁判の様子が描かれています。離婚相談に行った朝霧弁護士が加奈子に本人訴訟をさせたのはさすがに小説ですが、単にモラハラ夫との決着だけでなく、子供や若者を無闇に煽り立てた自己実現思想による挫折や、企業の「スクラップ研修」で受けた人格攻撃、それら加奈子にのしかかっていた様々な過去と対決していく姿は、読んでいて胸に迫るものがありました。
     (と、ネタバレになりそうなので詳しくは言えませんが、個人的には英一郎の姉・由布子に大爆笑しました。笑うところじゃないんだろうけど…)


     1時間か2時間くらいでサラッと読め、モラハラについて知ることができる小説。離婚のご予定がない方にもオススメ。キーワードは「ゼロ☆ハリ男にご用心!」です…って、違うか(笑)

  • 頭脳派モラハラの決定版。でも、解決までの下りはドラマチック過ぎて、あまり参考にはなりません。

  • ☆母からの紹介本。

     小説というよりは、モラルハラスメントについての啓発本という感じ。事例の1つのみたいな。会社などの組織がバックグラウンドにない、モラハラを理解するにはいいかも。

     
     私は仕事柄ある程度の知識や感覚があったので、衝撃とか驚きは少なかったかな。ちなみに、ストーリーはこの上なくフィクション仕立てで、こういうケースばっかりだったらいいよな(苦笑)と思いました。


     

  • すぐに読めた。文字数少なかったからかな。モラルハラスメントを学んだ作品。

  • どこかで絶賛されていた離婚事件実務の本なんだっけなー、と探している最中に見つけた

  • 大変読み易く、あっという間に読み終わった。妻の言葉の暴力は正にモラルハラスメントだと思う。ただ、娘たちは今のところは大丈夫そうである。

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著者プロフィール

荘司雅彦(しょうじ・まさひこ)
1958年、三重県生まれ。81年、東京大学法学部卒業、旧日本長期信用銀行入行。85年、野村證券投資信託入社、86年9月、同退社。88年、司法試験合格。91年、弁護士登録。2008年、平均的弁護士の約10倍の案件を処理する傍ら、各種行政委員会委員等も歴任。元SBI大学院大学教授。
『中学受験BIBLE』『最短で結果が出る超勉強法』『最短で結果が出る超仕事術』(いずれも講談社)、『荘司雅彦の法律力養成講座』(日本実業出版社)、『小説離婚裁判』(講談社文庫)など著書多数。『男と女の法律戦略』(講談社)はドラマ「離婚弁護士II」の脚本に、弁護士の戦略として採用される。また「こたえてちょーだい! 」(フジテレビ)、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)などテレビ、ラジオに多数出演経験あり。現在、サイバー大学客員教授として「六法と法哲学」を担当、NewsPicksのフォロワー数は10万人を超える。

「2022年 『すぐに結果を出せる すごい集中力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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